『「給与・役員報酬の計上取引」の「意義」』及び『「給与・役員報酬の計上取引」に含まれる「各種取引の会計的な取引内容」』につき、下記の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「賃金台帳が作成された段階」で「行われる取引」
「賃金台帳が作成された段階」では、
- 会社は、従業員・役員から『「労働サービス」の提供』『「会社経営サービス」の提供』を受けますが、
これと同時に、会社は、従業員・役員から、
- 従業員・役員個人が負担する「社会保険料」「雇用保険料」「源泉徴収所得税」「特別徴収住民税」を徴収しています。
このため、「賃金台帳が作成された段階」では、既に、「会社と従業員・役員との間」で、
・従業員・役員から会社に「労働サービス」「会社経営サービス」を提供するという「取引」が行われ、 ・会社が従業員・役員から「社会保険料」「雇用保険料」「源泉徴収所得税」「特別徴収住民税」を徴収しているという「取引」が行われており、 |
この「取引」のことを、
「給与・役員報酬の計上取引」といいます。 |
Ⅱ:「給与・役員報酬の計上取引」の「意義」
「給与・役員報酬の計上取引」には、まず、
「給与・役員報酬の計算対象期間」において「従業員から労働サービスの提供を受けたこと」「役員から会社経営サービスの提供を受けたこと」に対して、会社が「費用」を計上する取引(給与・役員報酬の費用計上取引) |
が含まれます。
また、これと同時に
「従業員・役員が負担しなければならない社会保険料(健康・介護保険料及び厚生年金保険料)」を、会社の「給与・役員報酬の計算」において徴収する取引(社会保険料の徴収取引) |
「従業員が負担しなければならない雇用保険料」を、会社の「給与・役員報酬計算」において徴収する取引(雇用保険料の徴収取引) |
「従業員・役員の個人所得税」を、会社の「給与・役員報酬の計算」において徴収する取引(源泉所得税の徴収取引) |
「従業員・役員の個人住民税」を、会社の「給与・役員報酬の計算」において徴収する取引(特別徴収住民税の徴収取引) |
が含まれることになるため、
「給与・役員報酬の計上取引」は、
|
という「異なる内容・性格」をもった「5つの取引が複合された取引」となります。
Ⅲ:「各種取引」の「会計的な取引内容」
1、「給与・役員報酬の費用計上取引」
「給与・役員報酬の費用計上取引」は、上記Ⅱでご紹介させて頂きた内容を持つ取引ですが、
「給与・役員報酬に係る費用計上面」と「給与・役員報酬に係る対価の支払面」という2面性を考慮すると、
「給与・役員報酬の費用計上取引」は、
① 「給与・役員報酬の計算対象期間」において「従業員から労働サービスを受けた」「役員から経営サービスを受けた」という「会社費用」が計上される取引であるとともに、 ② 従業員・役員に対して『労働・経営サービスに係る「対価の支払義務」』という「負債」を負う取引となります。 |
このため『「給与・役員報酬の費用計上取引」の「会計的な取引内容」』は、
① 「給与・役員報酬の計算対象期間」における「給与手当」「役員報酬」という「会社費用」が計上される取引であるとともに、 ② 従業員・役員に対する「未払費用」という「負債」が計上される取引となります。 |
※ なお、当該取引につきましては、『「給与・役員報酬の費用計上取引」の「取引内容」と「仕訳」』でより詳細をご説明しておりますので、必要に応じて当該リンクページもご覧頂きますようお願い致します。
2、社会保険料の徴収取引
「社会保険料の徴収取引」は、上記Ⅱでご紹介させて頂きた内容を持つ取引ですが、
「社会保険料の徴収面」と「社会保険料を徴収したことにより生じる結果」という2面性を考慮すると、
「社会保険料の徴収取引」は、
