ここでは「給与の計算」における「控除項目の1つ」である『「雇用保険料の控除金額」の算定方法 』につき、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「雇用保険料の控除計算」を行う前に必要となる確認事項
給与計算において「雇用保険料の控除額」を算定する場合には、まず、事前に
- 雇用保険料の控除計算が必要となる「従業員の範囲」を確認する
- (控除する)雇用保険料の算定基礎となる「賃金の範囲」を確認する
- (控除する)雇用保険料の算定基礎率となる「(従業員が負担する)雇用保険料率」を確認する
ことが必要となります。
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このため、ここでは「具体的な雇用保険料の算定方法」をご紹介する前に、まず上記『「雇用保険料の控除計算」を行う前に必要となる確認事項 』をご紹介させて頂きます。
1、雇用保険料の控除計算が必要となる「従業員」の確認
給与計算で「雇用保険料の控除が必要となる従業員」は、
「雇用保険の被保険者」である「従業員」のみとなります。 |
従いまして、給与計算において「雇用保険料の控除計算を行うことが必要となる従業員」は、
「雇用保険被保険者資格取得届」がハローワーク等に届出されている従業員に限られますので |
この点につきましては事前にご確認頂ますようお願い致します。
2、「賃金の範囲」を確認する
「給与計算で雇用保険料を控除する場合」には、その前提として、
『 雇用保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』を把握・計算しておくことが必要となります。 |
① この点、
「給与支給明細書」等に記載される「給与支給項目」の中には、
- 『 雇用保険料の計算対象となる「給与支給項目」』※1と
- 『 雇用保険料の計算対象とはならない「給与支給項目」』※2とがあるため、
「雇用保険料の控除計算」を適切に行うためには、
「給与支給明細書」等に記載されている「給与支給合計金額」から、
『 雇用保険料の計算基礎とはならない「給与支給項目」』を除外し、
『 雇用保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』を事前に算定しておくことが必要となります。
|
|
② また、「給与支給明細書」に記載される「給与支給額」とは別に、
『「定期券等の支給、社宅等の貸与、食事の提供、被服の提供・貸与」などの「現物給与」』が支給されているような場合には、
これらの「現物給与」につきましても、
「現物給与が支給されている状況」等によっては、
「現物給与」を雇用保険料の計算対象としなければならない場合があるため、
「現物給与を雇用保険料の計算対象としなければならない」と判断した場合には、
これらの「現物給与」を金銭評価し、
「その現物給付の評価額」を「上記①で把握・計算された金額」に加算して、
『 雇用保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』を把握・計算することが必要となります。
|
|
◆ 『 雇用保険料の計算対象となる「賃金(給与支給額)」』 (※1の部分) ◆
「労働保険制度」におきましては、
このため、
『 源泉所得税の計算においてはその対象とはならない「(非課税)通勤費」や「(非課税)宿直・日直手当」』も、 |
「雇用保険料の控除計算」においては、その計算対象に含めることが必要となりますので、この点につきましてはご注意頂ますようお願い致します。
|
▶ なお、『 雇用保険料の計算対象となる「賃金」』には以下のものがあります。
労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」に含まれるもの |
基本賃金 |
・「時給・日給・月給」「臨時・日雇労働者・パート・アルバイト等に支払う賃金」
・有給休暇日の給与 |
通勤手当 |
・課税・非課税を問わず『「金銭」で支給される通勤手当 』
・「定期券」「回数券」等の『「現物」で支給されるもの 』 |
法定手当 |
・超過勤務手当(早朝手当、残業手当など)
・深夜手当
・法定休日労働手当など |
任意手当 |
・「扶養手当」「子供手当」「家族手当」「住宅手当」
・「技能手当」「特殊作業手当」「教育手当」
・「単身赴任手当」「物価手当」「生活補給金」
・「地域手当」「勤務地手当」「寒冷地手当等」
・「奨励手当(精勤手当・皆勤手当など)」
・「宿直・日直手当」(課税・非課税を問いません。)
・「調整手当(配置転換調整手当・初任給調整手当)」
・「転勤休暇手当」「受験手当」(実費弁済的なものは除く) |
