ここでは、「扶養控除等申告書」の記載である「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」について、
「記載が要求されるケース、記載意義・要否、記載内容、記載上の注意点など」を、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」の記載が求められるケース
・「(申告者本人の)控除対象配偶者、障害者控除対象配偶者」の要件や
・「(申告者本人の)控除対象扶養親族、障害者控除対象扶養親族」の要件を満たしているが、
(「申告者本人」は「これら配偶者や親族に係る配偶者控除、扶養親族控除、障害者控除」を受けず、)
(「他の所得者」が「これら配偶者や親族に係る扶養親族控除、障害者控除」を受けるような場合には、)
『「その事実(配偶者・親族、他の所得者)」に関する情報 』を『「扶養控除等申告書」の当該箇所 』に記載します。 |
「当該箇所への記載」についての「具体的ケース」
1、「申告者本人の配偶者」についての具体的ケース
①「申告者本人」が「配偶者に係る配偶者控除」を受けないケース
・「申告者本人」が「配偶者控除」という所得控除を受けることができるような状況にあるが、
・「(申告者本人と同一生計内の)他の所得者」が「この配偶者に係る扶養親族控除」を受けるような場合には、
『「その事実(配偶者、他の所得者)」に関する情報 』を『「扶養控除等申告書」の当該箇所 』に記載します。 |
記載例示
②「申告者本人」が「配偶者に係る障害者控除」を受けないケース
・「申告者本人」が「(配偶者に係る)障害者控除」という所得控除を受けることができるような状況にあるが、
・「(申告者本人と同一生計内の)他の所得者」が「この配偶者に係る障害者控除」を受けるような場合には、
『「その事実(配偶者、他の所得者)」に関する情報 』を『「扶養控除等申告書」の当該箇所 』に記載します。 |
記載例示
2、「申告者本人の親族」についての具体的ケース
①「申告者本人」が「親族(16歳以上)に係る扶養親族控除」を受けないケース
・「申告者本人」が「扶養親族控除」という所得控除を受けることができるような状況にあるが、
・「(申告者本人と同一生計内の)他の所得者」が「この親族に係る扶養親族控除」を受けるような場合には、
『「その事実(扶養親族、他の所得者)」に関する情報 』を『「扶養控除等申告書」の当該箇所 』に記載します。 |
記載例示
②「申告者本人」が「親族(年齢不問)に係る障害者控除」を受けないケース
・「申告者本人」が「(親族に係る)障害者控除」という所得控除を受けることができるような状況にあるが、
・「(申告者本人と同一生計内の)他の所得者」が「この親族に係る障害者控除」を受けるような場合には、
『「その事実(扶養親族、他の所得者)」に関する情報 』を『「扶養控除等申告書」の当該箇所 』に記載します。 |
記載例示
Ⅱ:当該箇所への記載意義と記載要否
1、当該箇所への記載意義
「所得税申告」におきましては、
「1人の控除対象者」について、「複数人の所得者」が重複して所得控除を受けることはできない というルールが存在し、 |
「当該箇所への記載」は、
「このルールに従った申告を行っている」ということを、会社・税務署等に報告・明示する意義を持っています。 |
2、当該箇所への記載要否
「当該箇所への記載」には、上記1でご紹介させて頂きましたような意義がありますが、
『「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」箇所に記載された「配偶者・扶養親族」』につきましては、
(「当該箇所への記載の有無」は、「申告者本人の所得計算」に影響を与えないことから、)
「当該箇所の記載」につきましては、各自の必要性(会社への報告必要性等)に応じてご記入頂ければ良いと考えます。 |
なおこの点につきましては、
「申告者本人」が年末の年末調整時に「所得金額調整控除」を受ける予定があるような場合には、
(「所得金額調整控除」は「1人の扶養親族等」に対して「複数の所得者」が控除を受けることは可能となります。)
当該箇所に「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」を記載して頂くことも良いと考えます。 |
記載例示 ①
記載例示 ②
Ⅲ:「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」の記載事項・記載例示
「申告者本人の同一生計配偶者や扶養親族」を『 同一生計内の「他の所得者」』が所得控除を受ける場合には、
『「その事実(同一生計配偶者・扶養親族、他の所得者)」に関する情報 』を「扶養控除等申告書」に記載します。
① 他の所得者が所得控除を受ける「同一生計配偶者」や「扶養親族」の氏名 ② 本人との続柄 ③ 生年月日 ④ 住所又は居所
