ここでは、「標準報酬月額の定時決定」の際に、会社から保険者に届け出る「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方を、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
なお、ここでご紹介させて頂きます書き方は、『役員に係る「被保険者報酬月額算定基礎届」』の書き方となります。
Ⅰ:役員報酬に対する「報酬支払基礎日数」の特徴
’ 役員と会社との関係(経営委任契約の関係) ’
「役員(取締役・監査役)」は、
・会社との「雇用契約(労働契約)」に基づき、会社に雇用されるのではなく、
・会社との「経営委任契約」に基づき、会社から「会社経営業務・経営監督業務等を包括的に委任されている者」となります。
’ 「役員報酬の支払」の性質 ’
役員と会社との関係は、
上記でご紹介させて頂きましたように「経営委任関係」であることから、
会社から役員に対して支払われる「役員報酬」は、
・役員の職務執行時間や職務執行日数等に基づいて事後的に支払われるものではなく、
・「会社経営を行うという包括的な職務遂行に対する対価」として、原則、会社から経営を委任された時点で事前に決定され、支払われるものとなります。
’ 『役員報酬に対する「支払基礎日数」』の特徴 ’
「役員報酬」は、上記でご紹介させて頂きましたように、役員の職務執行時間・職務執行日数等に関係なく事前に決定され、支払われるものであることから、
「役員報酬」つきましては、
・出勤日数・所定労働時間等の「職務遂行に係る時間的な概念」ではなく、
・『その対象期間における「職務遂行の行為」』に対して支払われるものとなります。
このため、「役員報酬」に対しては、
支払われた「役員報酬」の対象期間における「暦日」を「支払基礎日数」とします。 |
Ⅱ:「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方
被保険者が「役員」である場合には、以下のStepに従って「被保険者報酬月額算定基礎届」に必要事項を記入します。
’ Step1 :「報酬支払基礎日数」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払基礎日数」欄には、上記Ⅰでご紹介させて頂きましたように、
支払われた「役員報酬」の対象期間における「暦日」を記入します。 |
留 意 事 項
「4月、5月、6月の報酬支払額」欄には、「それぞれの月に支払われた役員報酬」を記入しますが、
「それぞれの月の支払基礎日数」欄には、支払われた役員報酬の対象期間における「支払基礎日数」を記入します。
’ Step2 :「報酬支払額」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払額」欄には、「4月、5月、6月に支払われた役員報酬額」を記入します。
「通貨」欄及び「現物」欄には、
「金銭による報酬額」「現物による報酬額」を、それぞれ区分して記入します。 |
「合計」欄には、
「金銭による報酬」と「現物による報酬」の「合計額」を記入します。 |
留 意 事 項
「報酬支払額」の記入にあたっては、「4月、5月、6月に支払われた報酬額」を記入します。
(対象期間が4月、5月、6月のものではない点にご留意下さい。)
「報酬の支払額」の記入にあたっては、『社会保険において「報酬」となる「役員報酬の範囲」』を十分ご確認下さい。
なお、この点につきましては、『定時決定における「報酬月額」の算定方法のⅡ:「4・5・6月の支払額」に含める「報酬の範囲」』でご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、当該ページを御覧下さい。
現物支給のうち、
・「食事等の提供」「社宅等の貸与」がある場合には、厚生労働省が公表する「全国現物給与価額一覧表」に基づいて金銭評価することが必要となります。
・また、「1ヶ月を超える期間の定期券等の現物支給」がある場合には、「1 ヵ月あたりの額」を算出して各月の「報酬」に含めることが必要となります。
’ Step3 :「総計金額」及び「報酬月額」の記入 ’
「総計」欄に、
「4月、5月、6月の報酬支払額」の「合計金額」を記入します。 |
また、「平均額」欄に、
上記の「合計金額」を「3ヶ月」で「除した金額」を記入します。 なお、この「平均額」が「報酬月額」となります。 |
Ⅲ:例示による解説
例 示 1 ( 金銭給付のみの場合 )
設 例 ’
【対象期間 と 役員報酬支払日】 ・対象期間は、「1日 ~ 月末日」 ・役員報酬支払日は、「当月の末日」の場合 【報酬の支払状況】 ・4月30日支払額: 役員報酬:400,000円、通勤費:20,000円 ⇒ 合計支払額:420,000円 【勤怠状況】 ・4月30日支払分⇒4月1日~4月30日 |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月30日支払分 ⇒ 暦日数:30日 【報酬の支払額 】 ・4月30日支払額:420,000円 ・5月31日支払額:420,000円 ・6月30日支払額:420,000円 |
例 示 2 ( 現物給付がある場合 )
設 例 ’
【対象期間 と 役員報酬支払日】 ・対象期間は、「1日 ~ 月末日」 ・給与支払日は、「翌月の10日」の場合 【報酬の支払状況 勤務先:東京】 ・4月10日支払額: ・5月10日支払額: ・6月10日支払額: 【勤怠状況】 ・4月10日支払分⇒3月1日~3月31日(暦日数:31日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月10日支払分 ⇒ 暦日数:31日 【現物支給の金額 】 ①1ヶ月あたりの定期券の評価額: 120,000円 ÷ 6ヶ月 = 20,000円 ②昼食代金 ③社宅の貸与 【報酬の支払額 】 ・4月10日支払額:金銭)500,000円 現物)20,000円 ⇒ 合計)520,000円 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『「役員」に係る「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方』をご紹介させて頂いております。
当該「被保険者報酬月額算定基礎届」は、『「9月分の社会保険料」以降の「1年間の社会保険料」の計算に使用される「標準報酬」』を決定するために重要な届出となることから、この届出の記載につきましては、適切に行って頂ますようお願い致します。
4月、5月、6月の報酬額の集計につきまして
「報酬月額」につきましては「4月、5月、6月に支払われた報酬額」により原則計算されることから、
「4月、5月、6月に支払われた給与の金額」は、社会保険制度上、大変重要なものとなります。
このため、
- 社会保険制度において、「報酬」となる『「給与」の範囲』を十分に理解して、
- 4月、5月、6月に支払われた「報酬」を適切に集計計算して頂きますようお願い致します。
「現物給付」につきまして
社会保険制度におきましては、通貨以外で支払われたものであっても、「従業員に対する利益提供」となるものにつきましては、『「時価」により金銭評価』して「現物給付」として「報酬」に含めることが必要な場合があります。
なお「現物給付」のうち、「食事の提供」「社宅の貸与」につきましては、金銭評価するための基準が「日本年金機構のHP」上で公表されていますので、当該HPをご確認の上、適切に評価して頂きますようお願い致します。
また、「食事の提供」「社宅の貸与」につきましては、税務上「非課税給与」とするために、従業員・役員から一定の「自己負担額を徴収している」ことが多いのではないかと考えます。
このような場合には、『社会保険制度上「報酬」に含めなくてもよい場合』に該当することが多いと思いますので、
従業員・役員から「自己負担額」を徴収している場合には、是非この点につきましても、慎重にご判断頂ますようお願い致します。
「報酬支払基礎日数」のカウントにつきまして
『役員の場合の「報酬支払日数」のカウント方法』は、上記Ⅰでご紹介させて頂きましたような特徴があります。
このため、『役員の場合の「報酬支払基礎日数」』につきましては、
原則、その役員報酬の対象期間における「暦日数」を記入することになる点にご留意頂ますようお願い致します。