会計帳簿への入力である「現金出納帳」の入力方法につき、ご説明致します。
「会社の取引」を「会計帳簿(弥生会計等の会計ソフト)」に入力する方法と致しましては、
- 「現金出納帳」へ入力する方法
- 「預金出納帳」へ入力する方法
- 「振替伝票」に入力する方法
の3種類の入力方法があります。
ここでは、上記3種類の入力方法のうち、『「現金出納帳」に入力する方法』につきまして、下記項目に従い、ご説明させて頂きます。
Ⅰ:現金出納帳とは
1、現金出納帳
現金出納帳とは、以下の会計帳簿をいいます。
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2、現金出納帳の画像
現金出納帳のサンプルは以下のようなものとなります。
3、家計簿との相違
「現金出納帳」というと、あまり馴染みがない方も多くいらっしゃると思います。他方、「家計簿」というものについては、イメージがつきやすい方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
このため、先ずは「現金出納帳」を、「家計簿」と比較して以下でご紹介させて頂きます。
【共通点】
「現金出納帳」には、「現金の入金金額・出金金額」や「現金の入金理由・出金理由」が記載されます。
「家計簿」においても、通常「現金の収入金額・支出金額」や「収入理由・支出理由」が記載されます。
このため、「現金出納帳」と「家計簿」は、記載内容や記載方法等においてほぼ同じものとなります。従いまして、両者はほぼ同じものと考えて頂いて結構です。
【異なる点①】
「家計簿」では、その作成目的が、一定期間(月間や年間)の家計の収支を把握するため(赤字なのか?黒字なのか?)に主眼を置き作成されます。
また、「家計簿」では、収支把握が目的であるため、収支に関係がない現金の入金・出金は、家計簿に記載しないというような使い方がされます。
他方、「現金出納帳」は、会社に存在する一定時点の現金有高を把握するために作成されます。
このため、会社の現金の入金・出金につきましては、収支に関係がないものであっても、すべて「現金出納帳」に記載する必要があります。
【異なる点②】
「家計簿」には、家計への「現金・預金等の入金金額」や「現金・預金等の出金金額」が記載されます。
他方、「現金出納帳」は、「会社への現金の入金・出金」を把握する会計帳簿ですので、会社への「現金の入金金額」「現金の出金金額」のみが記載されます。
(預金口座への入金・出金は、「預金出納帳」という会計帳簿に別途入力されます。)
【異なる点③】
「家計簿」「現金出納帳」には、ともに「入金の理由」「出金の理由」が記載されます。
「家計簿」に記載する「入金理由」や「出金理由」は、「あらかじめ家計簿に印刷されている項目(例えば、食費・衣服・生活用品・家賃etc)」や「自由にその理由を記載」することができます。
他方、「現金出納帳」では、「現金入金の理由」や「現金出金の理由」を、それぞれの理由に適合するように、「予め会計ソフトに登録されてる勘定科目」の中から選択する必要があります。
(これが「相手勘定科目」の選択入力というものになります。)
Ⅱ:現金出納帳へ入力する取引
取引を会計帳簿に入力する方法には、以下の3種類の方法があります。
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上記の3種類の入力方法のいずれを使用して入力するかは、「取引の内容」により決定されます。
※ これにつきましての詳細は、⇒コチラをご覧ください。
ここでは、以下の項目で、「現金出納帳から会計帳簿(会計ソフト)に入力を行う取引」は「どのような取引」であるかをご説明致します。
1、現金出納帳から会計帳簿入力を行う取引
上記の会計帳簿への入力方法のうち、
「現金の入金・出金に係る取引」は、原則、「現金出納帳」に入力します。 |
「現金の入金・出金」を伴う取引につきましては、「下記の例外となる取引」以外はすべて(原則として)、「現金出納帳」から会計帳簿に入力を行います。
2、現金出納帳から会計帳簿入力を行わない取引(例外となる取引)
上記1で「原則」として、「現金の入金・出金に係る取引」は「現金出納帳」に入力すると書かせて頂きました。
『「現金の入金・出金」を伴う取引』であっても「現金出納帳」での入力を行わない又は行うことができない取引があります。
ここでは、「例外」として、「現金出納帳」に入力しない又はできない取引をご紹介致します。
例外1:「現金」と「預金(普通預金、当座預金等)」との取引
