ここでは「法定休日」及び「法定休日労働時間」につき、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
Ⅰ:法定休日
ここでは、
まず 下記1 におきまして、『「法定休日」の定義・内容 』のご紹介として、
- 「法定休日」の定義
- 「法定休日」に関する「原則的制度」と「例外的制度」
- 「法定休日」に係る前提規定 (「 起算日 」の規定 )
- 「法定休日」の測定
- 「法定休日」についての「就業規則」等での規定
- 「(所定)休日」と「法定休日」の関係
に関する事項をご紹介させて頂きます。
また、「法定休日」に対しましては、「労働基準法41条」に『「法定休日」の適用を除外する者 』が規定されていますので、
下記2 では、この『「労働基準法 41条」の規定の内容・要件 』等をご紹介させて頂きます。
1、「法定休日」の定義 と 内容
1)「法定休日」の定義
「法定休日」とは、
「労働者保護の観点」から「労働基準法」において規定される、 (会社等の)使用者が(従業員等の)労働者に「法律上与えなければならない休日」のことをいますが、 |
この「法定休日」につき、「労働基準法」では、
「労働基準法 35条1項」で、 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。 「労働基準法 35条2項」で、 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。 |
と規定していることから、
会社は、労働者に対して、 「1週間」に「1日の休日」 又は 「4週間」に「4日の休日」 を最低限与えることが必要となり、 |
この「労働基準法」で規定されている『「1週間に1日の休日」又は「4週間に4日の休日」』が、 「会社が従業員に法律上与えなければならない(最低限度の)休日」である「法定休日」となります。 |
2)「法定休日」に関する「原則的制度」と「例外的制度」
上記のように「労働基準法」におきましては、
「1週間に1日の法定休日を与えなければならない」又は「4週間に4日の法定休日を与えなければならない」 |
と並列的に規定していますが、
『「法定休日」の付与制度 』に関しては、
『「1週間に1日の法定休日」を付与する 』ことが、「原則的な制度」となり、 |
『「4週間に4日の法定休日」を付与する 』ことは、「変形休日制」といわれ、 上記の「原則的な制度」に対する「例外的な制度」となります。 ( S22.9.13 発基17号 ) |
このため、『「法定休日」の付与制度 』におきましては、
「1週間1日の法定休日制」を採用することが原則となり、
例外的に「変形休日制」を採用する場合には、 |
3)「法定休日」に係る前提規定 (「 起算日 」の規定 )
上記1)でご紹介させて頂きましたように
「法定休日」は「1週間」又は「4週間」という単位に対して付与されることになるため、 |
「原則的制度」を採用する場合には、 その前提として、『「法定休日」を付与する「1週間」』を「何曜日~何曜日」にするのか?
「変形休日制度」を採用する場合には、 その前提として、『「法定休日」を付与する「4週間」』を『「何曜日~何曜日」の4週間 』とするのか? について事前に決定しておくことが必要となります。 |
このため、
『「法定休日」の付与制度 』に関して「原則的制度」を採用する場合には、
『「法定休日を付与する1週間」の起点となる「起算日」』を「就業規則」等で規定し、 『「法定休日」を付与する単位となる「1週間」』を予め規定しておくことが前提となり、 |
『「法定休日」の付与制度 』に関して「変形休日制度」を採用する場合には、
『「法定休日を付与する4週間」の起点となる「起算日」』を「就業規則」等で規定し、 『「法定休日」を付与する単位となる「4週間」』を予め規定しておくことが必須となります。 |
なお、「原則的制度」を採用する場合には、
必ずしも『「法定休日を付与する1週間」の起点となる「起算日」』を「就業規則」等で規定することは求められていないことから、
実務上では『「法定休日を付与する1週間」の起点となる「起算日」』を「就業規則」等で明示しないことも想定されますが、
このような場合には、
「法定休日を付与する1週間」は、『「暦週」である「日曜日~土曜日」とする 』とされています。 |
《「原則的制度」を採用する場合の「法定休日を付与する1週間」の決定 》
《「変形休日制度」を採用する場合の「法定休日を付与する4週間」の決定 》
4)「法定休日」の測定
厚生労働省から公表されている「基発331号(平成6.5.31)」や「基発535号(昭和23.4.5)」では、
「法定休日」は、『「法定休日となる日」の「午前0:00から午後24:00まで」』を指す。 |
とされています。
このため、