① 「従業員・役員負担分の社会保険料」を(従業員・役員から)徴収するため、 ② ①の徴収により、結果的に「社会保険に係る会社費用」が減少する取引となります。 |
このため『「社会保険料の徴収取引」の「会計的な取引内容」』は、
① 「従業員・役員負担分の社会保険料」を徴収するため、 ② 「法定福利費」という「会社費用」が減少する取引となります。 |
※ なお、当該取引につきましては、『「社会保険料の徴収取引」の「取引内容」と「仕訳」』でより詳細をご説明しておりますので、必要に応じて当該リンクページもご覧頂きますようお願い致します。
3、雇用保険料の徴収取引
「雇用保険料の徴収取引」は、上記Ⅱでご紹介させて頂きた内容を持つ取引ですが、
「雇用保険料の徴収面」と「雇用保険料を徴収したことにより生じる結果」という2面性を考慮すると、
「雇用保険料の徴収取引」は、
① 「従業員負担分の雇用保険料」を(従業員から)徴収するため、 ② ①の徴収により、結果的に「労働保険に係る会社費用」が減少する取引となります。 |
このため『「雇用保険料の徴収取引」の「会計的な取引内容」』は、
① 「従業員負担分の雇用保険料」を徴収するため、 ② 「法定福利費」という「会社費用」が減少する取引となります。 |
※ なお、当該取引につきましては、『 「雇用保険料の徴収取引」の「取引内容」と「仕訳」』でより詳細をご説明しておりますので、必要に応じて当該リンクページもご覧頂きますようお願い致します。
4、源泉所得税の徴収取引
「源泉所得税の徴収取引」は、上記Ⅱでご紹介させて頂きた内容を持つ取引ですが、
「源泉所得税の徴収面」と「源泉所得税を徴収したことにより生じる結果」という2面性を考慮すると、
「源泉所得税の徴収取引」は、
① 「従業員・役員の個人所得税」を(従業員・役員から)徴収するため、 ② 税務署に対して『「源泉徴収所得税」の「支払義務」』という「負債」を負う取引となります。 |
このため『「源泉所得税の徴収取引」の「会計的な取引内容」』は
① 「従業員・役員の個人所得税」を徴収するため、 ② 税務署に対する「預り金」という「負債」が計上される取引となります。 |
※ なお、当該取引につきましては、 『「源泉所得税の徴収取引」の「取引内容」と「仕訳」』でより詳細をご説明しておりますので、必要に応じて当該リンクページもご覧頂きますようお願い致します。
5、特別徴収住民税の徴収取引
「特別徴収住民税の徴収取引」は、上記Ⅱでご紹介させて頂きた内容を持つ取引ですが、
「特別徴収住民税の徴収面」と「特別徴収住民税を徴収したことにより生じる結果」という2面性を考慮すると、
「特別徴収住民税の徴収取引」は、
① 「従業員・役員の個人住民税」を(従業員・役員から)徴収するため、 ② 各市町村に対して『「特別徴収住民税」の「支払義務」』という「負債」を負う取引となります。 |
このため『「特別徴収住民税の徴収取引」の「会計的な取引内容」』は、
① 「従業員・役員の個人住民税」を徴収するため、 ② 各市町村に対する「預り金」という「負債」が計上される取引となります。 |
※ なお、当該取引につきましては、『「特別徴収住民税の徴収取引」の「取引内容」と「仕訳」』でより詳細をご説明しておりますので、必要に応じて当該リンクページもご覧頂きますようお願い致します。
6、「給与及び役員報酬の支払予定額」(未払費用)の計上
「給与・役員報酬の計上取引」に含まれる上記1の「給与・役員報酬の費用計上取引」により、
従業員・役員に対する『給与・役員報酬の「対価の支払義務」』としての「未払費用」が計上されます。 (「給与支給額」及び「役員報酬支給額」が「未払費用」として計上されます。) |
他方、「給与・役員報酬の計上取引」に含まれる上記2~5の「各種の徴収取引」により、
従業員・役員に対する『給与・役員報酬の「対価の支払義務」』としての「未払費用」が減額計上(マイナス計上)されます。 (「各種の控除項目」が「未払費用」から減額されます。) |
