ここでは、『「法定手当(割増賃金)」に係る「割増賃金率」』について、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。

 

 

 

「割増賃金率」の理解の必要性

見出(見出矢印:背景水色)会社におきましては、従業員が「法定労働時間外の労働を行った場合」「法定休日に労働を行った場合」「深夜時間帯に労働を行った場合」には、
労働基準法」に基づいて「法定手当(「時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」)」を計算することが必要となり、

この「法定手当(割増賃金)」につきましては、

見出(見出矢印:背景水色) 時間外労働手当

1時間あたりの賃金額 」  ×  「 法定時間外労働に係る割増賃金率 」  ×  「 法定外労働時間

見出(見出矢印:背景水色) 法定休日労働手当

1時間あたりの賃金額 」  ×  「 法定休日労働に係る割増賃金率 」  ×  「 法定休日労働時間

見出(見出矢印:背景水色) 深夜労働手当

1時間あたりの賃金額 」  ×  「 深夜労働に係る割増賃金率 」  ×  「 深夜労働時間

という計算式により算定することが必要となります(労働基準法37条)。

 

このため、適切に「法定手当(「時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」)の金額 」を計算するためには、

その計算要素となる「 法定外労働時間に係る割増賃金率 」「 法定休日労働時間に係る割増賃金率 」「 深夜労働時間に係る割増賃金率 」を適切に把握しておくことが必要となります。

 

このため、ここでは、「労働基準法」等で規定されている

  • 法定外労働時間」に係る「割増賃金率
  • 法定休日労働時間」に係る「割増賃金率
  • 深夜労働時間」に係る「割増賃金率

をご紹介させて頂きます。

 

 

Ⅰ:「法定外労働時間」に係る「割増賃金率」

1、「法定外労働時間」に係る「割増賃金率」

「法令」等において規定されている『「法定外労働時間」に係る「割増賃金率」』は、以下のものとなります。

 

◆ 2023年3月31日(令和5年3月31日)まで

  中小事業者 大規模事業者(左記以外)
月60時間以内の法定時間外労働」の部分 0.25以上 0.25以上
月60時間を超える法定時間外労働」の部分 0.25以上 0.50以上

 

◆ 2023年4月1日(令和5年4月1日)以降

  中小事業者 大規模事業者(左記以外)
月60時間以内の法定時間外労働」の部分 0.25以上 0.25以上
月60時間を超える法定時間外労働」の部分 0.50以上 0.50以上

 

2、『「法定外労働時間」に係る「割増賃金率」』の根拠規定

見出三角(小)『「法定外労働時間」に係る「割増賃金率」』が上記1のようなものとなるのは、

  • 労働基準法37条1項」及び
  • 「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」で、

以下のような規定が定められていることが根拠となります。

 

見出(見出矢印:背景水色)労働基準法37条1項」には、

労働時間を延長し労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

と規定されているとともに、

見出(見出矢印:背景水色)上記を受けて、「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」において、

労働基準法第三十七条第一項政令で定める率は、同法第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長した労働時間の労働については二割五分とする。

と規定されています。

 

見出三角(小)従いまして、『「法定外労働時間」に係る「割増賃金率」』につきましては、原則

給与計算対象における「法定外労働時間」』が60時間以内の場合

給与計算対象における「法定外労働時間」』が60時間を超える場合とに

分けて

前者の場合には「0.25以上の割増賃金率」、

後者の場合には「0.50以上の割増賃金率」を規定することが必要となります。

 

3、中小企業に対する「月60時間を超える場合」の猶予規定

見出三角(小)改正前労働基準法」におきましては、その「138条」に、

中小事業主の事業については、当分の間第三十七条第一項ただし書の規定は、適用しない

という規定がありましたが、

当該「138条」は、2019年の働き方改革関連法」が施行されたことにより、2023年3月末日をもって廃止されることが決定されました。

 

見出三角(小)このため、以下でご紹介させて頂きます「中小事業主」につきましては、

2023年3月末日まで令和5年3月末日まで)は、

「法定外労働時間」が月60時間を超える場合であっても、

『「法定外労働時間が月60時間を超える部分」に対しての「割増賃金率」』は、

見出(見出矢印:背景水色)0.50以上の割増賃金率」ではなく

見出(見出矢印:背景水色)0.25以上の割増賃金率」を使用することができますが、

2023年4月以降令和5年4月以降)につきましては、

『「法定外労働時間が月60時間を超える部分」に対しての「割増賃金率」』は、

見出(見出矢印:背景水色)0.50以上の割増賃金率」を使用することが必要となります。

 

