仕訳から会計帳簿・決算書(試算表)の作成がどのように行われるかをご紹介致します。
現在は多くの会社で、会計ソフトを利用して「会計帳簿」や「決算書」が作成されています。
このような状況の下では、「現金出納帳」「預金出納帳」への入力や「振替伝票」の入力により、会計ソフトで自動的に「会計帳簿」や「決算書」が作成されるために、
『どのような仕組みによって「仕訳から会計帳簿や決算書(試算表)」が作成されるのか』を意識することは少ないと思います。
ただし、仕訳から会計帳簿や決算書(試算表)がどのように作成されるのか?を確認しておきたい方もいらっしゃいます。
ここでは、以下の項目に従いまして、「仕訳から会計帳簿や決算書がどのように作成されるのか」を確認します。
Ⅰ:「手作業下での流れ」と「会計ソフト利用下での流れ」の相違
「従来の手作業下での決算書作成までの流れ」と「現在の会計ソフトを利用する下での決算書作成までの流れ」には、以下の相違点があります。
【共通点】
「仕訳から決算書作成までの流れ」のうち、「下記のⅡの2~3」でご説明致します「仕訳日記帳⇒総勘定元帳⇒決算書作成」部分につきましての流れは、いずれも異なることはございません。
【異なる点】
・「下記Ⅱの2~3」でご説明致します「仕訳日記帳⇒総勘定元帳⇒決算書作成」の転記というものが、「手作業下」では、すべて手作業での転記になりますが、「会計ソフト利用下」では、すべて自動で転記され、自動で会計帳簿・決算書が作成されます。
⇒このことが、会計ソフトを利用する最大の利点となります。
・手作業下では、特定の場合(下記Ⅱの4でご紹介する場合等)を除き、会計帳簿への記帳は、すべて「仕訳日記帳への仕訳の記帳」となります。
他方「会計ソフト利用下」では、会計帳簿への入力は、その大半が『「現金出納帳」「預金出納帳」への入力』となります。(一部振替伝票という仕訳入力があります。)
このため、以下では、先ず、本来的な流れである「手作業下における決算書までの流れ」をご説明し、
その後、「手作業下」とは異なる点につきまして、「会計ソフトを利用した場合における決算書作成までの流れ」をご説明致します。
Ⅱ:手作業下における仕訳から決算書までの流れ
まず最初に、「仕訳入力」から「仕訳日記帳」・「総勘定元帳」、「決算書」が作成される概要は下記の図のようになります。
以下では、上記の概要図に従い、それぞれの流れをご説明致します。
1、「仕訳日記帳」への「仕訳」記帳
1)上図①の仕訳記帳
「会社に起こった取引」が取引ごと、日付順に、「仕訳」※という形で『「仕訳日記帳」という会計帳簿』に記帳されます。
※ 仕訳につきましての詳しい説明は、⇒コチラをご覧ください。
2)会計帳簿への入力
会計帳簿への「情報の記入」につきましては、この『「仕訳日記帳」への「仕訳の記帳」』が唯一のものとなります。
(仕訳日記帳以外では、情報の記入はなされません。)
- 「その他の会計帳簿(総勘定元帳、現金出納帳、預金出納帳等)」
- 「決算書(損益計算書、貸借対照表等)」
は、すべてこの「仕訳日記帳に記帳された情報」が、「分類・集計(転記といいます)」されるだけで作成されます。
3)仕訳日記帳
上記までのご説明から
仕訳日記帳は
|
4)例示によるご説明
・4月1日に10万円の商品を現金で仕入れた。
・4月10日に上記商品を15万円で販売(現金販売)した。
・4月15日に15万円の商品を現金で仕入れた。
・4月20日に上記商品を30万円で販売(現金販売)した。
・4月30日に1万円の消耗品を購入した。
という場合には、仕入日記帳は以下のものとなります。
2、仕訳日記帳から総勘定元帳への転記
1)上図②の分類・集計
仕訳日記帳に記帳された情報(仕訳内容)が、勘定科目ごとに分類・集計されます。
すなわち、仕訳日記帳に記帳されている情報(仕訳内容)が、
- 一旦すべての「勘定科目」ごとに分類され、
- 各勘定科目ごとに設定される「勘定口座(集計単位)」※に再集計されます。
※「勘定口座」の名称は、各「勘定科目の名称」と同じものになります。
⇒総勘定元帳では、「勘定科目」と言わずに、「勘定口座」と呼ばれるだけと思って頂いて結構です。
2)再集計方法(転記)
再集計にあたっては、仕訳日記帳の「左側(借方)」に記載されている場合には、「勘定口座」への入力にあたっても「左側(借方)」に金額が記載(転記といいます。)されます。