このため「給与・役員報酬の計上取引」が行われることにより、
「未払費用」という勘定科目で、 自動的に「給与及び役員報酬の支払予定額」が計上されることになります。 |
Ⅳ:「給与・役員報酬の計上取引」と「賃金台帳」
「給与・役員報酬の計上取引」は、『「賃金台帳」が作成された段階』で行われる取引であることから、
『「給与・役員報酬の計上取引」に含まれる「各種取引」』は、すべて「賃金台帳」に反映されています。
以下では、『「給与・役員報酬の計上取引」に含まれる「各種取引」』と「賃金台帳」との関係についてご紹介させて頂きます。
1、「給与・役員報酬の費用計上取引」と「賃金台帳」
「給与・役員報酬の費用計上取引」は、
「給与・役員報酬の計算対象期間」において「従業員から労働サービスの提供を受けたこと」「役員から会社経営サービスの提供を受けたこと」に対して、会社が「費用」を計上する取引を言いますが、 |
『従業員から受けた「労働サービス」』及び『役員から受けた「会社経営サービス」』は、
「賃金台帳」の「給与支給額」及び「役員報酬支給額」に反映されます。 |
2、「各種の徴収取引」と「賃金台帳」
「社会保険料の徴収取引」「雇用保険料の徴収取引」「源泉所得税の徴収取引」「特別徴収住民税の徴収取引」の「各種徴収取引」は、
「給与・役員報酬の計算」において、会社が、従業員・役員が負担する「社会保険料」「雇用保険料」「源泉所得税」「特別徴収住民税」を徴収する取引を言いますが、 |
『従業員・役員から徴収した「社会保険料」』は、
「賃金台帳」の『「健康・介護保険」及び「厚生年金保険」の合計額』に反映され、 |
『従業員から徴収した「雇用保険料」』は、
「賃金台帳」の「雇用保険」に反映され、 |
『従業員・役員から徴収した「源泉所得税額」』は、
「賃金台帳」の「源泉徴収所得税」に反映され、 |
『従業員・役員から徴収した「特別徴収住民税額」』は、
「賃金台帳」の「特別徴収住民税」に反映されます。 |
3、「給与及び役員報酬の支払予定額(未払費用)」と「賃金台帳」
「給与・役員報酬の計上取引」が行われることにより、
「未払費用」という勘定科目で、 自動的に「給与及び役員報酬の支払予定額」が計上されることになりますが、 |
この「給与及び役員報酬の支払予定額(未払費用)」は、
「賃金台帳」の「支払金額」に反映されます。 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
「給与・役員報酬の計上取引」につきましては、
- 「給与・役員報酬の費用計上取引」
「社会保険料の徴収取引」「雇用保険料の徴収取引」「源泉所得税の徴収取引」「特別徴収住民税の徴収取引」
という「5種類の内容・性格の異なる取引」の「複合取引」であることをご理解頂くこと - 「給与・役員報酬の計上取引」に含まれる「各種取引」についての「会計的な取引内容」をご理解頂くことがPointとなります。
「給与・役員報酬の計上取引」を「会計帳簿(会計ソフト)」に入力するためには、『「給与・役員報酬の計上取引」の「仕訳」』を理解することが必須となりますが、
ここでは、この『「給与・役員報酬の計上取引」の「仕訳」』を理解するための前提として、
- 「給与・役員報酬の計上取引」の「意義」
- 「給与・役員報酬の計上取引」に含まれる「各種取引」についての「会計的な取引内容」
をご紹介させて頂いております。
「給与・役員報酬の計上取引」につきましては、「内容・性格の異なる5種類の取引」が「複合された取引」となるため、
会計処理に慣れていない方にとっては、厄介なものとなりますが、各取引の「会計的な取引内容」をご紹介させて頂いているリンクページを一読頂く等により、できる限りご理解頂ますようお願い致します。