ここでは、『各社会保険ごとの「年齢による加入要件」』及び『(給与計算時における)各社会保険料控除に係る「 年齢ごとの取扱 」』につき、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。
▶ はじめに
会社が「給与計算を行う場合」には、
|
「給与・役員報酬の支給額」から「当該従業員・役員が負担する社会保険料」を控除することが必要となりますが、
この点、「前者」の「被保険者となる要件」につきましては、
「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」ごとに、 『「従業員・役員の年齢」に応じた「加入要件(資格要件)」』が定められており、 |
また、「後者」の「会社による保険者への保険料納付の要否」につきましては、
「介護保険」において、 「従業員・役員の年齢」に応じた「保険者への保険料納付の要否規定」が定められています。 |
このため、給与計算において適切に「社会保険料の控除」を行うためには、
その前提として、 適切に理解・把握しておくことが必要となります。 |
◆ 「 当該ページ 」でのご紹介内容につきまして ◆
従いまして、「当該ページ」におきましては、
下記Ⅰで、
- 「健康保険」において規定されている 「年齢による加入要件」をご紹介させて頂くとともに、
- 「(給与計算における)健康保険料控除に係る年齢ごとの取扱 」をご紹介させて頂き、
下記Ⅱで、
- 「介護保険」において規定されている 「年齢による加入要件」及び「年齢による介護保険料の徴収要否規定」をご紹介させて頂くとともに、
- 「(給与計算における)介護保険料控除に係る年齢ごとの取扱 」をご紹介させて頂き、
下記Ⅲで、
- 「厚生年金保険」において規定されている 「年齢による加入要件」をご紹介させて頂くとともに、
- 「(給与計算における)厚生年金保険料控除に係る年齢ごとの取扱 」をご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「健康保険」における「年齢による加入要件」&「年齢による保険料控除の取扱」
「健康保険」における「年齢による加入要件」
健康保険制度(医療保険制度)では、
「会社で労働する従業員・会社を経営する役員」は、たとえ「一般的な(社会保険の)加入要件」を満たしている場合であっても、
75歳以上となった場合には、
|
当該『「後期高齢者医療制度」に係る保険料』は、
・(75歳以上である)従業員・役員個人が、「当該後期高齢者医療保険料」を全額負担し、 ・(75歳以上である)従業員・役員個人が、「当該保険料」を居住する市町村に自ら直接納付することとなります。 |
このため、従業員・役員が75歳以上となった場合には、
給与計算において「当該従業員・役員に係る健康保険料の徴収(控除)」は不要となります。 |
「被保険者の年齢」と『給与計算における「健康保険料控除」の取扱い』
上記でご紹介させて頂きましたように、従業員・役員の年齢が75歳以上となった場合には、当該従業員・役員は「(会社が加入する)健康保険の被保険者でなくなる」ことから、
給与計算において「健康保険料の控除」を行う場合には、以下のように、
区分して取扱うことが必要となります。 |
◆ 従業員・役員の年齢が74歳以下である場合 ◆
「従業員・役員」が「一般的な社会保険の加入要件」を充たしており、その年齢が「74歳以下の場合」には、
・「当該従業員・役員」は「(会社が加入する)健康保険の被保険者となる」ことから、 ・給与計算において「健康保険料の控除」を行うことが必要となります。 |
◆ 従業員・役員の年齢が75歳以上である場合 ◆
他方、「従業員・役員」が、「一般的な社会保険の加入要件」を充たしている場合であっても、その年齢が「75歳以上である場合」には、
・「当該従業員・役員」は「(会社が加入する)健康保険の被保険者ではなくなる」ことから、 ・給与計算において「健康保険料の控除」を行うことは不要となります。 |
Ⅱ:「介護保険」における「年齢による加入要件」&「年齢による保険料控除の取扱」