以下の取引は、「現金の入金・出金を伴う取引」ですが、「現金出納帳」からの会計帳簿への入力は行いません。
現金出納帳の入力において、相手勘定科目を「預金(普通預金、当座預金等)」とする取引である
は、「現金出納帳」からの入力ではなく、「預金出納帳」からの入力を行います。 |
会計ソフトでは、
「預金出納帳の入力」において、相手勘定を「現金」とした取引は自動的に「現金出納帳」に転記されます。
会計ソフトには、上記の自動転記機能があるために、「預金出納帳」と「現金出納帳」の両方に、同じ取引を入力してしまうと、会計帳簿上で、同じ取引が二重に入力されてしまいます。
このため、上記取引につきましては、『「預金出納帳」から入力される』ことを前提として、「現金出納帳」からの入力は行いません。
これにつきましての詳細は、⇒コチラをご覧ください。
例外2:現金の入金・出金の相手項目が2以上ある取引
以下の取引は、「現金の入金・出金を伴う取引」ですが、「現金出納帳」からの会計帳簿への入力を行うことはできません。
には、「現金出納帳」からの入力ではなく、「振替伝票」からの入力を行います。 |
会計ソフトの現金出納帳では、
現金の入金又は出金に対しては、「相手勘定科目」としては「1つの勘定科目」しか入力できません。
このため、
- 「相手勘定科目」が複数となる場合や
- 「相手勘定科目が1つ」であっても「複数の相手補助科目」を付けて区分入力する場合等
現金の入金や出金の原因が複数となる場合には、「現金出納帳」からの入力はできません。
このような取引を会計帳簿に入力する場合には、「現金出納帳」ではなく、「振替伝票」により、「仕訳」の形で入力することが必要となります。
※ これにつきましての詳細は、⇒コチラをご覧ください。
3、現金出納帳での入力を行う取引範囲の図示
上記の1、2の事項を図でしましますと以下のようになります。
Ⅲ:現金出納帳への入力の仕方
現金出納帳へ入力する場合には、
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以下では「現金の入金」、「現金の出金」に係る「証憑」をご紹介しながら、現金出納帳への入力の仕方をご説明致します。
1、現金入金に係る「証憑」と会計帳簿への入金記帳
1)現金の入金に係る証憑
「現金の入金」に係る証憑には、主に以下のような書類があります。
①現金売上
日常的な現金売上につきましては、現金の受取とともに、お客様に「領収書」等の引渡がなされます。このため、会社に保存されている下記の書類等が、現金売上の証憑となります。
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Point ! 現金売上の現金出納帳への入力 「日々の現金売上」につき、売上件数が多数となる場合には、「領収書(控え)」の枚数につきましても多数となります。 上記のような場合に「領収書」ごとに「現金出納帳」への入力を行うとは、「現金出納帳」への入力作業が膨大となってしまいます。 このような場合には、「領収書」単位での入力ではなく、「1日の領収書合計額」を計算し、「1日の売上合計額」をまとめて「現金出納帳」に入力する等により、「現金出納帳」への入力作業を軽減することが必要となります。 |
②販売代金の回収
販売代金(売掛金等)を現金で受け取った場合には、得意先等に「領収書」等の引渡がなされます。このため、会社に保存されている下記の書類等が、販売代金回収の証憑となります。
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Point ! 現金出納帳に入力する販売代金の入金 現金出納帳に入力される「販売代金の入金」は、得意先等から現金で回収したものに限られます。 ※ 得意先から販売代金として「会社の銀行口座に直接振込がなされたもの」につきましては、「預金出納帳」に入力します。 ※ 得意先等から「現金で回収」したものを、会社が「銀行に振込んだ」場合には、
という2つの取引と考えることが必要となります。 |
③継続的サービス提供取引、金額の大きな取引等の現金売上
「継続的なサービス(役務)提供の取引」や「金額の大きな取引」等では、「契約書」等に基づいて、サービス提供や物品販売等が行われる場合があります。このような取引で、販売代金を現金で受け取った場合には、会社に保存されている下記書類等が、現金売上の証憑となります。
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2)現金出納帳への入金入力
現金出納帳への入金入力は、「入金の事実」及び「証憑」等を基にして入力します。
