「カード売上取引・代引売上取引等における販売取引」につきまして、「取引の概要」のご説明を行った上で、「会計帳簿への基本的な入力方法」、「販売取引の仕訳」等をご紹介させて頂きます。
「カード売上取引」「代引売上取引」「インターネット売上取引」は、
「掛売上取引」※に含まれる取引となります。 |
※ 「掛売上取引」につきましての詳細は、⇒コチラをご覧ください。
このため、これらの売上取引につきましても、「販売取引」と「代金回収取引」の2つの取引から構成され、それぞれの取引につき、別々に会計帳簿への入力が必要となります。
ここでは、「カード売上取引」「代引売上取引」「インターネット売上取引等」※における「販売取引」を会計帳簿に入力する方法等を、下記の項目に従い、ご紹介致します。
※ ここでの「インターネット売上取引」とは、インターネットショッピングモール、フリーマーケット販売サイト、インターネットオークション販売サイト等のインターネット販売サイトの運営管理会社等を利用した販売取引をいいます。
自社で構築したインターネットサイトを介して販売する売上取引は、「一般的な掛売上取引」となります。
Ⅰ:「カード売上取引」等における「販売取引」とは
1、「カード売上取引」等における「販売取引」
『「カード売上取引」「代引取引」「インターネット売上取引」における「販売取引」』は、
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2、『「カード売上取引」等における「販売取引」』の取引形態
「カード売上取引」等は、「掛売上取引」に含まれることから、
これらの「販売取引」の取引形態は、『「一般的な掛売上取引」における「販売取引」』と同様の取引形態となります。
⇒この点につきまして以下1)でご紹介させて頂きます。
ただし、これらの取引での『「販売代金・サービス代金」の請求先』は、
「カード会社、カード決済代行会社」「代引業者」「インターネット運営・管理会社」等となり、『「一般的な掛売上取引」における「販売取引」』とは異なります。
⇒この点につきまして以下2)~4)でご紹介させて頂きます。
1)一般的な掛売上取引と同じ点
『「カード売上取引」「代引売上取引」「インターネット売上取引」における「販売取引」』におきましては、
会社から顧客に対して「商品等の納品・引渡」「サービスの提供」等が行われることから、
会社において、「売上高」が計上される取引となります。 |
ただし、「商品等の納品・引渡」「サービスの提供」等が行われた時点におきましては、その「販売代金・サービス代金」に相当する「現金」又は「預金」の受領はなされません。
このため、「販売取引」は、「現金の入金を伴う取引」でもなく、「預金の預入を伴う取引」でもありません。 |
ただし会社は、この販売取引により、「販売代金・サービス代金」に相当する現金又は預金の受領を受ける代わりに、
『「販売代金・サービス代金」の請求権(債権)』を取得します。 |
以上のことから、
これらの売上取引における「販売取引」は、
※ この請求権(債権)のことを、会計では「売掛金」といいます。 |
2)「カード売上取引」における「販売取引」の取引形態の特徴
『「カード売上取引」における「販売取引」』では、
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「カード売上取引」におきましては、「顧客からの代金回収」は、「カード会社」が行います。
このため、会社は、多数の顧客に対する「販売代金・サービス代金」を「カード会社」に対して一括して請求を行い、その請求した代金を「カード会社」から回収します。
従いまして、『「販売代金・サービス代金」の請求権』である「売掛金」は、「カード会社」に対するものとなります。
カード決済代行会社が存在する場合
- 複数のカード会社と直接契約する煩雑さ等を解消するため、
- 複数のカード会社への請求業務を簡略化するため、
- また複数のカード会社からの入金をさらに一本化するため、 etc
近年では、「カード会社」と「会社」との間に「カード決済代行会社」が存在する場合も増えています。
このような場合には、
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3)「代引売上取引」における「販売取引」の取引形態の特徴
『「代引売上取引」における「販売取引」』では、
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「代金引換売上」におきましては、「顧客からの販売代金等の回収」は「代引業者」が行い、代引業者が回収した「販売代金等」は、後日会社に振込等がなされます。
このため、会社は、多数の顧客に対する「販売代金・サービス代金」を、「代引業者」を介して回収することになります。
従いまして、『「販売代金・サービス代金」の請求権』である「売掛金」は、「代引業者」に対するものとなります。
4)「インターネットによる売上取引」等における「販売取引」の取引形態の特徴
近年では、
- インターネット販売サイト(インターネットショッピングモール、フリーマーケット販売サイト、インターネットオークション販売サイト等)の運営・管理会社等による代金決済サービスの利用
- 代金回収サービス会社・代金立替サービス会社(診療報酬の回収代行会社、売掛金の回収代行会社等)の利用etc.
