仕訳とは「どのようなものか?」につきまして、ご説明致します。
現在では、会計ソフトを利用して会計帳簿を作成されている会社が殆どであると考えます。
このような場合には、殆どの取引が
- 現金出納帳
- 預金出納帳
への入力のみで完結されることから、あまり「仕訳」というものを意識する場面は少ないと思います。
ただし、「振替伝票」への入力が必要となる場合等においては、「仕訳」に対する基礎的な簿記知識が必要となります。
以下では、下記項目に従い、仕訳についての基礎的事項につきご紹介致します。
Ⅰ:仕訳の意味
仕訳とは、
|
以下、上記の意味を詳しくご説明致します。
1、取引(事象)の内容を表現したものである点
会社が事業活動を行う場合には、様々な取引(事象)が発生します。
決算書を作成するためには、会社に起こる すべての取引(事象)を、会計帳簿に記入することが必要となります。
この会計帳簿への記入は、『最も単純な「表現方法(定型文)」』を利用して行われます。
この『最も単純な「表現方法(定型文)」』が、「仕訳」と呼ばれるものとなります。 |
2、2以上の勘定科目の増加・減少を組み合わせたものである点
上記の『最も単純な「表現方法」』とは、以下のものとなります。
会社に起こるすべての取引(事象)を、
という定型文で表現します。 |
そして、上記AやBに 「勘定科目」を当てはめます。 |
上記のように、「仕訳」とは、2以上の勘定科目の増加・減少を組み合わせることで、会社に起こるすべての取引(事象)を最も単純に表現したものとなります。
3、仕訳の主体は会社です。
仕訳の主体は、常に会社となります。
このため、「会社が主体とならない取引(事象)」は、仕訳の対象にはならず、会計帳簿(会計ソフト)への記帳(入力)は行われません。
また、『「勘定科目」のみを用いた仕訳』は、最も簡潔な表現方法となるため、「誰との取引であるか」等の情報は表現できません。
※ 上記のような表現を行いたい場合には、仕訳において、「勘定科目」以外に『「補助科目」を使用(入力)する』等の作業が別途必要となります。
Ⅱ:仕訳のルール
上記Ⅰでご紹介させて頂きましたように、仕訳を行うためには、まず2以上の「勘定科目」が必要となります。
次に、上記の『2以上の「勘定科目」と「その金額」』を、仕訳の「左側」と「右側」に記入することで、仕訳が完成します。(ちなみに簿記では、「仕訳の左側」を「借方」、「仕訳の右側」を「貸方」と呼びます。)
ただ、上記の『「勘定科目」を仕訳の「左側」に配置するか、「右側」に配置するか』に、「仕訳の唯一最大のルール」が存在します。
この「仕訳ルール」は
その勘定科目が「増加した」と認識されるか、「減少した」と認識されるか、が決まってくるというものです。 |
具体的には、以下のような「仕訳のルール」が存在します。
【収益に属する「勘定科目」】
収益に属する「勘定科目」を
|
【費用に属する「勘定科目」】
費用に属する「勘定科目」を
|
【資産に属する「勘定科目」】
資産に属する「勘定科目」を
|
【負債に属する「勘定科目」】
負債に属する「勘定科目」を
|
Ⅲ:仕訳入力の手順
仕訳の入力(会計帳簿への記入)を行う場合には、基本的には以下1~3の手順で行ってください。
1、会社に起こった取引(事象)内容を理解する。
まず最初に、会社に起こった取引(事象)の内容を把握します。 すなわち、会社に起こった取引(事象)により、 ※ 会社の取引(事象)におきましては、必ず「2以上のもの」が増加・減少しているはずです。このことを前提として、上記を把握して下さい。 |
2、「2以上のもの」に付す「勘定科目」を選択します。
ここが最大のPointであると考えますが、日常的な会計帳簿入力におきましては、ほぼ定型的な取引の連続であると思います。
従いまして、「売上の定型的な入力方法」「仕入の定型的な入力方法」「経費の定型的な入力方法」等を一度マスターしてしまえば、特に問題はないと思います。
特別な取引(事象)が発生した場合には、顧問税理士に仕訳方法を聞く、その都度調べてみる等を行えば良いと思います。(事前に「体系的に勘定科目の内容を理解する」ことまでは必要がないと思います。)
上記1の「取引把握」で把握した「2以上のもの」に適合する「勘定科目」を選択します。 |
3、上記Ⅱで記載しましたルールに従って、仕訳の「左・右(借方・貸方)」に勘定科目を配置する。
上記2で選択した「2以上の勘定科目」及び「金額」を、仕訳の「左側(借方)」「右側(貸方)」に配置します。 |
Ⅳ:仕訳の具体例
以下では、上記Ⅱの「仕訳ルール」や上記Ⅲの「仕訳手順」に従い、具体的な仕訳例をご紹介致します。
下記具体例は、仕訳についてのほんの一部の例示です。
ここでご紹介させて頂く例示は、仕訳内容をご紹介したものではありません。
具体的な例示を用いることにより、仕訳を行うにあたっての考え方をご紹介しております。
従いまして、下記例示を使用して、「仕訳を行うための取引の把握の仕方」や「仕訳のルール」を身に付けるだけ!というような気楽な気持ちで、一読してみて下さい。
(くれぐれも、具体例の仕訳を覚えるようなことや勘定科目に拘るようなことはしないでください。)
1)普通預金(みずほ銀行通帳)から100,000円を引き出した仕訳
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③みずほBK通帳 勘定科目のみを付けた仕訳では、「みずほ銀行の通帳から引出した」ということは表現できません。このことを表現するためには、普通預金に「みずほ銀行」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
現金※1 | 100,000円 | 普通預金※2 | 100,000円 |
※1:資産項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※2:資産項目の減少であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