2、現金の支出に係る「証憑」と会計帳簿への出金記帳
1)現金の支出に係る証憑
「現金の支出」に係る証憑には、主に以下のような書類があります。
①現金仕入(販売商品等の現金購入)
日常的な現金仕入につきましては、現金の支払とともに、仕入先から「領収書」等を受領します。また、「購入先の銀行口座」等に「現金振込」でその対価を支払う場合には、銀行等の金融機関から「振込書の控え」「ATM利用明細書」等を受領します。
これらの書類等は、仕入先に現金を支払ったという事実を証明する「支払証憑」となります。
また、仕入につきましては、「会社で販売する商品」等を購入したことを証明することも必要となります。このため、仕入先から商品等が納品された時に、仕入先から受領する「納品書」※等も重要な「仕入内容を証明する証憑」となります。
※ 原則としては、「仕入内容を証明する証憑」は「納品書」となります。但し、仕入先からの「納品書」が何らかの理由で入手できない場合等には、商品を注文した時に仕入先から受領する「注文請書(注文受領書)」等も「仕入内容を証明する証憑」とすることができます。
上記のことから、会社に保存されている下記の書類等が、現金仕入の証憑となります。
【支払証憑】
【仕入内容を証明する証憑】
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Point ! 現金仕入の現金出納帳への入力 「日々の現金仕入」の仕入件数が多数となることはあまりないと思います。 ただし、業種によれば仕入件数が多数となることもあります。 このような場合には、現金売上と同様に「領収書」単位での入力ではなく、「1日の領収書合計額」を計算し、「1日の仕入合計額」をまとめて「現金出納帳」に入力することも可能です。 |
Point ! 「納品書」と「注文書」の違い 「納品書」は、仕入先が「実際に商品等を納品した事実」に基づき発行されるものです。 「注文請書(注文受領書)」とは、仕入先が「注文を受けたという事実」に基づき発行されるものです。 「納品書」「注文請書(注文受領書)」は、いずれも「どのようなものを購入したのか」という「仕入内容の証明」となるものという点では同じ証明力を有します。 他方、「納品書」では「商品が納品された」という事実までを証明する証憑となり得ますが、「注文請書(注文受領書)」では、「本当に商品が納品されたか」「いつ商品が納品されたか」までの証明力は有しません。(ただし、現金仕入の場合には、「支払証憑」との組み合わせによりこれを証明することができます。) このため、「仕入内容の証明を行う証憑」としては、「注文請書(注文受領書)」より「納品書」の方が証明力が強いものとなります。 |
②仕入代金の支払
仕入代金(買掛金等)を現金で支払った場合には、仕入先等から「領収書」等を受領します。このため、会社に保存されている下記の書類等が、仕入代金支払の証憑となります。
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Point ! 現金出納帳に入力する仕入代金の支出 現金出納帳に入力される「仕入代金の支出」は、仕入先等に現金で支払ったもの(仕入先の銀行口座に現金振込をしたものを含みます)に限られます。 ※ 仕入先に対して仕入代金として「会社の銀行口座から直接支払われたもの(預金振込・預金引落)」につきましては、「預金出納帳」に入力します。 ※ 会社が一旦「銀行から現金を引出し」その後「仕入先等に現金で支払った」場合には、
という2つの取引と考えることが必要となります。 |
③経費の現金支払
会社の「経費となる物を購入した場合」や「経費となるサービスを受けた場合」で、現金でその対価を支払った場合には、支払先から「領収書」「レシート」等を受領します。また、「購入先の銀行口座」等に「現金振込」でその対価を支払う場合には、銀行等の金融機関から「振込書の控え」「ATM利用明細書」等を受領します。
これらの書類等は、購入先に現金を支払ったという事実を証明する「支払証憑」となります。
また、経費項目につきましては、「会社で利用するモノやサービス」等を購入したことを証明することも必要となります。このため、購入先からモノが納品された時やサービスの提供を受けた時に、購入先から受領する「納品書」や「役務完了報告書」※等も重要な「経費の内容を証明する証憑」となります。
※ 「注文請書(注文受領書)」の代替書類としての役割は、「現金仕入」でご説明したものと同様のものとなります。
