ここでは、『「入社時決定(資格取得時決定)」における「報酬月額」の算定方法』につきまして、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。

 

 

 

Ⅰ:『入社時における「報酬月額」の算定』のため必要となる事項

見出4 「被保険者資格取得届」の届出                       

『入社時に決定される「標準報酬月額」』につきましては、最終的には社会保険の保険者決定することとなりますが、

この保険者による「標準報酬月額」の決定がなされるに、

見出丸(小:背景ハダ色) 会社で『新入社員・新任役員に支払われる「報酬給与役員報酬)」』を入社・就任時点合理的に見積もり

見出丸(小:背景ハダ色)これを「報酬月額」として、「被保険者資格取得届」に記載し、保険者に届出ることが必要となります。

 

入社時決定:「被保険者資格取得届」での「報酬月額」の記載

 

見出4 『入社時における「報酬月額」』                    

『入社時・就任時(資格取得時)における「報酬月額」』とは、

見出丸(小:背景ハダ色) 『入社時(資格取得時)に決定される「社会保険の標準報酬月額」』を決定するための「前提となる金額」であり、

見出丸(小:背景ハダ色) 従業員の入社時点、役員の就任時点見積ることが必要となる、「一ヶ月あたり給与・報酬の支給見込額」をいいます。

 

『入社時における「報酬月額」』は、
従業員・役員の入社・就任後5日以内に「被保険者資格取得届」に記載し、保険者に届け出ることが必要となります。

このため『入社時における「報酬月額」』は、
『定時決定時における「報酬月額」』や『随時改定時における「報酬月額」』のように、「実績値から平均計算される1ヶ月あたりの給与・役員報酬支給額ではなく

入社・就任時点での合理的な支給見積額を含んだ1ヶ月あたり給与・役員報酬の支給見込額」となります。

 

見出4 『入社時における「報酬月額」の算定』のため必要となる事項       

「被保険者資格取得届」に『入社時における「報酬月額」』を適切に記載するためには、

『「報酬月額の算定対象となる「報酬給与・役員報酬)」の範囲』を適切に把握すること
入社時における報酬月額の算定方法』を理解すること

が必要となります。

以下では、この『社会保険における「報酬の範囲」』及び『入社時における「報酬月額」の算定方法』をご紹介させて頂きます。

 

 

Ⅱ:「報酬月額」の算定対象となる「報酬(給与、役員報酬)」の範囲

「報酬月額」を算定する場合には、
まず、『「報酬月額の算定対象となる「報酬の範囲』を適切に把握しておくことが必要となりますが、

この点、「報酬月額」の算定対象となる「報酬(給与、役員報酬)」は、

見出丸(小:背景ハダ色) 賃金、給料、俸給、手当、賞与などの名称を問わず
従業員・役員が労働・業務執行の対償として受ける全てのものが対象となります。

見出丸(小:背景ハダ色) また、金銭(通貨)に限らず、
通勤定期券の支給、食事の提供、社宅の貸与など現物で支給されるものも対象となります。

 

見出4 具 体 的 項 目                             

日本年金機構」が公表する「算定基礎届の記入・提出ガイドブック」には、
社会保険制度において『「報酬月額」の対象に含めることが必要となるもの』『「報酬月額」に含める必要がないもの』が「金銭による支給」「現物による支給」に分けて、具体的に列挙されています。

  「報酬月額」の対象となる報酬 「報酬月額」の対象とならない報酬
金銭による支給 ・基本給(月給・週給・日給など)
・早出残業手当
・能率給 ・役付手当 ・職階手当
・特別勤務手当 ・勤務地手当 ・物価手当
・家族手当 ・扶養手当  
・住宅手当 ・別居手当 ・奨励給
・通勤手当 ・日直手当 ・宿直手当
年 4 回以上の賞与※2
年 3 回以下の賞与※2
現物による支給※1 ・通勤定期券、回数券 
・食事※3、食券 ・社宅、寮
・被服(勤務服でないもの
・自社製品
・制服 ・作業着 
・食事※3など

 「算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和元年)」は、「日本年金機構のHP」からダウンロードできます。

 

Point ! 「税務上の課税対象となる給与・役員報酬」との違い

見出(見出矢印:背景水色)税務上では「通勤手当」「宿直日直手当」は、一定の要件を満たせば、従業員・役員個人の所得税の課税対象からは除外されます(「非課税支給額」となります)。

見出(見出矢印:背景水色)他方、社会保険制度の下では、「通勤手当」「宿直・日直手当」につき、
上記の税務上のような「報酬」の対象から除外できる特別の措置はなく
これらにつきましても、「その他の給与支給額等」と同様に、「報酬」に含めることが必要となります

