ここでは、『「宿直手当」「日直手当」の内容 』『「宿直手当」「日直手当」に対する非課税規定の内容 』等につきまして、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「宿直手当」「日直手当」の定義
ここでは、
・まず、「宿直手当」や「日直手当」の支給対象となる「宿直業務」「日直業務」とはどのような業務であるのか?をご紹介し、
・その後、「宿直手当」「日直手当」とはどのようなものであるのか?をご紹介させて頂きます。
1、「宿直業務」と「日直業務」とは
「宿直業務」とは、
会社の指示により、通常の業務時間外に一定の場所に拘束され、
「監視または断続的な軽微労働(基本的には待機労働)」に従事するものであり、 その業務が夜間にわたり、宿泊を要するものをいいます。 |
「日直業務」とは、
会社の指示により、通常の業務時間外に一定の場所に拘束され、
「監視または断続的な軽微労働(基本的には待機労働)」に従事するものであり、 その業務が主として昼間であるものをいいます。 |
◆ 「宿直業務」「日直業務」の特徴 ① (他業務との比較における特徴) ◆
◆ 「宿直業務」「日直業務」の特徴 ② (許可が必要となる特徴) ◆
2、「宿直手当」と「日直手当」とは
「宿直手当」とは
上記の『「監視または断続的な軽微労働」という「宿直業務」』を従業員に行わせたことにより、 会社から「当該従業員」に対して支給される『「宿直業務」に対する「労働の対価」』のことをいい、 |
「日直手当」とは
上記の『「監視または断続的な軽微労働」という「日直業務」』を従業員に行わせたことにより、 会社から「当該従業員」に対して支給される『「日直業務」に対する「労働の対価」』のことをいいます。 |
◆ 「宿直手当・日直手当」の支給金額の特徴 ① (低額であるという特徴) ◆
◆ 「宿直手当・日直手当」の支給金額の特徴 ② (一律であるという特徴) ◆
Ⅱ:「宿直・日直手当」に対する「非課税規定」と「非課税規定の設定理由」
1、「宿直・日直手当」に対する「非課税規定」
会社から従業員に対して支給される「基本給、任意手当、法定手当」につきましては、
その殆どが「所得税」等が課せられる「課税支給額」となりますが、 |
「任意手当」のうちの「宿直・日直手当」につきましては、
それが『(所得税法上)非課税対象となる「宿直・日直手当」』に該当する場合には、 「税務上で規定されている以下の範囲内の金額(非課税限度額の範囲内の金額)」を「非課税支給額」として取扱うことが認められています。 |
◆ 「宿直・日直手当」に対する「非課税限度額」 ◆
「宿直・日直手当」につきましては、
「所得税基本通達28-1」で、『「その支給額」のうち「以下の金額」』を「非課税支給額」として取扱うことができると規定されています。
① 「宿直・日直」を行った場合に、会社から「食事や食事代金」が提供されない場合には、
「勤務1回につき支給される宿直・日直手当額」のうち「4,000円までの部分」を「非課税支給額」として取扱うことができ、 |
② 「宿直・日直」を行った場合に、会社から「食事や食事代金」が提供されている場合には、
「勤務1回につき支給される宿直・日直手当額」のうち、 『 4,000円 - 「食事の価額」 』の金額を「非課税支給額」として取扱うことができます。 |
2、「宿直・日直手当」に対する「非課税規定の設定理由」
『「宿直・日直手当」の支給 』は、
・「他の(課税)給与」と同様、会社から従業員への「経済的利益の提供」であり、 ・ 本来的には「他の(課税)給与」と同様、従業員個人の所得計算上「課税支給額」として取扱われるべきものとなります。 |
ただ他方、「宿直・日直業務」は、
宿日直者を「通常の業務時間外」に拘束するものであることから、 「宿直・日直業務」を行うことにより、宿日直者には『通常の日常生活では発生しないような追加的な「生活経費」』が発生することが予想されるため、
(例えば) |
このことを考慮した場合には、
「宿直・日直手当の支給額」には、 『「宿直・日直業務そのもの」に対する「労働の対価」として支給されたもの 』の他、 『 宿日直に伴い追加的に発生する「宿日直者の生活費用」を補填するために支給されたもの 』も含まれると考えられます。 |
この点、
「前者部分の支給額」につきましては、
「通常の給与等」と同様に「労働の対価部分」であることから、これを「課税支給額とする」ことに問題は生じませんが、 |
「後者部分の支給額」につきましては、これに対して「所得税」等が課せられた場合には、
『「宿日直によって追加的に生じた生活費用」を補填するという目的 』が、『「所得税」等が課せられた分 』だけ損なわれてしまうこととなります。 |
従いまして、税務上におきましては、このことを考慮し、
『「後者部分の支給金額」に相当すると想定される金額 』を、一律に「 4,000円 」として規定した上で、 |
課税政策上「宿日直者に対する税負担の配慮」を行い、 これに対しては特別に「所得税」等を課さない(「非課税支給額」として取扱う)こととしています。 |