また、「継続的なサービス(役務)の提供」を受ける(業務委託契約、外注契約、賃貸契約等)場合には、サービス提供を受ける前に、購入先と「契約書」等を締結します。このため、この「契約書」等も重要な「経費の内容を証明する証憑」となります。
このため、会社に保存されている下記の書類等が、経費に係る証憑となります。
【支払証憑】
【経費の内容を証明する証憑】
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Point ! 「領収書」のみの場合の留意点 「領収書」には、通常「どのようなものを購入したか」「どのようなサービスを受けたか」の記載はされません。このため「領収書」では、「支払事実を証明する」ことはできますが、「経費の内容を証明する」ことはできません。 ただし、少額の「モノの購入」や「サービスの受領」では、「領収書」等のみを受けることが一般的であると思います。 このような場合には、「会社の経費となるモノやサービスを購入したこと」を明らかにするために、「領収書」の空白や裏面等に、「どのようなモノを購入したか」や「どのようなサービスを受けたか」を簡単に記載しておくことが有用であると考えます。 |
Point ! 「会社の経費」と「個人の私物購入」の区別につきまして 会社の経費となるモノを購入する場合に、私物を一緒に購入することがあると思います。 このような場合におきましては、代金支払時におきまして、「会社の経費となるモノ」と「私物となるモノ」とを明確に区分して代金の支払を行い、 |
2)現金出納帳への出金入力
現金出納帳への出金入力は、「出金の事実」及び「証憑」等を基にして入力します。
Ⅳ:現金出納帳の入力(記入)項目
現金出納帳に入力する項目は以下のものとなります。
- 日付
- 相手勘定科目、相手補助科目
- 摘要
- 「収入金額」又は「支出金額」
以下では、上記項目につきましてご説明致します。
1、日付の入力
実際に現金の入金・出金があった日を記入します。 |
現金出納帳には、原則として、実際に現金の入金・出金があった日を記入します。
現金出納帳は、「現金出納帳の残高欄」で、実際に会社に在る「現金の残高」が表示されます。このため、「現金出納帳」には、実際に現金の入金・出金があった日を記入することが必要となります。
例えば、経費を従業員等が立替払いした場合等で、「領収書日付」と「実際の会社現金の出金日付」が一致しない場合には、原則として、「実際の現金出金日」を入力します。
上記のような原則的な日付入力を行う前提としましては、「毎日、現金出納帳に現金の入金・出金を行っている。」ことが必要となります。
また、このような記帳を行うことにより、「現金出納帳の現金残高欄」と「会社に在る実際の現金残高」の一致確認ができ、両者が一致しない場合におきましては、即座に不一致原因の検討が行えるという利点があります。
他方、業務が忙しく、会計ソフトへの入力が、毎日ではなく、随時の入力となってしまう場合等におきましては、
「実際の現金の入金日・出金日」に替えて、「領収書の日付」等を入力することになります。 |
本来、現金出納帳への入力につきましては、「現金の入金・出金」がある都度入力することが望ましいのですが、会計ソフトへの入力が、随時入力となる場合には、「現金の入金・出金」=「入金証憑の日付・出金証憑の日付」として、会計帳簿に入力します。
2、相手勘定科目、補助科目の入力
1)相手勘定科目の入力
現金出納帳には、 現金の入金又は出金の原因となった項目(「相手勘定科目」)を選択し入力します。 |
現金出納帳に「入金(収入)入力」を行う場合には、
「入金(収入)の原因となった取引項目」※を「相手勘定科目欄」に入力(選択入力)することが必要となります。
※ ここでは、「入金(収入)の原因となった取引項目」に該当する「勘定科目」を入力することになります。
この「勘定科目」の選択にあたっては、「入金証憑」を見ながら、『会計ソフトに予め登録されている「勘定科目」』のうちから「入金理由に適合する勘定科目」を選択することになります。
現金出納帳に「出金(支出)入力」を行う場合には、
「出金(支出)の原因となった取引項目」※を「相手勘定科目欄」に入力(選択入力)することが必要となります。
※ ここでは、「出金(支出)の原因となった取引項目」に該当する「勘定科目」を入力することになります。
この「勘定科目」の選択にあたっては、「出金証憑」を見ながら、『会計ソフトに予め登録されている「勘定科目」』のうちから「出金理由に適合する勘定科目」を選択することになります。
2)相手補助科目の入力
上記1)の「相手勘定科目」に「補助科目」を付ける場合には、 『「相手勘定科目」の内訳項目』である「相手補助科目」を選択し入力します。 |
