「労働保険料の支払取引」について「法人税法上で規定されている会計処理方法」を採用した場合における
『確定保険期間に係る「立替金」と「預り金」の相殺』に係る「会計処理」及び「仕訳」』を、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
なお、当該取引につきましては、「労働保険料の支払取引」に含まれる取引の1つとなります。
このため当該ページは、『法人税法に基づく「労働保険料の支払取引」の会計処理と仕訳』でご紹介させて頂いております内容を補完するものとなります。
Ⅰ:「立替金」と「預り金」の相殺処理の必要性
1、「労働保険料の支払取引」による「立替金」の計上
「労働保険の年度更新」が行われ、
「概算保険料の支払取引」及び「確定差額の支払取引又は充当取引」に対する「会計処理」が行われると、
・「概算保険料の支払」のうちの『「従業員負担分の概算保険料」の支払部分』に対して「立替金」が計上され、 ・「確定差額の支払又は充当」のうちの『「従業員負担分の確定差額」の支払又は充当部分』に対して「立替金」が増加計上又は減少計上されますが、 |
この「立替金」につきましては、
基本的に「労働保険料の支払(労働保険の年度更新)」が行われる都度計上され続けます。 |
2、「雇用保険料の徴収取引」による「預り金」の計上
他方、「毎月の給与計算」において『従業員から「雇用保険料」の徴収』が行われ、
「給与・役員報酬の計上取引」に対する「会計処理」が行われると、
『従業員から徴収した(預かった)「雇用保険料」』が、「預り金」として計上されますが、 |
この「預り金」につきましては、
基本的に「毎月の給与計算(給与・役員報酬の計上取引)」が行われる都度計上され続けます。 |
3、「立替金」と「預り金」の相殺処理の必要性
1)「立替金」の解消(減少)処理
「概算保険料の支払取引」及び「確定差額の支払取引又は充当取引」で計上される「立替金」は、
・従業員に対して会社が持つ「立替請求権」であるために、
・本来、従業員から『「従業員負担分の雇用保険料」を徴収した時点』、すなわち、
『「毎月の給与計算」で「従業員負担分の雇用保険料」を徴収した時点』で消滅させる(減少させる)会計処理を行うことが必要となるものです。 |
ただし、上記2でご紹介させて頂きましたように、
「毎月の給与計算」では、『従業員から徴収した「従業員負担分の雇用保険料」』に対しては、
「立替金」を消滅させる(減少させる)のではなく、「預り金」を計上する会計処理がおこなわれています。
このため、「立替金」は、消滅することなく、
「労働保険料の支払(労働保険の年度更新)」がなされる都度増加し続けています。 |
2)「預り金」の解消(減少)処理
「給与・役員報酬の計上取引」で計上される「預り金」は、
・保険者に対して会社が負う「(従業員負担分の)雇用保険料の支払義務」であるために、
・本来、会社から保険者へ『「従業員負担分の雇用保険料」を支払った時点』、すなわち、
「労働保険の年度更新」時点で消滅させる(減少させる)会計処理を行うことが必要となるものです。 |
ただし、上記1でご紹介させて頂きましたように、
「労働保険の年度更新」時点では、「「従業員負担分の雇用保険料」の支払』に対しては、
「預り金」を消滅させる(減少させる)のではなく、「立替金」を計上する会計処理がおこなわれています。
このため、「預り金」は、消滅することなく、
「毎月の給与計算」がなされる都度増加し続けています。 |
3)「立替金」と「預り金」の相殺処理の必要性
上記のように「立替金」と「預り金」とは、消滅することなく、別々の取引により計上され続けるために、
・会社の会計帳簿には『会社が従業員に対して持つ「債権(資産)」である「立替金」』と
・『会社が保険者に対して負う「債務(負債)」である「預り金」』は、両建てで膨らみ続けます。
このため(上記「両建て計上」を解消するため)、
「立替金」と「預り金」とを相殺する会計処理を行うことが必要となります。 |
Ⅱ:確定保険年度に係る「立替金」と「預り金」の相殺処理
「立替金」につきましては、
・「年度更新」時点以外の場合には、「概算支払された金額」で計上されていますが、
・「労働保険の年度更新」が行われると、
「確定差額の支払取引」又は「確定差額の充当取引」が行われるため、
『確定保険期間に係る「立替金」』につきましては、 『「確定保険期間に従業員に実際支給された給与」に見合う「確定金額」』に修正されます。 |
他方、「預り金」につきましては、
「毎月の給与計算」で、『「実際の給与支給額」に見合う「(従業員負担分の)雇用保険料」』が従業員から徴収されているため、
「給与・役員報酬の計上取引」で計上される「預り金」は、 常に『「実際の給与支給額」に見合う「確定金額」』が計上されています。 |
上記のように、「労働保険の年度更新」時点では、
『確定保険期間に係る「立替金」』が「確定金額」に修正されるため、
・「確定保険期間」におきましては『「立替金」と「預り金」の金額』が一致し、 ・『確定保険期間に係る「(確定)立替金」』と『確定保険期間に係る「(確定)預り金」』を相殺することが可能となります。 |
このため、「労働保険料の支払取引(労働保険の年度更新)」では、
『確定保険期間に係る「(確定)立替金」』と『確定保険期間に係る「(確定)預り金」』を相殺する会計処理を行うことが必要となります。 |
