ここでは、『「源泉控除対象配偶者」の定義・条件・申告上の注意点』を、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「源泉控除対象配偶者」の定義 (令和2年度以降)
◆ 「源泉控除対象配偶者」の定義 ◆
令和2年度以降における「源泉控除対象配偶者」とは、
・「扶養控除等申告書を提出する本人(その暦年度中の合計所得見積額が 900 万円以下に限ります)」と「生計を一にする民法上の配偶者」で、 ・かつ「(その配偶者の)暦年度中の合計所得見積額」が 95 万円以下であり、 ・かつ(配偶者が)「本人」又は「本人と生計を一にする者」の青色専従者として給与の支払を受けていない 配偶者をいいます。 |
◆ 「源泉控除対象配偶者」の条件 ◆
すなわち、「扶養控除等申告書を提出する本人」が「その配偶者」を「源泉控除対象配偶者」として申告するためには、
「本人及び配偶者が以下の条件」をすべて満たしていることが必要となります。
1、「本人」の要件 |
本人の合計所得(見積)金額が900万円以下である |
2、「 配偶者 」の要件 |
① 本人と生計を一にしている民法上の配偶者である |
② 配偶者の合計所得(見積)金額が95万円以下である |
③ ・「本人」又は「本人と生計を一にする者」の青色専従者として給与の支払を受けていない ・「本人」又は「本人と生計を一にする者」の白色専従者でない |
▶ 参考) 平成31年度(令和元年度)の「源泉控除対象配偶者」の定義
Ⅱ:「源泉控除対象配偶者」の条件
『「源泉控除対象配偶者」の定義』は、上記Ⅰでご紹介させて頂きましたものとなりますが、
ここでは、この定義に基づき、『「源泉控除対象配偶者」のそれぞれの条件』を詳しくご紹介させて頂きます。
条件1:「本人の合計所得見積額」が900万円以下である条件
「配偶者」を「源泉控除対象配偶者」として申告するためには、
「扶養控除等申告書を提出する本人」の「その年度における合計所得見積額」が900万円以下であることが必要となります。 |
◆ 「 合 計 所 得 」とは ◆
大雑把にいいますと、
「給与所得」「退職所得」「事業所得」「不動産所得」「利子所得」「配当所得」「雑所得(公的年金所得を含む)」「一時所得」「譲渡所得」「山林所得」の10種類の所得を「合計した所得」をいいます。
⇒このため、「給与所得」以外にも「上記に該当する所得」がある場合には、その所得金額を合計することが必要となります。
また上記の「合計所得」は、
- 「収入金額」ではなく、
- 「収入金額」から『「必要経費額」や「各種の控除金額(給与所得控除額、公的年金控除額等)」等 』を差引いた後の「所得金額」をいいます。
◆ 見 積 額 ◆
「扶養控除等申告書」は、「通常暦年度の初め(前年度の年末調整時)」や「新入社員の入社時・新任役員の就任時」に従業員・役員から会社に提出されるものとなります。
このため、『「合計所得」がいくらになるか?』は、「扶養控除等申告書」の提出時点における「合計所得の見積額」となります。
条件2:「本人」と「生計を一にする民法上の配偶者」であるという条件
「配偶者」を「源泉控除対象配偶者」として申告するためには、
「配偶者」が「扶養控除等申告書を提出する本人」と「生計を一にする民法上の配偶者」であることが条件となります。 |
◆ 「 生 計 を 一 に す る 」とは ◆
日常の生活の資を共にすることをいいます。 |
この点、「勤務の都合により家族と別居している」又は「配偶者が療養などのために別居している」場合であっても、
- 「本人」が「配偶者の生活費又は療養費」などを常に送金しているときや、
- 日常の起居を共にしていないが、勤務の余暇には起居を共にしているときは、
「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
◆ 「 民 法 上 の 配 偶 者 」の条件 ◆
所得税法における「源泉控除対象配偶者」であるためには、
「民法の規定による配偶者」であることが必要となります。 |
このため、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様にあるような場合(内縁状態にある方)」は、
「民法の規定による配偶者」でないため、その方を「源泉控除対象配偶者」として申告することはできません。
条件3:「配偶者」の「合計所得の見積額」の条件
「配偶者」を「源泉控除対象配偶者」として申告するためには、
「配偶者」のその年度における「合計所得見積金額」が「95万円」以下であることが必要となります。 |
※「合計所得の内容」につきましては、上記条件1でご紹介させて頂きました内容と同様のものとなります。
※また「合計所得金額」が「見積額」となる点につきましても、上記条件1でご紹介させて頂きました内容と同様のものとなります。
条件4:「事業専従者」等の制限
「配偶者」が
「配偶者」を「源泉控除対象配偶者」として申告することはできません。 |
◆ 『「事業専従者」に対する制限』の範囲 ◆
上記に該当する「青色事業専従者」「白色事業専従者」とは、
「配偶者」が「扶養控除等申告書を提出する本人」や「その本人と生計を一にする者」の「青色事業専従者・白色事業専従者」になっている場合が該当します。 |
この点、
①「扶養控除等申告書を提出する本人」が会社に勤務する以外に、自ら事業を行っており、
- その事業で「配偶者」を「青色事業専従者」としており、給与を支払っている場合
- 又はその事業で「配偶者」を「白色事業専従者」としている場合、
②「配偶者」が「扶養控除等申告書を提出する本人と生計を一にする者」が営む事業において
- 「青色事業専従者」として給与の支払いを受けている場合