「勘定科目」につきましては、「簿記で予め定められたもの」を使用することになります。
他方、会社では、「勘定科目の内容」をより詳細に区分して会計帳簿に入力したい場合や詳細区分した内訳項目ごとに集計したい場合があります。
このような場合には、「勘定科目」に対してその内訳項目として「補助科目」を設定し、使用します。
この「相手勘定科目」に「補助科目」を付ける場合には、
「現金出納帳」の入力において「相手勘定科目」を入力すると共に、「相手補助科目欄」に「相手補助科目」を選択入力します。
3、摘要欄の入力
摘要欄には、 取引の内容のうち、「相手勘定科目」や「相手補助科目」では表現できない事項(会計帳簿に記録しておきたい事項)がある場合に 摘要欄に具体的な内容を記載します。 |
会計帳簿の入力におきまして、
勘定科目の入力はなされているが、補助科目の使用はせず、
取引の具体的内容につきましては、すべて「摘要欄に記載」されていることをよく見かけます。
会計ソフトでは、「勘定科目に補助科目を付ける」ことにより、補助科目ごとに
- 取引内容(記帳内容)を集計して一覧化する機能や
- 補助科目ごとの年間集計金額や月次集計金額を表示する機能
があります。
※ これにつきましての詳細は、⇒コチラをご覧ください。
このため、「取引の具体的内容」のうち
- 相手勘定科目のより詳細な内訳項目を会計帳簿に記入する場合や
- 相手勘定科目を取引の相手先ごとに区分して記入する場合等におきましては、
摘要欄に記入するのではなく、補助科目を積極的に利用していただくことが有用であると考えます。
そして、上記の補助科目でも表現できない事項で、かつ会計帳簿に入力しておくことが必要な場合には、その内容を「摘要欄」に記載して頂くことをおススメします。
4、「収入金額」又は「支出金額」の入力
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Ⅴ:現金出納帳の記入例
現金出納帳への実際の記入(入力)につき、例示を使用してご紹介致します。
※ ここでは、簡単な例示を用いて、「現金出納帳」の記入が実際にどのようになるかをご紹介致します。
1、例示
4月1日に、ボールペンを10本(税込金額1,080円)、現金を支払って購入した |
2、取引の内容
現金の出金1,080円があることから、「現金出納帳」に記入します。
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3、現金出納帳の記入例
上記の取引を現金出納帳に記入(入力)した場合には、以下のようなものとなります。
Ⅵ:現金出納帳への入力と自動仕訳機能
1、会計ソフトによる自動仕訳作成機能
会計ソフトを利用する場合には、入力の容易さや入力の効率性から、「現金の入金・出金を伴う取引」は、「現金出納帳」へ入力を行います。
ただ、本来の会計帳簿への入力(簿記)におきましては、すべての取引は、「仕訳」の形で会計帳簿への入力が必要となります。
※ これにつきましての詳細は、⇒コチラをご覧ください。
すなわち、簿記におきましては、すべての取引につき、「仕訳」が行われることが前提(必須)となります。
この点、「現金出納帳」に取引を入力した場合には、会計ソフトにより、自動的に仕訳が作成されます。
このため、「現金出納帳に入力した取引」につきましては、わざわざ「仕訳」を考えたり、「仕訳」を入力したりすることは不要となります。 |
このことは、会計ソフトを利用して会計帳簿を作成(入力)する最大の利点の1つになります。
ちなみに、「現金出納帳」に取引入力を行った場合に自動的に作成される仕訳を、下記でご紹介致します。
2、自動作成される仕訳
会計ソフトでは、「現金出納帳」に取引入力を行うことにより「仕訳日記帳」という会計帳簿に以下の仕訳が自動作成されます。
※ これについての詳細は、⇒コチラをご覧ください。
1)現金出納帳の「収入金額」に金額を入れた場合
以下の仕訳が自動作成されます。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
現金※1 | xxxxx円 | 相手勘定科目※2 | xxxxx円 |
※1:「現金という資産項目の増加」となり「右側(貸方)」に「現金」という勘定科目が計上されます。
※2:「現金出納帳」の「相手勘定科目」で選択された「勘定科目」が入力されます。
2)現金出納帳の「支出金額」に金額を入れた場合
以下の仕訳が自動作成されます。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