「法定休日」につきましては、 「所定労働時間」や「実際の労働時間」とは関係なく、常に「暦日」を単位として測定され、 「法定休日となる日」の午前0:00からスタートし、「法定休日となる日」の午後24:00で終了するものとなります。 |
5)「法定休日」についての「就業規則」等での規定
「労働基準法」では、
『「(所定)休日」に関する事項 』は、 「絶対的必要記載事項」として、「就業規則」等において明示しておかなければならないと規定されていますが、 『「法定休日」に関する事項 』につきましては、 「就業規則」等における「絶対的必要記載事項」とはされていません。 |
このため、実務上におきましては、
「就業規則」等には、(従業員等の)労働者に対して付与する『「(所定)休日」に関する事項 』のみを記載し、 |
『「法定休日」に関する事項 』につきましては、なんら「就業規則」等に記載しないことや、 「法定休日」を「何曜日」とするのか?の記載を行わないこと、 現状におきましては許容されています。 |
◆ 「法定休日」に関する「就業規則」等での規定パターン ◆
従いまして、『「法定休日」に関する「就業規則」等での規定 』につきましては、実務上、以下のような様々なパターンが想定されます。
《 「原則的制度」を採用している場合の「就業規則」等における規定パターン 》
①「起算日に関する事項」記載し、かつ「法定休日」も事前に特定しておくパターン
②「起算日に関する事項」は記載するが、「法定休日」は特定しないパターン
③「原則的制度」を採用している旨のみを規定するパターン
《 「就業規則」等において『「法定休日」に関する規定 』を設けないパターン 》
《 「変形休日制度」を採用している場合の「就業規則」等における規定パターン 》
①「起算日に関する事項」記載し、かつ「法定休日」も事前に特定するパターン
②「起算日に関する事項」は記載するが、「法定休日」は特定しないパターン
6)「(所定)休日」と「法定休日」の関係
◆ 「(所定)休日」 ◆
「(所定)休日」とは、
会社が従業員に対して付与することを予定している「休日」をいい、 |
この「(所定)休日」につきましては、
「 労働基準法 89条1項 」の規定により、「絶対的必要記載事項」として「就業規則」等において明示しておかなければならないと規定されていますので、 |
ex.)『「土曜日、日曜日及び国民の祝日」は、「休日」とする 』 というように、 予め「就業規則」等で「具体的な曜日等」を特定して、従業員等に明示されているものとなります。 |
◆ 『「法定休日」の事前特定 』と「(所定)休日」との関係 ◆
上記でご紹介させて頂きましたように、「(所定)休日」は、「就業規則」等により事前に規定されているため、
「法定休日」を「就業規則」等において事前に特定する場合には、
一般的に、「就業規則」等において規定されている「(所定)休日」の中から、 「1週間に1日」又は「4週間に4日」となるように「法定休日」を事前に特定することになります。 |
◆ 『「法定休日」の事後特定 』と「(所定)休日」との関係 ◆
他方、「法定休日」を「就業規則」等において事前特定していない場合には、
実際の労働が行われた後に、
「(所定)休日」等のうちから『「法定休日」となる日 』を事後的に特定することが必要となります。 |
2、「法定休日」の適用対象外者
「法定休日」につきましては、「労働基準法 41条」で
① 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者 ② 事業の種類にかかわらず「監督若しくは管理の地位にある者」又は「機密の事務を取り扱う者」 ③ 「監視又は断続的労働に従事する者」で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの に対しては、『「法定休日」の規定 』を適用しない。 |
と規定されているため、
「(従業員等である)労働者」が『「労働基準法 41条」に規定されている「上記①~③のいずれか」』に該当する場合には、 ・ 「これらの者」は、『「法定休日の規定」が例外的に適用されない者 』となり、 ・ 「これらの者」につきましては、『「法定休日」に関する規定 』は適用されませんので、 |
「法定休日」を理解する場合には、このような『「法定休日の規定」が適用されない者 』も存在するということもあわせてご確認頂ますようお願いいたします。
▶ 「労働基準法41条」における「適用除外規定」の趣旨
ただし、41条の『「法定休日」の対象外とする労働者 』の規定は、
『「労働者保護」の観点からの「重大な例外的取り扱い規定」』となることから、 41条の適用を行う場合には、41条の規定趣旨を考慮して限定的・慎重に適用することが必要となりますので、 |
この点につきましても、十分にご留意頂ますようお願い致します。
◆ 第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者 ◆