◆ 「他の時間外労働手当」との比較 ◆
Ⅲ:『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』の要件
上記Ⅱでご紹介させて頂きましたように、「宿直・日直手当」につきましては、「その支給額のうち4,000円部分」を「非課税支給額」として取扱うことができますが、
このように取扱うためには、
「宿直・日直手当」がそもそも『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』に該当していることが必要となります。 |
このため、ここでは、「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」に該当するために必要となる要件等 』をご紹介させて頂きます。
1、『「宿直・日直業務」の業務内容等 』に係る要件①
「宿直・日直業務」につきましては、
労働基準法上、事前に「所轄労働基準監督署長の許可」が必要となる業務となります。(労働基準法施行規則23条) |
このため、「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』に該当するためには、
『「宿直・日直手当」の支給対象となる業務 』が、 「所轄労働基準監督署長の許可」が必要とされるような業務であることが必要となります。 |
※ 「労働基準監督署長の許可」につきましては、税務上「これを要件とする規定」は存在していないことから、
「当該許可がない」ことをもって『「宿直・日直手当」の「非課税性」が否定される 』ことはないと考えますが、
「当該許可の有無」は、『「宿直・日直手当」の「非課税性」』を判断する上で重要なものとなると考えます。
2、『「宿直・日直業務」の業務内容等 』に係る要件②
「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』に該当するためには、
「宿直・日直手当」が、 『 上記Ⅰ-1でご紹介させて頂きました「宿直・日直業務」』に対して支給されていることが要件となります。 |
このため、「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』に該当するためには、
『「宿直・日直手当」の支給対象となる業務 』が、 通常業務とは内容の異なる「監視又は断続的な軽微労働(基本的には待機労働)」であることが必要となります。 |
◆ 「当該要件」に該当しない場合 ◆
・従業員が宿日直中に「(業務量は異なるが)通常業務と同じ内容の業務を行っている」と判断されるような場合や、 ・従業員が「(業務量は異なるが)通常業務と同じ内容の業務を行うことを前提として宿日直を行っている」と判断されるような場合には、 (例示) |
『 当該業務に対して支給されている「宿直・日直手当」』は、
『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』には該当しないものとなります。 |
◆ 上記の理由 ◆
3、『「宿直・日直業務」の業務内容等 』に係る要件③
「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』に該当するためには、
「宿直・日直手当」が、 『 上記Ⅰ-1でご紹介させて頂きました「宿直・日直業務」』に対して支給されていることが要件となります。 |
このため、「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』に該当するためには、
『「宿直・日直手当」の支給対象となる業務 』が、 『「所定労働時間外」に行われている 』ことが必要となります。 |
◆ 「当該要件」に該当しない場合 ◆
『「宿直・日直手当」の支給対象となる業務 』が、 「所定労働時間内」に行われているような場合や 「宿直・日直業務」が行われたことにより「代替休暇」が与えられているような場合には、 |
『 当該業務に対して支給されている「宿直・日直手当」』は、
『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』には該当しないものとなります。 ( 所得税基本通達28-1(2)) |
◆ 上記の理由 ◆
4、「宿直・日直手当」の支給状況の要件①
「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』に該当するためには、
「宿直・日直手当」が、 『「宿直業務」や「日直業務」が行われた事実 』に基づいて支給されていることが必要となります。 |
◆ 「当該要件」に該当しない場合 ◆
「宿直業務や日直業務の多い従業員」に対して、『 宿直・日直実績とは無関係に毎月・一定金額の「宿直・日直手当」』が支給されているような場合には、 |
このうち、『「宿直・日直実績」に基づくと考えられる部分 』のみが『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』となり、 「それ以外の部分」につきましては、すべて『 課税対象となる「宿直・日直手当」』となってしまいます。 |