食事・被服・住居
の利益 |
「食事・被服・住居の利益」である「現物給与」につきましては、その支給状況等によって、
・『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」に含まれる 』場合と
・『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」に含まれない 』場合とがあります。 |
賞与 |
賞与を支払う場合にも、労働保険料の算定基礎となる「賃金」に含まれます。
・このため、賞与を支給した場合には、これに係る労働保険料を保険者に支払うことが必要となり、
・また、賞与支給時にも、「従業員が負担する雇用保険料」を給与計算時に控除することが必要となります。 |
事業主が負担した
従業員負担分の
公的保険料
源泉所得税 |
・「従業員負担分の雇用保険料」「従業員負担分の社会保険料」を事業主が負担した場合、
・「従業員個人に課せられる(源泉)所得税」を事業主が負担した場合には、
これらの保険料額は「賃金」に含まれます。 |
昇給差額 |
遡って支払われる昇給差額 |
前払い退職金 |
・在職中に、退職金相当額の全部又は一部を給与に上乗せして支給されるもの
(なお、退職時又は退職後に支払われるものは、対象外となります。) |
休業手当 |
労働基準法26条に基づいて支払われる休業手当
(使用者の都合で労働者を休業させた場合に支払われる手当) |
在職中の
未払給与 |
在職中において事業主の支払義務が確定しているが、その支払が未払であったものが、
従業員の離職後に支払われるような場合には、
当該「在職中の未払給与」は、「賃金」に含まれます。
※ 在職中に「個人に対する支払が確定」しており、かつ「その計算方法等が決定している」場合には、これらの「未払い給与」は「賃金」に含まれます。
|
事業主経由の
チップ等 |
お客様から受けたチップ等を、事業主を経由して支払われた(再分配された)場合には、
労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」となります。 |
その他 |
・労働協約等の定めにより、傷病手当支給終了後に事業主から支給される給与
(ただし、恩恵的に支給される場合は除きます。)
・労働協約等の定めにより、傷病手当支給前の待期期間(3日間)に支給される給与
(ただし、恩恵的に支給される場合は除きます。)
・「不況対策により賃金から控除された分」が、労使協定等に基づいて、景気回復後等に遡って支払われた場合等の給与支給額 |
※この『「賃金」の範囲 』につきましては、別途『労働保険料の算定基礎となる「賃金の範囲」』でご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、このリンクページもご覧頂きますようお願い致します。
◆ 『 雇用保険料の計算対象とならない「賃金(給与支給額)」』 (※2の部分) ◆
他方、「労働保険制度」におきましては、
会社費用の実費弁済的な支給(出張旅費、宿泊費、赴任手当、移転料、工具等手当など)
恩恵的に支給されるもの(災害・療養・傷病見舞金、慶弔金、年功慰労金、勤続報奨金など)
その他労働の対償でない支給(労基法76条の休業補償費、解雇予告手当、出産手当金、傷病手当金、退職金など)
につきましては、
|
・ 『「 労働の対償 」として支払われるものでない 』と見做されるため、
・「これらの支給項目」を『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることは不要となります。
|
従いまして、「給与支給明細」等に「これらの支給項目」が含まれている場合には、
「給与支給明細書」等に記載されている「給与支給合計金額」から、
「 これらの給与支給項目」を除外して、
『 雇用保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』を算定することが必要となります。
|
▶ なお、『 雇用保険料の計算対象とならない「賃金」』には以下のものがあります。
労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」に含まれないもの |
実
費
弁
済
的
な
も
の |
・出張旅費
・宿泊費
・赴任手当
・移転料 |
本来的には会社の費用であるものを、従業員が支払ったことにより、
その「実費弁済」として支給された性格をもつ支給額
・出張や移動にかかった旅費・宿泊費
・転勤等に掛かった赴任手当・移転料など
※あくまで実費弁済的に支払われていることが前提となります。 |
・寝具手当
・工具手当
・車の損料 |
・従業員が自己の負担で用意した用具に対して手当を支払う場合や
