ここでは、労働保険制度上における『「現物給与」の取り扱い 』を、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。
▶ 労働保険制度上における「現物給与」の基本的な取扱い
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』には、
従業員が会社から『「居住(社宅等)の貸与、食事の提供、被服の提供・貸与」などの現物給与 』を「労働の対償」として受けている場合には、
これらの現物給与も、『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。 |
他方、『 現物給与である「居住(社宅等)の貸与、食事の提供、被服の提供・貸与」』につきましては、
・「労働の対償」として支給されているのではなく、
・「福利厚生目的」のために会社から従業員に支給されている場合もあることから、
労働保険制度上では、これらのことを考慮し、
『「居住(社宅等)の貸与、食事の提供、被服の提供・貸与」等の現物給与 』が、
・「労働の対償」として支給されているのではなく、「福利厚生目的」のために支給されていると認められる場合には、
・それらを『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めなくてもよいとする規定も設けています。
|
以上のように、労働保険制度上におきましては、
『「現物給与」である「居住(社宅)の貸与、食事の提供、被服の提供・貸与」』は、それが支給される状況等によって、
- 『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となったり、
- 『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが不要となったり、
「その取扱い」が異なることとなります。
このため、ここでは、この現物給与である「居住の貸与」「食事の提供」「被服の提供・貸与」のそれぞれにつき、
「それらの労働保険制度上における取り扱い(「賃金」に含めることが必要となるか否かなど)」をご紹介させて頂きます。
なお、ここでご紹介させて頂きます規定は、あくまで「労働保険制度」に限定した取扱規定となるものであり、
- 従業員等の個人所得税の課税対象となる『「給与(課税支給額)」の範囲 』や
- 社会保険料の「標準報酬月額」算定における『「報酬(報酬月額)」の範囲 』につきましては、
それぞれの制度におきまして、それぞれ別の取扱いがなされていますので、この点につきましては十分ご留意頂ますようお願い致します。
Ⅰ:「社宅等の貸与による利益(居住の利益)」の取扱い
本文冒頭でもご紹介させて頂きましたが、
労働保険制度におきましては、
「現物給与」が「労働の対償として支給されている」と見做される場合には、
その「現物給与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることが必要となりますが、
「現物給与」が「福利厚生目的で支給されている」と見做される場合には、
その「現物給与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることは不要となります。
|
この点、『「社宅・寮等の貸与」である「現物給与」』につきましては、
① まず「 最初の判断 」として、
「社宅・寮等を貸与していない従業員」に対して「社宅・寮等を貸与している従業員」との均衡を図るための「均衡手当」が支給されているか否かにより、 |
「社宅・寮等の貸与」が
- 「労働の対償として支給されているものか」
- 「福利厚生目的で支給されているものであるか」
の判断がなされ、
「この判断」に基づいて、
『「社宅・寮等の貸与」である「現物給与」』を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めるか否かの取扱方法が規定されています。
|
② また更に、「 第2段階の判断 」として、
「均衡手当」が「社宅等を貸与していない従業員」に対して支払われている場合であっても、
・「社宅等を貸与している従業員」から「(社宅等の使用料である)賃料」等を会社が徴収しているか否か、
・ また「賃料」等をどの程度徴収しているかにより、
|
「社宅・寮等の貸与」が
- 「労働の対償として支給されているものか」
- 「福利厚生目的で支給されているものであるか」
の判断がなされ、
「この判断」に基づいて、
『「社宅・寮等の貸与」である「現物給与」』を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めるか否かの取扱方法が規定されています。
|
従いまして、以下におきましては、
・下記1におきまして、「 第1段階の判断 」である『「均衡手当」の支払の有無による「社宅等の貸与」の取扱い 』をご紹介させて頂き、
・下記2におきましては、「 第2段階の判断 」である『「賃料徴収の有無」及び「賃料徴収金額の程度」による「社宅等の貸与」の取扱い 』をご紹介させて頂きます。
