「源泉所得税の徴収取引」の「会計的な取引内容」及び「この取引に係る仕訳」を、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。

 

 

なお、当該取引につきましては、「給与・役員報酬の計上取引」に含まれる5種類の取引のうちの1つの取引となります。
このため当該ページは、『「給与・役員報酬の計上取引」の「意義」と「取引内容」』でご紹介させて頂いております内容を補完するものとなります。

 

 

Ⅰ:「源泉所得税の徴収取引」の「意義」と「会計的な取引内容」

ここでは、『「源泉所得税の徴収取引」に係る「仕訳」』を理解するための前提として、以下の項目に従い、
『「源泉所得税の徴収取引」に係る「会計的な取引内容」』をご紹介させて頂きます。

  1. 「源泉所得税の徴収取引」の「意義
  2. 「源泉所得税の徴収取引」の「2面性
  3. 「源泉所得税の徴収取引」の「会計的な取引内容

 

1、「源泉所得税の徴収取引」の「意義」

「源泉所得税の徴収取引」とは、

給与・役員報酬の計上取引に含まれる5種類の取引のうちの1つの取引であり、

「従業員・役員の個人所得税」を、会社の「給与・役員報酬の計算」において徴収する取引をいいます。

 

2、「源泉所得税の徴収取引」の「2面性」

「会社が行った取引」に対して、「仕訳や会計帳簿入力」などの「会計処理」を行うためには、
その取引が持つ「原因面・結果面」「目的面・手段面」等の2面性を把握することが必要となります。

ここでは、「源泉所得税の徴収取引」が持つこの2面性をご紹介させて頂きます。

 

アクセント三角大(透明) 原因面(源泉所得税の徴収)

所得税の源泉徴収制度の下では、「従業員・役員の個人所得税」を「給与・役員報酬計算」において徴収することが必要となります。

源泉所得税の徴収取引」は、
「給与・役員報酬の計算」が完了した時点で、この「従業員・役員の個人所得税」を従業員・役員から徴収するための取引となります。

ただし、この「源泉所得税の徴収取引」では、
従業員・役員の個人所得税を、実際に現金等で従業員・役員から徴収するのではなく
会社から従業員・役員に対して支給する「給与手当の支給(予定)額」や「役員報酬の支給(予定)額」から控除することにより徴収することになります。

なお、「給与手当の支給(予定)額」「役員報酬の支給(予定)額」につきましては、
「給与・役員報酬の計上取引」に含まれる「給与・役員報酬の費用計上取引」において、「未払費用」として計上されていることから、

「源泉所得税の徴収」は、
給与・役員報酬の費用計上取引」で計上された「未払費用」を減少させることにより行います。

上記のことから「源泉所得税の徴収取引」は、会社にとって、

「従業員・役員の個人所得税」を(従業員・役員から)徴収するため
『「給与・役員報酬の費用計上取引」において計上した「(従業員・役員に対する)未払費用」』という「負債」を減少させる取引となります。

 

アクセント三角大(透明) 結果面(源泉所得税の預り)

「所得税の徴収金」は、「所得税の源泉徴収制度」の下に、会社が単に従業員・役員から「従業員・役員の個人所得税」を徴収し、そのまま税務署に支払うことが予定されたものとなります。

ただ、「給与・役員報酬の計算」が完了した時点では、上記の「所得税の徴収金」はまだ税務署へ支払われておらず、会社は「税務署に支払うべき従業員・役員の個人所得税」を従業員・役員から預かっているという状態であり、

言いかえれば、
会社が従業員・役員から「所得税」を預かることにより、
会社は「徴収した源泉所得税」を税務署に対して支払わなければならない支払義務負債)」を負ったという状態であることになります。

上記のことから「源泉所得税の徴収取引」は、

会社が税務署に対して『「(従業員・役員から徴収した)源泉徴収所得税」の「支払義務」』という「負債」を負う取引となります。

 

アクセント三角大(透明) 「源泉所得税の徴収取引」

以上のことから「源泉所得税の徴収取引」とは、会社にとって、

① 「従業員・役員の個人所得税」を(従業員・役員から)徴収するため
『「給与・役員報酬の費用計上取引」において計上した「未払費用」』という「負債」を減少させる取引であるとともに、

② 税務署に対して『「源泉徴収所得税」の「支払義務」』という「負債」を負う取引となります。

 

給与・役員報酬の源泉所得税徴収取引の「取引内容」

 

3、「源泉所得税の徴収取引」の「会計的な取引内容」

ここでは、上記2でご説明させて頂きました「源泉所得税の徴収取引」に「勘定科目」を当てはめることにより、
『「源泉所得税の徴収取引」の「会計的な取引内容」』をご紹介させて頂きます。

 

1)勘定科目の当てはめ

アクセント三角大(透明) 『税務署に対する「源泉徴収所得税の支払義務」』に対する勘定科目

『「源泉所得税の徴収取引」を会計的に表現するためには、「会社にとっての負債」である『税務署に対する「源泉徴収所得税支払義務」』を勘定科目で表現することが必要となりますが、

この『税務署に対する「源泉徴収所得税の支払義務」』に対しては、

預り金」という(負債を表現する)勘定科目を使用します。

 