・従業員所有の車を会社業務に使用した場合に支払われる損料
※あくまで実費弁済的に支払われていることが前提となります。 |
恩
恵
的
に
支
払
わ
れ
る
も
の
|
・災害見舞金
・療養見舞金
・傷病見舞金
・結婚祝金
・死亡弔慰金
・出産見舞金 |
個人的臨時的な吉凶禍福に対して支給されるものは、恩恵的に支払われるものとして「賃金」には含まれません。 |
・年功慰労金
・勤続報奨金 |
勤続年数に応じて支給される慰労金や報奨金などは、恩恵的に支払われるものとして「賃金」には含まれません。 |
・海外手当
・在外手当 |
その従業員が国内勤務に服する場合に支払われる金額を超えて「海外手当」「在外手当」が支給されている場合には、「その超えている部分」は、恩恵的に支払われるものとして「賃金」には含まれません。 |
離職後に決定された
給与・賞与 |
従業員が離職した後に決定された給与・賞与は、恩恵的に支払われるものとして「賃金」には含まれません。
※ 在職中に支払義務が確定していない場合には、「賃金」には含まれません。 |
そ
の
他
|
休業補償費
|
労働基準法76条に基づいて支払われる休業補償費
(業務上の傷病による療養のため従業員が労働できない場合に支払われるもの)
・無過失損害賠償責任に基づいて事業主が支払うものであり、「労働の対償」とは認められないため、「賃金」には含まれません。
・休業補償の額が平均賃金の 60%を超えた場合、その超えた額を含めて「賃金」に含まれません。 |
解雇予告手当 |
解雇予告を行わずに解雇を行う場合に支払われる「解雇予告手当」は、「労働の対償」とは認められないため、「賃金」には含まれません。 |
・出産手当
・傷病手当 |
健康保険法第 99 条、102条の規定に基づく「傷病手当金」「出産手当」は、健康保険の給付金であって、「賃金」には含まれません。
また、これらの手当金に付加して事業主から支給される給付額は、恩恵的給付と認められるので「賃金」には含まれません。
|
退職金 |
労働者の退職後に一時金又は年金として支払われるものは、「賃金」に含まれません。
|
・団体定期保険の保険料
・生命保険の掛金 |
・脱退給付金付き団体定期保険の保険料
・会社が全額負担する生命保険の掛金
は、福利厚生と認められるため、「賃金」には含まれません。
|
・財形貯蓄の
奨励金
・持家奨励金 |
・財産形成貯蓄のため事業主が負担する奨励金
(労働者が行う財産形成貯蓄を奨励援助するために、事業主が一定の率又は額の奨励金等を当該労働者に支払うもの)
・持家奨励金
(労働者が持家取得のため、金融機関等から融資を受けた場合において、事業主が一定の率又は額の利子補給金等を当該労働者に支払うもの)
は、福利厚生と認められるため、「賃金」には含まれません。 |
チップ等 |
お客様から従業員が直接受けるチップは、「事業主」から支払われるものでないため、「賃金」には含まれません。 |
(特定状況下の)
食事・被服・住居
の利益
|
「食事・被服・住居の利益」である「現物給与」につきましては、その支給状況等によって、
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」に含まれる 』場合と
『 労働保険料の算定基礎となる「賃金」に含まれない 』場合とがあります。 |
※この『「賃金」の範囲 』につきましては、別途『労働保険料の算定基礎となる「賃金の範囲」』にてご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、このリンクページもご覧頂きますようお願い致します。
◆ 「現物給与」の取扱い ◆
会社から従業員に対して『「社宅等の貸与」「食事の提供」「被服の提供・貸与」等の「現物給与」』が支給されている場合には、
- 『「その現物給与」が支給されている状況 』や
- 『「現物給与を提供等している従業員」から負担金が徴収されているか否か 』により、
「現物給与」を雇用保険料の計算対象としなければならないか否かの判断規定が設けられています。
|
従いまして、
- 『「社宅等の貸与」「食事の提供」「被服の提供・貸与」等の「現物給付」』が提供されている場合であり、
- かつ、以下の「取扱い」で「雇用保険料の計算対象に含めなければならない」と判断された場合には、
これらの「現物給与の評価額」を『 雇用保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
|
1)「社宅等の貸与」の取扱い
①「社宅等を貸与していない従業員」に対して「均衡手当」が支払われていない場合には、
「社宅等の貸与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません。