◆ 監督若しくは管理の地位にある者 ◆
◆ 機密の事務を取り扱う者 ◆
◆ 監視又は断続的労働に従事する者 ◆
Ⅱ:法定休日労働時間
上記Ⅰでは「法定休日」につきご紹介させて頂きましたが、
ここでは、「法定休日」に労働をさせた場合の労働時間である「法定休日労働時間」につき、ご紹介させて頂きます。
なお、
下記1 におきましては、『「法定休日労働時間」の定義・内容 』をご紹介させて頂き、
下記2 におきましては、『「法定休日」の特定 』と『「法定休日労働時間」の把握 』につきご紹介させて頂き、
下記3 におきましては、会社が従業員に対して『「法定休日」に労働を行わせるための前提 』をご紹介させて頂くとともに、
下記4 におきましては、会社が従業員に「法定休日」に労働を行わせた場合に「支払うことが必要となる賃金」についてご紹介させて頂きます。
1、「法定休日労働時間」とは
上記Ⅰでご紹介させて頂きましたように、「労働基準法」におきましては、
・1週間に「1日の法定休日」
又は
・4週間に「4日の法定休日」
を与えることが必要となると規定していますが、
実務上におきましては、「法定休日」であっても労働することが必要となる場面があることから、
「労働基準法」におきましては、
「使用者と労働者との間で法定休日労働時間に対する協定」が存在する場合には、 例外的に「法定休日」に使用者が労働者を労働させることを許容しており、 |
この、例外的に許容される『「法定休日」における労働時間 』のことを「法定休日労働時間」といいます。 |
2、『「法定休日」の特定 』と『「法定休日労働時間」の把握 』
なお、上記Ⅰ-1(5)や(6)でご紹介させて頂きましたように、
「法定休日」につきましては、
「就業規則」等において『「法定休日」となる日や曜日等 』を事前に特定しておくこともできますし、
実際の勤務が行われた後に、
-
- (原則的制度を採用している場合には、)「1週間に1日の休日が付与されているか?」を確認し、
- (変形休日制を採用している場合には、)「4週間に4日の休日が付与されているか?」を確認し、
「(所定)休日」等のうちから事後的に『「法定休日」となる日 』を特定することもできます。
このため、「 法定休日労働時間 」につきましては、
「法定休日」が「就業規則」等により事前に特定されている場合には、
・「就業規則」等により「事前に特定されている法定休日」の が「 法定休日労働時間 」となりますが、 |
他方、「法定休日」が「就業規則」等により事前に特定されていない場合には、
・まず、「(所定)休日」等のうちから事後的に「法定休日」を特定し、 ・『 その特定された「法定休日」の「 暦日(0:00~24:00)に行われた労働時間 」』を |
なお、『「法定休日」の特定方法 』につきましては、複数のパターンが想定されるため、
以下におきましては、『 代表的なパターンにおける「法定休日の特定方法」』をご紹介させて頂きます。
1)「法定休日」が事前特定されている場合の『「法定休日労働時間」の把握 』
2)「法定休日」を事後特定する場合の『「法定休日労働時間」の把握 』(所定休日=法定休日)
3)「法定休日」を事後特定する場合の『「法定休日労働時間」の把握 』(所定休日≧法定休日)
1)「法定休日」が事前特定されている場合の『「法定休日労働時間」の把握 』
「法定休日」が「就業規則」等により事前に特定されている場合には、
当該『「(就業規則等に規定されている)法定休日」に労働した時間 』が「法定休日労働時間」となります。 |
なお、「法定休日」が「就業規則」等により事前に特定されている場合には、
『 当該「(事前に特定されている)法定休日」に労働された時間 』は、常に「法定休日労働時間」として取り扱うことが必要となり、 事後的に「法定休日以外の休日」があることにより『「1週間に1日の休日」又は「4週間に4日の休日」』が確保された場合であっても、上記の取り扱いが変更されることはありません。 |
ただし、
『 下記Ⅴ-1(2)でご紹介させて頂きます「振替休日」の手続 』をとり、
「就業規則等により事前に特定された法定休日」を変更することはできます。 |
例 示
2)「法定休日」を事後特定する場合の『「法定休日労働時間」の把握 』(所定休日=法定休日)
「就業規則」等で「法定休日」が事前に特定されていない場合には、
「(所定)休日」等から「法定休日」を事後的に特定することが必要となりますが、
原則的制度の下で、「(所定)休日」等が「1週間に1日」だけ与えられているような場合には、
また、変形休日制の下で、「(所定)休日」等が「4週間に4日」だけ与えられているような場合には、
|
3)「法定休日」を事後特定する場合の『「法定休日労働時間」の把握 』(所定休日≧法定休日)
上記2)では、「(所定)休日」がそのまま「法定休日」となる場合の『「法定休日」の特定方法 』をご紹介させて頂きましたが、
