ここでは『 厚生労働大臣が定める「現物給与の価額」』である「住宅の利益の価額」及び「食事の利益の価額」について、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。
▶ 『 厚生労働大臣の定める「現物給与」の評価方法 』の理解の必要性
「 社会保険制度 」におきましては、
会社から従業員・役員に対して「現物給与の支給」がある場合には、 これらの『「現物給与」の経済的価値 』を評価して、「報酬月額」を算定する場合の「報酬」に含めることが必要となります。 |
また、「 労働保険制度 」におきましても、
会社から従業員に対して「現物給与の支給」があり、一定の要件を満たす場合には、 これらの『「現物給与」の経済的価値 』を評価して、労働保険料の算定基礎となる「賃金」に含めることが必要となります。 |
この点、
通常「現物給与が支給」される場合におきましては、
その『「現物給与」の経済的価値 』は、『「現物給与の支給」にかかった「実際費用金額」等 』によって評価されることになりますが、
「 社会保険制度 」及び「 労働保険制度 」では、ともに、
「現物給与」のうち、「社宅の貸与」「食事の提供」というの2つの「現物給与」につきましては、 ・その「貸与する住宅の賃料相場」等や「食事の提供にかかった実際の費用額」等に基づいて評価するのではなく、 ・特別に、『 厚生労働大臣が定める「評価方法」』に従って、 |
このため、会社から従業員・役員に対して「 社宅・寮等の住宅の貸与 」や「 給食・弁当等の食事の提供 」が行われているような場合には、
- 社会保険制度における「 報酬の金額(報酬月額の金額)」を適切に算定するため
- 労働保険制度における「 賃金の金額(労働保険料の算定基礎となる賃金額)」を適切に算定するために、
この『 厚生労働大臣の定める「現物給与」の評価方法 』を理解しておくことが必要となります。
従いまして、ここでは、以下におきまして、
- 『 厚生労働大臣が定める「社宅貸与の価額」の評価方法 』及び
- 『 厚生労働大臣が定める「食事提供の価額」の評価方法 』をご紹介させて頂きます。
Ⅰ:厚生労働大臣が定める「住宅の利益額」の評価方法
「 社会保険制度 」及び「 労働保険制度 」上におきましては、
『 従業員・役員が受ける「住宅(社宅・寮等の貸与)の経済的利益」』を金銭評価する場合には、
|
このため、ここでは、
・ 下記1で、『 厚生労働大臣が定める「住宅の利益額」の評価計算方法 』について、
・ 下記 2① 及び 2② で、『上記1の評価計算における「計算項目の内容」』について、
・ 下記3で、『 厚生労働大臣が定める「住宅の利益額」の評価例示 』について、ご紹介させて頂きます。
1、厚生労働大臣が定める「住宅の利益額」の評価計算方法
『「厚生労働大臣」が定める「住宅の利益額」』は、
「 従業員・役員が借用する社宅等の面積 」 × 「 厚生労働大臣が定める1畳あたりの1ヶ月分の価額 」 |
という計算式で「算定された金額」で評価することとなります。
◆ 計算上の留意点 ◆
上記計算の結果、1円未満の端数が生じる場合には、その端数は「切捨て」となります。
月途中から入居した場合には、下記の計算式により「日割計算」を行います。
「1ヶ月あたりの住宅の利益価額」÷「その月の総日数」×「入居日以降の日数」
2-①、従業員・役員が借用する「社宅等の面積」( 計算要素① )
『厚生労働大臣が定める「住宅の利益」』を算定するためには、
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『この算定基礎となる「社宅等の面積」』に含まれるものは、
居間、茶の間、寝室、客間、書斎、応接間、仏間、食事室など『「 居住用の室」の面積 』のみとなります。 |
このため、
・玄関、台所(炊事場)、トイレ、浴室、廊下、農家の土間などの『「居住用ではない室」の面積 』や ・店、事務室、旅館の客室などの『「営業用の室」の面積 』は、 上記の「社宅等の面積」には含まれません。 |
【「社宅等の面積」算定の例示】
◆ 「 社宅等の面積」の換算 ◆
下記2-② でご紹介させて頂ますように『 厚生労働大臣が定める「1ヶ月分の住宅の利益額」』としては、「1畳あたりの金額」が記載されています。
このため、「社宅等の面積」を「㎡」で把握している場合には、
「その面積」を1.65㎡で除し、「畳」に換算して把握することが必要となります。 |
2-②、厚生労働大臣が定める「1ヶ月分の価額」( 計算要素② )
次に、『 厚生労働大臣が定める「住宅の利益」』を算定するためには、
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この『 厚生労働大臣が定める「1ヶ月あたりの住宅利益の価額」』は、