1、「第1段階の判断」(「均衡手当支給の有無」による判断)
『「現物給与」である「社宅・寮等の貸与」』につきましては、
まず「第1段階」の判断として、
・「社宅・寮等を貸与していない従業員」に対して「社宅・寮等を貸与している従業員」との均衡を図るための「均衡手当」が支給されているか否かにより、以下①~②のような取扱いがなされます。 |
◆ 『「均衡手当」の支給の有無 』による取扱い ◆
① 「社宅等を貸与していない従業員」に対して「均衡手当」が支払われていない場合には、
『「社宅等の貸与」である「現物給与」』は、
・ 労働保険制度上では「福利厚生目的」のために支給されているものと見做されるため、
・『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません。
|
② 他方、「社宅等を貸与していない従業員」に対して「均衡手当」が支払われている場合には、
『「社宅等の貸与」である「現物給与」』は、
・この段階では「福利厚生目的」のために支給されているものとは認められず、
・以下2でご紹介させて頂きます「第2段階の判断」を行うことが必要となります。
|
《 上記の規定趣旨 》
「労働保険制度」におきましては、
「均衡手当」が「社宅等を貸与していない従業員」に対して支給されている場合には、
『「社宅等の貸与」である「現物給与」』は、原則「労働の対償」として支給しているものと考えますが、 |
他方、「均衡手当」が「社宅等を貸与していない従業員」に対して支給されていない場合には、
『「社宅等の貸与」である「現物給与」』は、
・「労働の対償」として支給されているものではなく、
・「福利厚生目的」のために支給されているものと見做されます。
|
このため、このような場合におきましては、
『「社宅等の貸与」である「現物給与」』は、
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めないという取扱いがなされています。
|
《 上記の取扱いが記載されている規定 》
2、「第2段階の判断」(「賃料徴収の有無」「賃料徴収の程度」による判断)
「均衡手当」が「社宅等を貸与していない従業員」に対して支払われている場合には、
更に「第2段階の判断」として、
・「賃料徴収の有無」「賃料徴収の程度」に応じて、以下①~③のような取扱を行うことが必要となります。 |
◆ 『「賃料徴収の有無」「賃料徴収額の程度」』による取扱い ◆
① 会社が「社宅等を貸与している従業員」から『「実際費用」※1の1/3 以上の「賃料(使用料)」』を徴収している場合には、
『「社宅等の貸与」である「現物給与」』は、
・ 労働保険制度上では「福利厚生目的」のために支給されているものと見做されるため、
・『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません。
|
② 会社が「社宅等を貸与している従業員」から『「実際費用」※1の1/3 未満の「賃料(使用料)」』を徴収している場合には、
『「実際費用」※1の1/3 に相当する金額 』から「社宅等の賃料徴収額」を「差引いた金額」を |
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
|
③ 会社が「社宅等を貸与している従業員」から「賃料(使用料)」を徴収していない場合には、
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
|
◆ 『「実際費用」の評価金額 』につきまして (上記※1につきまして) ◆
上記のように『「社宅等の貸与」である「現物給与」』を「賃金に含めるか否か」「どの程度含めるか」の判断にあたっては、
「社宅等を貸与している従業員」から『「実際費用」の1/3 以上の「賃料(使用料)」』を徴収している否か |
に基づいて判断されることとなりますが、
『 当該「実際費用」の金額 』につきましては、
『 厚生労働大臣が定めた「社宅貸与の価額」』に基づいて評価することとなります。 |
ただし、『 厚生労働大臣が定める「社宅貸与の価額」』が『「均衡手当」の金額 』を超えるような場合には、
『 当該「実際費用」の金額 』は、『「均衡手当」の支給金額 』に基づいて評価することとなります。 |
▶ 『 厚生労働大臣が定める「社宅貸与の価額」』につきましては、「 日本年金機構のHP 」にて公表されておりますので、「社宅貸与の価額」を把握する必要がある場合には、上記リンクページをご覧頂きますようお願い致します。
▶ また、『 厚生労働大臣が定める「社宅貸与の価額」』につきましては、別途『厚生労働大臣が定める「現物給与の価額」』において、その算定方法等を記載しておりますので、必要がある場合には、当該リンクページを御覧下さい。
《 上記の規定趣旨 》
「労働保険制度」におきましては、
「均衡手当」が「社宅等を貸与していない従業員」に対して支給されているか否かにより、
『「社宅等の貸与」である「現物給与」』が、
・「労働の対償」として支給されているものであるか?