Piont  ! 『「残業代」等の法定手当』や「任意手当」につきまして

『入社時における「報酬月額」』には、

・「基本給」のみならず、

・『「残業代」等の法定手当』や「任意手当」につきましても、
それが支払われる予定である場合には、「報酬月額に含めて合理的に見積ることが必要となります。

 

見出三角(小) ※1: 現 物 支 給                            

通勤定期券、回数券
・「通勤手当」を、金銭ではなく「定期券回数券等」で支給する予定の場合には、現物給与として「報酬」に含めることが必要となります。
・なお、3 ヵ月6 ヵ月など1ヶ月を超える通勤定期券を支給する予定の場合には、1 ヵ月あたりの額を算出して「報酬」に含めます。

食事、食券の現物支給
・会社が従業員・役員に食事を支給する予定の場合には、厚生労働省が公表する「全国現物給与価額一覧表」に基づいて、「1ヶ月間に支給が予定されている食事等の現物支給」を金銭評価して「報酬」に含めることが必要となります。
・なお、食事代金の一部を従業員・役員が負担することを予定している場合には、上記「評価額」から「本人負担金額」を差引いた金額」を「報酬」に含めます。
・ただし、上記「評価額」の 2/3 以上役員・従業員が負担することを予定している場合には、「報酬に含める必要はなくなります

社宅、寮の現物支給
・会社が従業員・役員に社宅や寮の提供を予定している場合には、厚生労働省が公表する「全国現物給与価額一覧表」に基づいて、「社宅現物支給」を金銭評価して「報酬」に含めることが必要となります。
・なお、上記価額を計算する場合には、居間茶の間寝室客間等、居住用の室を対象とします。
玄関台所トイレ浴室営業用の室(店、事務室等)等は価格計算に含める必要はありません。)
・また、社宅・寮の賃料等の一部を従業員・役員が負担している場合は、上記「評価額」から「本人負担金額」を差引いた金額」を「報酬」に含めます。

その他の現物支給
・食事および住宅以外の現物支給を予定している場合には、その「現物支給の時価」を「報酬」に含めることが必要となります。
・この場合、その価額が労働協約に定めがある場合は、その金額を「時価」として取り扱いますが、
労働協約に定めがない場合には「実際に現物支給にかかった費用」を「時価」として取り扱います。

 

見出三角(小) ※2: 賞 与                                

・「賞与」につきましては、「給与・役員報酬に係る社会保険料」とは別に、「賞与に係る社会保険料」を賞与が支給された都度保険者に納付することが必要となります。
・このため、「3ヶ月を超える期間ごとに支給されることが予定されている賞与(年間の支給回数3回以下の賞与)」につきましては、『給与・役員報酬に係る「報酬月額」』の対象とはしません

・ただし、「3ヶ月以内の期間ごとに支給されることが予定されている賞与(年間の支給回数4回以上の賞与)」につきましては、臨時的に支給される賞与とは看做さず、「給与・役員報酬」の一部と看做し『給与・役員報酬に係る「報酬月額」』に含めることが必要となります。

 

見出三角(小) ※3: 食 事 の 現 物 支 給                      

・会社が従業員・役員に食事を支給する予定であっても、その食事の評価額(厚生労働省が公表する「全国現物給与価額一覧表」に基づいて計算された価額)の 2/3 以上を役員・従業員が負担することを予定している場合には、「食事の現物支給」を「報酬」に含める必要はなくなります

 

 

Ⅲ:入社時における「報酬月額」の算定方法

1、『「報酬月額」の算定方法』に係る規定(健康保険法42条)

『入社時(資格取得時)の「報酬月額」』につきましては、「健康保険法42条」にその算定方法が規定されています。

このため、会社から保険者に対して届け出る「報酬月額」につきましては、
原則として「健康保険法42条」に規定されている算定方法に従って算定することが必要となります。

「健康保険法42条」に規定されている『入社時(資格取得時)の「報酬月額」』は以下のものとなります。

① その他一定期間によって報酬が定められる場合には、被保険者の資格を取得した日の現在の報酬の額をその期間の総日数除して得た額三十倍に相当する額を「報酬月額」とします。

② 時間出来高又は請負によって報酬が定められる場合には、被保険者の資格を取得した月前一月間に当該事業所で、同様の業務に従事し、かつ同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額を「報酬月額」とします。

③ 上記①②の規定によって算定することが困難であるものについては、被保険者の資格を取得した月前一月間に、その地方で、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を「報酬月額」とします。

④ 上記①②③のうち二以上に該当する報酬を受ける場合には、それぞれについて、上記①②③の規定によって算定した額の合算額

 