②・「社宅等を貸与していない従業員」に対して「均衡手当」が支払われている場合であっても、
・「社宅等を貸与している従業員」から『「実際費用」の1/3 以上の「賃料」』を徴収している場合には、
「社宅等の貸与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません。
③・「社宅等を貸与していない従業員」に対して「均衡手当」が支払われている場合であっても、
・「社宅等を貸与している従業員」から『「実際費用」の1/3 未満の「賃料」』を徴収している場合には、
『「実際費用」の1/3 』を限度として、「社宅等の貸与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
④・「社宅等を貸与していない従業員」に対して「均衡手当」が支払われている場合であって、
・「社宅等を貸与している従業員」から「賃料」を徴収していない場合には、
『「社宅等の貸与」に掛かる「実際費用」』を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
|

※この『「社宅等の貸与」に係る「現物給与」の取扱い』につきましては、『労働保険制度における「現物給与」の取扱い』の『 Ⅰ:「社宅等の貸与による利益(居住の利益)」の取扱い 』にてご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、これらのリンクページもご覧頂きますようお願い致します。
2)「食事の提供」の取扱い
①・ 「食事の提供」が多頻度で行われていないような場合、
・ 「食事の提供」によって賃金の減少がなされていないような場合、
・ 「食事の提供」が明確な労働条件の内容となっていないような場合、
・「食事の提供金額」が社会通念上多額でないような場合には、
「食事の提供」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません。
②・「食事の提供」が上記①に該当しない場合であっても、
・「食事を提供している従業員」から『「実際費用」の1/3 以上の「食費」』を徴収している場合には、
「食事の提供」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません。
③・「食事の提供」が上記①に該当しない場合であっても、
・「食事を提供している従業員」から『「実際費用」の1/3 未満の「食費」』を徴収している場合には、
『「実際費用」の1/3 』を限度として、「食事の提供」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
④・「食事の提供」が上記①に該当しない場合であって、
・「食事を提供している従業員」から「食費」を徴収していない場合には、
『「食事の提供」に掛かる「実際費用」』を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
|

※この『「食事の提供」に係る「現物給与」の取扱い』につきましては、『労働保険制度における「現物給与」の取扱い』の『 Ⅲ:「食事の供与による利益(食事の利益)」の取扱い 』にてご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、これらのリンクページもご覧頂きますようお願い致します。
3)「被服の提供・貸与」の取扱い
①・ 「被服の提供・貸与」が被服を業務上着用する目的で行われているような場合、
「被服の提供・貸与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません。
②・「被服の提供・貸与」が上記①に該当しない場合であっても、
・「被服を提供等している従業員」から『「実際費用」の1/3 以上の「被服費」』を徴収している場合には、
「被服の提供・貸与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含める必要はありません。
③・「被服の提供・貸与」が上記①に該当しない場合であっても、
・「被服を提供等している従業員」から『「実際費用」の1/3 未満の「被服費」』を徴収している場合には、
『「実際費用」の1/3 』を限度として、「被服の提供・貸与」を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
④・「被服の提供・貸与」が上記①に該当しない場合であって、
・「被服を提供等している従業員」から「被服費」を徴収していない場合には、