また、仕訳日記帳の「右側(貸方)」に記載されている場合には、「勘定口座」への入力にあたっても「右側(貸方)」に金額が記載(転記)されます。
3)例示によるご説明
①仕訳日記帳に記載された情報を勘定科目ごとに分類します。
上記の例示では「仕入高」「現金」「売上高」「消耗品費」に取引を分類します。
②総勘定元帳の「勘定口座(=勘定科目)」ごとに情報を集計します。
・総勘定元帳に「仕入高」「現金」「売上高」「消耗品費」の「勘定口座」が作成されます。
・仕訳日記帳の「仕入高」「現金」「売上高」「消耗品費」の「勘定科目の金額」が、総勘定元帳の「それぞれの勘定口座」に集計(転記)されます。
【仕入勘定口座】
【現金勘定口座】
【売上高勘定口座】
【消耗品費勘定口座】
4)総勘定元帳
上記の説明から
総勘定元帳とは 年間のすべての取引を各勘定科目(勘定口座)ごとに集計した会計帳簿となります。 |
※ 総勘定元帳の「総」とは、すべての勘定科目(勘定口座)の集合体ということを意味します。
3、総勘定元帳から決算書(試算表)への転記
1)決算書(試算表)とは
決算書(試算表)には、主として「損益計算書」と「貸借対照表」があります。
損益計算書とは ・『収益に属する「勘定科目」』と『費用に属する「勘定科目」』が記載され ・『収益に属する「勘定科目」』から『費用に属する「勘定科目」』を差引くことで、会社における利益金額を算定する決算書です。 |
貸借対照表とは、 ・『資産に属する「勘定科目」』と『負債に属する「勘定科目」』が記載され ・『資産に属する「勘定科目」』から『負債に属する「勘定科目」』を差引くことで、会社の正味財産(純資産)を算定するとともに ・資産、負債、正味財産の内訳(内容)を表示することにより、会社の財政状況を表示する決算書です。 |
2)上図③の集計
総勘定元帳には
『収益に属する「勘定科目」』『費用に属する「勘定科目」』『資産に属する「勘定科目」』『負債に属する「勘定科目」』のすべての勘定科目につき、
各勘定科目(勘定口座)ごとの年間発生金額(収益、費用)・期末残高(資産、残高)が集計され記載されます。
上記の総勘定元帳における『収益に属する「勘定口座」』『費用に属する「勘定口座」』に集計・記載された年間発生金額が、
損益計算書の『収益に属する「勘定科目」』『費用に属する「勘定科目」』に転記されます。
また、上記の総勘定元帳における『資産に属する「勘定口座」』『負債に属する「勘定口座」』に集計・記載された期末残高が、
貸借対照表の『資産に属する「勘定科目」』『負債に属する「勘定科目」』に転記されます。
3)例示によるご説明
①損益計算書
総勘定元帳の
・『収益に属する「売上高勘定口座」』の年間発生額450,000円
・『費用に属する「仕入高勘定口座」』の年間発生額250,000円
・『費用に属する「消耗品費勘定口座」』の年間発生額10,000円
が損益計算書のそれぞれの記載箇所に転記されます。
’
②貸借対照表
総勘定元帳の
・『資産に属する「現金勘定口座」』の期末残高190,000円
が貸借対照表の該当記載箇所に転記されます。
’
4、補助的な会計帳簿の作成
1)補助的な会計帳簿の必要性
上記2でご紹介致しました会計帳簿である「総勘定元帳」の「現金勘定口座」「預金勘定口座」では、会社全体の「現金勘定」「預金勘定」の年間の増加・減少が記録されます。
ただし「現金」につきましては、
例えば「事業所が複数あり、複数の事業所で現金が取り扱われている場合」や「1つの事業所であっても〇〇課、△△課等の複数部署で現金が取り扱われている場合」などの場合には、
複数場所等で取り扱われている「現金の入金・出金」を、区分して会計帳簿に記帳し、管理することが必要となる場合があります。
また「預金」につきましても、
複数の銀行口座がある等の場合には、銀行口座ごとの「預金の預入・引出し」を、区分して会計帳簿に記帳し、管理することが必要となります。
上記のような場合には、
- 勘定科目に「補助科目」という「勘定科目の内訳項目」を設定・使用し
- 会計帳簿自体も区分して管理することが必要となります。
※ 補助科目につきましての詳細は、⇒コチラをご覧ください。
上記のような場合には、
