ここでは、所得税の課税対象とはならない『「非課税支給額」の内容 』及び『「非課税支給額」の非課税限度額 』について、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「非課税支給額」の内容
1、非課税支給額とは
「非課税支給額」とは、
「会社から従業員・役員に対して支給される給与等」のうち、 従業員や役員個人に対して課せられる「所得税」や「住民税」を計算する場合に、その「課税対象とならない支給金額」をいいます。 |
2、「非課税支給額」となる「給与支給項目」
「会社から従業員・役員に支給される給与・役員報酬」には、
基本給、各種任意手当、各種法定手当、役員報酬などの「給与支給額」がありますが、 |
このうち『「非課税支給額」となる「給与支給額」』は、
「任意手当」のうちの 通勤手当 (通勤費用、定期券・回数券等の現物支給) 出張手当 (日帰り出張日当、宿泊出張日当等) 宿直手当、日直手当 |
となります。
通勤手当 |
▶ この「通勤手当」のうち「税法上で定められた範囲内の金額」が、「非課税支給額」となります。 |
|
出張手当 |
▶ この「出張手当」のうち「税法上で認められる範囲内の金額」が、「非課税支給額」となります。
※ なお、「出張手当」として一般的に支給されるものには、
|
|
宿直手当 日直手当 |
▶ この「宿直・日直手当」のうち「税法上で定められた範囲内の金額」が、「非課税支給額」となります。
※ なお、「宿直・日直手当」という名称で支給されているものであっても、 |
3、「非課税支給額」の設定理由
「通勤手当」「出張手当」「宿直手当・日直手当」につきましては、
「会社から従業員への経済的利益の提供」であり、 この点から見れば「課税支給額」と同様に、 |
ただ他方におきまして、
「通勤手当」は、
従業員・役員が「会社に通勤するために不可避的に発生する費用」を、会社が実費補填するために支給される「実費補填的な手当の支給」としての性質を持ち、 |
「出張手当」は、
従業員・役員が「出張を行ったことにより発生した宿泊費」や「出張を行わなければ発生しないと考えられる諸費用」を会社が実費精算するために支給される「実費精算的な手当の支給」としての性質を持ち、 |
また『「宿直手当」「日直手当」として支給されるものの一部 』には、
従業員等が「宿直や日直を行わなければ発生しないと考えられる諸費用」を会社が実費補填するために支給される「実費補填的な手当の支給」としての性質を持つものが含まれていると考えられるため、 |
これらの「実費補填的な手当部分」「実費精算的な手当部分」に対して「所得税」や「住民税」が課税された場合には、
「会社がこれらの手当を支給した実費補填目的・実費精算目的」が所得税・住民税額分だけ損なわれてしまうこととなります。 |
このため、所得税法上・住民税法上では、
これらの「通勤手当」「出張手当」「宿直・日直手当」に対しては、
課税政策上「給与所得者に対する税負担の配慮」を行い、 |
4、「非課税支給額」に対する「非課税要件」「非課税限度額」の設定理由
上記3でご紹介させて頂きましたように、
「通勤手当」「出張手当」「宿直・日直手当」は、
|
・これらは当然に・無制限に「非課税支給額」となるものではなく、 ・これらが「実費補填目的で支給されたもの」又は「実費精算目的で支給されたもの」である場合に限って、「非課税支給額」として取り扱われることとなります。 |
このため、税務上におきましては、
「通勤手当」「出張手当」「宿直・日直手当」ごとに、 それらを『「非課税支給額」とするための要件 』が定められており、 それらに対して『「非課税支給額」とすることができる限度額 』が設けられています。 |
従いまして、以下Ⅱ~Ⅳにおきましては、
- 「通勤手当」に対して設けられている「非課税要件」「非課税限度額」
- 「出張手当」に対して設けられている「非課税要件」「非課税限度額」
- 「宿直・日直手当」に対して設けられている「非課税要件」「非課税限度額」
につきまして、それぞれご紹介させて頂きます。
Ⅱ:「通勤手当」の「非課税要件」と「非課税限度額」
1、「通勤手当」の「非課税要件」と「非課税限度額」の規定
「通勤手当」に係る「非課税要件」と「非課税限度額」につきましては、
「通勤」にあたり、
