「消耗品費(事務用品費・新聞図書費)」という勘定科目につきまして、費用計上する場合に留意すべき税務上の規定を、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。

 

 

 

Ⅰ:定義及び内容

1、「消耗品費」とは

消耗品費とは、以下のようなものをいいます。

10万円未満の「消耗品」「器具・備品」「事務用品」「新聞図書」等の有形物の取得に要した費用をいいます。

10万円未満の「ソフトウェア」等の無形物の取得に要した費用をいいます。

金額に関わらず使用可能期間1年未満であるものの取得に要した費用をいいます。

 

2、「消耗品費」の内容(内訳)

消耗品費には、主に以下のようなものが含まれます。

※なお、より詳細な内容につきましては、⇒支出に対する勘定科目(購買取引)をご覧下さい。

消耗品・備品等 10万円未満の「器具・備品類」「機器類」「広告のための器具・備品類」「運搬のための器具・備品類」「工具類」「消耗品類」等の有形物を取得するため、会社が支出した費用
事務用品費※1 10万円未満の「事務用消耗品」「事務用機器」等の有形物を取得するため、会社が支出した費用
 新聞図書費※2 10万円未満の「新聞」「書籍等(業務に必要な書籍・雑誌等、地図、資料等)」を取得するため、会社が支出した費用
 ソフトウェア 10万円未満の「ソフトウェア」等の無形物を取得するために、会社が支出した費用
10万円以上 購入金額が10万円以上であるが、使用可能期間が1年未満の有形物・無形物を取得するため、会社が支出した費用

上記のように、「消耗品費(事務用品費、新聞図書費)」等には、「有形・無形の物品等の購入に係るもの」が計上されることになります。

 

 

Ⅱ:「物品等の取得」に対する会計の基本的考え方

会計の基本的な考え方」におきましては、上記Ⅰのような「物品等を取得した場合」には、

  • サービスの提供(購入)を受けた場合とは異なり、
  • 「物品等の取得」=「費用の発生」とは考えず、
    物品等の取得」と「取得した物品に係る費用の計上」とは別々に考えるものとされています。

以下におきまして、この「会計における基本的な考え方」をご紹介させて頂きます。

 

1、「サービスの購入」と「物品等の取得」との違い

「会計の基本的な考え方」におきましては、

費用を計上するためには、

  • 「物品を使用する」ことにより、会社が「その使用効果を受ける」こと、又は
  • 「サービスの提供を受ける」ことにより、会社が「そのサービスの効果を受ける」こと

が必要となります。

 

この点、

「採用・教育費」「外注費」「荷造運賃の運送費」「広告宣伝費の広告料」「旅費交通費」「通信費」「販売手数料」「修繕費」「水道光熱費」「支払手数料」「地代家賃」「賃貸料・リース料」「保険料」「支払報酬」等の「費用を計上する場合のように、

購入先からサービス提供受けた時点において、その「サービスのすべての効果」を享受している場合には、

サービスの提供を受けた時点で、原則、「支払ったサービス代金等のすべて」を「費用」とすることができます。

 

他方、『「有形物」「ソフトウェア等の無形物」である物品等』を取得した場合には、

取得した時点では、物品等を所有しているだけであり、使用はされておらず、「物品等を使用する」ことによる「使用効果はまだ受けていない」と考えられることから、

物品等を取得した時点では、『「有形物」「ソフトウェア等の無形物」の取得金額』を費用として計上することはできません

また、「購入した物品等の使用・利用」が、会計年度末を跨ぐよう場合には、これらの「使用による効果」は、「(複数会計年度に分かれた)使用可能期間にわたって受け取ることになるため、

『「有形物」「ソフトウェア等の無形物」の取得金額』を「使用可能期間」にわたって「按分して、費用として計上」することが必要となります。

 

以上のように、会計における基本的な考え方におきましては、

「物品等の取得に係った支出金額」を「費用として計上する場合」には、「取得」と「使用」を厳格に区別して捉えることが必要となります。

 

