ここでは、『「標準報酬月額」の「随時改定」』の内容を、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「標準報酬月額」の随時改定の必要性
’ 「社会保険料の計算」における「標準報酬の利用」 ’
毎月の給与計算で従業員等に対して支給される「給与支給額」等につきましては、
・勤怠時間により変動する「法定手当(時間外労働手当、深夜労働手当、法定休日労働手当)」が支給されるため、
・また「精皆勤手当」「出張手当」「宿直・日直手当」等の臨時的な「任意手当」が支給されることがあるため、
毎月変動することが予想されますが、
このような毎月変動する「給与支給額」等に基づいて社会保険料の計算を行うことは、
従業員・役員からの社会保険料の徴収計算を行う会社にとっても、会社からの社会保険料の徴収計算を行う保険者にとっても、事務処理が煩雑になります。
このため、「社会保険料の計算」におきましては、
- 毎月変動することが予想される「給与支給額」等を算定基礎として計算するのではなく、
- 『ある一定期間における「給与支給額」「役員報酬額」を月平均した金額(報酬月額)』に基づいて決定された「標準報酬月額」というものを設け、
この「標準報酬月額」を算定基礎として計算することとしています。
’ 「標準報酬月額の随時改定」の必要性 ’
「標準報酬月額制度」につきましては、
上記のように、社会保険料を納付する会社及び社会保険料を徴収する保険者の事務処理の簡便化を図ったものであることから、頻繁に改定されることは、「標準報酬月額制度」を設けた目的を損なうものとなります。
このため、「標準報酬月額制度」におきましては、原則、
|
他方、会社から従業員・役員に支払われる「給与・役員報酬」は、通常「昇給・降給」等を伴い「給与・役員報酬」が大きく変動するが想定され、
このような場合には、『実際の「給与・役員報酬」の変更』に合わせ、『「定時決定」で決定された「標準報酬月額」』を変更することが必要となります。
すなわち、「会社や従業員・役員が負担しなければならない社会保険料」を、「実際に支払われる給与・役員報酬の水準」に修正するためには、『社会保険料の計算基礎となる「標準報酬月額」』を改定することが必要となります。
このため、社会保険制度におきましては、
「実際の給与・役員報酬の支給」が大きく変動した場合等の一定の条件を充たした場合には、個別的に「標準報酬月額」を改定することとしています。 |
この『「標準報酬月額」の個別的な改定』のことを「標準報酬月額の随時改定」といいます。 |
Ⅱ:「随時改定」がなされるための要件
「随時改定」がなされるためには、以下の3つの要件を全て満たすことが必要となります。
第1要件
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第2要件
|
第3要件
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第1要件 :「固定的賃金」の変動につきまして
制度上、「随時改定」は、継続的に報酬額が上昇又は減少する場合に限って行われることとしています。
このため、
・単に「変動的賃金」が変動したことのみで報酬額が変動した場合には「随時改定」は行われず、
・「随時改定」が行われるためには、継続的に報酬額の変動が見込まれる『「固定的賃金」の変動』を伴うことが要件となります。
この第1要件につきましては、以下の点に留意が必要となります。
’ 「固定的賃金の変動」内容 ’
「固定的賃金」とは、
「給与・役員報酬の支給額」のうち、『「支給額」や「支給率」が決まっているもの』をいい |
「固定的賃金の変動」とは、
『「支給額」や「支給率」が決まっているもの』が変動することをいいます。 |
具体的には、以下のものが「固定的賃金の変動」に該当します。
|
一時帰休(会社都合のレイオフ)による「休業手当」の支給
会社都合により一時帰休(レイオフ)が行われたため、継続して3か月を超えて通常の報酬よりも低額の「休業手当」等が支払われた場合は、
「固定的賃金の変動」とみなし※、「随時改定」の対象となります。
また、一時帰休が解消され、継続して3か月を超えて通常の報酬が支払われるようになった場合も、
「固定的賃金の変動」とみなし、「随時改定」の対象となります。
※ 「一時帰休(レイオフ)」は、「報酬支払側である会社の都合」による報酬の引き下げであることから、「固定的賃金の変動」に該当するものと看做します。
休職(従業員等の自己都合休職)による「休職給」の支給
従業員等の自己都合による休職により「休職給」等が支払われた場合は、
・「報酬支払側である会社の都合」による報酬の引き下げではないため「固定的賃金の変動」とは看做さず、