その通勤手段により「通勤にかかる費用(通勤にかかる実費金額)」が異なることから、 |
税務上では、以下(1)~(3)でご紹介させて頂ますように「通勤方法」に応じて「非課税とできる要件」や「非課税限度額」を規定しています。
1) 交通機関(電車・バス等)、有料道路(高速道路等)を利用する場合
「交通機関(電車・バス等)、有料道路(高速道路等)を利用して通勤する方」に対して「通勤手当」を支給している場合には、
1ヶ月あたり15万円を限度として、 『 通勤のための運賃・通勤時間・距離等の事情に照らして、「最も経済的」かつ「合理的な経路及び方法」で通勤した場合 』の「交通費等の金額」 を「非課税通勤手当」とすることができると規定しています。( 所得税法施行令20の2 1項・3項 ) |
◆ 『「通勤費」の非課税要件・非課税限度額 』の設定理由 ◆
◆ 「実費相当額」の確認 ◆
2) 車両・自転車等の交通用具を使用して通勤する場合
「車両・自転車等の交通用具を使用して通勤する方」に対して「通勤手当」を支給している場合には、
「非課税とすることができる通勤手当の限度額」は「通勤距離」に応じて以下の金額となります。( 所得税法施行令20の2 2項 )
片道の通勤距離 | 非課税とできる限度金額 |
2km未満である場合 | 0円(「通勤手当」を「非課税」とはできません。) |
2km以上10km未満である場合 | 4,200円 |
10km以上15km未満である場合 | 7,100円 |
15km以上25km未満である場合 | 12,900円 |
25km以上35km未満である場合 | 18,700円 |
35km以上45km未満である場合 | 24,400円 |
45km以上55km未満である場合 | 28,000円 |
55km以上である場合 | 31,600円 |
◆ 『「通勤費」の非課税要件・非課税限度額 』の設定理由 ◆
◆ 「実費相当額」の確認 ◆
3) 「 1)の通勤方法 」を利用するとともに「 2)の通勤方法 」も利用する場合
「交通機関等を利用する他交通用具も利用して通勤する方」に対して支給する「通勤手当」につきましては、
1ヶ月あたり15万円を限度として、 『 1)で定める「非課税通勤手当の限度額」』と『 2)で定める「非課税通勤手当の限度額」』の「合計金額」までの金額 を「非課税通勤手当」とすることができると規定しています。( 所得税法施行令20の2 4項 ) |
2、「通勤手当」に係る「非課税」「課税」の取扱い
1) 交通機関(電車・バス等)、有料道路(高速道路等)を利用する場合
「交通機関(電車・バス等)、有料道路(高速道路等)を利用して通勤する方」に対して「通勤手当」を支給している場合に、
『「通勤手当」を「非課税支給額」として取扱うことができる金額 』につきましては、
月15万円以内という「非課税限度額」が設けられていることから、 |
例えば
「通勤手当」として毎月15万円を超える金額を支給している場合には、
- 15万円以内の部分は「非課税通勤手当」となりますが、
- 15万円を超える部分は「課税通勤手当」として取り扱うことが必要となります。
また、『「通勤手当」を「非課税支給額」として取扱うことができる範囲(要件) 』につきましては、
『 運賃・通勤時間・距離等の事情に照らして、「最も経済的」かつ「合理的な経路及び方法」で通勤した場合に計算される「通勤手当の金額部分(通勤費の実費部分)」』に限られるため、 |
例えば
・『 通勤時間・通勤距離・運賃等を総合的に勘案して「合理的な経路・方法」で通勤する場合にかかる「最も経済的な通勤費用」』が8,500円であるにも拘らず、
・「通勤手当」として10,000円を支給している場合には、
- 8,500円は「非課税通勤手当」となりますが、
- 1,500円は「課税通勤手当」として取り扱うことが必要となります。
2) 車両・自転車等の交通用具を使用して通勤する場合
「車両・自転車等の交通用具を使用して通勤する方」に対して「通勤手当」を支給している場合に、
『「通勤手当」を「非課税支給額」として取扱うことができる金額 』につきましては、
その通勤距離に応じて「上記1(2)でご紹介させて頂きました限度額」が設けられていることから、 |
例えば
・「通勤距離」が1kmであるにも拘らず、
・「通勤手当」として5,000円を支給している場合には、
- 「非課税通勤手当」は0円となり、