( 「住所」が「申告者本人」と同じである場合には、「本人と同じ」と記載して下さい。 ) ⑤ 「本人の同一生計配偶者」や「本人の扶養親族」につき所得控除を受ける「他の所得者の氏名」 ⑥ 「他の所得者」と「本人」との続柄 ⑦ 「他の所得者」の住所又は居所
( 「住所」が「申告者本人」と同じである場合には、「本人と同じ」と記載して下さい。 ) |
記載例示 ①
夫婦共働きの場合で、
・扶養親族である16歳以上の子(山田次郎)を、
・本人(山田花子)の控除対象扶養親族とせず、夫(山田太郎)の控除対象扶養親族として申告する
【 「山田花子(申告者本人)の扶養控除等申告書」における記載例示 】
記載例示 ②
本人と子が所得者の場合で、
・配偶者である(田中花子)を、
・本人(田中太郎)の控除対象配偶者とせず(予定)、子(田中次郎)の控除対象扶養親族として申告する
【 「田中太郎(申告者本人)の扶養控除等申告書」における記載例示 】
Ⅳ、「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」に係る申告書提出時の「添付書類」
「扶養控除等申告書」に「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」を記載する場合には、
当該『「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」に係る記載事項 』を証明するための添付書類等は必要ありません。 |
Ⅴ:『 当該箇所に記載された「配偶者・親族」』に係る注意点
1、「配偶者控除」「扶養親族控除」「障害者控除」に関する注意点
『 当該箇所に記載された「扶養親族等(配偶者、親族)」』に対しては、
『 同一生計内の「他の所得者」』が、 「控除対象扶養親族」や「障害者控除対象扶養親族」とすることが前提となりますので、 |
当該「他の所得者の所得控除の対象」とされた「扶養親族等(配偶者、親族)」を、
|
2、「ひとり親控除」「寡婦控除」に関する注意点
「所得税法」におきましては、
「申告者本人の親族」につき、 「他の所得者」が「控除対象扶養親族」や「障害者控除対象扶養親族」とする場合には、 |
当該『「他の所得者の所得控除の対象」とされた「扶養親族」』は、
( 国税庁HP タックスアンサー No.1171:ひとり親控除「ひとり親控除の対象となる人の範囲」 )
( 所得税法85条4項・5項、 所得税基本通達 2-40 :寡婦の要件としての扶養親族の有無 )
という規定が存在します。 |
従いまして、
「申告者本人の親族」につき、 「他の所得者」が「控除対象扶養親族」や「障害者控除対象扶養親族」とする場合には、 |
「申告者本人」は、
これらの点につきましても、十分にご注意頂きますようお願い致します。 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、「扶養控除等申告書」における『「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」の記載 』として、
・当該記載が求められるケース
・記載意義及び記載の要否
・記載内容
・申告書提出時の「添付書類」
・記載上の注意点 をご紹介させて頂いております。
◆ 「当該記載が求められるケース」につきまして ◆
「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」の記載が求められるは、どのような場合であるか?を、
先ずは、本文Ⅰをご一読頂きご確認下さい。
◆ 当該箇所への「記載意義」と「記載要否」 ◆
『「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」の記載 』は、
「1人の控除対象者」について「複数の所得者」が重複して所得控除を受けていないことを明示する意義を持ちますが、
「当該箇所への記載漏れ」がある場合であっても、『「申告者本人」の所得金額計算 』には影響を与えないため、
「当該箇所への記載」を行わないという選択も可能となります。
◆ 当該箇所への「記載内容」と「添付書類」 ◆
当該箇所への記載内容や記載例示につきましては、本文Ⅲをご参照下さい。
また、「当該箇所への記載」は、『「申告者本人」の所得金額計算 』に影響を与えないことから、
申告書提出時において、「当該箇所の記載を証明する添付書類等」の提出は不要となります。
◆ 当該箇所への記載上の注意点 ◆
当該箇所に記載した『 他の所得者が所得控除を受ける「同一生計配偶者」や「扶養親族」』に対しては、
当然のことながら「申告者本人」が「配偶者控除」「扶養親族控除」「障害者控除」を受けることはできませんが、
当該箇所に記載した『 他の所得者が所得控除を受ける「配偶者」や「扶養親族」』につきましては、
・その「親族(子)」を『「ひとり親控除」を受けるための「生計を一にする子」』として申告するや、
・その「親族」を『「寡婦控除」を受けるための「扶養親族」』として申告することもできなくなりますので、
この点につきましては、十分にご注意頂きますようお願い致します。