『「被服の提供・貸与」に掛かる「実際費用」』を『 労働保険料の算定基礎となる「賃金(給与支給額)」』に含めることが必要となります。
|

※この『「被服の提供・貸与」に係る「現物給与」の取扱い』につきましては、『労働保険制度における「現物給与」の取扱い』の『 Ⅳ:「被服の提供・貸与による利益(被服の利益)」の取扱い 』にてご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、これらのリンクページもご覧頂きますようお願い致します。
3、「従業員が負担する雇用保険料率」の確認
「給与計算で雇用保険を控除しようとする場合」には、
「従業員が負担する雇用保険料率」を確認して下さい。 |
なお、『 令和3年度の「従業員が負担する(失業等給付に係る)雇用保険料率」』は、会社が営む事業の種類ごとに以下の率となります。
会社が営む事業の種類 |
従業員が負担する「(失業等給付に係る)雇用保険料率」 |
一般の事業 |
0.003(0.3%) |
農林水産の事業
清酒製造の事業 |
0.004(0.4%) |
建設の事業 |
0.004(0.4%) |
※ 「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」以外の事業は、「一般の事業」となります。
※ 「各年度の雇用保険料率」につきましては、「厚生労働省のHP」にて確認することができます。
◆ 『「雇用保険料率」の適用期間 』 ◆
「その年度の雇用保険料率」の適用期間は、
「 その年の3月分の給与計算(雇用保険料控除計算)」から「 翌年の4月分の給与計算(雇用保険料控除計算)」までとなります。 |
◆ 「雇用保険料率」の改訂 ◆
「雇用保険料率」は、毎年「4月分の雇用保険料率」から変更される可能性があります。 |
従いまして、
「4月分の給与計算」を行う場合には、
上記の「厚生労働省のHP」で「雇用保険料率」が改訂されていないかをご確認頂ますようお願い致します。
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Ⅱ:給与計算で「控除する雇用保険料」の算定方法
上記Ⅰでご紹介させて頂きました確認を踏まえ、
給与計算で「控除する雇用保険料」の算定方法は、以下のものとなります。
雇用保険料の算定基礎となる「賃金」 × 従業員が負担する雇用保険料率 |
◆ 計算結果の端数処理 ◆
・上記の計算の結果、「1円未満の端数」が生じた場合には、50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上は切り上げることとなります。
・なお、上記とは別に、労使の間で慣習的な取扱い等の特約がある場合には、当該特約に従って処理することとなります。
Ⅲ:「雇用保険料の控除額」の算定例示
ここでは、「具体的な例示」を使用して、『「給与計算で控除する雇用保険料額」の算定方法』を具体的にご紹介させて頂きます。
なお、
・例示1では『「令和3年3月分の給与計算において「従業員給与から控除する雇用保険料の金額」の算定方法』を、
・例示2では『「令和3年4月分の給与計算において「従業員給与から控除する雇用保険料の金額」の算定方法』を、
・例示3では『「社宅の貸与」が行われている場合において「従業員給与から控除する雇用保険料の金額」の算定方法』を、
・例示4では『「食事の提供」が行われている場合において「従業員給与から控除する雇用保険料の金額」の算定方法』を、
・例示5では『「被服の提供」が行われている場合において「従業員給与から控除する雇用保険料の金額」の算定方法』を、
ご紹介させて頂きます。
例 示 1
『 令和3年3月分の従業員給与において「従業員給与から控除する雇用保険料の金額」』を算定する場合の例示を以下でご紹介致します。
◆ 設 例 ◆
小売業を営む会社における、R3年3月分の「給与支給状況」が以下のような場合を想定します。
(なお、以下の従業員につきましては、すべて「雇用保険の被保険者」であるとします。)

◆ 「 控除する雇用保険料 」の算定 ◆
1、「控除対象となる被保険者」の確認
上記全員が「雇用保険の被保険者」であることから、
「給与計算」におきましては、上記全員から「(従業員負担分の)雇用保険料」を控除することが必要となります。
2、『「雇用保険料の算定基礎」となる「賃金」』の計算
田中次郎 :給与支給額:366,800円 - 出張手当:4,000円 = 362,800円 |
※ 「出張手当」は、出張時の旅費等を実費精算する代わりに支給されたものであることから、『「雇用保険料の算定基礎」となる「賃金」』には含まれません。
安倍進ノ介 :給与支給額:287,000円 |
加藤花子 :給与支給額:67,800円 |
3、「従業員が負担する雇用保険料率」の確認
