「現金売上取引」につき、「現金売上取引に係る書類」から「会計帳簿」(「現金出納帳)」への入力につき、どのような単位で入力するかを決定するために検討すべき事項をご紹介致します。

 

この点につきまして、下記の項目に従いご紹介致します。

 

Ⅰ:入力単位決定の重要性

店舗等において一般消費者への販売を行う、商品販売業(小売業)、飲食業、理容・整骨・宿泊・医療等のサービス業を営んでいる会社では、ほぼ毎日「現金売上取引」が発生します。

「現金売上取引」につきましては、通常

  • 『1日の「領収書控え」の集計金額』『売上レジの1日の集計データ日計表等)』等に基づき、「現金売上帳」が作成され、
  • この「現金売上帳」に基づき、会計帳簿である現金出納帳」に入力されます。

 

ここで、「現金売上帳」から「現金出納帳」への入力方法には、以下のものがあります。

  • 日次(1日単位)で入力する。
  • 2日単位以上~月次単位未満の「任意の単位(例えば「7日単位」等)」で行う。
  • 月次単位で入力する。

 

上記の入力単位として、いずれの方法を採用するかにより

  • 会社の会計帳簿作成に係る作業量
  • 会社の現金管理の適時性

が大きく違ってきます。

このため、「入力単位の選択」により、上記の事項がどのように異なってくるのかを事前に理解して頂くことが重要となります。

以下では、まず「それぞれの入力単位」の特徴をご紹介させて頂きます。

 

 

Ⅱ:それぞれの入力単位の特徴

以下では、「日次単位」「週次(7日単位)単位」「月次単位」での入力の利点、不利となる点をご紹介させて頂きます。

 

1、日次単位で(1日ごとに)入力する場合

「領収書の1日合計金額」「レシートの1日合計金額」「日計表の金額」等を、

1日単位で「現金出納帳」に「現金売上取引」として入力します。

 

利点

① 会計ソフトにおきまして「現金売上帳」と同様の帳簿を集計・表示できます。

日次単位で現金売上取引を入力する場合には、

  • 現金売上帳」と同じ内容のもの会計ソフト弥生会計等)の「補助元帳という機能から集計表示し印刷することができます。

 

  • このため「現金売上帳」を会計ソフト外で別途作成することは、本来的には不要となります。
    ⇒ただし、弊税理士事務所では、このような場合であっても、以下のPointで記載致します理由から、「現金売上帳」の作成をお願いしています。

 

Point !  「現金売上帳」を作成する意義

「現金出納帳」の入力にあたっては、「現金売上取引入力」の他、「現金での経費支払入力」等多くの取引入力がなされます。

このため、慎重に会計帳簿への入力を行っている場合であっても、「現金売上取引」の入力が漏れてしまったり、二重に計上してしまったりすることが良く起こります。

このような「入力漏れの確認」や「二重計上の防止」のために、会計ソフト外で「現金売上帳」を作成し、この「現金売上帳」と「会計ソフトにおける現金売上金額残高試算表年間推移))」との一致確認を行うことが有効となります。

 

 補助元帳

弥生会計(会計ソフト)におきましては、
特定の補助科目に対して、「その補助科目を付けた取引のみを集計表示できる「補助元帳」という会計帳簿(機能)があります。

この補助元帳で、『勘定科目売上高」、補助科目現金売上」』とすると、「現金売上取引」のみを集計表示することができます。

「現金売上帳」を弥生会計の「補助元帳」という機能を使って印刷する方法は、⇒コチラをご覧ください。

 

【補助元帳(現金売上)のサンプル】

現金売上の補助元帳(日次記帳)

 

【補助元帳(現金売上)の印刷画面のサンプル】

現金売上の補助元帳(日次)の印刷画面

 

② 現金出納帳により会社の現金残高が毎日管理できます。

「現金売上取引」を日次で「現金出納帳」に入力することは、「現金売上に伴う会社への現金入金金額」が毎日「現金出納帳」に記帳されます。

このため、「会社の実際の現金有高」と「現金出納帳の現金残高」との一致確認日次で行うことが可能となり、会社の手許現金管理にとり有効となります。

 

不利益となる点

会計帳簿への「現金売上取引」の入力を日次で行うことが必要となります。このため、「現金売上取引」の入力だけで原則365回(定休日等を除く)の入力を行う必要があります。