「介護保険」における「年齢に係る加入要件・保険料負担規定」
1)介護保険における「年齢による加入要件」
介護保険制度では、
「会社で労働する従業員・会社を経営する役員」は、たとえ「一般的な(社会保険の)加入要件」を満たしている場合であっても、
40歳以上にならないと介護保険には加入できないという年齢要件があります。 |
このため、従業員・役員の年齢が39歳以下である場合には、
・「当該従業員・役員」は「介護保険の被保険者とはならない」ため、 ・給与計算において「介護保険料の控除」を行うことは不要となります。 |
2)介護保険における「1号被保険者」と「2号被保険者」の規定
介護保険制度におきましては、「保険加入要件が40歳以上である」ため、
「従業員・役員の年齢」が40歳以上である場合には、「当該従業員・役員」は「介護保険の被保険者」となります。 |
ただし、介護保険制度におきましては、
この「被保険者」を、被保険者の年齢により、
|
「1号被保険者」につきましては、
・(介護保険の被保険者である)従業員・役員個人が、「当該介護保険料」を全額個人で負担し、 ・(介護保険の被保険者である)従業員・役員個人が、「当該介護保険料」を居住する市町村に自ら直接納付することとし、 |
他方、「2号被保険者」につきましては、
・「当該従業員・役員に係る介護保険料」を「会社」及び「従業員・役員」で負担し、 ・「当該介護保険料の納付」につきましては、会社が「会社負担分の介護保険料」と「当該従業員・役員負担分の介護保険料」をあわせて保険者に納付することとしています。 |
このため、従業員・役員の年齢が65歳以上である場合(介護保険の1号被保険者である場合)には、
「当該従業員・役員が負担する介護保険料」につきましては、会社から保険者に納付する必要がないため、 給与計算において「当該従業員・役員から介護保険料を徴収(控除)」することは不要となり、 |
他方、従業員・役員の年齢が40歳以上64歳以下である場合(介護保険の2号被保険者である場合)には、
「当該従業員・役員が負担する介護保険料」につきましては、従業員・役員に代わって会社が保険者へ納付することが必要となるため、 給与計算において「当該従業員・役員から介護保険料を徴収(控除)」することが必要となります。 |
「被保険者の年齢」と『給与計算における「介護保険料控除」の取扱い』
上記でご紹介させて頂きましたように、
介護保険につきましては、
・『(従業員・役員の)年齢による「介護保険への加入要件」』が存在するとともに、
・『(従業員・役員の)年齢により「会社での介護保険の徴収が必要となる場合と不要となる場合」がある』ことから、
給与計算において「介護保険料の控除」を行う場合には、以下のように、
区分して取扱うことが必要となります。 |
◆ 従業員・役員の年齢が39歳以下である場合 ◆
「従業員・役員」が、「一般的な社会保険の加入要件」を充たしている場合であっても、その年齢が「39歳以下である場合」には、
・「当該従業員・役員」は「介護保険の被保険者でない」ことから、 ・給与計算において「介護保険料の控除」を行うことは不要となります。 |
◆ 従業員・役員の年齢が40歳以上64歳以下である場合 ◆
「従業員・役員」が「一般的な社会保険の加入要件」を充たしており、その年齢が「40歳以上64歳以下である場合」には、
・「当該従業員・役員」は「介護保険の2号被保険者となる」ことから、 ・給与計算において「介護保険料の控除」を行うことが必要となります。 |
◆ 従業員・役員の年齢が65歳以上である場合 ◆
「従業員・役員」が「一般的な社会保険の加入要件」を充たしており、その年齢が「65歳以上である場合」には、
・「当該従業員・役員」は「介護保険の被保険者となりますが、介護保険の1号被保険者となる」ことから、 ・給与計算において「介護保険料の控除」を行うことは不要となります。 |
Ⅲ:「厚生年金保険」における「年齢による加入要件」&「年齢による保険料控除取扱」
「厚生年金保険」における「年齢による加入要件」
厚生年金保険では、
「会社で労働する従業員・会社を経営する役員」は、たとえ「一般的な(社会保険の)加入要件」を満たしている場合であっても、