2、「会計の基本的考え方」に基づく「物品等に係る費用計上」

上記1でご紹介させて頂きましたように、会計の基本的な考え方では、「有形物」や「ソフトウェア等の無形物」に対しては、その取得金額を

  • 取得時に一括で「費用」として計上することはできず
  • その使用可能期間にわたって「取得金額按分して費用として計上する」ことが必要となります。

 

「会計の基本的な考え方」に基づく費用計上方法

「会計の基本的な考え方」に基づいて、『「物品等の取得金額」を、「使用可能期間に按分」して「費用を計上」する』ためには、

  • 「有形物」「ソフトウェア等の無形物」を取得した時点で、一旦「有形固定資産工具器具備品等)」又は「無形固定資産ソフトウェア等)」として資産計上します。
    ⇒これにより、「有形物」「ソフトウェア等の無形物」を会社が所有したことを会計帳簿に記録します。
  • この後、「使用可能期間の各年度にわたって取得金額を按分計算」して、「各会計年度費用を計上」します。
    (他方「(有形・無形)固定資産」は、各年度において「費用計上した分」だけ減少させます。)

有形物・ソフトウェア等無形物の費用化の会計における基本的考え

 上記のような「費用の按分計上」は、「会計の基本的な考え方」におきましては、購入金額の大小に拘らず、「物品等を購入した場合」に原則として必要となる計算となります。

 

例示

①240万円の営業車を購入した場合で、使用可能期間が6年である場合には、

1年間に費用として計上できる金額は、240万円 ÷ 6年 = 40万円 となります。

 

②8万円のパソコンを購入した場合で、使用可能期間が4年である場合には、

1年間に費用として計上できる金額は、8万円 ÷ 4年 = 万円 となります。

 

 

Ⅲ:「消耗品費」に対する税務上の規定(少額の減価償却資産)

上記Ⅱでご紹介させて頂きましたように、「会計の基本的な考え方」におきましては、購入金額の大小に拘らず、使用可能期間が会計年度末を跨ぐよう物品等を取得した場合には、その取得金額を一旦資産として計上し、その取得金額を「使用可能期間」に按分して費用を計上することが必要となります。

ただし、上記のような「会計の基本的な考え方」に従って処理を行うことは、経理事務に係る負担膨大になります
このため、税務上では、以下のような2つの規定(「少額の減価償却資産の規定)を設けて、経理事務に係る負担を軽減することを図っています。

  • 取得価額が10万円未満の物品等の取得に対する規定
  • 物品等の使用可能期間が客観的に1年未満であることを証明できる場合の規定

以下、上記の規定につきまして、ご紹介させて頂きます。

 

1、「取得金額が10万円未満」の物品等

物品等の「取得に掛かった金額取得価額)」が、10万円未満である場合には、

  • 上記Ⅱで記載したような「会計の基本的考え方」に従ったような「費用計上」ではなく
  • 取得した事業年度に、「取得価額の全額」を「消耗品費」等として「費用計上することができます

⇒この規定に該当するモノを「少額の減価償却資産」といいます。

税務上では、『「有形物」「ソフトウェア等の無形物」の取得価額』が10万円未満である場合には、
たとえその物品等の使用可能期間が会計年度末を超えるものであっても、経理実務の軽減化等を図るため、
「物品等の取得価額」につき、「取得価額全額」を「取得した会計年度の費用」として計上することを認めています。

 

上記規定の留意点

ただし、上記規定を適用する場合には、以下の①~④に記載する事項につきまして、ご留意頂くことが必要となります。

①取得価額についての留意点(付随費用)

上記規定を適用するにあたり、「取得価額」が「10万円未満であるかどうか」が非常に重要となります。

この「取得価額」につきましては、単に「有形物」「ソフトウェア等の無形物」の「購入金額だけではく、下記のような「付随費用」も含めて判断することが必要となる点にご留意が必要となります。