◆ 上記の理由 ◆
5、「宿直・日直手当」の支給状況の要件②
「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』とされるためには、
「宿直・日直手当」が、 「宿日直を行ったすべての者」に対して支給されていることが必要となります。 |
◆ 「当該要件」に該当しない場合 ◆
特定の個人が宿直や日直を行った場合に対してのみ「宿直・日直手当」が支給されるような場合には、 当該「宿直・日直手当」は、『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』には該当しないものとなります。 |
◆ 上記の理由 ◆
6、「宿直・日直手当」の支給金額の要件
「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』とされるためには、
「宿直・日直手当」は、 ・『「宿直・日直者」の地位・職能等の属人的な要素 』を考慮して決定・支給されるようなものではなく、 ・「宿直・日直者」に対して「 一律的 」に決定され支給されていることが必要となります。 |
◆ 「当該要件」に該当しない場合 ◆
「宿直・日直手当」が、 ・『 宿日直者の「通常の給与等の額」に比例した金額 』をもって支給されているような場合や、 ・『 宿日直者の「給与等の額に比例した金額」に近似するように「当該給与等の額の階級区分等」に応じて定められた金額 』をもって支給されているような場合は、 |
このうち、『「 一律 」に決定されている部分 』のみが『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』となり、 『「給与に比例して」決定されている部分 』につきましては、『 課税対象となる「宿直・日直手当」』となってしまいます。 ( 所得税基本通達28-1(3)) |
◆ 上記の理由 ◆
7、「宿直・日直手当」の支給対象者の要件
「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』とされるためには、
「宿直・日直手当」が、 『「宿直・日直業務を通常業務としている者」以外の者 』に対して支給されていることが必要となります。 |
◆ 「当該要件」に該当しない場合 ◆
「宿直・日直手当」が、 『「宿直・日直業務」を「その主たる業務」とするために雇用されている者 』に対して支給されているような場合には、 (例えば) |
『 「このような者」に対して支給されている「宿直・日直手当」』は、
『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』には該当しないものとなります。 ( 所得税基本通達28-1(1)) |
◆ 上記の理由 ◆
Ⅳ:「宿直・日直手当」を「非課税支給額」とする場合の実務上の留意点
1、「宿直・日直手当に係る規定」の作成
上記Ⅲ-5、6でご紹介させて頂きましたように、
「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』に該当するためには、 「宿直・日直手当」が、「宿日直を行ったすべての者」に対して「(属人的要素を考慮しない) 一律の金額 」で支給されていることが必要となります。 |
このため、「宿直・日直手当」を支給しているような会社におきましては、
宿日直者すべてに対して『 一律の「宿直・日直手当」』を支給するために、 「賃金規定」「給与計算規定」「宿日直規定」等により、『「事前に」かつ「一律的」に「宿直・日直手当の支給額」を決定しておく 』ことが必要となります。 |
◆ 「宿直手当」「日直手当」の規定上の留意点につきまして ◆
2、「宿直・日直中」に「緊急の業務」が行われた場合の取扱い
「宿日直業務」を行っていた者が、緊急の事態の発生により突発的に「通常業務」等を行ったような場合には、
当該『 緊急的に行われた「通常業務」』に対しては、 「基本給に基づく時間給」や「時間外手当」「深夜残業手当」「休日手当」などを別途支給することが必要となるため、 |
このような場合には、
会社から当該「宿日直者」に対して支給される「給与手当」には、
|
そして、上記の「手当」につきましては、
前者の「宿直・日直手当部分」のみを『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』として取扱うことができ、 後者の「突発的業務に対する手当部分」は、そのすべてを「課税対象支給額」として取扱うことが必要となりますので、 |
この点につきましては、両者を混同せず適切に区分して取扱って頂ますようお願い致します。
3、「宿直・日直手当」に「課税支給額部分」がある場合の留意事項
上記Ⅱ-1でご紹介させて頂きましたように、
「宿直・日直手当」につきましては、 「非課税とすることができる金額」は「宿直・日直手当のうち4,000円部分」に限られます。 |
従いまして、「宿直・日直手当」につきましては、通常、