70歳以上となった場合には、「厚生年金保険の被保険者資格」を喪失することになります。 |
このため、従業員・役員が70歳以上となった場合には、
給与計算において「当該従業員・役員に係る厚生年金保険料の徴収(控除)」は不要となります。 |
「被保険者の年齢」と『給与計算における「厚生年金保険料控除」の取扱い』
上記でご紹介させて頂きましたように、従業員・役員の年齢が70歳以上となった場合には、当該従業員・役員は「(会社が加入する)厚生年金保険の被保険者でなくなる」ことから、
給与計算において「厚生年金保険料の控除」を行う場合には、以下のように、
区分して取扱うことが必要となります。 |
◆ 従業員・役員の年齢が69歳以下である場合 ◆
「従業員・役員」が「一般的な社会保険の加入要件」を充たしており、その年齢が「69歳以下の場合」には、
・「当該従業員・役員」は「(会社が加入する)厚生年金保険の被保険者である」ことから、 ・給与計算において「厚生年金保険料の控除」を行うことが必要となります。 |
◆ 従業員・役員の年齢が70歳以上である場合 ◆
他方、「従業員・役員」が「一般的な社会保険の加入要件」を充たしている場合であっても、その年齢が「70歳以上である場合」には、
・「当該従業員・役員」は「(会社が加入する)厚生年金保険の被保険者ではなくなる」ことから、 ・給与計算において「厚生年金保険料の控除」を行うことは不要となります。 |
Ⅳ:年齢による「社会保険の加入状況」及び「社会保険料の控除要否」のまとめ
上記のⅠ~Ⅲでご紹介させて頂きました内容をまとめると、
- 年齢による「社会保険への加入状況」
- 年齢による「給与計算における社会保険料の控除要否」
は、以下のようなものとなります。
◆ 年齢による「社会保険の加入状況」 ◆
「給与所得者の年齢」と「各社会保険における加入状況」を表にすると、以下のようなものとなります。
年齢 | 会社が加入する社会保険への加入状況 | ||
健康保険 | 介護保険 | 厚生年金保険 | |
39歳以下 | ○ | 非加入 | ○ |
40歳以上64歳以下 | ○ | ○ | ○ |
65歳以上69歳以下 | ○ | 1号被保険者 | ○ |
70歳以上74歳以下 | ○ | 1号被保険者 | 非加入 |
75歳以上 | 後期高齢者 | 1号被保険者 | 非加入 |
◯ :会社が加入する社会保険の被保険者となります。
◆ 年齢による「給与計算における社会保険料控除の要否」 ◆
「給与所得者の年齢」と「給与計算における社会保険料控除の要否」を表にすると、以下のようなものとなります。
年齢 | 給与計算時における「社会保険料控除」の要否 | ||
健康保険 | 介護保険 | 厚生年金保険 | |
39歳以下 | ○ | – | ○ |
40歳以上64歳以下 | ○ | ○ | ○ |
65歳以上69歳以下 | ○ | – | ○ |
70歳以上74歳以下 | ○ | – | – |
75歳以上 | – | – | – |
◯:給与計算時に社会保険料を控除することが必要となります。
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『各社会保険ごとの「年齢による加入要件」』及び『(給与計算時における)各社会保険料控除に係る「 年齢ごとの取扱 」』につきご紹介させて頂いておりますが、
本文でご紹介させて頂きましたように、
「給与計算において控除する社会保険料」におきましては、従業員・役員の年齢により、「控除が必要となる社会保険料の種類」が異なりますので、
給与計算において「社会保険料の控除」を行う場合には、
- まず、「それぞれの従業員・役員の年齢」をご確認頂くとともに、
- 『「その従業員・役員」から「どの種類の社会保険料」を控除する必要があるのか?』をご確認頂ますようお願い致します。
なお、介護保険につきましては、
「給与計算で介護保険料の控除が必要となる従業員・役員」は、その年齢が「40歳以上64歳以下の場合のみ」となりますので、
この点につきましては特にご確認頂きますようお願い致します。