- 上記の「通勤手当」として支給している5,000円は、全額「課税通勤手当」として取り扱うことが必要となり、
例えば
・「通勤距離」が8kmであるにも拘らず、
・「通勤手当」として5,000円を支給している場合には、
- 「非課税通勤手当」は4,200円となり、
- 800円は「課税通勤手当」として取り扱うことが必要となります。
3、「通勤手当」の『「給与支給明細書」への記載方法 』
上記1、2でご紹介させて頂きましたように、
「通勤手当」につきましては、
「課税対象となる通勤手当」と「課税対象とならない通勤手当」が会社から支給される場合がありますが、 |
毎月の給与計算におきましては、「源泉所得税」を計算することが必要となり、
この「源泉所得税」を計算するためには、 「給与支給明細書」において「課税対象となる給与支給額」と「課税対象とならない給与支給額」を区別して把握しておくことが必要となります。 |
このため「通勤手当」につき、「課税通勤手当となる金額」と「非課税通勤手当となる金額」がある場合には、
「給与支給明細書」上、「課税通勤手当」と「非課税通勤手当」を別々に区分記載しておくことが必要となります。 |
例 示
- 「通勤手当」として毎月10,000円支給しているが、
- この内「非課税通勤手当」が6,500円、「課税通勤手当」が3,500円であるような場合には、
「支給明細書」への記入方法は以下のようなものとなります。
4、『「通勤手当」の課税・非課税取扱い』に関する関連ページ
『「通勤手当」を「非課税支給額とできる要件」』『「通勤手当」に対して設けられている「非課税限度額」』等につきましては、
別途『「通勤手当」に対する税務上の規定』というページでより詳細に記載しておりますので、必要がある場合には、当該リンクページもご一読頂ますようお願い致します。
Ⅲ:「出張手当」の「非課税要件」と「非課税限度額」
1、「出張手当」の「非課税要件」と「非課税限度額」の規定
「出張手当」につきましては、
これに対する「非課税要件」や「非課税限度額」を直接規定したものはありませんが、 |
「出張手当」は、
・「宿泊費」「現地での交通費・諸経費」などの「旅費」を実費精算する代わりに、『「旅費」に係る「実費精算相当金額」』が「手当」として支給されるものであることから、 ・ その本質は「旅費」であると考えられます。 |
この点、「旅費」につきましては、
「旅費を(所得税法上)非課税対象とする要件」などを明示した規定が「基本通達」にありますので、 |
「出張手当」に係る「非課税要件」等につきましては、
この「旅費」に係る「非課税要件」等を規定した「基本通達」に基づいて考えることが必要となります。 |
このため、以下におきましては、
- まず下記1)で、『「旅費」に関する非課税要件等 』を規定した「所得税法基本通達9-3の内容」をご紹介させて頂き、
- そのうえで下記2)におきまして、『「出張手当」の非課税要件等の内容 』をご紹介させて頂きます。
1) 「 所得税法基本通達9-3 」の規定
税務上では、「所得税法基本通達9-3」において、「旅費」が「(所得税法上)非課税となる範囲」について、以下のように規定しています。
旅費については、 旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、 その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内で「支給される金額」は、「非課税」とする。 |
さらに、「通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内」に該当するためには、 (1)その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであり、 (2)その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであることが必要となる。 |
従いまして、「旅費」が「(所得税法上)非課税」となるためには、
役員及び使用人の地位等に応じた適正な社内間バランス(一定の基準等)をもって支給されており、 |
かつ「同業種、同規模の会社等が一般的に支給している金額(対外的な金額)」と比較しても多額ではなく、 |
旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、 その旅行に通常必要とされる範囲内で支出されていることが必要となります。 |
◆ 「旅費」につき「(所得税法上の)非課税要件」が規定されている理由 ◆
2)「出張手当」が「非課税支給額」として認められるための要件
冒頭でもご紹介させていただきましたが、
「出張手当」も「旅費」に含まれる性格のものであることから、
「出張手当」に対する「(所得税法上の)非課税要件」を考える場合には、 上記(1)でご紹介させて頂きました「所得税法基本通達9-3」に基づいて判断することが必要となります。 |
このため「出張手当」が「(所得税法上)非課税支給額」として認められるためには、
「旅費」と同様に、
役員及び従業員の地位等に応じた適正な社内間バランス(一定の基準等)をもって支給されており、 |
かつ「同業種、同規模の会社等が一般的に支給している金額(対外的な金額)」と比較しても多額ではなく、 |
出張の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、出張者の職務内容及び地位等からみて、 その出張に通常必要とされる範囲内で支出されていることが必要となります。 |
2、「出張手当」に係る「非課税」「課税」の取扱い
◆ 1)「社内における支給バランス」という観点からの取扱い ◆
上記1でご紹介させて頂きましたように、
「出張手当」が「(所得税法上)非課税支給額」とされるためには、 「社内における支給バランスが確保され」支給されていることが必要となります。 |
このため、
・ 特定の個人が出張を行った場合にのみ「出張手当」が支給されている場合や、 ・ 同水準の地位等であるにも拘らず、その支給額が特定の個人に対してのみ高額に支給されているような場合には、 |
当該個人に支給されている「出張手当」は、
・「特別な給与」「特別な役員報酬」とみなされ、
・「その部分」につきましては、従業員・役員に対する個人所得税が課せられてしまいますので、
この点につきましては、十分ご留意頂ますようお願い致します。
◆ 2)「出張手当」が「対外的にみて妥当な金額の範囲であるか」の観点からの取扱い ◆
また、上記1でご紹介させて頂きましたように、
「出張手当」が「(所得税法上)非課税支給額」とされるためには、 「出張手当として支給される金額」が「(同業・同規模他社等の対外的な金額と比較して)妥当な金額の範囲」で支給されていることが必要となります。 |
このため、
・ 「出張手当の金額」が一般的にみて高額であるような場合や ・ 「出張手当の金額」が |
当該会社で支給されている「出張手当」は、
・「特別な給与」「特別な役員報酬」とみなされ、
・「その部分」につきましては、従業員・役員に対する個人所得税が課せられてしまいますので、
この点につきましては、十分ご留意頂ますようお願い致します。
◆ 参考)「出張慰労金」としての「出張手当」の取扱い ◆
「出張手当」として支給されるものの中には、
「交通費、宿泊費、日当などの実費精算相当金額」の他 出張者を慰労する目的で「出張慰労金に相当する金額」が含まれていることがありますが、 |
「出張手当」が「(所得税法上)非課税とされる」のは、
「出張手当」が「交通費、宿泊費、出張により発生する諸経費」などの「会社費用」を精算する代わりに支給されていることが前提となっています。 (すなわち、「出張手当の支給」により会社から従業員に対して、『「経済的利益」が提供されていない 』又は『「経済的利益」が提供されていたとしても僅少である 』ということが前提となっています。) |
このため、
「出張手当」という名目で支給されているものであっても、『「出張の慰労金等」として支給されている部分 』につきましては、 |
・そもそも「(所得税法上)非課税対象となる支給額」には含まれず、
・「この部分の支給額」につきましては、従業員・役員に対する個人所得税が課せられることになりますので、
この点につきましては、十分ご留意頂ますようお願い致します。
3、「出張・旅費規定」の作成につきまして
上記1でご紹介させて頂きましたように、
「出張手当」が「(所得税法上)非課税支給額」とされるためには、 「社内における支給バランスが確保され」支給されていることが必要となりますが、 |
出張が行われるごとに、その「出張手当の額」を算定し支給していたならば、