・この場合には「随時改定」の対象とはなりません。
’ 「固定的賃金の変動幅」につきまして ’
「随時改定」が行われるためには、「固定的賃金の変動」を伴うことが要件となりますが、
「固定的賃金の変動幅」についての「特別の要件」は設定されていないため、
「1円でも固定的賃金の変動」がある場合には、「固定的賃金が変動したもの」に該当することになります。 |
第2要件 :「標準報酬月額」の2等級以上の変動につきまして
「社会保険料の計算」においては、会社と保険者の事務処理の簡便化を図るために「標準報酬月額制度」が採用されているため、「随時改定」が頻繁に行われることはこの本来的な制度目的を損なうこととなります。
このため、制度上は、『従前の「報酬月額」』を使用し続けることで、社会保険料の負担に不公平が生じるような場合に限って、
すなわち『改定される「標準報酬月額」』と『従前の「標準報酬月額」』との間に、2等級以上の差異が生じている場合に限って、「随時改定」を行うこととしています。
この第2要件につきましては、以下の点に留意が必要となります。
’ 「変動月」と「変動月を含む3ヶ月間」につきまして ’
第2要件にある「変動月」とは、
固定的賃金の変動を伴って、実際に給与・役員報酬の支払がなされた「最初の月」をいい、 |
「変動月を含む3ヶ月間」とは、
「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」をいいます。 |
このため、例えば、
・『「固定的賃金」の変動』に係る給与計算期間が「3月1日~3月31日」、支払日が「4月10日」の場合には、
⇒「4月」が「変動月」となり、「4月、5月、6月」が「変動月を含む3ヶ月間」となります。
・『「固定的賃金」の変動』に係る給与計算期間が「2月16日~3月15日」、支払日が「3月25日」の場合には、
⇒「3月」が「変動月」となり、「3月、4月、5月」が「変動月を含む3ヶ月間」となります。
’ 『「報酬額」の対象範囲』につきまして ’
『「随時改定」による「標準報酬月額」』を決定するためには、
「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」の「3ヶ月間に支払われた報酬額(給与・役員報酬額)」の「平均月額」を計算することが必要となりますが、
この「3ヶ月間に支払われた報酬額」の対象となる『「給与・役員報酬」の範囲』は、
社会保険制度において「報酬」とされるものが対象となります。 |
すなわち、
|
※ なお、この点につきましては、別途『随時改定における「報酬月額(平均月額)」の算定方法』の『Ⅱ:「3ヶ月間の報酬支払額」に含める「報酬の範囲」』で詳細に記載しておりますので、必要がある場合には、当該リンクページをご覧頂きますようお願い致します。
’ 『「平均月額」に対応する「標準報酬月額」』の確認 ’
「随時改定」の第2要件を満たすためには、『「平均月額」に対応する「標準報酬月額」』と『従前の「報酬月額」』との差異が2等級以上となることが必要となりますが、
この差異を確認するためには、
全国健康保険協会等が毎年公表する「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」等を利用し、 『「平均月額」に対応する「標準報酬月額」』を会社で把握することが必要となります。 |
’ 『「固定的賃金」の変動方向』と『「標準報酬月額」の差異方向』の一致 ’
「随時改定」が行われるためには、
が一致していることが必要となります。 |
すなわち、
- 昇給等により「固定的賃金」が上昇する場合には、
『「平均月額」に対応する「標準報酬月額」』が『従前の「標準報酬月額」』に比べ2等級以上上昇することが必要であり、 - 降給等により「固定的賃金」が下落する場合には、
『「平均月額」に対応する「標準報酬月額」』が『従前の「標準報酬月額」』に比べ2等級以上下落することが必要となります。
このため、
- 「固定的賃金」が上昇した場合であっても、「残業手当」等の「変動的賃金」が減少し、『「平均月額」に対応する「標準報酬月額」』が『従前の「標準報酬月額」』に比べ2等級以上下落する場合には、「随時改定」はなされません。
- また、「固定的賃金」が下落した場合であっても、「残業手当」等の「変動的賃金」が増加し、『「平均月額」に対応する「標準報酬月額」』が『従前の「標準報酬月額」』に比べ2等級以上上昇する場合には、「随時改定」はなされません。
’ 「最高等級」及び「最低等級」の場合の「随時改定」 ’
「健康保険の等級」や「厚生年金保険の等級」が「最高等級」「最低等級」の場合には、
- 「最高等級」の「上の等級」がない、「最低等級」の「下の等級」がない
- 「最高等級」及び「最低等級」は、『その等級に属する「報酬月額」の範囲が広い』等の理由から