2)みずほ銀行から1,000,000円の借入を行い、1,000,000円がみずほ普通預金口座に入金された。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③みずほ銀行借入、みずほ銀行通帳 勘定科目のみを付けた仕訳では、「みずほ銀行からの借入」「みずほ銀行の通帳への入金」ということは表現できません。このことを表現するためには、長期借入金に「みずほ銀行」、普通預金に「みずほ銀行」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
普通預金※1 | 1,000,000円 | 長期借入金※2 | 1,000,000円 |
※1:資産項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※2:負債項目の増加であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
3)みずほ銀行借入金150,000円とその利息3,000円を合わせて、みずほ銀行普通預金から返済した。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③みずほ銀行借入、みずほ銀行借入金利息、みずほ銀行通帳 勘定科目のみを付けた仕訳では、「みずほ銀行からの借入」「みずほ銀行への借入金利息の支払」「みずほ銀行の通帳への入金」ということは表現できません。このことを表現するためには、長期借入金に「みずほBK」、支払利息に「みずほBK」、普通預金に「みずほBK」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
長期借入金※1 | 150,000円 | 普通預金※3 | 153,000円 |
支払利息※2 | 3,000円 |
※1:負債項目の減少であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※2:費用項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※3:資産項目の減少であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
4)Aという50,000円の商品を現金にて販売した。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③Aという商品の売上 勘定科目のみを付けた仕訳では、「A商品が販売された」ということは表現できません。このことを表現するためには、売上高に「A商品」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
現金※2 | 50,000円 | 売上高※1 | 50,000円 |
※1:収益項目の増加であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
※2:資産項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
5)Aという50,000円の商品をZ商店に掛けにて販売した。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③Aという商品の売上、Z商店への売掛金 勘定科目のみを付けた仕訳では、「A商品が販売された」「Z商店に対して売掛金を計上した」ということは表現できません。このことを表現するためには、売上高に「A商品」、売掛金に「Z商店」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
売掛金※2 | 50,000円 | 売上高※1 | 50,000円 |
※1:収益項目の増加であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
※2:資産項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
6)Aという50,000円の商品をMというインターネット会社経由で販売した。なお、M会社に支払う手数料は5,000円である。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③Aという商品の売上、M会社への販売手数料、M会社への売掛金 勘定科目のみを付けた仕訳では、「A商品が販売された」「M会社へ販売手数料を支払った」「M会社に売掛金を計上した」ということは表現できません。このことを表現するためには、売上高に「A商品」、販売手数料に「M会社」、売掛金に「M会社」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
販売手数料※2 | 5,000円 | 売上高※1 | 50,000円 |
売掛金※3 | 45,000円 |
※1:収益項目の増加であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
※2:費用項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※3:資産項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
7)Qカード会社を経由して販売した販売代金200,000円が、Qカード会社への手数料4,000円が差し引かれ、みずほ銀行口座に入金された。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③Q会社への支払手数料、Q会社への売掛金、みずほ銀行通帳 勘定科目のみを付けた仕訳では、「Qカード会社に対する売掛金が減少した」「Qカード会社へ手数料を支払った」「みずほ銀行の普通預金口座に入金があった」ということは表現できません。このことを表現するためには、売掛金に「Qカード会社」、支払手数料に「Qカード会社」、普通預金に「みずほ銀行」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