「課税対象となる宿直・日直手当」と「課税対象とならない宿直・日直手当」が会社から支給されることになりますが、 |
毎月の給与計算におきましては、「源泉所得税」を計算することが必要となり、
この「源泉所得税」を計算するためには、 「給与支給明細書」において「課税対象となる給与支給額」と「課税対象とならない給与支給額」を区別して把握しておくことが必要となります。 |
このため「宿直・日直手当」につき、「課税支給額となる金額」と「非課税支給額となる金額」がある場合には、
「給与支給明細書」上、「課税宿直・日直手当」と「非課税宿直・日直手当」を別々に区分記載しておくことが必要となります。 |
例 示
会社から宿日直者に対して、「給与計算規定」に基づいて、「宿日直手当」が6,000円支給されている場合には、
4,000円は、「(非課税)宿日直手当」として「非課税支給額」欄に記載し、 2,000円(6,000円-4,000円)は、「(課税)宿日直手当」として「課税支給」欄に記載することが必要となります。 |
4、税務調査等での留意事項
「税務調査」等におきまして、
仮に「(非課税)宿直・日直手当」として取り扱ったものが『「課税支給額」に該当する 』と認定されてしまった場合には、
・「当該認定」により(通常は)『 会社の「源泉徴収漏れ」』という判断が下されますので、 ・この場合には、会社は『「宿直・日直手当の課税認定金額」に係る「源泉徴収漏れ」』のペナルティーを負うこととなりますので、 |
この点につきましては、十分ご注意頂ますようお願い致します。
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『「宿直手当」「日直手当」の内容 』『「宿直手当」「日直手当」に対する非課税規定の内容 』等をご紹介させて頂いております。
「宿直業務・日直業務の内容・特徴」及び「宿直手当・日直手当の内容・特徴」につきまして
『「宿直手当」「日直手当」に対する非課税規定の内容 』をご理解頂くためには、
まず『「宿直業務」「日直業務」というものの内容・特徴 』及び『「宿直手当」「日直手当」というものの内容・特徴 』をご理解頂くことが必要となると考えます。
このため、ここでは、上記Ⅰにおきまして、まず「宿直業務・日直業務の内容や特徴」及び「宿直手当・日直手当の内容や特徴」をご紹介させて頂いております。
『「宿直手当」「日直手当」に係る「非課税限度額」規定』につきまして
「宿直手当」「日直手当」につき、『「(所得税法上)非課税支給額」として取扱われる部分 』は、
・「宿直手当」「日直手当」の「支給額」全額ではなく、
・その支給額のうち「宿日直者の生活実費を補填する目的で支給されている」と考えられる「4,000円部分」のみとなります。
従いまして、「宿直手当」「日直手当」を「非課税支給額」として取扱う場合には、
上記Ⅱ-1やⅣ-3でご紹介させて頂きました内容を一読頂き、「非課税として取扱う金額」が「非課税支給限度額」を超えないようご注意頂ますようお願い致します。
「宿直手当」「日直手当」に対する「非課税取扱の理由」につきまして
「宿直・日直手当」に対する「非課税規定」は、
「宿直・日直手当」に対して「所得税等が課せられる」ことにより『「宿日直に伴う生活実費の補填目的」が毀損されること 』を回避するために設けられた規定となりますので、
この点につきましては、「本文Ⅱ-2でご紹介させて頂いております内容」をご確認頂ますようお願い致します。
「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』に該当するための要件
「宿直・日直手当」につきましては、
・それが名目上「宿直・日直手当」として支給されている場合であっても、
・『(所得税法上)非課税対象となる「宿直・日直手当」に該当するための要件 』を満たしていない場合には、
「これらのうちの4,000円部分」を「非課税支給額」として取扱うことはできません。
本文Ⅲにおきましては、
「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」に該当するために必要となる主な要件 』を7つご紹介させて頂いておりますので、
『「宿直・日直手当」のうち「4,000円部分」』を「非課税支給額」として取扱う場合には、
会社で支給している「宿直・日直手当」がこれらの要件を満たしているか?をご確認して頂ますようお願い致します。
「宿直・日直手当」に係る税務リスク
税務調査などで、「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」には該当しない 』と判断された場合には、
上記Ⅳ-4でご紹介させて頂きましたように、
会社は『「宿直・日直手当」に係る「源泉徴収漏れ」のペナルティー 』を負うこととなってしまいます。
このため、「宿直・日直等」が頻繁に行われているような会社におきましては、
会社が支給している「宿直・日直手当」が『 非課税対象となる「宿直・日直手当」』に該当しているのか?という確認を、特に慎重に行って頂ますようお願い致します。