令和2年度(R2年4月~R3年3月)における『小売業の「従業員が負担する雇用保険料率」』は、「一般の事業」の雇用保険料率である「 0.003 」となります。
4、「控除する雇用保険料額」の算定
田中次郎 :362,800円 × 0.003 =1,088.4円 ⇒ 1,088円
安倍進ノ介 :287,000円 × 0.003 =861円
山田花子 :67,800円 × 0.003 =203.4円 ⇒ 203円
例 示 2
『 令和3年4月分の従業員給与において「従業員給与から控除する雇用保険料の金額」』を算定する場合の例示を以下でご紹介致します。
◆ 設 例 ◆
小売業を営む会社における、R3年4月分の「給与支給状況」が以下のような場合を想定します。
(なお、以下の従業員につきましては、すべて「雇用保険の被保険者」であるとします。)

◆ 「 控除する雇用保険料 」の算定 ◆
1、「控除対象となる被保険者」の確認
上記全員が「雇用保険の被保険者」であることから、
「給与計算」におきましては、上記全員から「(従業員負担分の)雇用保険料」を控除することが必要となります。
2、『「雇用保険料の算定基礎」となる「賃金」』の計算
田中次郎 : 給与支給額:357,000円 - 出張手当:4,000円 + 通勤定期代:9,800円 = 362,800円 |
※ 「出張手当」は、出張時の旅費等を実費精算する代わりに支給されたものであることから、『「雇用保険料の算定基礎」となる「賃金」』には含まれません。
※ 現物で支給された「通勤定期券代金」は、「その実際費用額」を『「雇用保険料の算定基礎」となる「賃金」』に含めます。
安倍進ノ介 :給与支給額:274,500円 + 通勤定期代:12,500円 = 287,000円 |
※ 現物で支給された「通勤定期券代金」は、「その実際費用額」を『「雇用保険料の算定基礎」となる「賃金」』に含めます。
加藤花子 :給与支給額:73,800円 - 出産祝金:10,000円 + 通勤回数券:4,000円 = 67,800円 |
※ 「出産祝金」は、会社から「恩恵的に支給されたもの」であることから、『「雇用保険料の算定基礎」となる「賃金」』には含まれません。
※ 現物で支給された「通勤回数券代金」は、「その実際費用額」を『「雇用保険料の算定基礎」となる「賃金」』に含めます。
3、「従業員が負担する雇用保険料率」の確認
令和3年度(R3年4月~R4年3月)における『小売業の「従業員が負担する雇用保険料率」』は、「一般の事業」の雇用保険料率である「 0.003 」となります。
4、「控除する雇用保険料額」の算定
田中次郎 :362,800円 × 0.003 =1,088.4円 ⇒ 1,088円
安倍進ノ介 :287,000円 × 0.003 =861円
山田花子 :67,800円 × 0.003 =203.4円 ⇒ 203円
例 示 3 :「社宅の貸与」が行われている場合
◆ 設 例 ◆
・以下の従業員(勤務地:東京)に対して「社宅の貸与」が行われていると仮定します。
・なお、会社が営む事業は、建設業であると仮定します。

◆ 社宅の貸与状況 ◆
ケース1
「社宅を貸与している従業員」と「社宅を貸与していない従業員」との均衡を図るための「均衡手当」は支給されていない場合。
ケース2
「社宅を貸与している従業員」との均衡を図るため、「社宅を貸与していない従業員」に「均衡手当」を「2万円」支給している場合。
2-1:上記とともに、「社宅を貸与している従業員」から「社宅の賃料」として「1万円」を徴収している。
2-2:上記とともに、「社宅を貸与している従業員」から「社宅の賃料」として「5,000円」を徴収している。
2-3:上記とともに、「社宅を貸与している従業員」から「社宅の賃料」は徴収していない。
ケース3
「社宅を貸与している従業員」との均衡を図るため、「社宅を貸与していない従業員」に「均衡手当」を「4万5千円」支給している場合。
3-1:上記とともに、「社宅を貸与している従業員」から「社宅の賃料として15,000円」を徴収している。
3-2:上記とともに、「社宅を貸与している従業員」から「社宅の賃料として1万円」を徴収している。
3-3:上記とともに、「社宅を貸与している従業員」から「社宅の賃料」は徴収していない。
◆ 「 控除する雇用保険料 」の算定 ◆
ケース1の場合
「社宅を貸与していない従業員」に対して、「均衡手当」が支給されていない場合には、
「社宅の借用を受けている従業員」の「居住の利益」は、
『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含める必要はないため、 |
当該従業員の給与計算において「控除する雇用保険料」は、