支払手数料※2 | 4,000円 | 売掛金※1 | 200,000円 |
普通預金※3 | 196,000円 |
※1:資産項目の減少であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
※2:費用項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※3:資産項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
8)50,000で販売したA商品の返品を受入れ、現金50,000円を支払った。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③A商品の売上返品 勘定科目のみを付けた仕訳では、「A商品が返品された」ということは表現できません。このことを表現するためには、販売時等に売上高に「A商品」という補助科目を設定し、使用していることが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
売上高※1 | 50,000円 | 現金※2 | 50,000円 |
※1:収益項目の減少であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※2:資産項目の減少であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
9)50,000円のB商品を現金にて仕入た。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③Bという商品の仕入 勘定科目のみを付けた仕訳では、「B商品を仕入れた」ということは表現できません。このことを表現するためには、仕入高に「B商品」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
仕入高※1 | 50,000円 | 現金※2 | 50,000円 |
※1:費用項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※2:資産項目の減少であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
10)50,000円のB商品を掛けにてW商店から仕入れた。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③Bという商品の仕入、W商店への買掛金 勘定科目のみを付けた仕訳では、「B商品を仕入れた」「W商店に対して買掛金を計上した」ということは表現できません。このことを表現するためには、仕入高に「B商品」、買掛金に「W商店」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
仕入高※1 | 50,000円 | 買掛金※2 | 50,000円 |
※1:費用項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※2:負債項目の増加であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
11)50,000円の商品を仕入先に返品し、50,000円の買掛を減少させた。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③Bという商品の仕入、W商店への買掛金 勘定科目のみを付けた仕訳では、「B商品を返品した」「W商店に対しての買掛金を減少した」ということは表現できません。このことを表現するためには、仕入時等に、仕入高に「B商品」、買掛金に「W商店」という補助科目を設定し、使用していることが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
買掛金※2 | 50,000円 | 仕入高※1 | 50,000円 |
※1:費用項目の減少であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
※2:負債項目の減少であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
12)W商店(仕入先)に対して買掛代金100,000円を、みずほ銀行から支払った。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③W商店への買掛金、みずほ銀行の通帳 勘定科目のみを付けた仕訳では、「W商店に対して掛代金を支払った」「みずほ銀行の普通預金口座からの出金があった」ということは表現できません。このことを表現するためには、買掛金に「W商店」、普通預金に「みずほ銀行」という補助科目を設定し、使用していることが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
買掛金※1 | 100,000円 | 普通預金※2 | 100,000円 |
※1:負債項目の減少であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※2:資産項目の減少であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