『「平均月額」に対応する「標準報酬月額」』が『従前の「標準報酬月額」』に比べ実質的に2等級以上の差異が生じている場合であっても、形式的には1等級の差異しか生じないことがあります。
このような場合には、形式的には1等級の差異しか生じていない場合であっても「随時改定」を行うことが必要となります。
「最高等級」及び「最低等級」において、「実質的に2等級以上の差異が生じている」場合とは以下のものとなります。
健 康 保 険 ’
【「固定的な賃金」が上昇する場合】
従前の標準報酬月額 | 3ヶ月間の平均報酬月額 | 随時改定後の標準報酬月額 | |
等級 | 報酬月額 | ||
1等級 | 53千円未満の場合 | 63千円以上となった場合 | 2等級に随時改定 |
49等級 | - | 1,415千円以上となった場合 | 50等級に随時改定 |
【「固定的な賃金」が下落する場合】
従前の標準報酬月額 | 3ヶ月間の平均報酬月額 | 随時改定後の標準報酬月額 | |
等級 | 報酬月額 | ||
2等級 | - | 53千円未満となった場合 | 1等級に随時改定 |
50等級 | 1,415千円以上の場合 | 1,355千円未満となった場合 | 49等級に随時改定 |
厚 生 年 金 保 険 ’
【「固定的な賃金」が上昇する場合】
従前の標準報酬月額 | 3ヶ月間の平均報酬月額 | 随時改定後の標準報酬月額 | |
等級 | 報酬月額 | ||
1等級 | 83千円未満の場合 | 93千円以上となった場合 | 2等級に随時改定 |
30等級 | - | 635千円以上となった場合 | 31等級に随時改定 |
【「固定的な賃金」が下落する場合】
従前の標準報酬月額 | 3ヶ月間の平均報酬月額 | 随時改定後の標準報酬月額 | |
等級 | 報酬月額 | ||
2等級 | - | 83千円未満となった場合 | 1等級に随時改定 |
31等級 | 635千円以上の場合 | 605千円未満となった場合 | 30等級に随時改定 |
第3要件 :3ヶ月間の「報酬支払基礎日数」につきまして
「支払基礎日数」が極端に少なくなったことが原因で報酬額が下落した場合には、「随時改定」は行われません。
このため、制度上では、「随時改定」が行われるためには、
『「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」のいずれにおいても「報酬支払基礎日数」』が、
正社員・パート従業員(短時間就労者)の場合には「17日以上」、短時間労働者の場合には「11日以上」あることを要求しています。
この第3要件につきましては、以下の点に留意が必要となります。
’ 「報酬支払基礎日数」 ’
「報酬支払基礎日数」は、
「その月に支払われた報酬(給与・役員報酬)」の「計算対象となった日数」のことをいいます。 |
’ 「報酬支払基礎日数」のカウント対象期間 ’
「報酬月額」の算定対象となる「変動月、変動月の翌月、変動月の翌々月の報酬支払額」は、あくまで「変動月、変動月の翌月、変動月の翌々月に支払われた報酬」となりますが、
『「変動月報酬支払額」「変動月の翌月の報酬支払額」「変動月の翌々月の報酬支払額」に対する「報酬支払基礎日数」』は、
「変動月に支払われた報酬の計算対象期間における支払対象日数」
「変動月の翌月に支払われた報酬の計算対象期間における支払対象日数」
「変動月の翌々月に支払われた報酬の計算対象期間における支払対象日数」をカウントすることが必要となります。
例 示 1 ( 当月計算、 当月支払の場合 )
4月に支払われた給与・役員報酬の計算対象期間が4月1日~4月30日の場合
⇒『「報酬支払基礎日数」のカウント対象期間』は、4月1日~4月30日となります。
例 示 2 ( 当月計算、 翌月支払の場合 )
4月に支払われた給与・役員報酬の計算対象期間が3月16日~4月15日の場合
⇒『「報酬支払基礎日数」のカウント対象期間』は、3月16日~4月15日となります。
’ 「報酬支払基礎日数」のカウント方法 ’
「報酬支払基礎日数」は、従業員・役員の「給与等の支給形態」に応じ、以下のようにカウントします。
|
Point ! :「月給制」の場合の「報酬支払基礎日数」のカウント 「月給制」の場合には、 ただし、「月給制」であっても「欠勤等による支給控除」がなされている場合には、 |
Point ! : 有 給 休 暇 の 取 扱 「有給休暇」が取得された場合には、「有給休暇日」に対しても報酬の支払はなされているため、 |
’ パート社員(短時間就労者)の場合 ’
パート社員の場合には、
・「定時決定」では、『「報酬月額」の算定対象となる要件』は、
特定の場合(17日以上となる月がない場合)、「報酬支払基礎日数」が15日以上あることが最低要件となりますが、