( 366,800円 - 4,000円 ) × 0.004(建設業の保険料率)= 1,451円 となります。 |
ケース2の場合
『厚生労働大臣が定める「社宅の利益額」』の計算
住居用の部屋面積:24㎡ ÷ 1.65㎡ × 1畳あたりの利益額:2,830円 = 41,163円 (円未満切捨) |
『厚生労働大臣が定める「社宅の利益額」』と「均衡手当」の比較
20,000円 < 41,163円 ⇒「社宅の利益額」は「20,000円」となります。 |
ケ ー ス 2 – 1
20,000円 × 1/3 = 6,666円 < 10,000円(従業員からの徴収額) であるため、
「社宅の利益額」は、『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることは不要となります。 |
このため、当該従業員の給与計算において「控除する雇用保険料」は、
( 366,800円 - 4,000円 ) × 0.004 = 1,451円 となります。 |
ケ ー ス 2 – 2
20,000円 × 1/3 = 6,666円 > 5,000円(従業員からの徴収額) であるため、
『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に「6,666円–5,000円=1,666円」を「社宅の利益額」として含めることが必要となります。 |
このため、当該従業員の給与計算において「控除する雇用保険料」は、
( 366,800円 - 4,000円 + 1,666円 ) × 0.004 = 1,458円 となります。 |
ケ ー ス 2 – 3
「社宅を貸与している従業員」から「賃料」の徴収はないことから、
「社宅貸与の価額」である20,000円全額を『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることが必要となるため、 |
当該従業員の給与計算において「控除する雇用保険料」は、
( 366,800円 - 4,000円 + 20,000円 ) × 0.004 = 1,531円 となります。 |
ケース3の場合
『厚生労働大臣が定める「社宅の利益額」』の計算
住居用の部屋面積:24㎡ ÷ 1.65㎡ × 1畳あたりの利益額:2,830円 = 41,163円 (円未満切捨) |
『厚生労働大臣が定める「社宅の利益額」』と「均衡手当」の比較
41,163円 (厚生労働大臣が定める「社宅の利益額」) < 45,000円 (均衡手当額)
⇒「社宅の利益額」は「41,163円」となります。 |
ケ ー ス 3- 1
41,163円 × 1/3 = 13,721円 < 15,000円(従業員からの徴収額) であるため、
「社宅の利益額」は、『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることは不要となります。 |
このため、当該従業員の給与計算において「控除する雇用保険料」は、
( 366,800円 - 4,000円 ) × 0.004 = 1,451円 となります。 |
ケ ー ス 3 – 2
41,163円 × 1/3 = 13,721円 > 10,000円(従業員からの徴収額) であるため、
『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に「13,721円–10,000円=3,721円」を「社宅の利益額」として含めることが必要となります。 |
このため、当該従業員の給与計算において「控除する雇用保険料」は、
( 366,800円 - 4,000円 + 3,721円 ) × 0.004 = 1,466円 となります。 |
ケ ー ス 3 – 3
「社宅を貸与している従業員」から「賃料」の徴収はないことから、
「社宅貸与の価額」である41,163円全額を『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることが必要となるため、 |
当該従業員の給与計算において「控除する雇用保険料」は、
( 366,800円 - 4,000円 + 41,163円 ) × 0.004 = 1,616円 となります。 |
例 示 4 :「食事の提供」が行われている場合
◆ 設 例 ◆
・以下の従業員(勤務地:東京)に対して「食事の提供」が行われていると仮定します。
・なお、会社が営む事業は、サービス業であると仮定します。

◆ 食事の提供状況 ◆
ケース1
・当月において、昼食を20日提供し、
・当該従業員から「食事代」として1食につき「300円」を徴収している。
ケース2
・当月において、昼食を22日提供し、
・当該従業員から「食事代」として1食につき「50円」を徴収している。