13)水道代金20,000円をみずほ銀行口座引落にて支払った。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③水道代金という内訳、みずほ銀行の通帳 水道光熱費という勘定科目は、「水道代」「電気代」「ガス代」等の支払に使用されます。 勘定科目のみを付けた仕訳では、「水道代金を支払った」という水道光熱費の内訳項目までは表現できません。このことを表現するためには、水道光熱費に「水道代」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。(なお、「みずほ銀行」という補助科目の設定につきましては、前述と同様です。) |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
水道光熱費※1 | 20,000円 | 普通預金※2 | 20,000円 |
※1:費用項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※2:資産項目の減少であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
14)2,000円の文房具を現金にて購入した。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③消耗品費という内訳 消耗品費という勘定科目は、10万円未満の「消耗品・備品」「事務用品」「新聞・書籍」等の購入時に使用されます。 勘定科目のみを付けた仕訳では、「文房具を購入した」という消耗品費の内訳項目までは表現できません。このことを表現するためには、消耗品費に例えば「事務用品」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
消耗品費※1 | 2,000円 | 現金※2 | 2,000円 |
※1:費用項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※2:資産項目の減少であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
15)新幹線の乗車券(電車代)を購入し13,000円をYカードでクレジット払いした。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③-1 電車代という内訳 旅費交通費という勘定科目は、「公共交通機関等(電車代、バス代、航空代、船代等)」「タクシー代」「駐車料金」「高速代金」「出張費」等の支払に使用されます。 勘定科目のみを付けた仕訳では、「電車代を支払った」という旅費交通費の内訳項目までは表現できません。このことを表現するためには、旅費交通費に例えば「公共交通機関等」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 ③-2 Yカード会社への未払金 勘定科目のみを付けた仕訳では、「Yカード会社に対する未払がある」ということは表現できません。このことを表現するためには、未払金に「Yカード会社」という補助科目を設定し、使用することが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
旅費交通費※1 | 13,000円 | 未払金※2 | 13,000円 |
※1:費用項目の増加であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※2:負債項目の増加であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
16)Yカードの支払としてみずほ銀行から100,000円が引き落とされた。
①上記の仕訳は、
という取引(事象)となります。 ②勘定科目は、
③Yカード会社への未払金、みずほ銀行の通帳 勘定科目のみを付けた仕訳では、「Yカード会社に対してカード代金を支払った」「みずほ銀行の普通預金口座からの出金があった」ということは表現できません。このことを表現するためには、買掛金に「Yカード会社」、普通預金に「みずほ銀行」という補助科目を設定し、使用していることが必要となります。 |
仕訳は以下のものとなります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
未払金※1 | 100,000円 | 普通預金※2 | 100,000円 |
※1:負債項目の減少であるため、仕訳の「左側(借方)」に計上されます。
※2:資産項目の減少であるため、仕訳の「右側(貸方)」に計上されます。
Ⅴ:仕訳入力が必要な場面
冒頭でも記述いたしましたが、現在、大半の会社で会計ソフトを利用した会計帳簿の作成がなされていると思います。
上記のような状況におきましては、殆どの取引が「現金出納帳」「預金出納帳」に入力することにより、会計帳簿入力が完了しますので、「会社の取引」を仕訳段階から入力(帳簿記帳)することは、殆どなくなっております。
実際、上記Ⅳに記載致しました具体的取引の内、 1)、2)、4)、8)、9)、12)、13)、14)、16) の取引は、「現金出納帳」「預金出納帳」から入力(記帳)されるために、仕訳を意識することは、不要となります。 |
ただし、以下の場合には、「現金出納帳」「預金出納帳」からの入力ができないために、「振替伝票」という「伝票」により、仕訳段階から入力することが必要となります。
※ 正確には現金又は預金が2行以上となる取引ですが、とりあえず、仕訳が2行以上となる場合と考えて下さい。 |
以下詳しくご紹介致します。
1、「現金の入金・出金」及び「預金の入金・出金」を伴わない取引
このような取引につきましては、現金や銀行預金の入出金に関係がない取引であるため、元々「現金出納帳」「預金出納帳」のいずれにも記帳されない取引(関係しない取引)となります。
ただし、「現金・預金の入出金を伴わない取引」であっても、会社に起こったすべての取引は、会計帳簿への入力が必要となります。
このため、「現金・預金の入出金を伴わない取引」につきましては、「振替伝票」という入力方法により、仕訳段階から会計帳簿に入力することが必要となります。