- 「出張手当の計算・支給の事務処理」に非常に多くの労力がかかるとともに、
- 「社内バランスを欠く出張手当」が支給されてしまうこともあります。
このため、「出張手当」を支給しているような会社におきましては、
「役員や従業員の地位や出張内容」ごと 「出張距離や宿泊の有無」ごとに に「予め支給される出張手当」を「出張旅費規定」で規定し、 当該「出張旅費規定」に基づいて「出張手当」を支給することが一般的となります。 |
なお、「出張旅費規定」を作成する目的は、
「出張手当」の支給に際し「社内の支給バランス」を確保するということが、その主たる目的となりますので、
「出張旅費規定」に規定されている「出張手当の金額自体」が「一般的に考えてあまりにも高額である」ような場合には、
『「出張に必要とされる範囲を超えている」と考えられる部分 』につきましては、所得税が課せられることとなりますので、
この点につきましては、十分ご留意頂ますようお願い致します。
4、「出張手当」の『「給与支給明細書」への記載方法 』
上記1、2でご紹介させて頂きましたように、
「出張手当」につきましては、
「課税対象となる出張手当」と「課税対象とならない出張手当」が会社から支給される場合がありますが、 |
毎月の給与計算におきましては、「源泉所得税」を計算することが必要となり、
この「源泉所得税」を計算するためには、 「給与支給明細書」において「課税対象となる給与支給額」と「課税対象とならない給与支給額」を区別して把握しておくことが必要となります。 |
このため「出張手当」につき、「課税出張手当となる金額」と「非課税出張手当となる金額」がある場合には、
「給与支給明細書」上、「課税出張手当」と「非課税出張手当」を別々に区分記載しておくことが必要となります。 |
例 示
- 「通勤出張手当」として7,000円支給しているが、
- この内「旅費出張規定」に基づき支給されている「非課税出張手当部分」が4,000円あり、
- 「出張に対する慰労金」として支給されている「課税出張手当」が3,000円であるような場合には、
「支給明細書」への記入方法は以下のようなものとなります。
5、『「出張手当」の課税・非課税取扱い』に関する関連ページ
『「出張手当」が支給される実務上の理由』や『「出張手当」に対して設けられている「非課税取扱に関する要件」』等につきましては、
別途『「出張手当」に対する税務上の規定』というページでより詳細に記載しておりますので、必要がある場合には、当該リンクページもご一読頂ますようお願い致します。
Ⅳ:「宿直手当・日直手当」の「非課税限度額」
1、『「宿直手当・日直手当」の非課税限度額 』の規定
『「宿直・日直手当」に対する非課税限度額 』につきましては、「所得税基本通達28-1」で、以下のように規定されています。
勤務1回につき支給される金額のうち「4,000円までの部分」が「非課税手当」となります。 |
なお、「宿直」「日直」において会社から食事の提供がある場合には、
勤務1回につき支給される金額のうち、 『 4,000円 - 「食事の価額」 』の金額が「非課税手当」となります。 |
◆ 「宿直手当・日直手当」とは ◆
◆ 「宿直手当・日直手当のうち4,000円」が非課税支給額とされる理由 ◆
2、「宿直手当・日直手当」の課税・非課税の取り扱い
上記1でご紹介させて頂きましたように、
宿直・日直を行った従業員に対して、「宿直手当」「日直手当」が支給されている場合には、 「1回の宿直手当・日直手当」のうち、(食事の提供価額を含め)4,000円までは「非課税支給額」として取扱うことができるため、 |
例えば
1回の「宿直手当」として8,000円が支給されている場合には、
- 4,000円が「非課税支給額」となり、
- 4,000円( = 8,000 – 4,000円 )が「課税支給額」となり、
例えば
1回の「日直手当」として7,000円が支給されるとともに、食事(食事の価格600円)が提供されている場合には、
- 3,400円( = 4,000円 – 600円 )が「非課税支給額」となり、
- 3,600円( = 7,000 – 3,400円 )が「課税支給額」となります。
3、「宿直手当・日直手当」の『「給与支給明細書」への記載方法 』
上記1、2でご紹介させて頂きましたように、