・「福利厚生目的」のために支給されているものであるか?
|
の判断がなされますが、
この判断とともに、
「(社宅等の貸与に掛かる)実際費用」を「社宅等を貸与している従業員」から「賃料」として徴収しているか否かという観点からも、
『「社宅等の貸与」である「現物給与」』が、
・「労働の対償」として支給されているものであるか?
・「福利厚生目的」のために支給されているものであるか?
|
の判断がなされます。
すなわち、『「会社」が「(社宅等を貸与している)従業員」から「社宅等の貸与に係る賃料」を徴収している 』という行為がある場合には、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(社宅等の貸与に係る)経済的利益の提供」 』は、
福利厚生目的により行われた「 居住費用の部分的な支援行為 」であると評価できるため、
|
たとえ「均衡手当」が「社宅等を貸与していない従業員」に対して支給されている場合であっても、
『「社宅等の貸与」である「現物給与」』は、
原則、『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めないという取扱いがなされます。 |
|
ただし、
・上記のように「(社宅等の貸与に掛かる)実際費用」を「従業員」から「賃料」として徴収している場合であっても、
・『 従業員から徴収している「賃料」 』があまりにも僅少であるような場合には、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(社宅等の貸与に係る)経済的利益の提供」 』は、
『 福利厚生目的を超えた「居住の経済的利益」』が「会社」から「従業員」に提供されてると考えられるため、
|
『「従業員」から徴収している「賃料」』が『「実際費用」の1/3 未満 』であるような場合には、
『「実際費用」の1/3 に相当する金額 』から「社宅等の賃料徴収額」を「差引いた金額」を |
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることとしています。
|
他方、
・「均衡手当」が「社宅等を貸与していない従業員」に対して支給されている場合であり、
・かつ『 「社宅等を貸与している従業員」から「社宅貸与係る賃料」を徴収している 』という行為もない場合には、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(社宅等の貸与に係る)経済的利益の提供」 』は、
・「居住費用の部分的な支援」ではなく、「居住費用の全額提供」であり、
・「福利厚生目的」で支給されているという性格が認められないことから、
|
このような場合におきましては、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(社宅等の貸与に係る)経済的利益の全額 」 』を、
(すなわち、「(社宅等の貸与に掛かる)実際費用の全額 」を、) |
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めるという取扱いがなされます。
|
《 上記の取扱いが記載されている規定 》
「取扱方法」が記載されている規定
「実際費用の評価方法」が記載されている規定
50403 により賃金の範囲とされた現物給与の評価額は、次による。
イ 法令又は労働協約に評価額が定められているときは当該評価額
ロ 食事、被服及び住居の利益以外のもので法令又は労働協約に支払の範囲のみが定められ、評価額の定めがない場合は、安定所長が当該事業所の所在地区の市場価格を基準として評価した額
ハ 食事、被服及び住居の利益については、法令又は労働協約に評価額が定められていないときは、健康保険法第 46 条の規定に基づき、厚生労働大臣が定めた評価額を参考として安定所長が評価した額
この場合において、安定所の管轄区域内であっても、例えば、都市地区とその他の地区との物価、家屋の賃貸価格等に著しい差があること等一律の額をもって評価することが不適当であるときは、地区別に評価額を定めることが望ましい。
また、住居を無償で供与される場合において、住居の利益を得ない者に対して、住居の利益を受ける者と均衡を失しない均衡手当が支給されるときは、住居の貸与の利益が明確に評価されているものであるから、当該額を限度として評価する。
( 雇用保険に関する業務取扱要領 50404(4)現物給与の評価 )
|
3、『「社宅等の貸与」に係る「現物給与」の取扱い 』のまとめ
上記1、2でご紹介させて頂きました内容をまとめると、
労働保険制度上の『「社宅・寮等の貸与」に係る「現物給与」の取扱い 』は、下図のようなものとなります。

Ⅱ:『「社宅等の水道光熱費」の負担 』に係る取扱い
『 社宅等において従業員が使用した「水道光熱費」』を会社が負担している場合には、