◆ 「改正前労働基準法 138条」で規定されている「中小事業者」 ◆

「改正前労働基準法 138条」で規定されている「中小事業者」とは以下の事業者※1をいいます。

業種※2 資本金・出資金の額※3    常時使用する従業員の数※4
卸売業 1億円以下 又は 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
その他 3億円以下 300人以下

 

※1事業者」につきまして 

・「事業者」とは、「会社」「個人事業」「独立行政法人」「協同組合」等の「労働基準法が適用される事業主すべてを含む概念となります。

・また「中小事業者」に該当するか否かの判断は、「事業所単位ではなく、「企業個人事業法人等の全体を単位」として行われます。

 

※2 「業種の分類」につきまして 

・「業種の分類」につきましては、「日本標準産業分類」に基づいて、下表のような分類がなされています。

 

 

※3 「資本金・出資の総額」につきまして 

・「資本金・出資の総額」につきましては、「法人登記」「定款」等の記載に基づいて判断されます。

・「資本金・出資の総額」がない場合には、「常時使用する従業員数」のみにより判断されます。

 

※4 「常時使用する従業員数」につきまして 

・「常時使用する従業員数」とは、『「通常の状況」によって判断される「従業員数」』をいいます。
⇒このため、臨時的に労働者を雇い入れた場合臨時的に欠員が生じた場合等は、「従業員数が変動した」ものとしては取り扱いません

・当該「従業員数」には、正社員、パート等の区別はなく、「労働契約があるすべての労働者」が対象となります。

・「出向者」「転籍者」「派遣労働者」の取り扱いにつきましては、以下のものとなります。

出向者」につきましては、『「出向元」と「出向先両方の従業員数』として取り扱います。
転籍者転籍出向者)」につきましては、『「出向先」の従業員数』として取り扱います。
派遣労働者」につきましては、『「派遣元」の従業員数』として取り扱います。

 

 

Ⅱ:「法定休日労働時間」に係る「割増賃金率」

1、「法定休日労働時間」に係る「割増賃金率」

「法令」等において規定されている『「法定休日労働時間」にかかる「割増賃金率」』は、

0.35以上の割増賃金率 」を会社で規定することが必要となります。

 

2、『「法定休日労働時間」に係る「割増賃金率」』の根拠規定

見出三角(小)『「法定休日労働時間」に係る「割増賃金率」』が上記1のようなものとなるのは、

  • 労働基準法37条1項」及び
  • 「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」で、

以下のような規定が定められていることが根拠となります。

 

見出(見出矢印:背景水色)労働基準法37条1項」には、

休日に労働させた場合においては、その日の労働については、通常の労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

と規定されているとともに、

見出(見出矢印:背景水色)上記を受けて、「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」では、

労働基準法第三十七条第一項政令で定める率は、同法第三十三条又は第三十六条第一項の規定により労働させた休日の労働については三割五分とする。

と規定されています。

 

見出三角(小)従いまして、『「法定休日労働時間」に係る「割増賃金率」』につきましては

事業主の規模」「月の法定休日労働時間」等に拘らず、「0.35以上の割増賃金率」とすることが必要となります。

 

 

Ⅲ:「深夜労働時間」に係る「割増賃金率」

1、「深夜労働時間」に係る「割増賃金率」

「法令」等において規定されている『「深夜労働時間」にかかる「割増賃金率」』は、

0.25以上の割増賃金率 」を会社で規定することが必要となります。

 

2、『「深夜労働時間」に係る「割増賃金率」』の根拠規定

見出三角(小)『「深夜労働時間」に係る「割増賃金率」』が上記1のようなものとなるのは、

  • 労働基準法37条4項」で、

以下のような規定が定められていることが根拠となります。

 

労働基準法37条4項」には、

使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

と規定されています。

 

見出三角(小)従いまして、『「深夜労働時間」に係る「割増賃金率」』につきましては

事業主の規模」「月の法定休日労働時間」等に拘らず、「0.25以上の割増賃金率」とすることが必要となります。

 

 

Ⅳ:『「法定手当」に係る「割増賃金率」』のまとめ

1、『「法定手当」に係る「割増賃金率」』のまとめ

上記Ⅰ~Ⅲでご紹介させて頂きました『「法定外労働時間」に係る「割増賃金率」』『「法定休日労働時間」に係る「割増賃金率」』『「深夜労働時間」に係る「割増賃金率」』をまとめると、以下のようなものとなります。

 

◆ 2023年3月31日(令和5年3月31日)まで

  中小事業者 大規模事業者
法定時間外労働 月60時間以内部分 0.25
月60時間超部分 0.25 0.50
法定休日労働 0.35
深夜時間帯労働 0.25

 

◆ 2023年4月1日(令和5年4月1日)以降

  中小事業者 大規模事業者
法定時間外労働 月60時間以内部分 0.25
月60時間超部分 0.50
法定休日労働 0.35
深夜時間帯労働 0.25

 

