ここでは、『労働保険料の算定基礎となる「賃金」の範囲』を考える上での、『「現物給与」の取り扱い』を、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。

 

 

 

労働保険における基本的な「現物給与」の取り扱い

『労働保険料の算定基礎となる「賃金」』には、

事業主(会社)が労働者に対して、労働の対償として支払うすべてのもの

が含まれるため、

通貨以外の現物で支給される「食事被服居住社宅等)の利益」を従業員が会社から受けていれば、
これらの現物支給も、「労働の対償」として、原則『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります

 

他方、現物支給される「食事、被服、居住の利益」につきましては、
・「金銭給与」とは異なり、「特定の目的」のために会社から従業員に支給されるものであり、
・かつ「その目的」が従業員に対する福利厚生的なものとなります。

このため、制度上では、これらのことを考慮し、
『従業員が受ける「食事、被服、居住(社宅等)の利益」』については、

一定の状況の下では、それらを『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めなくてもよいとする規定も設けています。

 

以上のように、労働保険制度におきましては、
「現物給与」である「食事、被服、居住(社宅)の利益」は、それが支給される状況等によって、

  • 『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となったり、
  • 『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが不要となったり、

その取扱いが異なることとなります。

 

ここでは、この現物給与である「居住の利益」「食事の利益」「被服の利益」のそれぞれにつき、
「それらの労働保険における取り扱い(「賃金に含めることが必要となるか否かなど)」をご紹介させて頂きます。

 

なお、ここでご紹介させて頂きます規定は、あくまで「労働保険制度に限定した取扱規定となるものであり、

  • 従業員等の個人所得税の対象となる『「給与の範囲』や
  • 社会保険料の算定における『「報酬の範囲』につきましては、

それぞれの制度におきまして、それぞれの取扱いがなされていますので、この点につきましては十分ご留意頂ますようお願い致します。

 

 

Ⅰ:「社宅の貸与による利益(居住の利益)」の取り扱い

従業員に社宅・寮等を貸与している場合には、まず、

「社宅・寮等を貸与していない従業員に対して、「社宅・寮等を貸与している従業員」との均衡を図るために「均衡手当が支給されている否かにより、

「社宅等の貸与による利益」の取り扱い異なることとなります

 

1、「均衡手当」が「社宅等を貸与していない従業員」に支払われていない場合

均衡手当」が「社宅等を貸与していない従業員」に対して支払われていない場合には、

「社宅等の借用を受けている従業員」の「居住の利益」は、

『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません

「均衡手当」が支給されていないということは、全社的に考えて「社宅等の貸与」が「労働の対償」として支給されているという側面が小さいことを意味しています。
このため、「均衡手当」が支給されていない場合には、これを「賃金と見做さないこととしています。

 

Point ! 『社会保険料における「報酬月額」の範囲』との取り扱いの違い

社会保険料における「報酬月額の範囲』では、

「社宅等の借用を従業員・役員が受けている場合」には、
均衡手当が支給されているか否かに関係なく原則、『「従業員・役員が受けている社宅の借用」に係る経済的利益』を金銭評価して、「報酬月額」に含めることが必要となります。

この点、『「社宅等の借用」に係る経済的利益』は、
労働保険」と「社会保険」とでは、その取扱が異なることとなります。

 

2、「均衡手当」が「社宅等を貸与していない従業員」に支払われている場合

均衡手当」が「社宅等を貸与していない従業員」に対して支払われている場合には、

・「社宅等を貸与している従業員」から「賃料(社宅等の使用料)」等を会社が徴収しているか否かにより、

・また、会社が「賃料(社宅等の使用料)」等を徴収している場合には、どの程度徴収が行われているかにより、

以下1)~3)のいずれかの取り扱いを行うこととなります。

 

1)『「均衡手当」の1/3を超える「賃料」』を徴収している場合

会社が「社宅等を貸与している従業員」から『「均衡手当」の1/3を超える賃料使用料)」』を徴収している場合には、

「社宅等の借用を受けている従業員」の「居住の利益」は、

『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません

この場合には、「居住の利益」は、原則「賃金」に含めることとしますが、
従業員自身が負担する金額を考慮し、特別に「賃金」に含める金額は「ゼロ」としています。

 

2)『「均衡手当」の1/3以下の「賃料(使用料)」』を徴収している場合

会社が「社宅等を貸与している従業員」から『「均衡手当の1/3以下の賃料使用料)」』を徴収している場合には、

「社宅等の借用を受けている従業員」の「居住の利益」として、

『「均衡手当の1/3に相当する金額』から「社宅等の賃料徴収額」を「差引いた金額」を

『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。

 

3)「賃料(使用料)」を徴収していない場合

会社が「社宅等を貸与している従業員」から「賃料使用料)」を徴収していない場合

「社宅等の借用を受けている従業員」の「居住の利益」として、

『「均衡手当の1/3に相当する金額』を

『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。

 