Ⅲ:『「立替金」と「預り金」の相殺』に係る「会計処理」と「仕訳」
1、『「立替金」と「預り金」との相殺』に係る「会計処理」
『「立替金」と「預り金」との相殺』を行うためには、
・「会社資産」である『確定保険期間に係る「(確定)立替金」』を減少させ、 ・「会社負債」である『確定保険期間に係る「(確定)預り金」』を減少させる 会計処理を行うことが必要となります。 |
2、『「立替金」と「預り金」との相殺』に係る「仕訳」
1)「仕訳」での「勘定科目の配置」
上記1の「会計処理」を「仕訳」で表現するためには、以下のような「仕訳ルール」に従って「勘定科目」を仕訳の左側(借方)及び右側(貸方)に配置することが必要となります。
「仕訳」における「配置ルール」
「資産の減少」は、仕訳の「右側(貸方)」に配置され、 「負債の減少」は、仕訳の「左側(借方)」に配置されます。 |
「仕訳」における「勘定科目の配置」
上記のことから『「立替金」と「預り金」との相殺』に係る「仕訳」では、
「立替金」が、仕訳の「右側(貸方)」に配置され、 「預り金」が、仕訳の「左側(借方)」に配置されます。 |
2)「補助科目」の設定
① 「立替金」に対する補助科目の設定
「立替金」に対しては、その「内訳項目」としての「補助科目」を付けておくことが必要となりますが、
『この相殺処理で(減少)計上される「立替金」』は、
『「労働保険料の支払取引」で計上される「立替金」』を減額(消滅)させるため計上されるものであるために、
『「労働保険料の支払取引」で計上した「立替金」に対して付けられた「補助科目」』と同じ「従業員分労働保険料」という「補助科目」を入力することが必要となります。 |
② 「預り金」に対する補助科目の設定
「預り金」に対しては、その「内訳項目」としての「補助科目」を付けておくことが必要となりますが、
『この相殺処理で(減少)計上される「預り金」』は、
『「給与・役員報酬の計上取引」で計上される「預り金」』を減額(消滅)させるため計上されるものであるために、
『「給与・役員報酬の計上取引」で計上した「預り金」に対して付けられた「補助科目」』と同じ「雇用保険料徴収額」という「補助科目」を入力することが必要となります。 |
3)仕訳における金額
『「立替金」と「預り金」の相殺処理』で『相殺の対象となる「立替金」「預り金」』は、
『確定保険期間に係る「立替金」と「預り金」』のみです。 |
このため「仕訳」における「各勘定科目の金額」は、
『確定保険期間における「確定保険料」』に含まれる『従業員負担分の「雇用保険料の金額」』となります。 |
4)仕訳
上記1)~3)の結果、『「立替金」と「預り金」の相殺処理』に係る「仕訳」は、以下のようなものとなります。
【借方】勘定 | 補助科目 | 金額 | 【貸方】勘定 | 補助科目 | 金額 |
預り金 | 雇用保険料徴収額 | xxxxx円※1 | 立替金 | 従業員分労働保険料 | xxxxx円※1 |
※1: 『確定保険期間における「確定保険料」』に含まれる『従業員負担分の「雇用保険料の金額」』となります。
Ⅳ:(補足)相殺処理後の『「立替金」残高』と『「預り金」残高』
上記で相殺される「立替金」と「預り金」は、
『確定保険期間に係る「立替金」と「預り金」』のみとなります。 |
このため「労働保険の年度更新」において、『「立替金」と「預り金」の相殺処理』が行われても、
・「立替金」につきましては、 ・また「預り金」につきましては、 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでご紹介させて頂いております『「立替金」と「預り金」の相殺処理』は、『「労働保険料の支払取引」に含まれる取引』となります。
従いまして、ここで記載されている内容は、「労働保険料の支払取引」のご紹介内容を補足する内容となっております。
なお、ここでは、
- 『「立替金」と「預り金」の相殺処理』の必要性
- 『「立替金」と「預り金」の相殺処理』の内容
- 『「立替金」と「預り金」の相殺処理』に係る「会計処理」及び「仕訳」
についてのご紹介となり、
【『「立替金」と「預り金」の相殺処理』の「仕訳」】における『「各勘定科目の金額」の具体的な計算方法』につきましてのご紹介はしておりません。
この点につきましては、別途『法人税法に基づく「労働保険料の支払取引」の会計処理と仕訳』で詳細に記載しておりますので、
【『「立替金」と「預り金」の相殺処理』の「仕訳」】における『「各勘定科目の金額」の具体的な計算方法』等につきましては、上記リンクページをご覧頂きますようお願い致します。
『「立替金」と「預り金」の相殺処理』のPoint!
「労働保険の年度更新(労働保険料の支払)」時に行われる『「立替金」と「預り金」の相殺処理』は、
あくまで、「労働保険の年度更新」時点で金額が一致する
『確定保険期間に係る「立替金」』と『確定保険期間に係る「預り金」』を対象として行われる処理となります。
(従いまして、相殺処理が行われた場合であっても、『概算保険料に係る「立替金」』及び『年度更新以降に従業員から徴収した「預り金」』は、会計帳簿上、残っております。)
『「立替金」と「預り金」の相殺処理』を行う場合には、この観点にご留意頂きますようお願い致します。