「後払購買取引」における「取引の流れ」をご説明した上で、『「後払購買取引」における「費用計上ルール」「固定資産計上ルール」』及び『「後払購買取引」を会計帳簿へ入力するための基本的入力方法』等を、下記の項目に従い、ご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「後払購買取引」とは
1、後払購買取引
「後払購買取引」とは、
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後払購買取引は、
購入先から「物品等の納品・引渡し」や「サービスの提供」がなされるという点では、「現金購買取引」と同様となりますが、
その「物品代金・サービス代金」の支払は、物品の納品時・サービス提供時に行われず、後日行われるという点で、「現金購買取引」と異なります。
2、「後払購買取引」の流れ
「後払購買取引」では、「現金購買取引」とは異なり、「物品の引渡やサービスの提供を受けること」と「物品代金・サービス代金の支払を行うこと」とが別々に行われます。
このため、「後払購買取引」が完了するまでには、以下の段階を経て取引が完了します。
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① 注文の発注
「後払購買取引」は、購入先へ「注文を発注」することから始まります。
注文を発注することにより、会社と購入先との間で、以下の合意がなされます。
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なお、この発注の段階では、
上記の合意内容を会社と購入先とで確認するため、会社から「注文書」等が発行されます。 ※ ただし、注文書の発行はなされず、「電話・口頭」等で行われる場合も多くあります。 |
② 物品の引渡、サービスの提供
「後払購買取引」における第2段階では、上記①の注文に基づき、
購入先から会社に対して「物品等の引渡」や「サービスの提供」が行われます。 |
また、この段階におきましては、単に「物品等の引渡」「サービスの提供」が行われるだけではなく、
会社は、『購入先に対して「物品代金やサービス代金」を支払わなければならない義務(代金支払義務)』を負います。 |
「後払購買取引」におきましては、「物品の引渡」や「サービスの提供」が行われた時点では、「物品代金やサービス代金」の支払はなされませんが、
購入先から会社への「物品の引渡」や「サービスの提供」は完了していることから、
会社は、購入先に対して「物品代金やサービス代金」を支払わなければならない義務(代金支払義務)』を負うことになります。
なお、この物品引渡・サービス提供の段階では、
会社と購入先との間で「物品の引渡」や「サービスの提供」が行われたことを確認(証明)するため、購入先から会社に対して「納品書(物品引渡の場合)」や「作業完了報告書(サービス提供の場合)」※が発行されます。 ※ サービスの提供がなされた場合には、「作業完了報告書」等が発行されない場合も多くあります。 ※ また、この段階での「納品書」等の発行に代えて、下記③の「請求書」が直接発行されることも多くあります。 |
③ 請求書の発行
「後払購買取引」における第3段階では、購入先から会社に対して「物品代金・サービス代金」の請求がなされます。
購入先では、『「納品した物品代金」や「提供したサービス代金」』を、月次等の一定期間単位で集計し、 「集計した金額」を会社に対して実際に請求します。 |
上記②の段階では、
会社は『「物品代金やサービス代金」を支払わなければならない義務(支払義務)』を負いますが、
他方、購入先は会社に対して『「物品代金やサービス代金」を請求することができる権利(請求権)』を取得しています。
このため、購入先では、②の段階で、取引の都度「物品代金やサービス代金」を請求書することも可能となります。
ただし、取引の都度、請求書を発行することは、購入先での請求業務・代金回収業務に掛かる事務負担が過大になることから、このような取引では、月次等の一定期間単位において行われた取引に係る「物品代金・サービス代金」を一括して請求することが一般的となっています。
この請求の段階におきましては、
会社と購入先との間で「請求金額」を確認(証明)するため、購入先から会社に対して「請求書」※が発行されます。 ※ 継続的にサービスの提供がなされており、請求金額も毎月同じである等の場合には、「請求書」等が発行されない場合もあります。(例えば「家賃支払の場合」など) |
なお、
この「請求書を受け取る段階」の取引のことを、 『「後払購買取引」における「購入取引」※』といいます。 |
※ 「本来的な購入取引」と「実務的な購入取引」
「本来的な購入取引」とは、
- 「物品の引渡」「サービスの提供」を受けるとともに、
- 会社が「物品代金・サービス代金」の支払義務を負うこととなった時点での取引をいいます。