ここでは、「所定休日」が複数設定されているような場合における『「法定休日」の特定方法 』につき、以下(ⅰ)(ⅱ)に分けてご紹介させて頂きます。
ⅰ)「(所定)休日」が複数設定されており、事後的に「法定休日」が確保されている場合
「就業規則」等で「法定休日」が事前に特定されていない場合には、
「(所定)休日」等から「法定休日」を事後的に特定することが必要となりますが、
原則的制度の下で、「(所定)休日」等が「1週間に2日以上」与えられている場合で、
⇒「法定休日労働時間」となる労働時間は存在しないことになります。
また、変形休日制の下で、「(所定)休日」等が「4週間に5日以上」与えられている場合で、
⇒「法定休日労働時間」となる労働時間は存在しないことになります。 |
ⅱ)「(所定)休日」が複数設定されているが、事後的に「法定休日」が確保されていない場合
◆ 『「法定休日」の特定 』に関する問題点 ◆
「就業規則」等で「法定休日」が事前に特定されていない場合には、
「(所定)休日」等から「法定休日」を事後的に特定することが必要となりますが、
原則的制度の下で、「(所定)休日」等が「1週間に2日以上」与えられているが、
⇒ いずれの「(所定)休日労働」等を「法定休日労働」とするのか?
また、変形休日制の下で、「(所定)休日」等が「4週間に5日以上」与えられているが、
⇒ いずれの「(所定)休日労働」等を「法定休日労働」とするのか? が問題となります。 |
◆ 上記の場合における『「法定休日」の特定』に関する取扱い ◆
上記のような問題点に対して、
『 厚生労働省労働基準局作成の「改正労働基準法に係る質疑応答(平成21.10.5)のQ10」』におきましては、
「法定休日」が特定されておらず、かつ、日曜日及び土曜日を休日とする週休2日制を採用しているような場合で、
「法定休日」が特定されておらず、かつ、4週4日の休日制を採用するしているような場合で、
|
と規定していることから、
「原則的制度」の下におきましては、
「このような場面」では、 「2日以上の(所定)休日」等のうち、「その週の後順に位置する(所定)休日」を「法定休日」として特定し、 『「その週の後順に位置する(所定)休日」における労働時間 』を「法定休日労働時間」として取扱うことが必要となります。 |
また、「変形休日制」の下におきましては、
「このような場面」では、 『「4週4日の休日」が確保されなくなる「(所定)休日」以後の「(所定)休日」』を「法定休日」として特定し、 『「4週4日の休日」が確保されなくなる「(所定)休日」以後の「(所定)休日」における労働時間」』を「法定休日労働時間」として取扱うことが必要となります。 |
3、「法定休日労働」を行うための前提
上記1でも簡単にご紹介させて頂きましたが、
使用者が労働者に法定休日労働を行わせるためには、その前提として、
使用者と労働者との間において「法定休日に行うことができる労働時間」等についての書面協定を締結し、 |
かつ
当該書面を「管轄の労働基準監督署」に届け出ることが必要となります。 |
従いまして、(従業員等の)労働者に対して「法定休日労働」を行わせる場合には、
事前に当該「書面協定(サブロク協定)」を締結し、当該「書面」を「管轄の労働基準監督署」に届け出ることが必要となりますので、 |
この点につきましては、十分ご留意頂きますようお願い致します。
◆ 時間外・休日労働に関する協定届 ~36協定 (サブロク協定)~ ◆
4、「法定休日労働時間」に対する「法定手当」の計算
「労働基準法 37条」におきましては、「法定休日労働」が「通常の労働とは異なる特別な労働」となることを考慮して、
「法定休日に行われた労働」に対しては、
「通常の賃金率よりも高い賃金率(割増賃金率)」をもって賃金を支払うことを要求しています。 |
このため、従業員に対して「法定休日労働」をさせた場合には、
当該従業員に対して、「労働基準法で定められた(通常よりも高い)割増賃金率」で計算した「法定休日労働手当」を支給することが必要となります。 |
◆ 41条適用者に対する「法定休日労働手当」の計算・支給につきまして ◆
Ⅲ:「法定休日労働時間」の具体的な把握・計算方法
ここでは、『「法定休日労働時間」を把握・計算するための具体的な方法 』をご紹介させて頂きます。
1、「法定休日労働時間」の把握・計算の概要
「法定休日労働時間」につきましては、
「法定休日」が「就業規則」等により、事前に特定されている場合には、
「就業規則」等により、「事前に特定されている法定休日」の「暦日(0:00~24:00)に行われた労働時間 」 が「法定休日労働時間」となり、 |
「法定休日」が「就業規則」等により、事前に特定されていない場合には、
『「1週間に1日」又は「4週間に4日」として事後的に特定された「法定休日」』の「暦日(0:00~24:00)に行われた労働時間 」が「法定休日労働時間」となります。 |