ケース3
・当月において、昼食を18日提供し、
・当該従業員から「食事代」は徴収していない。
◆ 「 控除する雇用保険料 」の算定 ◆
ケース1
『厚生労働大臣が定める「食事提供の利益額」』の計算
昼食提供回数:20回 × 昼食1食あたりの利益額:250円 = 5,000円 |
『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含める「食事提供の利益額」
5,000円 × 1/3 = 1,666円 < 20回 × 300円 = 6,000円(従業員からの徴収額)であるため、
「食事提供の利益額」は、『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることは不要となります。 |
このため、当該従業員の給与計算において「控除する雇用保険料」は、
( 366,800円 - 4,000円 ) × 0.003 = 1,088円 となります。 |
ケース2
『厚生労働大臣が定める「食事提供の利益額」』の計算
昼食提供回数:22回 × 昼食1食あたりの利益額:250円 = 5,500円 |
『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含める「食事提供の利益額」
5,500円 × 1/3 = 1,833円 > 22回 × 50円 = 1,100円(従業員からの徴収額)であるため、
『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に「1,833円–1,100円=733円」を「食事提供の利益額」として含めることが必要となります。 |
このため、当該従業員の給与計算において「控除する雇用保険料」は、
( 366,800円 - 4,000円 + 733円 ) × 0.003 = 1,091円 となります。 |
ケース3
『厚生労働大臣が定める「食事提供の利益額」』の計算
昼食提供回数:18回 × 昼食1食あたりの利益額:250円 = 4,500円 |
『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含める「食事提供の利益額」
「食事を提供している従業員」から「食費」の徴収はないことから、
「食事提供の価額」である4,500円全額を『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含めることが必要となります。 |
このため、当該従業員の給与計算において「控除する雇用保険料」は、
( 366,800円 - 4,000円 + 4,500円 ) × 0.003 = 1,102円 となります。 |
例 示 5 :「制服の提供」が行われている場合
◆ 設 例 ◆
・以下の従業員(勤務地:東京)に対して「制服の提供」が行われていると仮定します。
・なお、会社が営む事業は、製造業であると仮定します。

◆ 「 控除する雇用保険料 」の算定 ◆
「業務上着用することを条件」に会社から「被服の提供」が行われている場合には、
「被服の提供を受けている従業員」の「被服の利益」は、
『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』に含める必要はないため、
|
当該従業員の給与計算において「控除する雇用保険料」は、
( 366,800円 - 4,000円 ) × 0.003(一般の事業の保険料率)= 1,088円 となります。 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『給与計算において「控除する雇用保険料の金額」の算定方法』につき、ご紹介させて頂いております。
「控除雇用保険料額の算定方法」につきまして
給与計算において「控除する雇用保険料の金額」を算定すること自体は、
上記のように比較的簡単に算定することができるため、是非この機会に算定方法をマスターして頂きますようお願い致します。
ただし、「社宅の貸与、食事の提供、被服の貸与・提供」などの「現物給与」が支給されている場合には、
『雇用保険料の算定基礎となる「賃金」』を把握する場合に、少々厄介な計算が必要となりますので、
上記Ⅲの例示3、4、5等で記載させて頂きました計算例示をご確認頂ますようお願い致します。
「雇用保険料率」の改訂につきまして
上記Ⅰ-3でご紹介させて頂いておりますように、
「4月分の給与計算」を行う場合には、『控除する雇用保険料の算定基礎率である「保険料率」』が改訂される可能性がありますので、
「4月分の給与計算」を行う場合には、「雇用保険料率」の改訂がなされているか否かのご確認をして頂きますようお願い致します。