 

2、実務的な『入社時における「報酬月額」』の算定方法

『入社時における「報酬月額」』の算定方法に対する「健康保険法の規定」は、上記1でご紹介させて頂いたものとなりますが、

見出(見出矢印:背景水色)新入社員が入社する場合には、「労働契約雇用契約)」「賃金規定就業規則)」等により、
・『基本給固定的手当等の「固定的な報酬額」』は入社時点決定されており、
・また、それに伴い『残業代等の「変動的な報酬額の計算基礎となる時間あたりの単価」』も決定されます。

見出(見出矢印:背景水色)また、新役員が就任する場合にも、「経営委任契約」「株主総会決議」等により、「役員報酬額」は就任時点決定されます。

このことから、実務上、『入社時における「報酬月額」』を算定するためには、

入社時点既に決定されている固定的な報酬額」をベースとして、

従業員・役員に支払われる「1ヶ月あたりの報酬見込額(給与・役員報酬)」を合理的に見積ることとなります。

 

以下、「月給制等の場合」「日給制・時給制等の場合」に分け、『「報酬月額」の算定方法』をご紹介させて頂きます。

 

1)「月給制」等の場合の『入社時における「報酬月額」』の算定方法

給与・役員報酬が「月給制で支払われる場合には、

給与・役員報酬を

見出(見出矢印:背景ハダ色)固定的に支払われる部分固定的な報酬部分)」と「変動的に支払われる部分変動的な報酬部分)」とに分けて、「それぞれの金額」を合理的に見積り

見出(見出矢印:背景ハダ色)「固定的な報酬金額」と「変動的な報酬金額」とを合算することで、『入社時における「報酬月額」』を算定します。

 

見出4 固定的な報酬」の見積り                           

サイドバー見出2「基本給」や「固定的な任意手当」

・「月給制が採用されている場合」には、

雇用契約」「賃金規定」「就業規則」等で定められた「基本給」「固定的な任意手当」を

1ヶ月の支給見込額」として「報酬月額」に含めます。

・「週給制が採用されている場合」や「一定期間によって報酬が定められる場合」には、

・「雇用契約」「賃金規定」「就業規則」等で定められた『「基本給」「固定的な任意手当」の「1日あたりの金額」』を算定し、

・それを30倍することにより

1ヶ月の支給見込額」として「報酬月額」に含めます。

 

サイドバー見出2   固定的な「現物支給」

・「通勤定期回数券等の現物支給」が行われる予定の場合には、

1ヶ月分の支給見込額」を計算して「報酬月額」に含め、

・「社宅社員寮の貸与」「固定的な食事食券等の提供」が行われる予定の場合には、

その「現物支給額」を厚生労働省が公表する「全国現物給与価額一覧表」に基づいて金銭評価して、「報酬月額」に含めることになります。

 

見出4 変動的な報酬」に対する「報酬月額」の算定                  

サイドバー見出2  「法定手当(時間外労働手当等)」

時間外労働手当」「深夜労働手当」「法定休日労働手当」などの月々の労働時間により変動する「法定手当」の支給が予定されている場合には、

・「雇用契約」「賃金規定」「就業規則」等で定められた『「基本給」「その他手当」に基づいて計算された「1時間あたりの報酬額」』に、

・「雇用契約」「賃金規定」「就業規則」等で定められた「割増賃金率」及び

合理的に見積もった1ヶ月間の残業時間」等を「乗じた金額」を、

1ヶ月あたりの支給見込額」として「報酬月額」に含めます。

 

また、上記とは別に、会社内(事業所内)に「入社した従業員」と「同種の業務に従事しかつ同様の報酬を受ける者」が存在する場合には、

入社月一月間に当該事業所で、これらの者に支払われた「法定手当の額平均した額」を

1ヶ月あたりの報酬見込額」として「報酬月額」に含めることも考えられます。

 

サイドバー見出2  変動的な「任意手当」

日直手当」「宿直手当」などの「変動的な任意手当」の支給が、入社時点において毎月経常的に見込まれる場合には、

・「1ヶ月間に見込まれる宿日直回数」に

・「雇用契約」「賃金規定」「就業規則」等で定められた「1回あたりの日直・宿直手当額」を「乗じた金額」を

1ヶ月あたりの報酬見込額」として「報酬月額」に含めます。

 

サイドバー見出2   変動的な「現物支給」

・「食事食券等の提供」が変動的に見込まれる場合には、

・その「提供回数」等を推定して、

・「食事・食券等の現物支給額」を厚生労働省が公表する「全国現物給与価額一覧表」に基づいて金銭評価して、

1ヶ月あたりの報酬見込額」として「報酬月額」に含めます。

・また、その他「自社製品の提供」等が見込まれる場合には、

その「時価」で金銭評価して、「報酬月額」に含めることになります。

 