従いまして、『「法定休日労働時間」の把握・計算 』につきましては、
① まず事前に 又は 事後的に「法定休日」を特定し、 |
② 上記①により『「法定休日」として特定された日 』の「暦日(0:00~24:00)」における「 労働時間 」を把握・計算することで、 「法定休日労働時間」を把握・計算することになります。※ |
※ 「法定休日労働時間」につきましては、「法定時間外労働時間」等の影響を受けることなく、それ単独で把握・計算することが可能なものとなります。
2、「法定休日労働時間」の具体的な把握・計算方法
上記1でご紹介させて頂きましたことを踏まえると、『「法定休日労働時間」の把握・計算 』は、具体的には以下のようなステップにより把握することとなります。
Step1:『「法定休日」となる日 』の特定
まず最初に、
「勤怠管理簿」等で、『「法定休日」となる日 』を特定することが必要となります。 |
この点、「就業規則」等により「法定休日」が事前に特定されている場合には、
この『「法定休日」とすべき日 』も事前に決定されていることから、事前にかつ簡単に『「法定休日」となる日」』を特定することができますが、 |
他方、「法定休日」が事前に特定されない場合には、
給与計算の都度・個々の従業員ごとに、勤務状況等を確認し、事後的に『「法定休日」となる日 』を特定する作業を行うことが必要となります。 ⇒このため、「特定作業」は、従業員数が多くなれば煩雑になり、また「特定作業」で誤りが発生する可能性も高くなります。 |
Step2:「法定休日労働時間」の把握・計算
上記Step1での『「法定休日」となる日 』の特定がなされた後、
『「法定休日」となる日 』に労働が行われている場合には、 「法定休日」の「暦日(0:00~24:00)」に行われた労働時間※を把握・集計して、「法定休日労働時間」を把握・計算します。 |
《 ※:「労働時間」の計算方法 》
「労働時間」は、『 「勤務時間」 から 「休憩時間」 を控除して 』計算します。 |
◆ 8時間を超える場合の「法定休日労働時間」の取扱い ◆
Ⅳ:「法定休日労働時間」の把握・計算例示
ここでは、『「法定休日労働時間」の把握・計算 』につき、例示を使ってご紹介させて頂きます。
なお、以下におきましては、
1、「法定休日」が事前に特定されている場合の「把握・計算例示」
2、「法定休日」が事前に特定されていない場合の「把握・計算例示」
に分けて、ご紹介させて頂きます。
1、「法定休日」が事前に特定されている場合
以下では、『「「法定休日」が事前に特定されている場合の計算例示を7つ 』ご紹介させて頂きます。
例示1 :(原則的制度)休日労働が1日のケース①
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「日曜日、土曜日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」で、「法定休日は、日曜日を起算日とする週の土曜日」とされている。
・「日曜日」には、勤務を行っていない。
・「土曜日」において午前9:00から午後18:00まで(途中12:00~13:00まで休憩時間)労働した。
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
例示2 :(原則的制度)休日労働が1日のケース②
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「土曜日、日曜日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」で、「法定休日は土曜日を起算日とする週の日曜日」とされている。
・「土曜日」において午前9:00から午後18:00まで(途中12:00~13:00まで休憩時間)労働した。
・「日曜日」には、勤務を行っていない。
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
例示3 :(原則的制度)休日労働が2日 & 労働時間が暦日内で終了するケース①
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「日曜日、土曜日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」で、「法定休日は日曜日を起算日とする週の土曜日」とされている。
・「日曜日」において午前9:00から午後19:00まで(途中12:00~13:00まで休憩時間)労働した。
・「土曜日」において午前9:00から午後18:00まで(途中12:00~13:00まで休憩時間)労働した。
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
例示4 :(原則的制度)休日労働が2日 & 労働時間が暦日内で終了するケース②