会社が負担した「水道光熱費」は、
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
|
《 上記の規定趣旨 》
労働保険制度上、「現物給与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めなくても良いとされるのは、
当該「現物給与」が「福利厚生目的」で支給されていることがその理由とされますが、 |
『 社宅等において従業員が使用した「水道光熱費」』を会社が負担しているような場合には、
『 当該「水道光熱費」の負担 』は、
「その負担金額」や「社会通念上行われる福利厚生施策」を考えても、『「福利厚生的な現物給付」の範囲 』を超えるものであると考えられます。
|
このため会社が『 社宅等において従業員が使用した「水道光熱費」』を負担するような場合には、
その「水道光熱費の実際の費用額」を、『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となると考えられます。 |
Ⅲ:「食事の供与による利益(食事の利益)」の取扱い
本文冒頭でもご紹介させて頂きましたが、
労働保険制度におきましては、
「現物給与」が「労働の対償として支給されている」と見做される場合には、
その「現物給与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることが必要となりますが、
「現物給与」が「福利厚生目的で支給されている」と見做される場合には、
その「現物給与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることは不要となります。
|
この点、『「食事の提供」である「現物給与」』につきましては、
① まず「 最初の判断 」として、
・「食事の提供頻度・提供態様」や
・「提供する食事自体の金額の大小」により、
|
「食事の提供」が
- 「労働の対償として支給されているものか」
- 「福利厚生目的で支給されているものであるか」
の判断がなされ、
「この判断」に基づいて、
『「食事の提供」である「現物給与」』を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めるか否かの取扱方法が規定されています。
|
② また更に、「 第2段階の判断 」として、
「第1段階の判断」により「福利厚生目的」で支給されていると判断されなかった場合であっても、
・「食事を提供している従業員」から「食費」等を会社が徴収しているか否か、
・ また「食費」等をどの程度徴収しているかにより、
|
「食事の提供」が
- 「労働の対償として支給されているものか」
- 「福利厚生目的で支給されているものであるか」
の判断がなされ、
「この判断」に基づいて、
『「食事の提供」である「現物給与」』を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めるか否かの取扱方法が規定されています。
|
従いまして、以下におきましては、
・下記1におきまして、「 第1段階の判断 」である「食事の提供頻度・食事の提供態様」や「提供された食事自体の金額の大小」による『「食事提供」の取扱い 』をご紹介させて頂き、
・下記2におきましては、「 第2段階の判断 」である「食費徴収の有無」及び「食費徴収金額の程度」による『「食事提供」の取扱い 』をご紹介させて頂きます。
1、「第1段階の判断」(「食事の提供頻度・態様」「食事の金額」による判断)
『「現物給与」である「食事の提供」』につきましては、
まず「第1段階」の判断として、
・「食事の提供頻度・食事の提供態様」や「提供された食事自体の金額の大小」により、以下①~②のような取扱いがなされます。 |
◆ 『「食事の提供頻度・提供態様」「食事自体の金額の程度」』による取扱い ◆
① 会社において「弁当の支給、社員食堂での食事の提供、食券の提供など」の「食事の提供」が行われている場合で、
・「食事の提供」がたまたま行われているような場合や、
・「提供された食事の金額」が「一般的にみて僅少」であるような場合には、
|
『 従業員が受ける「食事の利益」』は、
・ 労働保険制度上では「福利厚生目的」のために支給されているものと見做されるため、
・『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることは不要となります。
|
② 他方、
・ 住込労働者に対して1日に2食以上食事の提供が行われていることが常態となっているような場合、
・ 食事の提供によって「賃金の減少」がなされているような場合(食事の提供が「労働の対償」となっている場合)、
・ 労働協約、就業規則に「食事の提供」が定められているなど、「食事の提供」が明確な労働条件の内容となっているような場合、
・「提供された食事の金額」が「一般的に僅少でない」ような場合には、