・「随時改定」では、上記のような「パート社員に対する特別の最低要件の規定」はなく、
パート社員についても、「報酬支払基礎日数」が17日以上あることが最低要件となります。
Ⅲ:随時改定における「標準報酬月額」の決定概要と届出事務
1、随時改定における「標準報酬月額」の決定概要
『「標準報酬月額」の随時改定』は、
上記Ⅱでご紹介させて頂きました「随時改定の要件」を充たした場合、「変動月の4ヶ月目」に行われます。 |
また、『随時改定で改定される「標準報酬月額」』は、
随時改定の対象となる被保険者が、『「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」』に『会社から支払を受けた「給与・役員報酬」の「平均値」』に基づいて、決定されることとなります。 |
「 定 時 決 定 」 と の 相 違
『定時決定の「報酬月額(平均月額)」』は、
『「4月」「5月」「6月」という予め定められた3ヶ月間の「報酬(給与・役員報酬)」』に基づいて算定されるものとなりますが、
『随時改定の「報酬月額(平均月額)」』は、
・『「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」という不定期の3ヶ月間の「報酬(給与・役員報酬)」』に基づいて算定されるものとなります。
・ただし、「報酬月額」は、
「定時決定」の場合と同様に「3ヶ月間に支払われた報酬額」を対象として平均計算することにより算定されます。
※ なお、『「随時改定」における「報酬月額(平均月額)」の算定方法』につきましては、別途『随時改定における「報酬月額(平均月額)」の算定方法』の『Ⅲ:「平均月額(報酬月額)」の算定方法』で詳細に記載しておりますので、必要がある場合には、当該リンクページをご覧頂きますようお願い致します。
2、随時改定に係る届出事務
『随時改定で改定される「標準報酬月額」』は、
最終的には、社会保険の保険者が、
被保険者(従業員・役員)の『変動月、変動月の翌月、変動月の翌々月における「報酬支払金額の平均値」』に基づいて決定するものとなりますが、
社会保険の保険者側では、
会社から被保険者(従業員・役員)に対して支払われた「給与・役員報酬の金額の情報」はわかりません。
このため、会社から保険者に対して、
を届け出ることが必要となります |
なお、上記の「3ヶ月間の給与・役員報酬の支払額」及び「3ヶ月間の平均月額」は、
|
その後、
|
Ⅳ:随時改定で改定された「標準報酬月額」の使用開始時期
’ 「社会保険料の計算」に対する使用開始時期 ’
『随時改定で改定された「標準報酬月額」』は、
『「変動月から4ヶ月目(変動月の翌々々月)」に係る「社会保険料の計算」』から使用を開始することとなります。 |
’ 「社会保険料の納付月」との関係での使用開始時期 ’
『「変動月から4ヶ月目」に係る社会保険料』の会社から保険者への納付は、
「変動月から4ヶ月目の翌月(変動月から5ヶ月目)」に保険者に納付することが必要となることから、 |
社会保険料の納付との関係で考えると、『随時改定で改定された「標準報酬月額」』は、
「変動月から4か月目の翌月(変動月から5ヶ月目)」に納付される「社会保険料」の計算から使用開始されることとなります。 |
’ 「社会保険料の徴収月」との関係での使用開始時期 ’
従業員・役員個人が負担する『「変動月から4ヶ月目」に係る社会保険料』は、
「変動月から4ヶ月目の翌月(変動月から5ヶ月目)」に会社から支払われる給与・役員報酬から会社が徴収することとなることから、 |
社会保険料の徴収との関係で考えると、『随時改定で改定された「標準報酬月額」』は、
「変動月から4ヶ月目の翌月(変動月から5ヶ月目)」に支払われる給与・役員報酬から控除する「社会保険料」の計算から使用開始されることとなります。 |
Ⅴ:随時改定で改定された「標準報酬月額」の有効時期
’ 原則的な有効期間 ’
社会保険料の算定基礎となる「標準報酬月額」につきましては、
「定時決定」という手続により、年に1度、「全被保険者を対象として一斉見直」されます。 |
このため『随時改定で改定された「標準報酬月額」』は、
原則、随時改定後に行われる「定時決定」まで使用し続けられます。 |
’ 例外的な有効期間 ’
『「随時改定」で改定された「標準報酬月額」』は、
上記でご紹介させて頂きましたように、「定時決定」が行われるまで使用されますが、
・「7月に随時改定が行われる場合」 ・「8月に随時改定が行われる場合」 ・「9月に随時改定が行われる場合」につきましては、 「定時決定」がなされた場合であっても、『「随時改定」で改定された「標準報酬月額」』が「定時決定」後も使用されることとなります。 |
