「掛売上取引における代金回収取引」につきまして、「取引の概要」のご説明を行った上で、「会計帳簿への基本的な入力方法」、「代金回収取引の仕訳」等を、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。

 

 

なお、ここでの内容を理解して頂くためには、「掛売上取引」の内容を理解して頂くことが必要となります。

もし、この点につきましてよくわからないという場合には、 ⇒コチラを先にご覧ください。

 

 

Ⅰ:「代金回収取引」とは

1、代金回収取引

「掛売上取引」における「代金回収取引」とは、

  • 得意先(顧客)から「現金」又は「預金入金銀行振込)」により「販売代金・サービス代金」が回収されるとともに、
  • 得意先に対して取得していた『「販売代金・サービス代金」を請求することができる権利債権)』が消滅する取引をいいます。

 

掛売上取引(代金回収取引)の意義

 

2、代金回収の取引形態

1)取引形態

会社は、『掛売上取引における「販売取引」』によって、

『「販売代金・サービス代金」を顧客に請求することができる権利売掛金)』を取得しています。

上記の「請求権(売掛金)」は、

月次等の単位で、請求先(顧客等)ごとに集計され「請求書」が作成され、各請求先に送付されます。

 

そして後日

  • 請求先から『請求代金に相当する「現金」』を受け取ること 又は
  • 請求先から『請求代金に相当する「預金入金銀行振込)」』を受けること

により「掛売上取引」に対する「販売代金・サービス代金」を回収します。

また、この「代金回収」と同時に、

会社が取得していた「売掛金」は消滅します

上記の

  • 販売代金・サービス代金」の回収がなされ、
  • 売掛金」が消滅する取引を、

「掛売上取引」における「代金回収取引」といいます。

なお、「代金回収取引」が完了することにより、1つの「掛売上取引」が完結します

 

2)代金回収方法別の取引形態

『「掛売上取引」における「代金回収取引」』では、

  • 「販売代金・サービス代金」が集金等により「現金」で回収される場合と
  • 「販売代金・サービス代金」が「会社の預金口座」に「振込入金」されることにより回収される場合があります。

このため、以下では、「現金で回収される場合」「預金口座に入金される場合」に分けて、「代金回収取引の取引形態」につきご説明させて頂きます。

 

①現金回収する場合

この場合の「代金回収取引」は、

  • 会社は請求先(顧客等)から「現金」を受け取るとともに、
  • 請求先に対する「売掛金」が消滅する  取引となります。

この『「現金受取」による「代金回収取引」』は、

会社の「現金」が増加することになるため、会社にとっては、「現金の入金を伴う取引」となります。

 

掛「掛売上取引」の「代金回収取引」の概要(現金回収)

 

②得意先から銀行振込により回収する場合

この場合の「代金回収取引」は、

  • 会社は請求先(顧客等)から「預金入金」を受け取るとともに、
  • 請求先に対する「売掛金」が消滅する    取引となります。

この『「預金受取」による「代金回収取引」』は、

  • 会社の「預金普通預金当座預金)」が増加することになるため、会社にとっては、「預金口座の預入を伴う取引」となります。

 

「掛売上取引」の「代金回収取引」の概要(預金回収)

 

 

Ⅱ:「代金回収取引」で発行される書類(入金証憑)

1、会社から顧客に発行される書類

『「掛売上取引」における「代金回収取引」』において、「会社から顧客に発行される書類」についてご紹介致します。

「会社から顧客に発行される書類」につきましては、上記Ⅰでご説明させて頂きました「代金回収取引の形態」ごとに異なるため、下記では、「取引形態ごと」にご説明させて頂きます。

 

1)「現金」により回収される場合

集金等により「販売代金・サービス代金」が「現金」により回収された場合には、「販売代金・サービス代金」の支払を受けたことを証明するために、

会社から請求先(顧客等)に対して、「領収書」が発行されます。

そして、上記の書類が発行された場合には、「領収書の控え」が会社に保管されます。

この書類は、「販売代金・サービス代金を受領したこと証明する」書類(入金証憑)となります。

 

「掛売上取引」(代金回収)の証憑(現金回収)

 