|
『 従業員が受ける「食事の利益」』は、
・この段階では「福利厚生目的」のために支給されているものとは認められず、
・以下2でご紹介させて頂きます「第2段階の判断」を行うことが必要となります。
|
《 上記の規定趣旨 》
「労働保険制度」におきましては、
「食事の提供」が「頻繁・多額であったり」又は「労働の対償として支給されている」ような場合には、
『「食事の提供」である「現物給与」』は、原則「労働の対償」として支給しているものと考えますが、 |
他方、「食事の提供」が「臨時的になされていたり、少額である」ような場合には、
『「食事の提供」である「現物給与」』は、
・「労働の対償」として支給されているものではなく、
・「福利厚生目的」のために支給されているものと見做されます。
|
このため、このような場合におきましては、
『「食事の提供」である「現物給与」』は、
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めないという取扱いがなされています。
|
《 上記の取扱いが記載されている規定 》
食事の利益は、賃金とされる。
ただし、食事の提供に対して、その実費相当額が賃金から減額されるもの及びたまたま支給される食事等、福利厚生的なものと認められるものは賃金日額の算定の基礎に算入しない。
なお、食事の利益(住込労働者で 1 日に 2 食以上給食されることが常態にある場合を除く。) については、原則として、次のすべてに該当する場合は、賃金として取り扱わず、福利厚生的なものとして取り扱う。
(イ) 給食によって賃金の減額を伴わないこと
(ロ) 労働協約、就業規則に定められるなど、明確な労働条件の内容となっている場合でないこと
(ハ) 給食による客観的評価額が社会通念上僅少なものと認められる場合であること
また、乗船中の船員に対する「食料の支給」は、海上労働者の特殊性から船舶所有者に課せられた義務であり(船員法第 80 条)、労務の対償として支払われるものでないことから、賃金として取り扱わない。
( 雇用保険に関する業務取扱要領 50501(1)賃金と解されるものの例 ヨ 食事の利益 )
|
2、「第2段階の判断」(「食費徴収の有無」「食費徴収の程度」による判断)
「第1段階」の判定により「福利厚生目的」により支給されたものでないと認められた場合には、
更に「第2段階の判断」として、
・「食費徴収の有無」「食費徴収の程度」に応じて、以下①~③のような取扱を行うことが必要となります。 |
◆ 『「食費徴収の有無」「食費徴収額の程度」』による取扱い ◆
① 会社が「食事を提供している従業員」から『「実際費用」※1の1/3 以上の「食費」』を徴収している場合には、
『「食事の提供」である「現物給与」』は、
・ 労働保険制度上では「福利厚生目的」のために支給されているものと見做されるため、
・『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません。
|
② 会社が「食事を提供している従業員」から『「実際費用」※1の1/3 未満の「食費」』を徴収している場合には、
『「実際費用」※1の1/3に相当する金額 』から「食費の徴収額」を「差引いた金額」を |
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
|
③ 会社が「食事を提供している従業員」から「食費」を徴収していない場合には、
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
|
◆ 『「実際費用」の評価金額 』につきまして (上記※1につきまして) ◆
上記のように『「食事の提供」である「現物給与」』を「賃金に含めるか否か」「どの程度含めるか」の判断にあたっては、
「食事を提供している従業員」から『「実際費用」の1/3 以上の「食費」』を徴収している否か |
に基づいて判断されることとなりますが、
『 当該「実際費用」の金額 』につきましては、
『 厚生労働大臣が定めた「食事の価額」』に基づいて評価することとなります。 |
▶ 『 厚生労働大臣が定める「食事の価額」』につきましては、「 日本年金機構のHP 」にて公表されておりますので、「食事の価額」を把握する必要がある場合には、上記リンクページをご覧頂きますようお願い致します。
▶ また、『 厚生労働大臣が定める「食事の価額」』につきましては、別途『厚生労働大臣が定める「現物給与の価額」』において、その算定方法等を記載しておりますので、必要がある場合には、当該リンクページを御覧下さい。
《 上記の規定趣旨 》
「労働保険制度」におきましては、
「食事の提供頻度・提供金額」や「食事が労働条件の内容として支給されているか否か」により、
『「食事の提供」である「現物給与」』が、
・「労働の対償」として支給されているものであるか?