『「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)』に都道府県ごとに記載されている「1ヶ月あたりの住宅の利益額」※を使用することとなります。 ※ 『 厚生労働大臣が定める「1ヶ月あたりの住宅利益の価額」の単位 』は、「1畳あたりの価額」となります。 |
▶ なお、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」は、日本年金機構のHPにてダウンロードすることができます。
◆ 「 厚生労働大臣が定める住宅の利益額 」を採用する場合の留意点 ◆
「 厚生労働大臣が定める住宅の利益額 」は、
「生活実態に即した価額」となるように、都道府県ごとに決められています。 |
このため、「勤務地の所在地」と「社宅の所在地」の都道府県が異なる場合には、
「いずれの都道府県の住宅の利益額」を採用すべきかが問題となりますが、
この点につきましては、『 勤務地が所在する都道府県の「住宅の利益額」』を採用します。 (人事、労務および給与の管理がなされている事業所の所在地の「住宅の利益額」を採用します。) |
また、本社・支店等がそれぞれ異なる都道府県に所在する場合には、
「住宅の利益額」がより「生活実態に即した価額」となるように、 ・本社で勤務する従業員等に対しては、『 本社が所在する都道府県の「住宅の利益」』を採用し、 ・支店等で勤務する従業員に対しては、『 支店等が所在する都道府県の「住宅の利益」』を採用します。 |
3、厚生労働大臣が定める「社宅貸与の価額」の算定例示
設 例
従業員(勤務地:東京)に対して以下のような社宅を貸与していると仮定します。
社宅の全体面積 :50㎡ ・居間:13㎡、洋室:7㎡、和室6㎡(合計:26㎡) ・浴室・トイレ・洗面所:10㎡、玄関1.5㎡、廊下:7.5㎡、台所:3.5㎡、収納スペース:1.5㎡(合計:24㎡) |
社宅利益の評価額
上記の場合における「厚生労働大臣が定める住宅の利益額」は、
26㎡ ÷ 1.65㎡ × 2,830円 = 44,593円 となります。 |
Ⅱ:厚生労働大臣が定める「食事の利益額」の評価方法
「 社会保険制度 」及び「 労働保険制度 」上におきましては、
『 従業員・役員が受ける「食事(給食・弁当等の提供)の経済的利益」』を金銭評価する場合にも、
|
このため、ここでは、
以下におきまして、『 厚生労働大臣が定める「食事の利益額」の評価計算方法 』をご紹介させて頂きます。
厚生労働大臣が定める「食事の利益額」の評価計算方法
『「厚生労働大臣」が定める食事の利益額 』は、
『「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)』に都道府県ごとに記載されている「 食事の利益額 」 |
に基づいて算定された金額で評価することとなります。
なお、当該『「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)』には、
の『「5種類」の「食事の利益額」』が記載されているため、 |
従業員・役員に1ヶ月間毎日「朝食・昼食・夕食の3食」が提供されている場合には、
「1カ月当たりの食事の額(下図①)」を「食事の利益額」とし、 |
従業員・役員に毎日ではないが、「朝食・昼食・夕食の3食」が提供されている場合には、
「1日当たりの食事の額(下図②)」×「食事が提供された日数」で「計算された金額」を「食事の利益額」とし、 |
従業員・役員に不定期に「食事」が提供されている場合には、
・「1日当たりの朝食のみの額(下図③)」×「朝食が提供された日数」 「合計した金額」を「食事の利益額」とすることが必要となります。 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『 厚生労働大臣が定める「現物給与の価額」』である『「住宅の利益の価額」及び「食事の利益の価額」の評価方法 』ご紹介させて頂いておりますので、
会社が従業員・役員に対して
- 「社宅・寮等の住宅を貸与している場合」や
- 「食堂での給食・弁当の支給・食券の支給等の食事の提供を行っている場合」には、
ここで記載されている評価方法にしたがって、「それぞれの経済的価値」を適切に計算評価して頂きますようお願い致します。
『「社宅等の貸与に係る利益額」の算定』につきまして
「社宅等の貸与に係る利益額」を算定する場合には、
・従業員・役員に対して貸与する「社宅等の全体面積」を「その算定基礎」として計算するのではなく、
・あくまで、「その算定基礎とするもの」は、社宅等のうち「居住の用に供している部分」のみとなりますので、
この点につきましては、十分ご注意頂ますようお願い致します。
『「食事の提供に係る利益額」の算定』につきまして
「食事の提供に係る利益額」を算定するためには、
・「1ヶ月間、毎日食事が提供される場合」を除いて、
・「食事の提供が何日又は何回支給されたか?」を把握しておくことが必要となります。
このため、不定期に食事が提供されるような場合には、「食事の提供回数」等を日頃から適切に記録しておくことが必要となります。