種々の代金回収サービス形態があります。
このような『「インターネット売上取引」等における「販売取引」』では、
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このような場合におきましては、「顧客からの代金回収」「カード会社からの代金回収」「代引業者からの代金回収」は、「インターネット販売サイトの運営・管理会社」「代金回収代行会社・代金立替会社」等が行い、これらの会社が回収した「販売代金等」は、後日会社に振込等がなされます。
このため、会社は、多数の顧客に対する「販売代金・サービス代金」を、「インターネット販売サイトの運営・管理会社」「代金回収代行会社・代金立替会社」等を介して回収することになります。
従いまして、『「販売代金・サービス代金」の請求権』である「売掛金」は、「インターネット販売サイトの運営・管理会社」「代金回収代行会社・代金立替会社」等に対するものとなります。
Ⅱ:カード売上取引等で発行される書類(売上証憑)
『「カード売上取引」等における「販売取引」』でも、原則として
- 店舗等における「商品の引渡」「サービスの提供」等が行われる(対面式販売)
- 発送等により顧客等に対して「商品の引渡、納品」等が行われる(非対面式販売)ことから
「現金売上取引」や「掛売上取引」と同様の書類が発行されます。
他方、『「カード売上取引」等における「販売取引」』では、代金請求先が「カード会社」「カード決済代行会社」「代引業者」「インターネット販売サイト運営・管理会社」「代金回収代行会社」等となるために、「販売取引」にあたり、
- 追加で書類が必要となる場合や
- 会社での書類作成が不要となる場合があります。
以下では、『「カード売上取引」等の「販売取引」』において、
「対面式販売」及び「非対面式販売」で会社から顧客に発行される書類につきご紹介させて頂きます。
1、対面式販売で発行される書類
店舗等において物品の販売を行う「小売業」、飲食の提供を行う「飲食業」、理容・宿泊・医療・その他各種サービスの提供を行う「サービス業」では、
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これらの「対面式で販売が行われた場合」には、一般的に、「現金売上取引」と同様の書類(「領収書」「レシート」)が顧客に発行されます。
この「領収書」「レシート」は、「商品の引渡やサービスの提供」が行われ、売上が計上されることを証明する「売上証憑」となります。
「カード売上取引」の「販売取引」における特有の書類
「カード会社との直接契約によるカード売上取引」や「一部のカード決済代行会社との契約に基づくカード売上取引」における「販売取引」では、
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上記の「売上票」は、カード会社に対して請求を行うための「請求元書類(カード証憑)」となります。
2、非対面式販売で発行される書類
カード決済を利用する販売、代引決済を利用する販売、インターネット販売サイトを利用する販売であっても、
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これらの「非対面式で販売が行われた場合」には、一般的に、「一般的な掛売上取引」と同様の書類(「納品書」)が顧客に発行されます。
この「納品書」は、「商品の引渡やサービスの提供」が行われ、売上が計上されることを証明する「売上証憑」となります。
代金引換販売、インターネット販売等における特殊性
代金引換販売、インターネット販売等の非対面式販売においては、「納品書」が発行されない場合もあると思います。
このような場合には、
会社が商品出荷したこと に起因して作成される「メールやデータ」が売上が計上されることを証明する「売上証憑」となります。 |
Ⅲ:「販売取引」の会計帳簿への入力
1、会計帳簿への入力種類
2、会計帳簿への入力単位
1)月次単位での入力
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「カード売上帳」や「代引売上帳」を会社で作成している場合には、『「カード売上」や「代引売上」の日次の売上金額』は、これらの帳簿に記載されています。
また、
- POSレジを利用している等
- カード決済会社を利用している場合等
- インターネット販売サイト(ショッピングモール・フリーマーケット・オークションサイト等)の運営・管理会社を利用している場合等で
『「カード売上帳」や「代引売上帳」と同様の情報(データ)を記録した書類』がある場合には、『「カード売上」や「代引売上」の日次の売上金額』は、これらの書類に記載されています。