・「福利厚生目的」のために支給されているものであるか?
|
の判断がなされますが、
この判断とともに、
「(食事の提供に掛かる)実際費用」を「食事を提供している従業員」から「食費」として徴収しているか否かという観点からも、
『「食事の提供」である「現物給与」』が、
・「労働の対償」として支給されているものであるか?
・「福利厚生目的」のために支給されているものであるか?
|
の判断がなされます。
すなわち、『「会社」が「(食事を提供している)従業員」から「食事の提供に係る食費」を徴収している 』という行為がある場合には、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(食事の提供に係る)経済的利益の提供」 』は、
福利厚生目的により行われた「 食費の部分的な支援行為 」であると評価できるため、
|
たとえ「第1段階の判断」において「福利厚生目的」のために支給されているものではないと判断された場合であっても、
『「食事の提供」である「現物給与」』は、
原則、『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めないという取扱いがなされます。 |
|
ただし、
・上記のように「(食事の提供に掛かる)実際費用」を「従業員」から「食費」として徴収している場合であっても、
・『 従業員から徴収している「食費の金額」 』があまりにも僅少であるような場合には、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(食費の提供に係る)経済的利益の提供」 』は、
『 福利厚生目的を超えた「食費の経済的利益」』が「会社」から「従業員」に提供されてると考えられるため、
|
『「従業員」から徴収している「食費の金額」』が『「実際費用」の1/3 未満 』であるような場合には、
『「実際費用」の1/3 に相当する金額 』から「食費の徴収額」を「差引いた金額」を |
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることとしています。
|
他方、
・「第1段階の判断」で「食事の提供が福利厚生目的で支給されている」と判断されなかった場合であり、
・かつ『 「食事を提供している従業員」から「食事提供に係る食費」を徴収している 』という行為もない場合には、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(食事の提供に係る)経済的利益の提供」 』は、
・「食事費用の部分的な支援」ではなく、「食事費用の全額提供」であり、
・「福利厚生目的」で支給されているという性格が認められないことから、
|
このような場合におきましては、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(食事の提供に係る)経済的利益の全額 」 』を、
(すなわち、「(食事の提供に掛かる)実際費用の全額 」を、) |
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めるという取扱いがなされます。
|
《 上記の取扱いが記載されている規定 》
「取扱方法」が記載されている規定
「実際費用の評価方法」が記載されている規定
50403 により賃金の範囲とされた現物給与の評価額は、次による。
イ 法令又は労働協約に評価額が定められているときは当該評価額
ロ 食事、被服及び住居の利益以外のもので法令又は労働協約に支払の範囲のみが定められ、評価額の定めがない場合は、安定所長が当該事業所の所在地区の市場価格を基準として評価した額
ハ 食事、被服及び住居の利益については、法令又は労働協約に評価額が定められていないときは、健康保険法第 46 条の規定に基づき、厚生労働大臣が定めた評価額を参考として安定所長が評価した額
この場合において、安定所の管轄区域内であっても、例えば、都市地区とその他の地区との物価、家屋の賃貸価格等に著しい差があること等一律の額をもって評価することが不適当であるときは、地区別に評価額を定めることが望ましい。
また、住居を無償で供与される場合において、住居の利益を得ない者に対して、住居の利益を受ける者と均衡を失しない均衡手当が支給されるときは、住居の貸与の利益が明確に評価されているものであるから、当該額を限度として評価する。
( 雇用保険に関する業務取扱要領 50404(4)現物給与の評価 )
|
3、『「食事の提供」に係る「現物給与」の取扱い 』のまとめ
上記1、2でご紹介させて頂きました内容をまとめると、
労働保険制度上の『「食事の提供」に係る「現物給与」の取扱い 』は、下図のようなものとなります。

Ⅳ:「被服の提供・貸与による利益(被服の利益)」の取扱い
本文冒頭でもご紹介させて頂きましたが、
労働保険制度におきましては、
「現物給与」が「労働の対償として支給されている」と見做される場合には、
その「現物給与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることが必要となりますが、
「現物給与」が「福利厚生目的で支給されている」と見做される場合には、
その「現物給与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることは不要となります。
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この点、『「被服の提供・貸与」である「現物給与」』につきましては、
① まず「 最初の判断 」として、
「被服の提供・貸与の態様(被服の提供・貸与目的)」により |
「被服の提供・貸与」が
- 「労働の対償として支給されているものか」
- 「福利厚生目的で支給されているものであるか」
の判断がなされ、
「この判断」に基づいて、
『「被服の提供・貸与」である「現物給与」』を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めるか否かの取扱方法が規定されています。