- 又は「白色事業専従者」となっている場合には、
当該「配偶者」を「扶養控除等申告書を提出する本人」の「源泉控除対象配偶者」として申告することはできません。
他方、「配偶者」が「扶養控除等申告書を提出する本人と生計を一にしない者」が営む事業において、
- 「青色事業専従者」として給与の支払いを受けているような場合
- 又は「白色事業専従者」となっているような場合には、
当該「配偶者」を「扶養控除等申告書を提出する本人」の「源泉控除対象配偶者」として申告することは可能となります。
Ⅲ:「扶養控除等申告書」提出時の添付書類
「扶養控除等申告書」に「源泉控除対象配偶者」を記載する場合におきましては、
原則、
当該『「源泉控除対象配偶者」に係る記載事項 』を証明するための添付書類等は必要ありません。 |
ただし、「源泉控除対象配偶者」が「非居住者」である場合※には、
『「源泉控除対象配偶者」が「扶養控除等申告書を提出する本人の配偶者」であること』を証明するために、 「親族関係書類」として、以下1又は2の書類を「扶養控除等申告書」の提出時に添付し会社に提出することが必要となります。
※なお「親族関係書類」が外国語により作成されている場合には「訳文」の提出も必要となります。 |
◆ ※「 非 居 住 者 」とは ◆
「非居住者」とは、
「国内に住所を有せず」かつ「現在まで引き続いて1年以上国内に居所を有しない者」をいいます。 |
Ⅳ:「源泉控除対象配偶者」の注意点
「源泉控除対象配偶者」の条件は、上記Ⅱでご紹介させて頂きましたものとなりますが、
「扶養控除等申告書」で「源泉控除対象配偶者」の申告を行う場合には、以下の注意点もご確認下さい。
1、「源泉控除対象配偶者」を「扶養控除等申告書」に記載する意味
「ご本人の扶養控除等申告書」に「源泉控除対象配偶者」を記載する目的は、
『その暦年度中における「源泉徴収」』において、 『「扶養親族等の数」に応じた源泉徴収金額の減額 』を受けるためのものとなります。 |
このため、年末調整において『配偶者に係る「配偶者控除」や「配偶者特別控除」』を受けるためには、
『その暦年度の年末調整』において、 別途「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に必要事項を記載して、会社に申告することが必要となりますので、 |
この点につきましては、ご留意頂ますようお願いいたします。
2、夫婦共働きの場合の注意点
「源泉控除対象配偶者」につきましては、
「夫がその妻を扶養している」又は「妻がその夫を扶養」している場合に、
「扶養者」が「その配偶者」を「源泉控除対象配偶者」とするものであるため、
夫婦がともに上記Ⅱでご紹介させて頂きました「源泉控除対象配偶者の条件」を満たしている場合であっても、
「源泉控除対象配偶者」となれるのは、「夫」又は「妻」のいずれか一方のみとなり、 ・「夫の扶養控除等申告書」で「妻」を「源泉控除対象配偶者」として申告し、 「夫」「妻」ともにお互いの「源泉控除対象配偶者」として申告することはできませんので、この点につきましてはご留意頂ますようお願いいたします。 |
3、「源泉控除対象配偶者」に異動があった場合の注意点
「扶養控除等申告書」は、
『毎月の給与計算で「源泉所得税を控除する」際に必要となる書類』となるため、
- 既存の従業員・役員からは、「前年度の年末調整時」に会社に提出する
- 途中入社・途中就任した従業員・役員からは、「入社・就任時」に会社に提出することとなりますが、
暦年度の途中におきまして、「源泉控除対象配偶者」の異動がある場合には、
新たな内容を記載した「扶養控除等申告書」を「会社」に再提出するか |
既に提出した「扶養控除等申告書」に、異動後の内容を記載して「会社」に提出し直すことが必要となります。 |
4、所得税法における『その他の「配偶者」の概念』
所得税法で使われる『「配偶者」の概念』は、
- 「源泉控除対象配偶者」の他、
- 源泉所得税計算や年末調整において『障害者控除の対象となる「同一生計配偶者」という概念』や、
- 年末調整において『配偶者控除や配偶者特別控除の対象となる「控除対象配偶者」「配偶者特別控除対象者」という概念』があります。
上記の『「同一生計配偶者」「控除対象配偶者・配偶者特別控除対象者」の定義・条件』は、『「源泉控除対象配偶者」の定義・条件』とは、異なったものとなりますので、くれぐれもこれらの概念を混同されないようご注意下さい。
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『「源泉控除対象配偶者」の定義・条件・申告上の注意点』をご紹介させて頂いております。
配偶者に対して「当該定義」を使うのは、
『「扶養控除等申告書」に「配偶者」を「源泉控除対象配偶者」として記載するか否か』の判断を行う場合となります。
このため、「扶養控除等申告書」を記載する場合には、
当該「源泉控除対象配偶者」の定義・条件を十分にご理解頂きますようお願い致します。
なお、「年末調整時」に『「配偶者」に係る「配偶者控除」「配偶者特別控除」』を受けるためには、
上記の「扶養控除等申告書」とは別の書類である「配偶者控除等申告書(給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書)」を別途会社に提出することが必要となり、
当該書類におきましては、別途、「配偶者」に対して
「控除対象配偶者」「配偶者特別控除の対象となる配偶者」という定義・条件が使われることとなります。
上記のように、所得税法では『「配偶者」に対する定義』が複数存在するため、それぞれ混同されないよう、十分ご注意頂ますようお願い致します。