すなわち「取得価額10万円未満であるかどうか」は、

  • 「有形物・ソフトウェア等無形物の購入代価」だけではなく、
  • 「その有形物・ソフトウェア等無形物」を「会社業務で使用するまで直接掛かった費用」がある場合には、これらに係る支出金額も含めて

判断することが必要となります。

 「使用するまでに直接掛かった費用」とは

「引取のために掛かった運賃荷役費」「使用するまで掛かった設置費用試運転費用」「運送保険料」「購入のために支払った購入手数料」「関税」などの費用をいいます。

「有形物」「ソフトウェア等の無形物」は、使用することによって費用化できるものであることから、その取得価額は、「購入対価」のみではなく、その有形物・無形物を業務上使用できるようになるまでに掛かった費用も含めて考慮することが必要となります。

このため、例えば冷暖房機の「本体購入金額」自体が10万円未満であっても、これに係る「運賃」や「設置工事費」を含めると10万円以上となる場合には、「消耗品費」として購入年度に一括して費用計上することができず、『有形固定資産である「工具器具備品」』として計上することが必要となります。

 

②取得価額についての留意点(消費税)

取得価額が10万円未満であるかどうかの判断にあたり、「税込み金額」で判断するのか「税抜き金額」で判断するのかが問題となります。

この点につきましては、会社が会計帳簿の記帳にあたり、「消費税に対する会計処理」をどのようにしているかによって以下のように異なった取扱がなされます。

  • 消費税等の経理処理を「税抜経理方式」で行っている場合には、「税抜金額」で「10万円未満であるかどうかの判定」を行います。
  • 他方、消費税等の経理処理を「税込経理方式」で行っている場合には、「税込金額」で「10万円未満であるかどうかの判定」を行います。

税務上では、「取得価額」は「会社が会計帳簿に記入する金額である」と考えます。

このため、会計帳簿への記帳が、「税抜金額で記帳されている場合には、取得価額も税抜金額で考え」、「税込金額で記帳されている場合には、取得価額も税込金額で考える」として取り扱われます。

従いまして、「消費税につき免税事業者である等の場合」や「消費税課税事業者であっても経理処理を税込方式で行っている場合」には、「取得価額」は「税込金額」で考え、10万円未満であるかどうかの判断を行うことが必要となります。

 

③「一体として取引されるモノ」「一体として機能するモノ」の取得価額についての留意点
  • 通常、取引単位が物品単体ではなく、「1単位として取引されるもの」や
  • 異なる物品が組み合わさって「一体となって機能を発揮するもの」につきましては、

その取得価額が10万円未満に該当するか否かを判断する場合には、
・その取得価額は1単位を構成する個々の物品の取得価額ではなく
・「取引された単位」や「1つの機能を発揮する単位」で取得価額を決定することが必要となります。

税務上の事例

上記につき、税務上では、以下の事例を用いて、上記に該当する場合が紹介されています。

応接セットの場合は、通常、テーブルと椅子が「1組で取引されるもの」であることから、上記に該当し「取引単位で取得価額を決定する」とされています。
・また、カーテンの場合は、1枚で機能するものではなく、一つの部屋数枚が組み合わされて機能するものであることから、上記に該当し「部屋ごとその合計額をもって取得価額を決定する」とされています。

税務上の事例に対する解釈(私見です。)

上記の事例をどのように解釈するかは、色々と判断に迷う点があるのではないかと考えますが、一応の解釈は以下のようになるのではないか?と考えます。

応接セットの場合には、「テーブル」や「椅子」自体は単独で機能するものであると考えます。ただし、「テーブル」や「椅子」を敢えて一体として購入している場合」には、その使用用途も検討することが必要となります。
そして、「テーブル」や「椅子」の用途が「接客用の応接目的という一体の用途目的」であるならば、消耗品費として計上できるかどうかの取得価額の判断にあたっても「それらを一体として考えなければならない」ということを規定している事例であると解釈します。
(この事例は、『仮に単独で機能するものであっても、「購入単位1組であるという事実」を重視し、その事実が「使用用途一体性意味するもの」である場合には、「取得価格についても一体として考える」ことが必要となる。』ということを示したものであると解釈できます。)