2)「預金入金」により回収される場合

顧客等が金融機関の振込サービスを利用することにより、「販売代金・サービス代金」が「預金入金」により回収された場合には、「振込」がなされたことを証明するために、金融機関から「振込受領書ATM利用明細書)等」が顧客等に発行されます。

このため、「販売代金・サービス代金」が「預金入金」により回収される場合には、

会社から顧客に対して、通常、「入金証憑」の発行はなされません

ただし、「販売代金・サービス代金」が「預金入金」された場合には、

会社の「普通預金通帳」や「当座預金明細書」に「預け入れ記録」が記帳されます。

会社にとっては、この「通帳記録」が、この場合における「販売代金・サービス代金を受領したこと証明する」書類(入金証憑)となります。

 

「掛売上取引」(代金回収)の証憑(預金回収)

 

2、入金証憑の保存

上記の「領収書の控え」や「預金通帳」等の「掛売上取引の入金証憑」は、「掛売上の代金が回収されたことを証明する」ものとなります。

税務調査を受けた場合等には、これらの「掛売上に対する入金証憑」の提出を求められることがあります。このため、これらの証憑は、「税務上定められた期間適切に会社に保存することが必要となります。

 

 

Ⅲ:「代金回収取引」の会計帳簿への基本的入力方法

1、会計帳簿への入力種類

会計帳簿への入力種類につきましては、上記Ⅰでご説明させて頂きました「代金回収取引の形態」ごとに異なってきます。

これにつき、下記でご説明させて頂きます。

 

1)「現金」により回収される場合

『「現金」による「代金回収取引」』は、3種類の会計帳簿への入力方法のうち、

  • 現金出納帳」に入力する方法によって行います。

『「掛売上取引」における「代金回収取引」』で「現金により販売代金・サービス代金を回収する場合」は、上記Ⅰで記載致しましたように

  • 現金の入金を伴う取引となります。

このため、『「現金」による「代金回収取引」』につきましては、「現金出納帳」へ入力することにより、「会計帳簿」に入力されることになります。

 

2)「預金入金」により回収される場合

『「預金入金」による「代金回収取引」』は、3種類の会計帳簿への入力方法のうち、

  • 預金出納帳」に入力する方法によって行います。

『「掛売上取引」における「代金回収取引」』で「銀行振込により販売代金・サービス代金を回収する場合」は、上記Ⅰで記載致しましたように

  • 預金口座の預入を伴う取引となります。

このため、『「預金入金」による「代金回収取引」』につきましては、「預金出納帳」へ入力することにより、「会計帳簿」に入力されることになります。

 

2、「現金出納帳」「預金出納帳」への入力単位

上記1で

  • 『「現金」による「代金回収取引」』につきましては、「現金出納帳」へ入力することにより、
  • 『「預金入金」による「代金回収取引」』につきましては、「預金出納帳」へ入力することにより、

「会計帳簿(会計ソフト)」に入力することにつきご説明致しましたが、

ここでは、「それぞれの出納帳」へ「どのような単位で入力するか」につき、ご紹介させて頂きます。

 

1)「現金」により回収される場合

『「現金」による「代金回収取引」』が行われると、

  • 会社の「現金」は、『「領収書」に記載された金額』分増加します。
  • 他方、会社の「売掛金」は、『「領収書」に記載された金額』分減少します。

このため、『「現金」による「代金回収取引」』の「現金出納帳」への入力は、

1つ1つの代金回収取引単位(すなわち「領収書(現金増加金額)」単位)で、入力することが必要となります。

 

掛売上取引(代金回収)の現金出納帳への入力概要

 

2)「預金入金」により回収される場合

『「預金入金」による「代金回収取引」』が行われると、

  • 会社の「預金」は、『「通帳預入」記帳された金額』分増加します。
  • 他方、会社の「売掛金」は、『「通帳預入」記帳された金額』分減少します。

このため、『「預金預入」による「代金回収取引」』の「預金出納帳」への入力は、

1つ1つの「代金回収取引単位(すなわち「通帳の預入金額単位)で、入力することが必要となります。

 

掛売上取引(代金回収)の預金出納帳への入力概要

 

 