このため、厳密(本来的)には上記②の段階での取引が「購入取引」となります。 |
ただし実務上では、「購入取引」を会計帳簿に入力する場合には、「請求書」等に基づいて入力する等の理由から、
実務上での「購入取引」は、上記②の段階ではなく、③の段階とすることが一般的となります。 |
④ 物品代金・サービス代金の支払
「後払購買取引」における最終段階では、上記③の請求に基づき、会社が「物品代金・サービス代金」の支払を行います。
「物品代金・サービス代金」の支払は、
等により行われます。 上記1、2の場合には、会社の「現金」が減少し、 |
また、この段階におきましては、単に「会社の現金や預金」が減少するだけではなく、
会社が「物品代金・サービス代金」を支払うことにより、 「③の購入取引」において、会社が購入先に対して負っていた「支払義務」が消滅します。 |
この代金支払の段階では、
購入先に対して直接現金により代金を支払った場合には 「物品代金・サービス代金」を受け取ったことを証明する目的で、購入先から会社に対して「領収書」等が発行されます。 他方、銀行等の金融機関を通じて代金を支払った(現金振込、預金振込、自動引落)場合には、 金融機関から「振込金受取書(振込明細書)」又は「ATM利用明細書」等が発行されます。 ※ また「預金振込」や「自動引落」による場合等では、会社の預金残高が減少するため、会社の『「預金通帳」に「引出記録」が記帳』されます。 |
なお、
この物品代金・サービス代金を支払う段階における取引を、 『「後払購買取引」における「代金支払取引」』といいます。 |
【後払購買取引における取引の流れ】
Ⅱ:「費用計上・固定資産計上ルール」と「費用・固定資産の計上」
購買取引につきましては、「購入する物品」「提供を受けるサービス」の内容・種類等により、「仕入取引」「経費取引」「固定資産購入取引」に分類することができますが、
- 『「仕入取引」や「経費取引」の「後払購買取引」』が行われると、『「仕入」や「経費」の「費用」』が増加することになります。
- また、『「固定資産購入取引」の「後払購買取引」』が行われると、「固定資産」が増加することになります。
このため、この「費用の増加」や「固定資産の増加」を会計帳簿に入力することが必要となります。
他方、「後払購買取引(仕入取引、経費取引、固定資産購入取引)」では、上記Ⅰの2でご説明したように、4つの段階を経て取引が完了するため、どの段階で『「費用(仕入、経費)」や「固定資産」の増加』を会計帳簿に計上するかが問題となります。
この点につきましては、以下のように、税務上の「費用計上・固定資産計上に関するルール」が存在していることから、このルールに従って「仕入、経費の費用」や「固定資産」を計上ことが必要となります。
以下では、
- この税務上の「費用計上・固定資産計上に関するルール」をご紹介するとともに、
- この税務上のルールに従い、「後払購買取引」において『「費用(仕入・経費)の増加」「固定資産の増加」を認識(計上)しなければならない段階』をご紹介させて頂きます。
1、税務上の費用計上・固定資産計上に関するルール
「費用計上・固定資産計上のルール」として、税務上、以下のルールが存在しています。
「仕入、経費の費用」「固定資産」は、
時点で計上することが必要となります。 |
2、費用計上・固定資産計上の段階
上記1の「税務上の費用計上・固定資産計上に関するルール」に従い「費用の計上」「固定資産の計上」を行うためには、
「後払購買取引の流れ」のうち、
「仕入」「経費」「固定資産」を計上することが必要となります。 |
Point ! 本来的な「仕入」「経費」「固定資産」計上時点 『「仕入」「経費」の「費用」』や「固定資産」を計上するルールは、
本来的には「後払購買取引の流れ」における「②の段階」で計上することになります。 ただし、
実務上では「③の段階」で「費用(仕入、経費)」「固定資産」を計上します。 |
3、費用計上・固定資産計上に関する例示
1)費用計上に関する例示
費用計上に関して、以下の例示を使用してご説明させて頂きます。
(なお、ここでは説明を単純化するため、1年間(会社の会計期間)に、以下の4つの後払購買取引しかないものとします。)
①例示
後払購買取引①:購入者に対して「1,500円の物品」を購入する旨の発注を行ったが、物品の引渡は未了である。
後払購買取引②:購入者に発注していた「2,500円の物品」の引渡を受けた。但し、これに係る請求書は未入手である。
後払購買取引③:購入者から「3,500円の物品」の引渡を受けており、これに係る「請求書」も入手している。ただし、これに係る購入代金の支払は未了である。
後払購買取引④:購入者から「4,500円の物品」の引渡を受けており、またこれに係る購入代金も支払済みである。
②費用計上金額
上記例示における費用金額は、「購買取引(請求書入手段階)」まで完了している