 

2、7日単位で(7日分の合計ごとに)入力する場合

「現金売上帳」や「売上レジの週報(一週間の売上合計金額を集計した書類)」から

7日分の現金売上取引の合計金額」を7日単位等で「現金出納帳」に入力します。

 

 7日はあくまで例示です。3日単位でも、10日単位でも結構です。

 

利点

7日単位で、「7日分の現金売上の集計額」を「現金出納帳」に入力することになりますので、「現金売上取引の弥生会計への入力回数」は、年間で53回程度に減少します。
また、10日単位では、「現金売上取引の弥生会計への入力回数」は、年間で36回程度に減少します。

 

不利益となる点

会計ソフト外別途現金売上帳」等が必要となります。

・「現金出納帳」への「現金売上に伴う入金入力」が「7日ごと(入力単位ごと)」になるため、「7日ごと入力単位ごと)」しか、「会社の実際の現金有高」と「現金出納帳の現金残高」の一致確認ができません。

・「現金売上取引に係る現金入金」が入力単位でしか「現金出納帳」に記録されません。
このため、入力単位から入力単位の間におきましては、「現金出納帳」の現金残高マイナスとなる可能性があります。
⇒この点につきまして、税務上では特に問題となることはございません。

 

3、月次単位で(1カ月の合計ごとに)入力する場合

「現金売上帳」や「売上レジの月報(一週間の売上合計金額を集計した書類)」から

1カ月分の現金売上取引の合計金額」を1カ月単位で「現金出納帳」に入力します。

 

利点

1カ月単位で、「1カ月の現金売上の集計額」を「現金出納帳」に入力することになりますので、「現金売上取引の弥生会計への入力回数」は、年間で12回に減少します。

 

不利益となる点

会計ソフト外で別途「現金売上帳」等が必要となります。

・「現金出納帳」への「現金売上に伴う入金入力」が「1カ月ごと」になるため、「1カ月ごと」しか、「会社の実際の現金有高」と「現金出納帳の現金残高」の一致確認ができません。

・「現金売上取引に係る現金入金」が月末にしか「現金出納帳」に記録されません。
このため、月間におきましては、「現金出納帳」の現金残高マイナスとなる可能性があります。
⇒この点につきまして、税務上では特に問題となることはございません。

 

 

Ⅲ:税理士事務所からのご提案

1、入力単位に対するご提案

会計帳簿への入力は、

できるだけスピーディーに、簡単に、正確に入力することが重要です。

この点からは、

現金売上帳」が作成されていることを前提に、

10日単位」や「月次」等で入力されることが良いと思います。

「現金売上取引」を売上カテゴリー別に入力する場合には、上記の入力単位での入力が効率的であると考えます。

また、弥生会計への入力業務にあまり馴れていない会社には、入力作業・確認作業に手間どったりするため、
「入力作業に掛かる労力・時間」や「入力内容の確認作業に掛かる労力・時間」等を軽減するために、上記の入力単位での入力を勧め致します。

 

2、現金管理面のご提案

上記1のような入力を行う場合には、「会社の実際の現金残高」と「現金出納帳の現金残高」の一致確認は、「10単位」や「月次」でしかできなくなるため、毎日の現金管理面が脆弱になります。

このため、

  • 『「現金売上帳」における「毎日の現金売上金額」』と「実際の毎日の現金売上による現金収入額」とが一致していることを確認することが重要となります。

 

  • また、「会社の実際の現金残高」と『「現金出納帳」の現金残高』の一致を、「10単位」「月次」に確認することが重要となります。

 

 

税理士事務所・会計事務所からのPOINT

店舗販売等を行う会社では、「現金売上取引」は、ほぼ毎日発生する取引となります。

従いまして、この取引は会計帳簿への入力回数は多数となります。この多数回の入力を漏れなくかつ正確に入力するためには、慎重な入力作業が必要となります。(売上取引につきましては、漏れなく入力することが特に重要となります。)

また入力回数が多くなる場合には、それに伴い、入力後の確認作業量、入力後の修正作業量も多くなります。

このため、会社での入力作業に掛けることができる時間・労力等に合うように、現金売上取引の入力単位を決定して頂きますようお願い致します。
(顧問税理士がいらっしゃる会社におきましては、是非税理士事務所と事前に協議しておくことをお勧め致します。)