Ⅳ:「現金回収」による「代金回収取引」の仕訳

『「現金」による「代金回収取引」』は、「現金出納帳」から「会計帳簿(会計ソフト)」への入力を行うこととなり、「仕訳」の形での入力が不要となりますので、「代金回収取引」に関する仕訳知識は必要ありません

ただし「現金出納帳」から会計帳簿に入力する場合であっても、会計ソフトにより、自動的に仕訳は生成されています(仕訳の自動生成)。

ここでは、参考の意味&仕訳の理解のために、「現金回収による代金回収取引の仕訳」を下記でご紹介致します。

 

1、仕訳のための取引把握

この場合の「代金回収取引」は、

  • 会社の現金資産項目)が増加し、
  • 会社の売掛金資産項目)が減少する取引となります。

 

2、借方(左側)勘定科目と貸方(右側)勘定科目の選択

1)「資産項目の増加」と「資産項目の減少」の配置場所

  • 資産項目増加は、仕訳の「借方左側)」に配置します。
  • 資産項目減少は、仕訳の「貸方右側)」に配置します。

これにつきましての詳細は、 ⇒ コチラをご覧ください。

 

2)選択する勘定科目

上記1)の仕訳配置場所で、以下の勘定科目を選択します。

  • 仕訳の「借方左側)」には、「現金」という勘定科目を選択入力します。
  • 仕訳の「貸方右側)」には、「売掛金」という勘定科目を選択入力します。

上記により、『「現金」が増加したこと』及び『「売掛金」が減少したこと』を会計帳簿へ入力することができます。

 

3、売掛金に対する補助科目の設定

売掛金」という勘定科目に対して、販売取引で「売掛金」に付けたものと同じ請求先入金先名称」を、補助科目として入力します。

『「掛売上取引」における「販売取引」』において、「売掛金」という勘定科目に対して、請求先別に管理するために、「請求先の名称」を補助科目として設定しています。

『「掛売上取引」における「代金回収取引」』においては、取り崩す売掛金」に対しても「請求先の名称」を補助科目として入力することが必要となります。
(なお、この場合の「請求先名称」は、「販売取引」で「売掛金」に付けた「請求先名称」と同じ名称となります。)

この入力より、『特定の請求先に対する売掛金」』の減少を会計帳簿に反映させることができます。

 

4、仕訳

『掛売上取引における「代金回収取引」』の仕訳は、以下のような仕訳となります。

借方勘定科目 補助科目 借方金額 貸方勘定科目 補助科目 貸方金額
現金※1   xxxx円※2 売掛金※3 請求先(入金先)の名称※4 xxxx円※2

※1:「現金」という「資産項目増加」であるため、「現金」という勘定科目を、仕訳の「左側借方)」に計上します。
⇒「現金出納帳」の入金欄に金額の入力をすることにより、この記載が自動生成されます。

※2:「入金金額」を入力します。

※3:「売掛金」という「資産項目減少」であるため、「売掛金」という勘定科目を、仕訳の「右側貸方)」に計上します。
⇒「現金出納帳」の「相手勘定科目の選択入力により、この記載が自動生成されます。

※4:上記※3の「売掛金」に付ける補助科目である「請求先入金先の名称」を記載します。
⇒「現金出納帳」の「相手補助科目の選択入力により、この記載が自動生成されます。

 

5、弥生会計で自動作成される仕訳の確認

弥生会計で自動的に作成される仕訳は、「仕訳日記帳」により確認することができます。

 

 

Ⅴ:「預金回収」による「代金回収取引」の仕訳

『「預金入金」による「代金回収取引」』は、「預金出納帳」から「会計帳簿(会計ソフト)」への入力を行うこととなり、「仕訳」の形での入力が不要となりますので、「代金回収取引」に関する仕訳知識は必要ありません

ただし「預金出納帳」から会計帳簿に入力する場合であっても、会計ソフトにより、自動的に仕訳は生成されています(仕訳の自動生成)。

ここでは、参考の意味&仕訳の理解のために、「預金回収による代金回収取引の仕訳」を下記でご紹介致します。

 

