ここでは、以下の事項に従い、『「給与支給額」の内容』、『「給与支給額」の決定・計算方法』及び『「給与支給額」の「給与支給明細書」への入力方法(記載方法)』をご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「給与支給額」の内容別分類
「給与支給額」を「給与支給明細書」に入力する場合には、「給与支給額」の「支給内容(性質)」ごとに入力することとなります。
このため、ここでは、まず「給与支給額の支給内容(性質)に基づく分類」を下記にてご紹介させて頂きます。
1、「給与支給額」の支給内容(性質)に基づく分類
「給与支給額」につきましては、その「支給内容(性質)」の観点から、以下のような「基本給」「任意手当」「法定手当」に分類されます。
基本給 | ・従業員の職務内容、技能、勤務成績、年齢等を考慮して各人別に決定される「給与の基本となる支給項目」をいいます。 | |
手
当
|
任意手当 |
・「基本給」を補完する意味で、会社の「賃金規定」等により、会社の自由裁量により支給される支給項目をいいます。 ・「任意手当」には、主に以下のようなものがあります。 役職手当 技能手当、資格手当 精皆勤手当 地域手当 通勤手当 出張手当 宿直手当、日直手当 |
法定手当 |
従業員が ・「法定手当」には、以下のようなものがあります。 時間外労働手当(残業手当) 深夜労働手当 法定休日労働手当 |
2、各支給内容の概要
基 本 給
・「基本給」は、毎月支給される給与の「基本となる給与」をいいます。
・「基本給」は、各従業員と会社との間で締結された「雇用契約(労働契約)」で決定されたり、「賃金規定」等における「給与テーブル」に従って決定されるものとなります。
・『「基本給」の計算・支給形態』には、「月給制」「日給月給制」「日給制」「時給制」等があります。
・「完全月給制の基本給」「日給月給制の基本給」につきましては、基本的に毎月「固定的な金額」が支給され、
「日給制の基本給」「時給制の基本給」の場合には、「労働日数」「労働時間」に応じた金額が計算され支給されます。
任 意 手 当
・「任意手当」は、会社がその自由裁量により、「従業員の生活を支援する目的」や「従業員の職能、勤務状況等を評価して」支給されるものとなります。
このため、「任意手当」の支給につきましては、支給を行うことが法的に必要とされるものでなく、個々の会社の実情・方針に基づき任意に支給されるものとなります。
・「任意手当」につきましては、それぞれの手当に対して「会社が設けた要件」に基づき支給されるものとなります。
このため、通常、「賃金規定(就業規則)」等にその「支給要件」が記載され、その要件に該当した場合にそれぞれの従業員に対して準固定的に支給されるものとなります。
・「任意手当」につきましては、所得税の計算基礎となる観点から『「課税支給額」となる手当』と『「非課税支給額」となる手当』に(更に)区分されます。
・また「任意手当」につきましては、法的手当の計算基礎となる観点から『「所定内賃金(基準内賃金)」となる手当』と『「所定外賃金(基準外賃金)」となる手当』に(更に)区分されます。
法 定 手 当
・従業員が「法定労働時間を超えて労働した場合」「深夜時間帯に労働した場合」「法定休日に労働した場合」には、「労働基準法」の規定に基づき「時間外労働手当」「深夜労働手当」「法定休日労働手当」等を支給することが必要となります。
これらの手当は、「労働基準法」という法律に基づいて支給することが必要となる手当であるという意味で「法定手当」となり、上記の「任意手当」とは区別されるものとなります。
・「法定手当」につきましては、毎月の給与計算において、
「1時間あたりの賃金額」×「一定以上の割増率」×「各種労働時間」
という計算式に基づいて算定することが必要となります。
・また、「法定手当」を計算するためには、その前提として「勤怠管理」を行い、「時間外労働時間」「深夜労働時間」「法定休日労働時間」等の「各種労働時間」を把握しておくことが必要となります。