カーテンの場合には、部屋ごとに判断するかどうかは例外もあるとは思いますが、窓が大きい場合などでは、カーテン1枚ではカーテンの機能が働かず、複数のカーテンが必要であるならば、消耗品費として計上できるかどうかの取得価額の判断にあたっても、「複数のカーテンの取得価額の合計金額をカーテンの取得価額としなければならない」ということを規定している事例であると解釈します。
(この事例は、「カーテンの機能」は「靴の機能」等と同じで複数枚購入して同じ用途で使用する場合には、複数枚が一体となって機能するため、「取得価額についても一体として考える」必要があることを示したものであると解釈できます。)

私見

正直、上記の事例をどのように解釈して良いのか判断に迷う場合も多いと考えます。
ただし、購入取引において、複数の物品をまとめて購入している場合には、税務調査等で「1組として購入する理由があるのではないか?」と疑問を持たれることが予想されます。
そして、その物品の「使用用途機能一体性がある場合」には、上記規定が適用されるリスクがあります。

このため、購入取引において、まとめて物品を購入した場合等で、その合計金額が10万円以上であるにも関わらず、個々の物品を「少額の減価償却資産」として「消耗品費」等に計上する場合には、「個々の物品独自の機能や使用用途を持ったものである」ということをしっかり確認しておくことが必要となります。

 

④「少額の減価償却資産」は資産計上することも可能となります

実務上、敢えて10万円未満の「少額の減価償却資産」を資産計上して、費用化することは少ないと考えますが、

上記の『「少額の減価償却資産」の規定』は、『「会計の基本的な考え方」の例外を許容した規定』となることから、敢えてこの規定を採用せず、10万円未満の「有形物」「ソフトウェア等の無形物」を資産に計上し、使用可能期間(耐用年数)にわたって費用化することもできます。
(「資産として計上するか」「少額の減価償却資産とするか」は個々の有形物・ソフトウェア等無形物ごとに選択適用することができます。)

ただし、一旦資産計上した物品等につきましては、その年度以降に『「少額の減価償却資産」の規定』を適用することはできません。

 

2、使用可能期間が1年未満の物品等

  • 会社が属する業種において同じ種類の物品等が、使用状況・補充状況等から「一般的に消耗性の物品等」として認識されている場合であって、
  • 会社での「平均的使用状況・補充状況」等から「その使用可能期間が1年未満であることを証明できる場合」には、

その取得価額が10万円以上であっても、取得時において、「消耗品費」等として「費用計上することができます

※ 「平均的」とは、おおむね過去3年間の平均値を基準として判定します。

⇒この規定に該当するモノも「少額の減価償却資産」といいます。

上記のような要件を満たす場合には、たとえ有形物の取得価額が10万円以上であっても、「少額の減価償却資産」として、取得した会計年度に、取得価額の全額を費用として計上することができます。

ただし、この規定を提供する場合には、

①まず、会社が属する業界において「一般的に消耗性がある物品等」であると認識されていることが前提となります。

②その上で、過去3年間における「廃棄実績」や「代替資産の取得実績」等から、使用可能期間が1年未満であることを証明することが必要となります。

 

当該規定を適用する場合の留意点

①適用要件の説明の必要性

当該規定につきましては、規定を適用するための要件があることから、税務調査等で調査対象となった場合には、会社が「廃棄実績」や「代替資産の取得実績」等を説明することが必要となります。

