勘定科目とは「どのようなものか?」につきまして、ご説明致します。
会計帳簿の入力(記帳)にあたりまして、「勘定科目の入力」は必須のものとなります。
ただ、お客様から、以下の素朴な疑問を受けることがあります。
- 「勘定科目」とはそもそもどのようなものなのか?
- なぜ「勘定科目」の入力が必要となるのか?
- 「勘定科目」には具体的にはどのようなものがあるのか?
- 会計帳簿への入力にあたって、「どのような勘定科目」の入力が必要となるのか?
このため、ここでは、下記の項目に従いまして、上記事項についてご説明させて頂きます。
Ⅰ:勘定科目の意味と必要性
勘定科目とは、
のそれぞれの内訳項目となるものです。 |
決算書には、主に「損益計算書」「貸借対照表」というものがありますが、
- 「損益計算書」には、「収益(収入)」「費用(経費)」が計上され、
この「損益計算書」により、年間で会社にどれ程の利益(損失)が発生したかが表示されます。 - 「貸借対照表」には、「資産(財産)」「負債(借金)」が計上され、
この「貸借対照表」により、年度末に会社にどれだけの正味財産があるかが表示されます。
ここで、
- 会社が年間でいくら利益(損失)を獲得したのか?
- 会社にどれだけの正味財産があるか?
のみを表示する『最も簡単な「損益計算書」、「貸借対照表」を作成するため』には、
「収益」「費用」「資産」「負債」という4つの勘定科目を設定することで十分となります。
ただ、「決算書(損益計算書、貸借対照表)」を作成する重要な目的の1つには、
「損益計算書」によって
- 「どのような収益を獲得」し、
- 「どのような費用が発生した」ために
- 「これだけの利益(損失)が発生した」ということや
「貸借対照表」によって
- 「決算期末にどのような資産があり」
- 「決算期末にどのような負債があり」
- 「決算期末にどれだけの正味財産が会社に残存しているか」を
経営者以外の第三者(税務署、金融機関、出資者等)に報告する(表示する)ということが有ります。
(会社の業績・財政状況の報告)
このため、決算書を作成するための会計帳簿作成(会計ソフトへの入力)時には、
あらかじめ「収益」「費用」「資産」「負債」に勘定科目という内訳項目を入力することが必要となります。
Ⅱ:勘定科目に対するルールと具体的な勘定科目
1、共通ルールの必要性
決算書には、「第三者に対する会社の業績・財政状況の報告」という重要な目的があり、この目的のため「収益」「費用」「資産」「負債」に勘定科目を付し、それぞれの内訳を表示することが必要となります。
この内訳を付す場合に、それぞれの会社で「自由な内訳項目(勘定科目)」が設定されてしまいますと、「会社ごとに様々な内訳項目(勘定科目)が付された決算書」ができてしまい、決算書の会社間比較という点で「第三者に対する会社の業績・税政状況報告」が阻害されてしまうことになります。
このため、決算書の作成に用いる「勘定科目」は、ある程度、すべての会社で共通したものであることが必要となります。
このため、一般に想定される取引項目につきましては、「この取引項目に対しては、このような勘定科目を使用する」というルールが決められています。
これを決めているルールが「簿記」と言われるものです。
2、簿記で定められている勘定科目
勘定科目は、決算書に表示される「収益」「費用」「資産」「負債」の内訳項目を表すもので、大規模な会社から小規模な会社の決算書に共通して使用されるものです。
このため、勘定科目をあまりにも細かなレベルで設定してしまいますと大規模な会社等では、会計帳簿作成がとても煩雑になります。また、決算書の内訳が多様になりすぎると、かえって決算書の会社間比較を困難なものとしてしまいます。
他方、勘定科目をあまりにも大まかなレベルで設定してしまいますと、会社がどのようなことで収益を獲得したか?どのような費用(経費)にお金を使っているのか?どのような資産を持っているのか?どのような負債を抱えているのか?がわかりにくくなってしまします。