Ⅱ:「基本給」「任意手当」「法定手当」の決定又は計算概要
ここでは、毎月の給与計算における『「基本給」「任意手当」「法定手当」の決定・計算概要』につきご紹介させて頂きます。
1、「基本給」の決定・計算
毎月の給与計算における『「基本給」の決定・計算』は、従業員に対してどのような計算・支給形態の給与を支給しているかによって異なることとなりますが、
ここでは、「完全月給制」「月給日給制」「日給制」「時給制」を採用している場合における『「基本給」の決定・計算概要』をご紹介させて頂きます。
《 「完全月給制」「月給日給制」の場合 》
「月給制(完全月給制、月給日給制)」が採用されている従業員に対する「基本給」は、
「雇用契約」や「給与テーブル」等に基づいて決定された「基本給」が毎月、固定的に支給されます。
このため、この場合における「毎月の給与計算」では、
「毎月固定的に決定された金額」を「給与支給明細書」等に記載すればよく、「基本給についての特別な計算」は不要となります。 |
※ ただし、「月給日給制」を採用している場合で、欠勤・遅刻・早退等の「給与支給額の減額」がある場合には、この減額額を別途計算することが必要となります。
参考
「完全月給制」とは:給与の月額支給額が完全に固定されているもので、従業員が欠勤・遅刻・早退等したとしても給与支給額が減少されない給与の支給形態となります。
「日給月給制」とは:給与の月額支給額は固定されているものの、従業員が欠勤・遅刻・早退等した場合には、労働しなかった部分の支給額が減額される給与の支給形態となります。
《 「日給制」の場合 》
「日給制」が採用されている従業員に対する「基本給」は、
「雇用契約」や「賃金規定」等に基づいて決定された「日給」及び「その給与計算期間における労働日数」に基づいて、
「日給額」 × 「実際の労働日数」 |
という計算により、「基本給」が算定されます。
《 「時給制」の場合 》
「時給制」が採用されている従業員に対する「基本給」は、
「雇用契約」や「賃金規定」等に基づいて決定された「時給」及び「その給与計算期間における労働時間」に基づいて、
「時給額」 × 「実際の労働時間」 |
という計算により、「基本給」が算定されます。
2、「任意手当」の決定
「任意手当」につきましては、
通常、「賃金規定(就業規則)」等に「各任意手当の支給要件・支給金額」が記載され、従業員個々の状況がその「支給の要件」に該当した場合に、「賃金規定(就業規則)」等に記載されている「手当額」が準固定的に支給されます。
このため、「毎月の給与計算」で「任意手当」を支給する場合には、
「賃金規定(就業規則)」等で規定された「任意手当額」を「給与支給明細書」等に記載すればよく、「任意手当についての特別な計算」は不要となります。 |
3、「法定手当」の計算
従業員が「法定労働時間外の労働を行った場合」「深夜時間帯に労働を行った場合」「法定休日に労働を行った場合」には、
給与計算において、「労働基準法」に基づいた「法定手当(「時間外労働手当」「深夜労働手当」「法定休日労働手当」)」を計算することが必要となります。
この「法定手当」につきましは、「労働基準法」に基づき、以下の計算式で算定した金額を「給与支給明細書」等に記載することが必要となります。
「1時間あたりの賃金額」 × 「割増賃金率」 × 「各種労働時間」 |
《 1時間あたりの賃金額 》
「1時間あたりの賃金額」は、
月給制の場合: 「 月額基準内賃金 」 ÷ 「 1ヶ月の平均所定労働時間数 」 日給制の場合: 「 日給額 」 ÷ 「 1日の所定労働時間数 」 時給制の場合: 「 時給 」 として計算された「賃金額」となります。 |
《 割増賃金率 》
「割増賃金率」は、「賃金規定(就業規則)」等により会社で定めた率となりますが、『会社で定める「割増賃金率」』は、『「労働基準法」によって定められている以下の率以上のもの』とすることが必要となります。