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② また更に、「 第2段階の判断 」として、
「第1段階の判断」により「福利厚生目的」で支給されていると判断されなかった場合であっても、
・「被服を提供・貸与している従業員」から「被服費」等を会社が徴収しているか否か、
・ また「被服費」等をどの程度徴収しているかにより、
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「被服の提供・貸与」が
- 「労働の対償として支給されているものか」
- 「福利厚生目的で支給されているものであるか」
の判断がなされ、
「この判断」に基づいて、
『「被服の提供・貸与」である「現物給与」』を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めるか否かの取扱方法が規定されています。
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従いまして、以下におきましては、
・下記1におきまして、「 第1段階の判断 」である「被服の提供・貸与の態様(目的)」による『「被服提供・貸与」の取扱い 』をご紹介させて頂き、
・下記2におきましては、「 第2段階の判断 」である「被服費の徴収の有無」及び「被服費の徴収金額の程度」による『「被服提供・貸与」の取扱い 』をご紹介させて頂きます。
1、「第1段階の判断」(「被服の提供・貸与の態様」による判断)
『「現物給与」である「被服の提供・貸与」』につきましては、
まず「第1段階」の判断として、
・「被服の提供・貸与の態様(被服の提供・貸与目的)」により、以下①~②のような取扱いがなされます。 |
◆ 「被服の提供・貸与の態様」による取扱い ◆
① 会社が従業員に対して「被服の提供・貸与」を行っている場合で、
・従業員が業務に従事するために「作業衣」を支給・貸与している場合や
・業務上着用することを条件として「被服」を支給・貸与している場合には、
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『 従業員が受ける「被服の利益」』は、
・ 労働保険制度上では「福利厚生目的」のために支給されているものと見做されるため、
・『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることは不要となります。
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② 他方、
上記以外の目的により支給されているような場合には、 |
『 従業員が受ける「被服の利益」』は、
・この段階では「福利厚生目的」のために支給されているものとは認められず、
・以下2でご紹介させて頂きます「第2段階の判断」を行うことが必要となります。
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《 上記の規定趣旨 》
「労働保険制度」におきましては、
「被服の提供・貸与」が「業務上着用すること以外の目的で提供・貸与されている」ような場合には、
『「被服の提供・貸与」である「現物給与」』は、原則「労働の対償」として支給しているものと考えますが、 |
他方、「被服の提供・貸与」が「業務上着用することを目的として提供・貸与されている」ような場合には、
『「被服の提供・貸与」である「現物給与」』は、
・「労働の対償」として支給されているものではなく、
・「福利厚生目的」のために支給されているものと見做されます。
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このため、このような場合におきましては、
『「被服の提供・貸与」である「現物給与」』は、
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めないという取扱いがなされています。
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《 上記の取扱いが記載されている規定 》
2、「第2段階の判断」(「被服費徴収の有無」「被服費徴収の程度」による判断)
「第1段階」の判定により「福利厚生目的」により支給されたものでないと認められた場合には、
更に「第2段階の判断」として、
・「被服費徴収の有無」「被服費徴収の程度」に応じて、以下①~③のような取扱を行うことが必要となります。 |
◆ 『「被服費徴収の有無」「被服費徴収額の程度」』による取扱い ◆
① 会社が「被服を提供・貸与している従業員」から『「実際費用」の1/3 以上の「被服費」』を徴収している場合には、
『「被服の提供・貸与」である「現物給与」』は、
・ 労働保険制度上では「福利厚生目的」のために支給されているものと見做されるため、
・『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません。
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② 会社が「被服を提供・貸与している従業員」から『「実際費用」の1/3 未満の「被服費」』を徴収している場合には、
『「実際費用」の1/3 に相当する金額 』から「被服費の徴収額」を「差引いた金額」を |
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
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③ 会社が「被服を提供・貸与している従業員」から「被服費」を徴収していない場合には、
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
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《 上記の規定趣旨 》
「労働保険制度」におきましては、
「被服の提供目的」により、
『「被服の提供・貸与」である「現物給与」』が、
・「労働の対償」として支給されているものであるか?