「宿直手当・日直手当」につきましては、
「課税対象となる宿直手当・日直手当」と「課税対象とならない宿直手当・日直手当」が会社から支給される場合がありますが、 |
毎月の給与計算におきましては、「源泉所得税」を計算することが必要となり、
この「源泉所得税」を計算するためには、 「給与支給明細書」において「課税対象となる給与支給額」と「課税対象とならない給与支給額」を区別して把握しておくことが必要となります。 |
このため「宿直手当・日直手当」につき、「課税宿直手当・日直手当となる金額」と「非課税宿直手当・日直手当となる金額」がある場合には、
「給与支給明細書」上、「課税宿直手当・日直手当」と「非課税宿直手当・日直手当」を別々に区分記載しておくことが必要となります。 |
例 示
- 「宿直」を1回行った従業員に対して、
- 「宿直手当」として6,000円支給しているような場合には、
「支給明細書」への記入方法は以下のようなものとなります。
4、『「宿直手当・日直手当」の課税・非課税取扱い 』に関する関連ページ
『「宿直手当」「日直手当」の内容』『「宿直手当」「日直手当」に対して設けられている「非課税取扱に関する各種規定(非課税の例外規定、非課税限度額)」の内容』等につきましては、
別途『「宿直手当」「日直手当」に対する税務上の規定』というページでより詳細に記載しておりますので、必要がある場合には、当該リンクページもご一読頂ますようお願い致します。
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『「非課税支給額」の内容』及び『「非課税支給額」の非課税限度額』をご紹介させて頂いております。
「非課税支給額」につきまして
「通勤手当」「出張手当」「宿直手当・日直手当」につきましては、
上記Ⅰでご紹介させて頂きましたように、
- それ本来の性質から当然に・無制限に「非課税」となるものではなく、
- 「給与所得者に対する税負担の配慮」等から課税政策上「非課税」とされるものであることから、
・「通勤手当」「出張手当」「宿直手当・日直手当」という名目で支給しただけでは、「非課税支給」として取り扱われず、
・その支給実態・支給目的が「実費補填・実費精算」の性質を持ったものであるか否かが重要となります。
「通勤手当」の「非課税支給要件・非課税限度額」につきまして
「通勤手当」は、「任意手当」であることから、
「通勤手当」をいくら支給するか?につきましては、会社の自由に委ねられております。
ただし、「通勤手当」を「非課税支給額」として取り扱うためには、
その通勤手段・方法に応じて「税務上の支給要件」「税務上の非課税限度額」が存在しますので、
「通勤手当」を「非課税支給額」とする場合には、
必ず、上記Ⅱ-1でご紹介させて頂きましたような「税務上の非課税要件を満たしているのか?」「税務上の非課税限度額の範囲内であるか?」をご確認頂くことが必要となります。
「出張手当」の「非課税支給要件・非課税限度額」につきまして
「出張手当」は、「任意手当」であることから、
「出張手当」をいくら支給するか?につきましては、会社の自由に委ねられております。
ただし、「出張手当」を「非課税支給額」として取り扱うためには、
- 「出張手当の支給」に対する「一定の支給基準」が存在し、
- かつ「一般的に考えられる常識的な範囲内」で支給することが必要となります。
このため、「出張手当」を「非課税支給額」とする場合には、
- 「出張手当」が「旅費規定」や「出張手当規程」等の一定の支給基準に準拠して支払われているか?
- 「出張手当の金額」は、「一般的に考えられる常識的な金額」のものであるか?
をご確認頂ますようお願い致します。
「宿直手当・日直手当」の「非課税限度額」につきまして
「宿直手当・日直手当」は、「警備労働に対する対価」であることから、
「宿直手当・日直手当」をいくら支給するか?につきましては、従業員等と会社の合意に基づいて決定されることとなりますが、
「宿直手当・日直手当」のうち「非課税支給額」として取り扱うことができる限度額につきましては、
「宿直」「日直」1回につき「4,000円までの金額」となります。
このため「宿直手当」「日直手当」を支給される場合には、
この「非課税限度額」をご確認の上、
「非課税支給額部分」と「課税支給額部分」の取り扱いを適切に行なって頂ますようお願い致します。