「時間外労働」に対する割増賃金率 : 1.25 「深夜労働」に対する割増賃金率 : 1.25 「法定休日労働」に対する割増賃金率 : 1.35 |
《 各種労働時間 》
「時間外労働手当」「深夜労働手当」「法定休日労働手当」を計算するためには、その前提として「時間外労働時間」「深夜労働時間」「法定休日労働時間」を把握することが必要となります。
このため、会社におきましては、給与計算を行うために「給与計算対象期間における勤怠管理」を行うことが必須となります。
Ⅲ:「給与支給明細書」への入力(記載)
1、区分入力の必要性
支給内容別の入力の必要性
「給与支給明細書」は、従業員に対して『「給与」として支給されるものの内容』を報告する書類となります。
このため、「基本給」以外に「法定手当」「任意手当」の支給がある場合には、その「給与支給額」の内訳内容を従業員に報告するため、
「給与支給明細書」には「支給内容別」に入力・記載することが必要となります。 |
課税・非課税の区分記載の必要性
会社には、源泉徴収義務があることから、毎月の給与計算で「(従業員個人の)源泉所得税」を計算し、徴収することが必要となりますが、
「給与支給明細書」におきましては、『「源泉徴収所得税」の計算対象となった「課税給与支給額」』と『「源泉徴収所得税」の計算対象から除外された「非課税給与支給額」』を区分して従業員に報告することも必要性となります。
このため「給与支給額」を「給与支給明細書」に入力(記載)する場合には、
「給与支給額」を「課税支給額」「非課税支給額」に区分して入力(記載)することも必要となります。 |
2、弊税理士事務所が配布する「給与支給明細書」への入力方法
弊税理士事務所が配布する『Excel「給与支給明細書&賃金台帳」』をご利用になられる場合には、上記1の区分記載の必要性にご留意頂き、以下のような入力をして頂きますようお願い致します。
《 「基本給」の入力 》
「基本給」につきましては、「給与支給明細書」の「基本給」欄に入力して下さい。
《 「法定手当」の入力 》
・「時間外労働手当」につきましては、「給与支給明細書」の「時間外手当」欄に入力して下さい。
・その他の「深夜労働手当」「法定休日労働手当」がある場合には、「給与支給明細書」の『「課税支給 小計」欄より上の「空欄」』に入力して下さい。
《 「任意手当(課税支給)」の入力 》
「任意手当」のうち「課税支給」となるものにつきましては、
(・役職手当・技能手当、資格手当・精皆勤手当・地域手当・家族(扶養)手当・子女教育手当・住宅手当・別居手当等)
「給与支給明細書」の『「課税支給 小計」欄より上の「空欄」』に入力して下さい。
《 「任意手当(非課税支給)」の入力 》
・「任意手当」のうち「非課税支給」となる「通勤手当」につきましては、「給与支給明細書」の「通勤手当」欄に入力して下さい。
・その他「非課税支給」となる「出張手当」「宿直手当・日直手当」がある場合には、「給与支給明細書」の『「通勤手当」欄より下の「空欄」』に入力して下さい。
《 「支給控除」の入力 》
「日給月給制」等を採用している従業員に対して、「欠勤・遅刻・欠勤」等により「支給額自体の減額(支給控除額)」がある場合には、
「支給額」欄の一番下にある「支給控除」欄に「支給控除金額」を入力して下さい。
【「給与支給明細書」への記入例】
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『「給与支給額」の内容』、『「給与支給額」の決定・計算方法』及び『「給与支給額」の「給与支給明細書」への入力方法(記載方法)』をご紹介させて頂いております。
なお、ここでご紹介させて頂いております内容につきましては、それぞれの概要的な内容となりますので、
「法定手当の具体的な計算方法」や「任意手当の課税・非課税の具体的な区分」等のより詳細な内容につきましては、
本文でご紹介させて頂いておりますリンク先ページをご覧頂きますようお願い致します。