このため、当該規定を適用するためには、「廃棄実績」や「代替資産の取得実績」を説明できる資料等を準備しておくことが前提となり、少々適用のための手間が掛かります。

資料準備が面倒である場合の経理処理

「廃棄実績」や「代替資産の取得実績」に係る資料準備に係る作業が面倒である場合等には、このような10万円以上となるような物品につきましては、

  • 一旦、「資産として計上」し、「使用可能期間(耐用年数)にわたり費用計上」を行い、
  • 実際に廃棄等行った会計年度に、「除却処理」による「除却損失」を計上することで「費用」を計上する

という経理処理を行うことが良いのでは?と考えます。
(取得時に一括で費用処理する場合には、上記証明が必要となりますが、除却・廃棄が短期的に行われる場合には、除却・廃棄時に費用処理を適時に行うことで、会計上同じ効果を得ることができます。)

 

②経済的価値がなくなる場合の留意

この規定を適用できる要件である「1年未満で使用可能性がなくなる」とは、

  • 物的な消耗等により、「1年未満で使用可能性がなくなる場合」のみではなく、
  • 経済的に使用価値がなくなる等により、1年未満で使用可能性がなくなることが明らかとなっている場合」にも適用されます。
税務上の事例

上記につき、税務上では、以下の事例を用いて、上記に該当する場合が紹介されています。

「テレビ放映用のコマーシャルフィルム」は、通常、減価償却資産として資産計上し、法定耐用年数2年で減価償却しますが、「テレビ放映の期間」が1年未満のものは、「使用可能期間が1年未満のもの」に該当し、「少額の減価償却資産」の規定を適用することができます。

留意点

経済的に使用価値がなくなる等の要件をもってこの規定を適用する場合には契約の状況等の客観的な事実により「1年未満で使用可能性がなくなること」が明らかであることが必要となります。

このため、会社の自主的決定方針等により、「1年未満で使用価値がなくなる」と判断しているのみにすぎない場合等では、この規定を適用できない点にご留意ください。

 

 

Ⅳ:20万円未満、30万円未満の規定及び会計帳簿への記帳方法

1、一括償却資産、少額減価償却資産の規定

税務上では、上記Ⅲの「少額の減価償却資産の規定」以外に、「物品等の取得価額」によっては、特別に費用化することができる規定が存在します。

以下では、これらの規定について、簡単にご紹介させて頂きます。

 

1)取得価額が20万円未満である場合に適用できる規定(一括償却資産)

『「有形物」「ソフトウェア等の無形物」の取得価額』が20万円未満である場合には、

「その取得価額」を「3年間で均等費用として計上する」ことができます。

⇒この規定に該当するモノを「一括償却資産」といいます。

「物品等の取得価額」が、20万円未満である場合には、資産の種類に関係なくかつ通常の減価償却の方法によらず、「その取得価額」を「3年間で均等に費用計上」することができます。

このため、この規定につきましても「会計の基本的な考え方」に拠らない「税務上の例外規定」となります。

適用のための要件

この規定を適用する場合には、「少額の減価償却資産」とは異なり、

  • 会計帳簿上で単に「消耗品費」等に計上するのみではなく、
  • 法人税の税務申告書」に「この規定を適用したものについての明細書別表十六(八)」を添付することが必要となります。

 

2)取得価額が30万円未満である場合に適用できる規定(少額減価償却資産)

『「有形物」「ソフトウェア等の無形物」の取得価額』が30万円未満であり、会社の規模が一定要件を満たした場合には、「その取得価額」を「取得時費用として計上する」ことができます。

⇒この規定に該当するモノを「少額減価償却資産」といいます。
 10万円未満の規定は「少額減価償却資産」といい、紛らわしいのでご注意下さい。

「物品等の取得価額が、30万円未満であり」かつ「会社の規模一定要件を満たした」場合には、資産の種類に関係なくかつ通常の減価償却の方法によらず、「その取得価額」を「取得時全額費用計上」することができます。