取引③(3,500円) + 取引④(4,500円) = 8,000円 となります。 ※ ただし、本来的な費用計上ルールを適用して、「取引②の費用金額(2,500円)」も「費用」として計上することができます。 |
2)固定資産計上に関する例示
固定資産計上に関して、以下の例示を使用してご説明させて頂きます。
(なお、ここでは説明を単純化するため、1年間(会社の会計期間)に、以下の4つの「未払固定資産購入取引」しかないものとします。)
①例示
後払購買取引①:購入者に対して「100,000円の物品」を購入する旨の発注を行ったが、物品の引渡は未了である。
後払購買取引②:購入者に発注していた「200,000円の物品」の引渡を受けた。但し、これに係る請求書は未入手である。
後払購買取引③:購入者から「300,000円の物品」の引渡を受けており、これに係る「請求書」も入手している。ただし、これに係る購入代金の支払は未了である。
後払購買取引④:購入者から「400,000円の物品」の引渡を受けており、またこれに係る購入代金も支払済みである。
②固定資産計上金額
上記例示における固定資産の計上金額は、「購買取引(請求書入手段階)」まで完了している
取引③(300,000円) + 取引④(400,000円) = 700,000円 となります。 ※ ただし、本来的な固定資産計上ルールを適用して、「取引②の金額(200,000円)」も「固定資産」として計上することができます。 |
Ⅲ:「後払購買取引」の会計帳簿への基本的入力方法
「後払購買取引」につきましては、
上記Ⅱでご紹介させていただきましたように「購買取引(③の段階)」まで完了しますと、「費用の増加」や「固定資産の増加」を会計帳簿に計上することが必要となります。
また、「代金支払取引(④の段階)」まで完了しますと、会社の「現金」又は「預金(普通預金、当座預金)」が減少するために、『「現金」又は「預金(普通預金、当座預金)」の減少』を会計帳簿に計上することが必要となります。
ここでは、「後払購買取引」が行われた場合には、「どのような会計帳簿の入力が必要となるか」をご説明させて頂きます。
1、「購入取引」と「代金支払取引」の区分入力の必要性
「後払購買取引」を会計帳簿に入力する場合には、「購入取引」と「代金支払取引」を別々の取引であると考え、別々に会計帳簿に入力することが必要となります。 |
「後払購買取引」は、
「1つの発注」に対して、「納品」⇒「請求」⇒「代金支払」という「時間的な流れ」を持ちますが、
「1つの取引」として存在しています。
ただし、「時間的な流れ」の中で、
・「費用の増加」や「固定資産の増加」を認識(計上)する段階と
・「現金又は預金の減少」を認識(計上)する段階とが異なるために、
それらを同時に会計帳簿に入力することができません。
このため、
「後払購買取引」につきましては、
「購入取引」と「代金支払取引」を別々の取引として、会計帳簿に入力することが必要となります。 |
2、「購入取引」と「代金支払取引」の会計帳簿への入力
1)「購入取引」の会計帳簿への入力
『「後払購買取引」における「購入取引」』とは、上記Ⅰの2でも簡単にご紹介させて頂きましたが、
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この「購入取引」を会計帳簿に入力するためには、上記の取引内容を『「簿記」という「会計帳簿入力ルール」で定められている「勘定科目」』に置き換えて表現することが必要となります。
この点、「仕入取引」「経費取引」「固定資産購入取引」では、以下のようになります。
「仕入取引」の場合
「仕入取引」におきましては、「仕入の増加」は、「仕入高」という「勘定科目」で表現されます。
また、『「物品代金・サービス代金」の支払義務(債務)』は、「買掛金」という「勘定科目」で表現されます。
上記のことから、
「仕入取引」における「購入取引」の会計帳簿への入力は、
※ 『「物品代金・サービス代金」を支払わなければならない義務』であることから、無形ではあるが支払義務(債務)を負っているということになるため、会計上では「負債」として取り扱うことになります。 ※ 『「仕入取引」における支払義務』に対しては、「経費取引や固定資産購入取引における支払義務(未払金)」と区別するため、「買掛金」という勘定科目を使用します。 |
「経費取引」の場合
「経費取引」におきましては、「経費の増加」は、「購入した経費の内容に適合する勘定科目」※で表現されます。
また、『「物品代金・サービス代金」の支払義務(債務)』は、「未払金」という「勘定科目」で表現されます。
※ Point ! 経費項目に対する勘定科目 経費につきましては、「経費」という勘定科目で一括して表現されるのではなく、経費の内容ごとに細分化された様々な「勘定科目」が「会計帳簿入力ルール(簿記)」で定められています。 |
上記のことから、
「経費取引」における「購入取引」の会計帳簿への入力は、