1、仕訳のための取引把握

この場合の「代金回収取引」は、

  • 会社の預金資産項目)が増加し、
  • 会社の売掛金資産項目)が減少する取引となります。

 

2、借方(左側)勘定科目と貸方(右側)勘定科目の選択

1)「資産項目の増加」と「資産項目の減少」の配置場所

  • 資産項目増加は、仕訳の「借方左側)」に配置します。
  • 資産項目減少は、仕訳の「貸方右側)」に配置します。

これにつきましての詳細は、 ⇒ コチラをご覧ください。

 

2)選択する勘定科目

上記1)の仕訳配置場所で、以下の勘定科目を選択します。

  • 仕訳の「借方左側)」には、「普通預金」又は「当座預金」という勘定科目を選択入力します。
  • 仕訳の「貸方右側)」には、「売掛金」という勘定科目を選択入力します。

上記により、『「預金」が増加したこと』及び『「売掛金」が減少したこと』を会計帳簿へ入力することができます。

 

3、売掛金に対する補助科目の設定

売掛金」という勘定科目に対して、販売取引で「売掛金」に付したものと同じ請求先入金先名称」を、補助科目として入力します。

『「掛売上取引」における「販売取引」』において、「売掛金」という勘定科目に対して、請求先別に管理するために、「請求先の名称」を補助科目として設定しています。

『「掛売上取引」における「代金回収取引」』においては、取り崩す売掛金」に対しても「請求先の名称」を補助科目として入力することが必要となります。
(なお、この場合の「請求先名称」は、「販売取引」で「売掛金」に付けた「請求先名称」と同じ名称となります。)

この入力より、『特定の請求先に対する売掛金」』の減少を会計帳簿に反映させることができます。

 

4、仕訳

『掛売上取引における「代金回収取引」』の仕訳は、以下のような仕訳となります。

借方勘定科目 補助科目 借方金額 貸方勘定科目 補助科目 貸方金額
預金※1 銀行名称 xxxx円※2 売掛金※3 請求先(入金先)の名称※4 xxxx円※2

※1:「預金(普通預金、当座預金)」という「資産項目増加」であるため、「普通預金」又は「当座預金」という勘定科目を、仕訳の「左側借方)」に計上します。
⇒「預金出納帳」の入金欄に金額の入力をすることにより、この記載が自動生成されます。

※2:「入金金額」を入力します。

※3:「売掛金」という「資産項目減少」であるため、「売掛金」という勘定科目を、仕訳の「右側貸方)」に計上します。
⇒「預金出納帳」の「相手勘定科目の選択入力により、この記載が自動生成されます。

※4:上記※3の「売掛金」に付ける補助科目である「請求先入金先の名称」を記載します。
⇒「預金出納帳」の「相手補助科目の選択入力により、この記載が自動生成されます。

 

5、弥生会計で自動作成される仕訳の確認

弥生会計で自動的に作成される仕訳は、「仕訳日記帳」により確認することができます。

 

 

Ⅵ:「掛売上取引」における「代金回収取引」の関連記事

以下のリンクページでは、『「掛売上取引」における「代金回収取引」』を会計帳簿に入力するために必要となる事項を記載しております。

この記事に続く『「掛売上取引」における「代金回収取引」』の会計帳簿への入力方法につきましては、以下リンクページをご覧ください。

 

「代金回収取引」の「現金出納帳」又は「預金出納帳」への入力方法

・「代金回収取引」を「現金出納帳」又は「預金出納帳」に入力する方法
・入力後における入力確認方法 etc.
を以下のリンクページで記載しております。

代金回収取引の「現金出納帳」「預金出納帳」への入力

 

 

税理士事務所・会計事務所からのPOINT

『「掛売上取引」における「代金回収取引」』につきましては、まず、

  • 現金により回収される場合
  • 預金振込により回収される場合がある

ということをご確認して頂くことが必要となります。

その上で、

  • 前者につきましては、「現金出納帳」への入力
  • 後者につきましては、「預金出納帳」への入力

が必要となるということをご確認下さい。

 

「代金回収取引」の仕訳につきましては、実務上では意識する必要はありませんが、仕訳というものに馴れて頂くために記載しておりますので、この機会に是非ご一読いただきますようお願い致します。