見出三角(小) 『厚生労働大臣が定める「社宅貸与の価額」』<「均衡手当」の場合の留意点   

厚生労働大臣が定める社宅貸与の価額」』が「均衡手当」よりも小さい場合には、

上記1)~3)における「均衡手当」を『厚生労働大臣が定める社宅貸与の価額」』に読替えて頂くことが必要となります。

なお、『厚生労働大臣が定める「社宅貸与の価額」』につきましては、別途『厚生労働大臣が定める「現物給与の価額」』において、その算定方法等を記載しておりますので、必要がある場合には、当該リンクページを御覧下さい。

 

見出三角(小) 「当該取扱い」が記載されている規定                     

『「社宅の貸与による利益(居住の利益)」の取り扱い』につきましては、

  • 雇用保険に関する業務取扱要領 50501(1)賃金と解されるものの例」及び
  • 雇用保険に関する業務取扱要領 50403(3)賃金の範囲に算入される現物給与

に規定されています。

 

 

Ⅱ:「社宅の水道光熱費」の取り扱い

『社宅において従業員が使用した「水道光熱費」』を会社が負担している場合には、

当該会社が負担した水道光熱費」は、

『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。

 

『社宅において従業員が使用した「水道光熱費」』を会社が負担している場合には、

『当該「水道光熱費」の負担』は、
「その負担金額」や「社会通念上行われる福利厚生施策」を考えても、『「福利厚生的な現物給付の範囲』を超えるものであると考えられます。

このため会社が『社宅において従業員が使用した「水道光熱費」』を負担する場合には、

その「水道光熱費の実際の費用額」を
『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。

 

 

Ⅲ:「食事の供与による利益(食事の利益)」の取り扱い

1、「食事の供与による利益(食事の利益)」の取り扱い規定

会社において「弁当の支給、社員食堂での食事の提供、食券の提供など」の「食事の供与」が行われている場合で、

  • 「食事の提供」がたまたま行われているような場合には、
  • 又は、『食事の提供に係る「実際の費用」相当額』を、従業員から徴収されている場合には、
  • 又は、「食事の提供」が福利厚生的なものと認められる場合には、

『従業員が受ける「食事の利益」』は、
『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることは不要となります。

他方、

・住込労働者に対して1日に2食以上食事の提供が行われていることが常態となっているような場合や
・提供される食事の金額、提供される食事の頻度などから考慮して、「福利厚生的な食事の提供の範囲」を超えるような場合には、

下記2にご紹介させて頂きます算定方法で「計算した金額」を、「食事提供の利益」として、
『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。

 

見出4 ※ 「食事の提供」が福利厚生的であると認められる場合            

・食事の提供によって、「賃金の減少が伴わないこと
(この場合には、「賃金の代わりに「食事の提供」が行われており、食事の提供が「労働の対償」として支給されていることとなります。)

・労働協約、就業規則に定められるなど、明確な労働条件の内容となっている場合でないこと
(この場合には、「福利厚生的な性格」よりも「労働の対償としての性格が強くなります。)

・給食による客観的評価額が「社会通念上僅少なもの」と認められる場合であること

などの要件を満たしている場合には、「食事の提供」は「福利厚生的であると認められます

 

Point ! 『社会保険料における「報酬月額」の範囲』との取り扱いの違い

社会保険料における「報酬月額の範囲』では、

「食事の提供を従業員・役員が受けている場合」には、
その食事の提供」が「福利厚生的であるか否かに関係なく原則、『「従業員・役員が受けている食事の提供」に係る経済的利益』を金銭評価して、「報酬月額」に含めることが必要となります。

この点、『「食事の提供」に係る経済的利益』は、
労働保険」と「社会保険」とでは、その取扱が異なることとなります。

 

2、「賃金」に含まれる場合の取扱い規定

上記1において『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含まれると判断された場合には、

以下の規定に基づいて計算された金額」を『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。

 

1)『厚労大臣が定めた「食事の利益」』の「1/3を超える金額」を従業員から徴収している場合

会社が「食事を提供している従業員」から『厚生労働大臣が定める食事の価額」』の『1/3を超える「食費」』を徴収している場合には、

「食事の提供を受けている従業員」の「食事の利益」は、

『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません

この場合には、「食事の利益」は、原則「賃金」に含めることとしますが、
従業員自身が負担する金額を考慮し、特別に「賃金」に含める金額は「ゼロ」としています。

 

2)『厚労大臣が定めた「食事の利益」』の「1/3以下の金額」を従業員から徴収している場合

会社が「食事を提供している従業員」から『厚生労働大臣が定める食事の価額」』の『1/3以下の「食費」』を徴収している場合には、

「食事の提供を受けている従業員」の「食事の利益」として、

厚生労働大臣が定める食事の価額」の1/3に相当する金額』から「食費の徴収額」を「差引いた金額」を

『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。

 