例 外 的 取 扱 の 理 由
【7月の随時改定が例外となる理由】
・『「定時決定」により決定される「標準報酬月額」』も『「4月・5月・6月の3ヶ月間」における「報酬月額」』に基づいて決定され、
・他方「7月に随時改定が行われる」場合には、『「4月・5月・6月の3ヶ月間」における「報酬月額」』に基づいて随時改定が行われるため、
・『「定時決定」により決定される「標準報酬月額」』と『「7月の随時改定」により改定される「標準報酬月額」』は同額となります。
ただし、「7月に随時改定が行われる」場合には、『「随時改定」で改定された「標準報酬月額」』は、既に「7月分の社会保険料計算」から使用され、
「定時決定」を経ても「標準報酬月額」は実質的に変更されることはありません。
この点で、「7月に随時改定が行われる」場合には『「定時決定」の例外』となります。
【8月、9月の随時改定が例外となる理由】
・「定時決定により決定される標準報酬月額」は、『「4月・5月・6月の3ヶ月間」における「報酬月額」』に基づいて決定されますが、
・「8月に随時改定される標準報酬月額」は、『「5月・6月・7月の3ヶ月間」における「報酬月額」』に基づいて改定されたものであり、
・「9月に随時改定される標準報酬月額」は、『「6月・7月・8月の3ヶ月間」における「報酬月額」』に基づいて改定されたものであるため、
これらの「随時改定で改定された標準報酬月額」は、
・9月分の社会保険料の計算前から(定時決定前から)使用されているものであっても、
・『その「報酬月額」の算定期間』が『定時決定における「報酬月額」の算定期間』よりも新しいものとなることから、
・「8月に随時改定が行われる場合」及び「9月に随時改定が行われる場合」には、
定時決定が行われた場合であっても「定時決定で決定される標準報酬月額」に優先して適用されることとなります。
※ なお、上記につきましては『「7月・8月・9月の随時改定」と「定時決定」の関係』で、より詳細に記載しておりますので、必要がある場合には、上記リンクページを一読して頂きますようお願い致します。
’ 「随時改定」の有効期間 ’
上記の「原則的な有効期間」「例外的な有効期間」から、
当年度の「1月~6月」までに「随時改定」が行われた場合には、 当年度の「7月~12月」までに「随時改定」が行われた場合には、 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『「標準報酬月額」の「随時改定の内容(概要)」』をご紹介させて頂いております。
「随時改定の要件」につきまして
「標準報酬月額」につきましては、
『「定時決定」や「入社時決定」で決定された「標準報酬月額」』が頻繁に改定されることがないように、
『「随時改定」が行われるための要件』が定められています。
このため、「随時改定」を行う場合には、上記Ⅱでご紹介させて頂きました「3要件の内容」を把握して、適切に保険者に申請して頂ますようお願い致します。
「随時改定による標準報酬月額の使用開始時期・有効期間」につきまして
『「随時改定」で改定された「標準報酬月額」』の使用につきましては、
- 「変動月の4ヶ月目」の社会保険料計算』から使用開始されますが、
- 「社会保険料の納付」及び「給与計算で控除する社会保険料」の観点からは、
・『「変動月の5ヶ月目」に納付する社会保険料』
・『「変動月の5ヶ月目」に支払われる給与・役員報酬から控除する社会保険料』
から使用開始することとなります。
実務上では、後者の「社会保険料の納付」及び「給与計算で控除する社会保険料」の観点からの使用開始時期が重要となると考えますので、
社会保険料の納付額の確認、社会保険料の控除計算を行う場合には、使用開始時期に留意して頂きますようお願い致します。
『「随時改定」で改定された「標準報酬月額」』の有効期間につきましては、
- 原則、「随時改定」が行われた後の「定時決定」までとなりますが、
- 『7月~9月に行われた「随時改定」』は、例外的に「翌年度の定時決定」までが有効期間となります。
なお、『7月~9月に「随時改定」が行われる場合』には、『その年度の「定時改定」』で「その旨」を保険者に報告することが必要となります。
⇒この点につきましては、別途『「報酬月額算定基礎届(7~9月の随時改定)」の書き方』で詳細に記載しておりますので、必要がある場合には、当該リンクページをご一読頂ますようお願い致します。
「報酬月額」の算定方法につきまして
『「随時改定」における「報酬月額」の算定方法』につきましては、別途『随時改定における「報酬月額(平均月額)」の算定方法』で詳しくご紹介させて頂いておりますので、『「随時改定」における「報酬月額」の算定方法』をご確認頂く場合には、当該リンクページを一読して頂きますようお願い致します。