2、「各割増賃金率」の併用関係

最後に、「参考事項」といたしまして、「各割増賃金率」の併用関係につき補足させて頂きます。

 

1)「法定外労働」と「法定休日労働」に係る「割増賃金率」の併用関係

厚生労働省が公表する「平成6.5.31 基発331号」では、

法定時間外労働」は、『「法定休日労働」とされた時間 』を除いて計算する

と規定されていることから、

 

「ある労働時間」が

『「法定外労働時間」でもあり「「法定休日労働時間」でもある』というような重複認識されるような場面はなく

このことから、

「ある労働時間」に対して、

『「法定休日労働」に係る「割増賃金率」』と『「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」』が併用して適用されるような場面は存在しません

 

2)「法定外労働・法定休日労働」と「深夜労働」に係る「割増賃金率」の併用関係

労働基準法施行規則 20条」では、

法定時間外労働」が「深夜時間帯」に及ぶ場合には、「5割以上割増賃金率」で「法定手当」を計算し
(なお、「時間外労働時間」が月60時間を超える場合には「7割5分以上の割増賃金率」)、

法定休日労働」が「深夜時間帯」に及ぶ場合には、「6割以上割増賃金率」で「法定手当」を計算することが必要となる

と規定されていることから、

 

見出(見出矢印:背景水色)法定時間外における労働」が「深夜時間帯22:00~5:00)」に及んだ場合には、

当該「深夜時間帯に行われた法定時間外労働」には、

法定時間外労働に係る割増賃金率0.25以上)」と「深夜時間帯労働に係る割増賃金率0.25以上)」が併用され

見出(見出矢印:背景水色)また、「法定休日における労働」が「深夜時間帯22:00~5:00 )」に行われた場合には、

当該「深夜時間帯に行われた法定休日労働」には、

法定休日労働に係る割増賃金率0.35以上)」と「深夜時間帯労働に係る割増賃金率0.25以上)」が併用されることとなります。

 

 

税理士事務所・会計事務所からのPOINT

ここでは、『「法定手当(割増賃金)」に係る「割増賃金率」』について、ご紹介させて頂いております。

 

『「法定外労働時間」に係る「割増賃金率」』につきまして

「大規模事業者」につきましては、

既に「法定外労働時間が月60時間以内の場合」と「法定外労働時間が月60時間を超えるの場合」で、「0.25以上」「0.5以上」の「2種類の割増賃金率」を規定することが必要となっております。

 

他方、「中小事業者」につきましては、

・2023年3月31日(令和5年3月31日)までは、
「法定外労働時間が月60時間以内の場合」と「法定外労働時間が月60時間を超えるの場合」ともに、「0.25以上」の「割増賃金率」を規定することで足りますが、

・2023年4月1日(令和5年4月1日)以降は、
「大規模事業者」と同様に、「法定外労働時間が月60時間以内の場合」と「法定外労働時間が月60時間を超えるの場合」で、「0.25以上」「0.5以上」の「2種類の割増賃金率」を規定することが必要となりますので、この点につきましては十分ご確認頂ますようお願いいたします。

 

なお、『「法定外労働時間」に係る「割増賃金率」』につきましては、

・『「法定休日労働時間」に係る「割増賃金率」』と併用される場面はございませんが、

・『「深夜労働時間」に係る「割増賃金率」』とは併用される場面がありますので、

この点につきましては、今一度ご確認頂ますようお願いいたします。

 

『「法定休日労働時間」に係る「割増賃金率」』につきまして

『「法定休日労働時間」に係る「割増賃金率」』につきましては、

「事業者の規模」や「月の法定休日労働時間」等に拘らず、「0.35以上」の「割増賃金率」を規定することとなります。

 

なお、『「法定休日労働時間」に係る「割増賃金率」』につきましては、

・『「法定外労働時間」に係る「割増賃金率」』と併用される場面はございませんが、

・『「深夜労働時間」に係る「割増賃金率」』とは併用される場面がありますので、

この点につきましては、今一度ご確認頂ますようお願いいたします。

 

『「深夜労働時間」に係る「割増賃金率」』につきまして

『「深夜労働時間」に係る「割増賃金率」』につきましては、

「事業者の規模」や「月の法定休日労働時間」等に拘らず、「0.25以上」の「割増賃金率」を規定することとなります。

 

なお、『「深夜労働時間」に係る「割増賃金率」』につきましては、

・『「法定外労働時間」に係る「割増賃金率」』や『「法定休日労働時間」に係る「割増賃金率」』と併用される場面がありますので、

この点につきましては、今一度ご確認頂ますようお願いいたします。