2、日給制・時給制等の場合の『入社時における「報酬月額」』の算定方法

1)「日給制」を採用している場合

見出三角(小) 「日給額」等をベースに算定する方法

給与が「日給制」等で支払われる場合には、

・「雇用契約」「賃金規定」「就業規則」等で定められた「日給額」に、

合理的に見積もった1ヶ月間の労働日数」等を「乗じた金額」を、

1ヶ月あたりの報酬見込額」として「報酬月額」に含めます。

また、「時間外労働手当」「深夜労働手当」「法定休日労働手当」などの変動的な「法定手当」の支給が予定されている場合には、

・「雇用契約」「賃金規定」「就業規則」等で定められた『「日給額」に基づいて計算された「1時間あたりの報酬額」』に、

・「雇用契約」「賃金規定」「就業規則」等で定められた「割増賃金率」及び

合理的に見積もった1ヶ月間の残業時間」等を「乗じた金額」を、

1ヶ月あたりの報酬見込額」として「報酬月額」に含めます。

なお、上記の他「固定的任意手当現物給付」「変動的任意手当現物給付」などがある場合には、

「月給制」等の場合と同様に、「1ヶ月あたりの報酬見込額」を合理的に見積り、「報酬月額」に含めることが必要となります。

 

見出三角(小) 「同種・同様の従業員の平均報酬額」に基づいて算定する方法

上記とは別に、会社内(事業所内)に「入社した従業員」と「同種の業務に従事しかつ同様の報酬を受ける者」が存在する場合には、

入社月一月間に当該事業所で、これらの者が受けた「報酬の額平均した額」を「1ヶ月あたりの報酬見込額」として「報酬月額」とすることも考えられます。

 

2)「時給制」を採用している場合

見出三角(小) 「時給額」等をベースに算定する方法

給与が「時給制」等で支払われる場合には、

・「雇用契約」「賃金規定」「就業規則」等で定められた「時給額」に、

合理的に見積もった1ヶ月間の労働時間数」等を「乗じた金額」を、

1ヶ月あたりの報酬見込額」として「報酬月額」に含めます。

また、「時間外労働手当」「深夜労働手当」「法定休日労働手当」などの変動的な「法定手当」の支給が予定されている場合には、

・「雇用契約」「賃金規定」「就業規則」等で定められた「時給額」に、

・「雇用契約」「賃金規定」「就業規則」等で定められた「割増賃金率」及び

合理的に見積もった1ヶ月間の残業時間」等を「乗じた金額」を、

1ヶ月あたりの報酬見込額」として「報酬月額」に含めます。

なお、上記の他「固定的任意手当現物給付」「変動的任意手当現物給付」などがある場合には、

「月給制」等の場合と同様に、「1ヶ月あたりの報酬見込額」を合理的に見積り、「報酬月額」に含めることが必要となります。

 

見出三角(小) 「同種・同様の従業員の平均報酬額」に基づいて算定する方法

上記とは別に、会社内(事業所内)に「入社した従業員」と「同種の業務に従事しかつ同様の報酬を受ける者」が存在する場合には、

入社月一月間に当該事業所で、これらの者が受けた「報酬の額平均した額」を「1ヶ月あたりの報酬見込額」として「報酬月額」とすることも考えられます。

 

 

税理士事務所・会計事務所からのPOINT

ここでは、『「入社時決定」における「報酬月額」の算定方法』をご紹介させて頂いております。

 

「報酬」に含めることが必要な給与・役員報酬の範囲の確認

「報酬月額」を算定するためには、まず「入社後に支払われる予定の報酬」を集計・把握することが必要となりますが、
この点につきましては、上記Ⅱでご紹介させて頂きました内容をご確認頂き、「報酬」に含めなければならない給与・役員報酬を適切に集計・把握して頂きますようお願い致します。

 

『「報酬月額」の算定方法』につきまして

まず、『入社時の「報酬月額」の算定方法』につきましては、
『「健康保険法42条」に規定が存在している』ということを知っておいて頂くことが必要であると考えます。

ただし、『「月給制」等の場合』『「日給制」「時給制」等の場合』であっても、
・給与支給額等のベースとなる「基本給」や「任意手当」等につきましては、入社時等に決っていることから、
・実務上では、「上記Ⅲでご紹介させて頂きました算定方法」などにより、
これら「既知の金額」に基づいて、「報酬月額」を合理的に算定することが一般的になるのではないかと考えます。