「総勘定元帳」の「現金勘定口座」の他に、「現金出納帳」という「現金勘定口座」を補助する会計帳簿を作成し、保管することが必要となります。
また「総勘定元帳」の「預金勘定口座」の他に、「預金出納帳」という「預金勘定口座」を補助する会計帳簿を作成し、保管することが必要となります。
2)補助的帳簿の作成
総勘定元帳の「勘定口座」から補助的会計帳簿(現金出納帳、預金出納帳)を作成する場合
補助的帳簿を作成するためには、そもそも「現金勘定科目」や「預金勘定科目(普通預金勘定、当座預金勘定等)」に補助科目「A事業所・B事業所、X課・Y課等」や「A銀行普通・B銀行普通、C銀行当座等」を設定し、使用していることが必要となります。
次に、総勘定元帳の「現金勘定口座」「預金勘定口座」から
- それぞれの補助科目ごとに取引を分類し、
- 「A事業所現金出納帳」「B事業所現金出納帳」や「A銀行預金出納帳」「B銀行預金出納帳」「C銀行当座預金出納帳」に金額を集計(転記)します。
「補助的会計帳簿」から総勘定元帳の「現金勘定口座」「預金勘定口座」を作成する場合
現金が複数事業所や複数部署で取り扱われている場合には、そもそも「現金出納帳」自体が複数事業所や複数部著で作成(記帳)されていることが考えられます。
また、銀行口座の預入・引出しに係る会計帳簿は、「銀行預金通帳」を見ながら記帳されていることが一般的であると考えます。
このような場合には、
先ず、複数の「現金出納帳」「預金出納帳」が用意され、
それぞれの場所や銀行口座に対して「現金出納帳」「預金出納帳」が作成されます。
その後、複数作成された「現金出納帳」「預金出納帳」に記帳された取引を、全社的に(すべて)集計して、「総勘定元帳」の「現金勘定口座」「預金勘定口座」が作成されます。
3)補助的会計帳簿(補助簿)
上記までのご説明から
補助的会計帳簿(補助簿)とは、
|
※ 補助簿につきましての詳しいご説明は、⇒コチラをご覧ください。
Ⅲ:会計ソフト利用下における仕訳から決算書までの流れ
会計ソフト利用下での「仕訳等の入力」から「仕訳日記帳」・「総勘定元帳」、「決算書」が作成される概要は下記の図のようになります。
「手作業下での流れ」と異なる点につきましては、
- 「会計ソフト利用下」におきましては、「会計帳簿への入力」が「現金出納帳」「預金出納帳」への入力によりなされるという点(上図の赤点線の部分)
- 一部の仕訳につきましては、「振替伝票」を使用しての入力となる点(上図の青点線の部分)です。
この2点につきまして、以下でご説明致します。
1、「現金出納帳」「預金出納帳」からの入力
1)上図Aの入力
「手作業下」におきましても、上記Ⅱの4でご紹介した場合等では、「現金出納帳」「預金出納帳」からの取引の記帳がなされまが、
「会計ソフト利用下」では、取引の入力が効率的になる、入力にあたって分かり易い等の積極的な理由から、取引内容の入力は、その殆どを「現金出納帳」「預金出納帳」から行います。
具体的には、「取引金額(入金金額・出金金額)」と「相手勘定科目」の入力により、取引内容を会計帳簿に入力します。
※ これにつきましての詳細は、⇒コチラをご覧ください。
2)上図Bの仕訳自動生成
「現金出納帳」「預金出納帳」への取引内容の入力がなされた場合、会計ソフトにおいて、『「仕訳」が「仕訳日記帳」に自動的に生成』されます。
※ この仕訳自動生成機能のため、会計ソフトを利用して会計帳簿を作成する場合には、「仕訳」というものを殆ど意識することなく決算書が作成されます。
2、振替伝票における仕訳入力
会計ソフトを利用した場合であっても、一部の取引につきましては、仕訳形式で会計帳簿に入力することが必要となります。
このような場合には、「振替伝票」という「伝票」(伝票画面)を利用して、取引内容が会計帳簿に入力されます。
この「振替伝票」で入力された「仕訳」は、自動的に「仕訳日記帳」に記録されます。
※ これにつきましての詳細は、⇒コチラをご覧ください。
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
このページにおきましては、会計帳簿の入力において必須となるような内容はないと思います。
ただ、会社の会計帳簿や決算書がどのように作成されるか?疑問を持たれた方は、是非一読して頂ければと思っております。