3)従業員から「食費」を徴収していない場合

会社が「食事を提供している従業員」から「食費を徴収していない場合には、

「食事の提供を受けている従業員」の「食事の利益」として、

厚生労働大臣が定める食事の価額」』の「1/3に相当する金額」を

『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。

 

見出三角(小) 厚生労働大臣が定める「食事提供の価額」                    

なお、『厚生労働大臣が定める「食事提供の価額」』につきましては、
別途『厚生労働大臣が定める「現物給与の価額」』において、その算定方法等を記載しておりますので、必要がある場合には、当該リンクページを御覧下さい。

 

見出三角(小) 「当該取扱い」が記載されている規定                      

『「食事の提供による利益(食事の利益)」の取り扱い』につきましては、

  • 雇用保険に関する業務取扱要領 50501(1)賃金と解されるものの例」及び
  • 雇用保険に関する業務取扱要領 50403(3)賃金の範囲に算入される現物給与

に規定されています。

 

 

Ⅳ:「被服の提供・貸与による利益(被服の利益)」の取り扱い

1、「被服の提供・貸与による利益(被服の利益)」の取り扱い規定

会社が従業員に対して「被服の提供・貸与」を行っている場合で、

・労働者が『業務に従事するために「作業衣」を支給・貸与している場合』や

・『業務上着用することを条件として「被服」を支給・貸与している場合』には、

これらの「被服の提供・貸与を受ける従業員の利益」は、
『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることは不要となります。

また、

会社が「被服を提供・貸与している従業員」から「被服の提供・貸与等に係る実際費用額」を徴収する場合には、

「被服の提供・貸与を受ける従業員の利益」は、実質的にゼロ」となることから、
『労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることは不要となります。

 

2、上記以外における取扱い(私見)

1)形式的な解釈

「会社から従業員に対する被服の支給」も「現物給付」に該当するため、

「雇用保険に関する業務取扱要領 50403(3)賃金の範囲に算入される現物給与」に規定されているように

見出丸(小:背景ハダ色)実際費用1/3を上回る代金を「被服を提供している従業員」から徴収する場合には、
「被服の提供を受けたことによる利益」は「賃金とはならず

見出丸(小:背景ハダ色)他方、「実際費用の 1/3以下の代金」を「被服を提供している従業員」から徴収する場合には、
「実際費用の 1/3に相当する金額」と「徴収金額」との「差額部分のみを「賃金に含めることとする。

という形式的な解釈をすることができます。

 

2)「被服の提供・貸与に係る利益」につきましての私見

ただし、会社が従業員に対して「被服の提供や貸与」を行う場合には、殆どが業務上使用することを条件」とするものであり、

『「業務上の必要性」以外の理由』で「被服の提供等」を行う場合には、「福利厚生的な現物支給」から大きく外れる可能性もあると考えます。

他方、「上記1)におきまして規定されている取扱い」は、あくまで、「現物給付」が福利厚生的に行われることを前提として規定されているものであるため、
「被服の支給目的」如何によっては、上記1)の取扱い規定を形式的に適用できない場合もあると考えます。

このため、「被服の提供」が『「業務上の必要性以外の理由』で支給されるような場合には、
会社(事業所)を管轄するハローワーク等にご確認の上、その取扱いを決定して頂くことが良いと考えます。

 

 

税理士事務所・会計事務所からのPOINT

ここでは、『労働保険における「現物給与」の取扱い』についてご紹介させて頂きております。

会社から従業員等へ「現物給与」が支給されている場合には、

  • 所得税法上での「現物給与の取扱い(課税所得に含まれる否か等の取扱い)」
  • 社会保険での「現物給与の取扱い(社会保険制度上「報酬」に含まれるか否か等の取扱い)」
  • 労働保険での「現物給与の取扱い(労働保険制度上「賃金」に含まれるか否か等の取扱い)」

が、それぞれ問題となり、かつそれぞれの制度上での取扱いが異なるものとなっています。

このため、「現物給与」が支給されている場合には、

  • 得税法上での取扱い
  • 社会保険での取扱い
  • 労働保険での取扱い

をそれぞれ理解し、確認することが必要となります。(厄介なものとなります。)

このため、ここでは、本文でご紹介させて頂きました内容をご理解頂き、まずは『労働保険での「現物給与」の取扱い』をマスターして頂きますようお願い致します。

 

実務上の「現物給与の取扱い」

「現物給与」につきましては、「所得税法上の取扱い」が最も厳しい規定となっております。
このため、「現物給与」を支給されている多くの会社では、「所得税法上の取扱い」に対応するように、「現物給与の支給」や「従業員・役員からの負担額の徴収」を行っておられると考えます。

そして「所得税法上の取扱い」に対応するように「現物給与の支給」や「従業員・役員からの負担額の徴収」を行っておられますと、
労働保険では、殆どの「現物給与」は、「賃金」に含めなくてよいものとなると思います。

従いまして、このような会社様につきましては、当該ページは軽く一読頂ければ十分なのではないかとも考えます。