このため、簿記においては、大規模な会社から小規模な会社に共通する「必要最低限度の内訳項目」を、事前に「勘定科目」として用意しています。
3、簿記で定められている主要な勘定科目
簿記で定められている主要な勘定科目は、「収益」「費用」「資産」「負債」ごとに、以下のものがあります。
※ 以下では、説明上、簿記で定められている主要な勘定科目を一覧化しています。
会社における、日常的な会計帳簿への入力で使用する勘定科目につきましては、限られたものとなり、限られた勘定科目を繰り返し使用することになります。
このため、事前に勘定科目を1つ1つ理解する必要はなく、会計帳簿の入力にあたって必要な時に、必要な勘定科目につき理解すれば足ります。
従いまして、ここでは「勘定科目にはこのようなものがある」程度の理解で十分だと考えます。
1)収益に属する勘定科目
- 売上高
- 受取利息、受取配当
- 雑収入
- 固定資産売却益 etc
2)費用(経費)に属する勘定科目
- 仕入高
- 役員報酬、給与手当、雑給、賞与、退職金
- 法定福利費
- 福利厚生費
- 採用教育費
- 外注費
- 広告宣伝費
- 交際費
- 会議費
- 旅費交通費
- 通信費、荷造運賃
- 消耗品費、事務用品費、新聞図書費
- 修繕費
- 水道光熱費
- 諸会費
- 支払手数料、販売手数料
- 車両費
- 賃貸料、地代家賃、リース料
- 保険料
- 租税公課
- 支払報酬料
- 寄付金
- 減価償却費
- 雑費
- 支払利息
- 固定資産売却損、固定資産除却損
- 法人税・住民税及び事業税、法人税等 etc
3)資産に属する勘定科目
- 現金
- 普通預金、当座預金、定期預金
- 売掛金、未収入金、受取手形
- 商品、製品
- 短期貸付金、長期貸付金
- 立替金、前渡金、前払費用、預け金、仮払金
- 建物、附属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、土地、ソフトウェア
- 出資金、差入保証金、敷金、預託金、長期前払費用
- 創立費、開業費
4)負債に属する勘定科目
- 買掛金、未払金、支払手形
- 短期借入金、長期借入金
- 預り金、前受金、未払費用、仮受金、預り保証金、
Ⅲ:勘定科目の選択における実務上の留意点
近年は殆どの会社が、会計ソフトを利用して、会計帳簿を作成していると思います。
会計ソフトを利用して会計帳簿の作成を行う場合における、「勘定科目」の設定・使用につきまして、実務上留意すべき点を以下で記載致します。
1)勘定科目は、予め会計ソフトに登録されているものを使用します。
会計ソフトには、予め「使用する可能性のある勘定科目(簿記で定められている勘定科目)」が網羅的に事前登録されており、「事前登録されている勘定科目」の中から「適合する勘定科目」を選択することで、会計帳簿を作成することができます。
他方、会計ソフトには、「勘定科目」を追加登録する機能もあるために、「勘定科目」を独自で新規登録し、使用されていることも多々見かけます。
ただ、「会計ソフトに予め登録されている勘定科目」は、上記でも記載しましたように、簿記で定められている勘定科目を網羅していることから、会社が行った取引項目は、「会計ソフトに予め登録されている勘定科目」のいずれかに当てはまります。
必要以上に勘定科目を増やすことは、会計帳簿への入力作業を非効率にしたり、会社が「独自の勘定科目」を使用することは、かえって簿記ルールから外れることに繋がります。
このため、特別な事情のない限り、「会計ソフトに事前登録されている以外の勘定科目」を追加することは避け、「予め登録された勘定科目」を使用して会計帳簿の入力を行って下さい。
※ ただ、会社独自に特定の取引項目を細分化して把握したい場合や会計帳簿上で区分集計したい場合があると思います。