このため、『「カード売上帳」「代引売上帳」「POSレジやカード決済代行会社等のシステムから出力される書類」で集計計算された月次売上高合計』を、月次単位で、会計帳簿に入力することができます。
2)請求先単位での入力
会計帳簿(会計ソフト)への入力は、 「販売代金・サービス代金」の「請求先(入金先)」別に入力することが必要となります。 |
「カード販売取引」や「代引販売取引」は、「振替伝票に仕訳等を入力する」ことにより「会計帳簿(会計ソフト)」に月次単位で入力することになりますが、この入力にあたっては、「請求先(入金先)」別(カード会社ごと、代引業者ごと)に入力することが必要となります。
「カード売上」や「代引売上」の仕訳におきましては、仕訳の「借方(左側)」に、『「販売代金・サービス代金」に対する請求権』を表す「売掛金」を計上することになります。
この売掛金に対しては、請求先を明示するために「補助科目」として「請求先名称(入金先名称)」を付すことになります。
このため、振替伝票に仕訳等を入力する場合には、「請求先(入金先)」ごとに入力することが必要となります。
Ⅳ:「販売取引」の仕訳
「振替伝票」により会計帳簿に入力する場合には、『「カード売上取引」や「代引売上取引」の「販売取引」』の「仕訳」を理解する必要があります。
このため、以下では、この仕訳をご紹介させて頂きます。
1、仕訳のための販売取引の把握
以下、「一般的な掛売上の販売取引」と同様の説明となります。
2、借方(左側)勘定科目と貸方(右側)勘定科目の選択
①「収益項目の増加」と「資産項目の増加」の配置場所
以下、「一般的な掛売上の販売取引」と同様の説明となります。
これにつきましての詳細は、 ⇒ コチラをご覧ください。
3、売掛金に対する補助科目の設定
「売掛金」という勘定科目に対する内訳項目として、「請求先(入金先)の名称」を補助科目として設定します。 |
「売掛金に対する補助科目の設定」は、「(狭義の)掛売上の販売取引」と同様となります。
ただし、「カード売上」や「代引売上」では、上記Ⅲ2)でもご説明させて頂きましたように、「請求先(代金の入金先)」が、「得意先」ではなく、「カード会社」「カード決済代行会社」「インターネット販売サイトの運営・管理会社」「代引業者」等となります。
3、売上高に対する補助科目の設定
以下、「一般的な掛売上の販売取引」と同様の説明となります。
4、仕訳
「仕訳の内容」につきましては、「(狭義の)掛売上の販売取引」と同様となります。
ただし、以下のように「売掛金」に付ける「補助科目」が、「得意先名称」ではなく「カード会社等の名称」となります。
【借方】勘定 | 補助科目 | 金額 | 【貸方】勘定 | 補助科目 | 金額 |
売掛金 | ●●カード※1 | xxxx円 | 売上高 | 掛売上 | xxxx円 |
※1:「カード会社」「カード決済代行会社」「インターネットショッピングモール運営・管理会社」「代引業者」等となります。
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
「カード売上取引」や「代引売上取引」は、掛売上の一種であることから、これらの取引の会計帳簿への入力は、「一般的な(狭義の)掛売上の販売取引」と同様となります。
ただし、「カード売上取引」や「代引売上取引」がある会社様では、通常取引量が多いことが想定されます。
このため、取引量が多い場合には、『「現金取引」における「現金売上帳」』と同様に、会計帳簿への入力のため、一旦「カード売上帳」や「代引売上帳」等の作成が必要となります。
この点が「カード売上取引」「代引取引」におきましての、最大の特徴(最重要事項)であると考えます。
このため、通常、「カード売上取引」「代引売上取引」を行う会社におきましては、経理作業が増加します。
ただし、このような経理作業を軽減するために、「インターネット販売サイトを運営・管理する会社」や「カード決済代行会社」では、「カード売上帳」「代引売上帳」と同様の書類作成サービスを提供していたりします。
また、会社自身で、POSレジを導入することにより、経理作業の軽減を図ったりします。
「カード売上取引」「代引売上取引」がある会社においては、
- 自社では「カード売上帳」「代引売上帳」等の作成が必要となるのか?
- これらに代わる販売データの入手が可能であるか?
- 「カード売上帳」「代引売上帳」の作成が必要な場合には、どのように作成するか?作成のための作業量はどの程度か?等
を検討して頂くとことが、最も重要な事項であると考えます。