※ 『「物品代金・サービス代金」を支払わなければならない義務』であることから、無形ではあるが支払義務(債務)を負っているということになるため、会計上では「負債」として取り扱うことになります。 |
「固定資産購入取引」の場合
「固定資産購入取引」におきましては、「固定資産の増加」は、「購入(所有・取得)した固定資産の内容に適合する勘定科目」※で表現されます。
また、『「物品代金」の支払義務(債務)』は、「未払金」という「勘定科目」で表現されます。
※ Point ! 固定資産項目に対する勘定科目 固定資産につきましては、「固定資産」という勘定科目で一括して表現されるのではなく、購入した固定資産の内容ごとに細分化された様々な「勘定科目」が「簿記」という「会計帳簿入力ルール」で定められています。 |
上記のことから、
「固定資産購入取引」における「購入取引」の会計帳簿への入力は、
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2)「代金支払取引」の会計帳簿への入力
「代金支払取引」とは、上記Ⅰの2でも簡単にご紹介させて頂きましたが、
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従いまして、
「代金支払取引」につきましては、 「仕入取引」の場合には
「経費取引」「固定資産購入取引」の場合には
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3)「購入取引」と「代金支払取引」の関連性
「購入取引」と「代金支払取引」の関連性を、「仕入取引」「経費取引」「固定資産購入取引」別にまとめると、以下のようになります。
「仕入取引」の場合
「購入取引」により、
「代金支払取引」により、
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この結果、
「仕入取引」におきまして「代金支払取引」まで完了している場合には、
他方、「購入取引」は完了しているが、「代金支払取引」が未了である場合には、
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「経費取引」及び「固定資産購入取引」の場合
「購入取引」により、
「代金支払取引」により、
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この結果、
「経費取引」又は「固定資産購入取引」におきまして「代金支払取引」まで完了している場合には、
他方、「購入取引」は完了しているが、「代金支払取引」が未了である場合には、
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Ⅳ:「後払購買取引」の関連記事
以下のリンクページでは、「後払購買取引」を会計帳簿に入力するために必要となる事項を記載しております。
この記事に続く「後払購買取引」の会計帳簿への入力方法につきましては、以下リンクページをご覧ください。
1、「購入取引」の関連記事
1)「購入取引」の会計帳簿への入力方法と仕訳
・「購入取引」を会計帳簿へ入力する基本的入力方法
・「購入取引」の仕訳 etc.
を以下のリンクページで記載しております。
2)「購入取引」の「振替伝票」への入力方法
・「購入取引」を「振替伝票」に入力する方法
・入力後における入力確認方法 etc.
を以下のリンクページで記載しております。
2、「代金支払取引」の関連記事
1)「代金支払取引」の会計帳簿への入力方法と仕訳
・「代金支払取引」を会計帳簿へ入力する基本的入力方法
・「代金支払取引」の仕訳 etc.
を以下のリンクページで記載しております。
2)「代金支払取引」の「現金出納帳」又は「預金出納帳」への入力方法
・「代金支払取引」を「現金出納帳」又は「預金出納帳」に入力する方法
・入力後における入力確認方法 etc.
を以下のリンクページで記載しております。
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
「後払購買取引」では、まず「発注」⇒「納品」⇒「請求」⇒「代金支払」という「時間的な流れを持っている」ことを理解して頂くことが必要となります。
そのうえで、「後払取引」を会計帳簿に入力するためには、
- 「購入取引(請求段階)」が完了したものにつき『「仕入・経費等の費用」の増加』や「固定資産の増加」を入力する
- 「代金支払取引(代金支払段階)」が完了したものにつき「現金又は預金の減少」を入力する
ことが必要となることを理解して頂くことが重要となります。
なおこの記事は、「後払購買取引」の取引理解を重視した記事となっております。
「購入取引」「代金支払取引」の詳細な会計帳簿への入力方法につきましては、Ⅳで記載いたしましたリンクページで記載しておりますので、
もしよければ、これらの記事も併せて一読して頂ければと思っております。