このような場合には、「勘定科目」を追加設定するのではなく、「勘定科目に対して補助科目を設定・使用する」ことで対応して下さい。
2)日常的に使用する勘定科目を絞り込むことが必要となります。
会計ソフトに「予め登録されている勘定科目」は、殆どの取引に対応できるように、ほぼすべての「勘定科目」が網羅的に事前登録されています。
このことは、ある会社にとっては、日常的な会計帳簿入力にあたり殆ど使用することがないと思われる勘定科目も予め登録されてしまっていることを意味します。
会計帳簿入力にあたり、「使用しない勘定科目」が常に「勘定科目選択リスト」に表示されることは、
- 勘定科目選択時に誤った勘定科目を選択したり
- 勘定科目選択作業を非効率にしてしまうetc
弊害を生じさせます。
このため、会計ソフトの非表示機能等を使い、殆ど使用しない勘定科目につきましては、「勘定科目選択リスト」で非表示にする等しておくことが効率的であると考えます。
Ⅳ:会計帳簿への入力と勘定科目の選択
会計帳簿への入力につきましては、「勘定科目の選択」が必須のものとなります。
また、会計帳簿への入力方法としては、主に3通りの入力方法があります。
ここでは、「会計帳簿への入力方法」ごとに、どのような「勘定科目の選択」が必要となるかをご紹介致します。
1、会計帳簿の入力方法
会社の取引を会計ソフトを利用して会計帳簿に入力する場合には、主に以下の3通りの入力方法があります。
1)現金の入金又は出金がある取引の入力方法
会社が行った取引が、「現金の入金又は出金」を伴う取引につきましては、原則、「現金出納帳」から会計帳簿への入力を行います。
2)預金(普通預金、当座預金等)の預入又は引出がある取引の入力方法
会社が行った取引が「預金の預入又は引出」を伴う取引につきましては、原則、「預金出納帳」から会計帳簿への入力を行います。
3)上記の1)2)以外の取引の入力方法
上記1)2)以外の取引につきましては、仕訳の形で「振替伝票」から会計帳簿への入力を行います。
2、会計帳簿への入力方法と選択する「勘定科目」
上記1の会計帳簿への入力を行う場合には、「勘定科目」の選択入力が必須となります。
ただし、入力方法により、どのような「勘定科目」を選択入力するかが異なってきます。
ここでは、入力方法別に、どのような「勘定科目」を選択入力するかをご紹介いたします。
1、現金出納帳への入力時における「勘定科目」の選択入力
現金出納帳への入力時には、
現金の入金又は出金の原因となった項目(「相手勘定科目」)を選択入力します。
2、預金出納帳への入力時における「勘定科目」の選択入力
預金出納帳(普通預金出納帳、当座預金出納帳etc)への入力時には、
預金の預入又は引出の原因となった項目(「相手勘定科目」)を選択入力します。
3、振替伝票への入力時における「勘定科目」の選択入力
「振替伝票」への取引入力にあたっては、仕訳の形での入力が必要となります。
このため、仕訳の借方(左側)と貸方(右側)とに2以上の「勘定科目」の選択入力が必要となります。
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、勘定科目とは何か?を最終的な作成書類である「決算書」との関係から、ご説明しております。
それぞれの勘定科目の意味やどのような場面で使用するかにつきましては、ここでは詳細にご紹介しておりません。
(これにつきましては、それぞれの勘定科目別にご説明しております。)
ここでは、そもそも勘定科目がなぜ簿記ルールで決まっているのかということをご確認して頂ければ十分であると思います。
また、会社で行われる取引につきましては、同じような取引が繰り返し行われますので、日常の会計帳簿入力にあたり理解しておくことが必要な勘定科目は限られてきます。
このため、事前にすべての勘定科目を理解する必要はなく、必要な勘定科目を順次理解していくという程度で十分であると考えます。