・「福利厚生目的」のために支給されているものであるか?
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の判断がなされますが、
この判断とともに、
「(被服の提供・貸与に掛かる)実際費用」を「被服を提供等している従業員」から「被服費」として徴収しているか否かという観点からも、
『「被服の提供・貸与」である「現物給与」』が、
・「労働の対償」として支給されているものであるか?
・「福利厚生目的」のために支給されているものであるか?
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の判断がなされます。
すなわち、『「会社」が「(被服を提供等している)従業員」から「被服の提供等に係る被服費」を徴収している 』という行為がある場合には、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(被服の提供・貸与に係る)経済的利益の提供」 』は、
福利厚生目的により行われた「 被服費用の部分的な支援行為 」であると評価できるため、
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たとえ「第1段階の判断」において「福利厚生目的」のために支給されているものではないと判断された場合であっても、
『「被服の提供・貸与」である「現物給与」』は、
原則、『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めないという取扱いがなされます。 |
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ただし、
・上記のように「(被服の提供等に掛かる)実際費用」を「従業員」から「被服費」として徴収している場合であっても、
・『 従業員から徴収している「被服費」 』があまりにも僅少であるような場合には、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(被服の提供等に係る)経済的利益の提供」 』は、
『 福利厚生目的を超えた「被服の経済的利益」』が「会社」から「従業員」に提供されてると考えられるため、
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『「従業員」から徴収している「被服費」』が『「実際費用」の1/3 未満 』であるような場合には、
『「実際費用」の1/3 に相当する金額 』から「被服費徴収額」を「差引いた金額」を |
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることとしています。
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他方、
・「第1段階の判断」で「被服の提供が福利厚生目的で支給されている」と判断されなかった場合であり、
・かつ『 「被服を提供等している従業員」から「被服提供等係る賃料」を徴収している 』という行為もない場合には、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(被服の提供・貸与に係る)経済的利益の提供」 』は、
・「被服費用の部分的な支援」ではなく、「被服費用の全額提供」であり、
・「福利厚生目的」で支給されているという性格が認められないことから、
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このような場合におきましては、
『「会社」から「従業員」に対してなされた「(被服の提供等に係る)経済的利益の全額 」 』を、
(すなわち、「(被服の提供等に掛かる)実際費用の全額 」を、) |
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めるという取扱いがなされます。
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《 上記の取扱いが記載されている規定 》
3、『「被服の提供・貸与」に係る「現物給与」の取扱い 』のまとめ
上記1、2でご紹介させて頂きました内容をまとめると、
労働保険制度上の『「被服の提供・貸与」に係る「現物給与」の取扱い 』は、下図のようなものとなります。

税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『労働保険における「現物給与」の取扱い』についてご紹介させて頂きております。
会社から従業員等へ「現物給与」が支給されている場合には、
- 所得税法上での「現物給与の取扱い(課税所得に含まれる否か等の取扱い)」
- 社会保険での「現物給与の取扱い(社会保険制度上「報酬」に含まれるか否か等の取扱い)」
- 労働保険での「現物給与の取扱い(労働保険制度上「賃金」に含まれるか否か等の取扱い)」
が、それぞれ問題となり、かつそれぞれの制度上での取扱いが異なるものとなっています。
このため、「現物給与」が支給されている場合には、
- 所得税法上での取扱い
- 社会保険での取扱い
- 労働保険での取扱い
をそれぞれ理解し、確認することが必要となります。(厄介なものとなります。)
このため、ここでは、本文でご紹介させて頂きました内容をご理解頂き、まずは『労働保険での「現物給与」の取扱い』をマスターして頂きますようお願い致します。