このため、この規定につきましても「会計の基本的な考え方」に拠らない「税務上の例外規定」となります。

適用のための要件

この規定を適用する場合にも、「少額の減価償却資産」とは異なり、

  • 会計帳簿上で単に「消耗品費」等に計上するのみではなく、
  • 法人税の税務申告書」に「この規定を適用したものについての明細書別表十六(七)」を添付することが必要となります。

 

2、一括償却資産、少額減価償却資産の取得時における会計帳簿への入力方法

上記の1(1)や(2)の規定を適用する場合には、「法人税申告書において別途明細書」の作成が必要となります。

このため、これらを取得時に「消耗品費」等に計上してしまうと、「一括償却資産の規定」を適用したものであるか?「少額減価償却資産の規定」を適用したものであるか?を把握することが難しくなる場合があります。

このため、これらの規定を適用する場合であっても、

取得時におきましては、一旦、「工具器具備品」「ソフトウェア」等の「有形・無形固定資産」に計上しておきます。

そして、「決算整理仕訳」等を行う際に、これらを適用する資産に対しては、

  • 減価償却は行わず
  • 一括償却資産の規定」を適用する場合には、「消耗品費」や「一括償却資産」等に振替処理を行い、
  • 少額減価償却資産の規定」を適用する場合には、「消耗品費」等に振替処理を行います。

 

 

Ⅴ:「少額の減価償却資産」に関する税務上の規定

税務上、「少額の減価償却資産」に関して記載があるものとしては、以下のような規定となります。

 

1、法人税法施行令  133条

少額の減価償却資産の要件等が記載された規定です。

 

2、基本通達(法人税法)

1)7-1-11 :少額の減価償却資産又は一括償却資産の取得価額の判定

少額の減価償却資産についての取得価額」をどのように考えるかについて記載された規定となります。

⇒「上記Ⅲの1の留意点①」の内容が記載された規定となります。

 

2)7-1-12 :使用可能期間が1年未満の減価償却資産の範囲

少額の減価償却資産」の規定につき、「使用可能期間が1年未満である」ものについて記載した規定となります。

⇒「上記Ⅲの2」の内容が記載された規定となります。

 

3、タックスアンサー

1)No.5400 :減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用

取得原価には「会社業務で使用するまでに直接掛かった費用」も含めなければならないことを記載した規定になります。

⇒「上記Ⅲの1の留意点①」の内容が記載された規定となります。

 

2)No.5403 :少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示

・「使用可能期間が1年未満の物品等の例示が記載された規定となります。

⇒「上記Ⅲの2の留意事項②」の内容が記載された規定となります。

・「取得価額が10万円未満の物品等の取得価額の例示が記載された規定となります。

⇒「上記Ⅲの1の留意点③」の内容が記載された規定となります。

 

3)No.5403 Q :少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示

取得価額が10万円未満の物品等の取得価額」について消費税の税抜で判断するか・税込で判断するかを記載した規定となります。

⇒「上記Ⅲの1の留意点②」の内容が記載された規定となります。

 

 

税理士事務所・会計事務所からのPOINT

まず、「消耗品費(事務用品費・新聞図書費)」等につきましては、取得しただけでは費用として計上することはできない!という「会計の基本的な考え方」が大前提として存在していることをご確認して頂きますようお願い致します。

その上で、税務上では、

  • 取得価額10万円未満であるものや
  • 使用可能期間が1年未満であるものにつきましては、

「少額の減価償却資産」(「会計の基本的な考え方」に対する例外規定)として、取得時に費用として計上できるということをご確認して頂きますようお願い致します。

 

また、ご存じの方も多いと思いますが、有形物や無形物につきましては、上記の10万円基準のみならず、「20万円基準」「30万円基準」という規定が別途存在します。

ただし、これらの規定は、別途「法人税申告書」での明細書添付が必要となりますので、その取得時の会計帳簿への入力にあたっては、直接「消耗品費」等により費用計上するのではなく、一旦「工具器具備品」等の固定資産として計上しておいて頂きますようお願い致します。