上記Ⅳに記載致しました具体的取引の内、 5)、6)、10)、11)、15) の取引がこれに該当します。 |
2、「仕訳」が2行以上となる取引
会計ソフトの「現金出納帳」におきましては、「現金の入金又は現金の出金」の相手勘定は、1つの勘定科目しか入力することができません。
また、「預金出納帳」におきましても、「銀行預金の入金又は銀行預金の出金」の相手勘定は、1つの勘定科目しか入力することができません。
このため、このような取引におきましても、「振替伝票」という入力方法により、仕訳段階から会計帳簿に入力することが必要となります。
上記Ⅳに記載致しました具体的取引の内、 3)、7) の取引がこれに該当します。 |
Ⅵ:現金出納帳、預金出納帳と仕訳
上記Ⅴにおきまして、『「現金出納帳」や「預金出納帳」におきましては、その入力時に仕訳を意識することは、不要となる。』と書きました。
このことは、「現金出納帳」や「預金出納帳」に記入した場合には、仕訳が行われないということではありません。
「現金出納帳」「預金出納帳」に入力されたものにつきましても、「仕訳」が会計ソフトで自動作成されます。
ほぼ蛇足となりますが、以下では「現金出納帳」「預金出納帳」で作成される自動仕訳についてご紹介致します。
1、「現金出納帳」での仕訳自動作成
以下、「現金出納帳」の収入金額、支出金額に金額を入力した場合に作成される自動仕訳をご紹介致します。
1)現金出納帳の「収入金額」に金額を入れた場合
以下の仕訳が自動作成されます。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
現金※1 | xxxxx円 | 相手勘定科目※2 | xxxxx円 |
※1:「現金という資産項目の増加」となり「右側(貸方)」に「現金」という勘定科目が計上されます。
※2:「現金出納帳」の「相手勘定科目」で選択された「勘定科目」が入力されます。
2)現金出納帳の「支出金額」に金額を入れた場合
以下の仕訳が自動作成されます。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
相手勘定科目※2 | xxxxx円 | 現金※1 | xxxxx円 |
※1:「現金という資産項目の減少」となり「右側(貸方)」に「現金」という勘定科目が計上されます。
※2:「現金出納帳」の「相手勘定科目」で選択された「勘定科目」が入力されます。
2、「預金出納帳」での仕訳自動作成
以下、「預金出納帳」の預入金額、引出金額に金額を入力した場合に作成される自動仕訳をご紹介致します。
1)預金出納帳の「預入金額」に金額を入れた場合
以下の仕訳が自動作成されます。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
普通預金※1 | xxxxx円 | 相手勘定科目※2 | xxxxx円 |
※1:「(普通)預金という資産項目の増加」となり「右側(貸方)」に「普通預金」という勘定科目が計上されます。
※2:「預金出納帳」の「相手勘定科目」で選択された「勘定科目」が入力されます。
2)現金出納帳の「引出金額」に金額を入れた場合
以下の仕訳が自動作成されます。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
相手勘定科目※2 | xxxxx円 | 普通預金※1 | xxxxx円 |
※1:「(普通)預金という資産項目の減少」となり「右側(貸方)」に「普通預金」という勘定科目が計上されます。
※2:「預金出納帳」の「相手勘定科目」で選択された「勘定科目」が入力されます。
Ⅶ:仕訳の目的(仕訳と決算書、会計帳簿の関係)
仕訳を行う目的は、これまでも当然のことのように記載してきましたが、
|
「仕訳から決算書作成までの流れ」の中で、
- 勘定科目を選択して記入する
- 『仕訳の「左・右(借方・貸方)」に配置する』ことで、「勘定科目の増加・減少」を認識(計上)する
- 取引金額を記入する
- 取引日を記入する etc
の情報を会計帳簿に入力する場面は、唯一仕訳入力時点のみとなります。
仕訳入力後における「会計帳簿(仕訳日記帳、総勘定元帳等)」や「決算書(損益計算書、貸借対照表)」は、すべて「仕訳」で入力された情報が分類され集計されることにより作成されます。
更に、会計ソフトを利用して会計帳簿や決算書を作成する場合には、この分類・集計も会計ソフトにより自動的に行われます。
従いまして、「仕訳」の入力は、会計帳簿や決算書を作成するために、最も重要な作業であると言えます。
※ これにつきましての詳細は、⇒コチラをご覧ください。
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
仕訳を入力する場合に最も大切となることは、
「会社に起こった取引(事象)」を「仕訳入力できるような形(上記Ⅲ-1の考え方)で把握する」ということであると考えます。
すなわち「取引の内容は、理解できているか?」を考えて頂くことが重要であると思います。
仕訳は、実際の取引内容により、無限に形が変わります。このため、一定の仕訳を覚えるようなことをしてしまいますと、かえって実際の取引の内容が変わった場合には、「対応ができない。」「間違った仕訳を入力してしまう。」というようなことが起こります。
このため、仕訳を行う上では、まず「取引をⅢ-1のような考え方で把握すること」が大切であると考えています。
これができれば、後は
- 勘定科目の選択を行い※
- 簿記のルールに従って仕訳に配置することで
仕訳は完成します。
※ 仕訳で使用する「勘定科目の選択」で難しい場合もあると思います。ただし、これは、「仕訳が難しい」のではなく、「勘定科目の選択が難しい」という別の問題となります。
上記のようなことを前提に考えて頂くと、「仕訳」はそれ程難しいものでなくなるかも?と考えます。