2)「源泉所得税の徴収取引」の「会計的な取引内容」

・上記2でご紹介させて頂きました「取引内容」に対して、
・上記3(1)でご紹介させて頂きました「勘定科目」を当てはめると、
『「源泉所得税の徴収取引」の「会計的な取引内容」』は、以下のようなものとなります。

 

アクセント三角(小:背景透明)「源泉所得税の徴収取引」は、会社にとって、

① 「従業員・役員の個人所得税」を徴収するため
『「給与・役員報酬の費用計上取引」において計上した「未払費用」』という「負債」を減少させる取引であるとともに、

② 税務署に対する「預り金」という「負債」が計上される取引となります。

 

給与・役員報酬の源泉所得税徴収取引の「会計的な取引内容」

 

 

Ⅱ:「源泉所得税の徴収取引」に係る「仕訳」

ここでは、『「源泉所得税の徴収取引」の「仕訳」』を、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。

  • 仕訳」での「勘定科目の配置
  • 補助科目」の設定
  • 源泉所得税の徴収取引」の「仕訳

 

1、「仕訳」での「勘定科目の配置」

『「源泉所得税の徴収取引」の「会計的な取引内容」』は上記Ⅰ-3(2)でご紹介させて頂きましたようなものとなりますが、これを「仕訳」で表現するためには、
・以下のような「仕訳ルール」に従って、
・「勘定科目」を仕訳の「左側借方)」及び「右側貸方)」に配置することが必要となります。

 

アクセント三角大(透明) 「仕訳」における「配置ルール」

負債減少」は、仕訳の「左側借方)」に配置され、

負債発生・増加」は、仕訳の「右側貸方)」に配置されます。

 

アクセント三角大(透明) 「仕訳」における「勘定科目の配置」

上記のことから「源泉所得税の徴収取引」に係る「仕訳」では、

未払費用」が、仕訳の「左側借方)」に配置され、

預り金」が、仕訳の「右側貸方)」に配置されます。

 

2、「補助科目」の設定

1)「未払費用」に対する「補助科目」の設定

「未払費用」に対しては、その「内訳項目としての補助科目」を付けておくことが必要となりますが、

「源泉所得税の徴収取引」で計上する「未払費用」は、
給与・役員報酬の費用計上取引」で計上される「未払費用」を減額させるため計上されるものであるために、

『「給与・役員報酬の費用計上取引」で計上した「未払費用」に対して付けた「補助科目」』と同じ役員報酬・給与」という「補助科目」を設定することが必要となります。

 

2)「預り金」に対する「補助科目」の設定

「預り金」という勘定科目は、『「従業員・役員から徴収した所得税」に対する「預り金」』以外のものに対しても使用します。

このため、「源泉所得税の徴収取引」で計上される「預り金」に対しては、「どのような預り金であるか」を明示しておくことが必要となります。
(すなわち「預り金」に対して「内訳項目」を付けておくことが必要となります。)

このため、『「源泉所得税の徴収取引」で計上される「預り金」』に対しては、「従業員・役員から徴収した所得税」であることを明示するために、

所得税徴収額」という内訳を示す補助科目」を設定することが必要となります。

 

3、「源泉所得税の徴収取引」の「仕訳」

上記1~2でご紹介させて頂きました内容により、『「源泉所得税の徴収取引」の「仕訳」』は、以下のようになります。

 

【借方】勘定 補助科目 金額 【貸方】勘定 補助科目 金額
未払費用 役員報酬・給与 xxxx円 預り金 所得税徴収額 xxxx円

 

 

税理士事務所・会計事務所からのPOINT

「源泉所得税の徴収取引」につきましては、「給与・役員報酬の計上取引」を構成する取引の1つとなります。
従いまして、この『「源泉所得税の徴収取引」に係る「仕訳」』を直接・単独で、「振替伝票」等を通じて「会計帳簿(会計ソフト)」に入力することはありません。

ただし、「給与・役員報酬の計上取引」につきましては、
「給与・役員報酬の計算」が終了すると、「振替伝票」に入力することが必要となるため、
「給与・役員報酬の計上取引」に係る「会計的な取引内容」及び「仕訳」を理解することが必要となります。

ここでは、「給与・役員報酬の計上取引」に係る「会計的な取引内容」及び「仕訳」を理解するために、
その構成要素(構成取引)となる「源泉所得税の徴収取引」についての「会計的な取引内容」及び「仕訳」をご紹介させて頂いております。

 

「源泉所得税の徴収取引」の「会計的な取引内容」のPoint!

「源泉所得税の徴収取引」では、「従業員・役員の個人所得税」を会社が徴収しますが、
当該徴収は、金銭等での徴収ではなく、「給与・役員報酬の費用計上取引」で会社が負っている「対価の支払い義務」を減少させることにより「従業員・役員の個人所得税」を徴収する点が「取引内容のPoint」となります。

また、上記で「徴収した所得税」は、
・会社が従業員・役員に代わって税務署に対して支払うため、
・会社が従業員・役員から預かったものであることから、
会社が従業員・役員から所得税を徴収した時点で、会社は『税務署に対して「源泉徴収した所得税」を「支払わなければならない義務」』を負う、
すなわち「預り金」という『税務署に対する「負債」を負う』という点が「取引内容のPoint」となります。