相手勘定科目※2 | xxxxx円 | 現金※1 | xxxxx円 |
※1:「現金という資産項目の減少」となり「右側(貸方)」に「現金」という勘定科目が計上されます。
※2:「現金出納帳」の「相手勘定科目」で選択された「勘定科目」が入力されます。
Ⅶ:現金出納帳への入力効果
1、現金出納帳への「相手勘定科目」の入力効果
現金出納帳への入力自体は、上記でご説明致しましたように「現金残高(現金の実際有高)」を表示するための入力となります。
他方、
「現金出納帳」に「相手勘定科目」を入力することは、 会計帳簿に、相手勘定科目である「収益(収入)」「経費(費用)」や「資産」「負債」の増加・減少を入力することになります。 |
会計ソフトでは、「現金出納帳」に入力された「相手勘定科目」は、勘定科目ごとに、「総勘定元帳」という会計帳簿に集計され、最終的に「決算書」に自動集計(自動転記)されます。
このため「現金の入金」を伴う「売上の増加」「仕入の減少(返品)」「経費の減少(返品)」「資産の減少」「負債の増加」等につきましては、「現金出納帳」に記入することで、「会計帳簿(総勘定元帳)」や「決算書」に記録(入力)していることになります。
また「現金の出金」を伴う「売上の減少(返品受入れ)」「仕入の増加(計上)」「経費の増加(計上)」「資産の増加(取得)」「負債の減少(返済)」等につきましても、、「現金出納帳」に記入することで、「会計帳簿(総勘定元帳)」や「決算書」に記録(入力)していることになります。
2、例示によるご説明
下記の簡単な例示を使用し、「現金出納帳」に入力した事項が、「総勘定元帳」に自動集計(自動転記)され、「決算書(損益計算書、貸借対照表)」に自動集計(自動転記)される状況をご説明致します。
例示
①4月1日に「現金仕入」100,000円があった。
②4月2日に「現金売上」150,000円があった。
③4月5日に「消耗品費(事務用品)」10,000円があった。
④4月10日に「構築物(看板)」150,000円の購入を行った。
⑤4月20日に「借入」1,000,000円を行った。
1)現金出納帳から総勘定元帳への自動転記(集計)
現金出納帳に上記の「現金入金取引・現金出金取引」を入力すると、会計ソフトにより、「総勘定元帳」という会計帳簿に、相手勘定科目ごとに「入力した事項」が自動集計(自動転記)されます。(下図を参照)
2)総勘定元帳から決算書への自動転記(集計)
上記1)で、「総勘定元帳」に勘定科目ごとに集計された金額が、さらに「決算書(損益計算書、貸借対照表)」に自動集計(自動転記)されます。(下図を参照)
【収益・費用項目の決算書への自動転記】
【資産・負債項目の自動転記】
Ⅷ:記帳(入力)頻度
「現金出納帳」は、一定時点の「現金残高(現金の実際有高)」を表示する会計帳簿であり、「現金出納帳の残高欄」と「実際に会社に有る現金の金額」は、本来的に一致しなければいけないものとなります。
このため、「現金の管理手段」として、
「現金出納帳の残高欄」と「実際に会社に有る現金の金額」が一致しているかどうかを確認することは、非常に重要なものとなります。
そして、上記管理を行うためには、現金出納帳への入力は、できる限り即時に行う(毎日行う)ことが必要となります。
ただし、会社によっては、経理担当専門の方がいない場合も多いと思います。
このような場合には、領収書等を見ながらまとめての入力となってしまうことも多いのではないかと思います。
ただ、このような場合であっても、できるだけ定期的に「現金出納帳」への入力を行い、その時点における「現金出納帳の現金残高」と「会社の実際にある現金残高」との一致を確認することが必要であると考えます。
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
「現金出納帳」への会社取引の入力は、「会計帳簿(会計ソフト)」への入力という意味で、最も重要な入力の1つとなります。
ただし、「現金出納帳」への入力は、決して難しいものではなく、「家計簿」等の作成と同様にとても簡単なものです。
(ただし、「相手勘定科目の選択入力」につきましては、少し知識が必要となります。)
この記事により、
- どのような取引が「現金出納帳への入力の対象の取引」となるか
- どのような証憑書類を見ながら入力することになるのか
- 「現金出納帳」に入力することが必要な項目はどのようなものか
- 「現金出納帳」に入力した事項は、どのように決算書に反映されるのか等
の「現金出納帳」の入力につきましての概要を理解頂ければと思います。