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「土曜日、日曜日、祝日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」で、「法定休日は毎週土曜日を起算日とする1週間の最後の1日の休日とする」規定がなされている。
・「土曜日」において午前9:00から午後18:00まで(途中12:00~13:00まで休憩時間)労働した。
・「日曜日」には、勤務を行っていない。
・「水曜日」が祝日であり、「水曜日」において午前9:00から午後19:00まで(途中12:00~13:00まで休憩時間)労働した。
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
例示5 :(原則的制度)労働時間が2暦日に及ぶケース①
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「土曜日、日曜日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」で、「法定休日は土曜日を起算日とする週の日曜日」とされている。
・「土曜日」の午後17:00から「日曜日」の午前2:00まで(途中23:00~24:00まで休憩時間)労働した。
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
例示6 :(原則的制度)労働時間が2暦日に及ぶケース②
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「土曜日、日曜日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」で、「法定休日は毎週日曜日を起算日とする1週間の最後の1日の休日とする」規定がなされている。
・「土曜日」の午後17:00から「日曜日」の午前2:00まで(途中23:00~24:00まで休憩時間)労働した。
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
例示7 :「変形休日制」を採用しているケース
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「土曜日、日曜日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」で、「法定休日は毎年1月の第1土曜を起算日とする4週間の最後の4日の休日とする」規定がなされている。
・「法定休日」を特定する4週間の「休日」「休日労働」は以下のものである。
特定週 | 1週目 | 2週目 | 3週目 | 4週目 | ||||
休日 | 土曜日 | 日曜日 | 土曜日 | 日曜日 | 土曜日 | 日曜日 | 土曜日 | 日曜日 |
労働時間 | 2時間 | 3時間 | 3時間 | 2時間 | 2時間 | - | - | - |
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
2、「法定休日」が事前に特定されていない場合
以下では、『「「法定休日」が事前に特定されていない場合の計算例示を5つ 』ご紹介させて頂きます。
例示1 :(原則的制度)休日労働が1日のケース
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「日曜日、土曜日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」で、「法定休日は、1週間に1日付与する」とだけ規定されている。
・「日曜日」には、勤務を行っていない。
・「土曜日」において午前9:00から午後18:00まで(途中12:00~13:00まで休憩時間)労働した。
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
例示2 :(原則的制度)休日労働が2日のケース① ~「起算日」の規定はある場合~
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「土曜日、日曜日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」で、「法定休日は、毎週土曜日を起算日とし、1週間に1日付与する」とだけ規定されている。
・「土曜日」において午前9:00から午後18:00まで(途中12:00~13:00まで休憩時間)労働した。
・「日曜日」において午前9:00から午後19:00まで(途中12:00~13:00まで休憩時間)労働した。
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
例示3 :(原則的制度)休日労働が2日のケース② ~「法定休日」の規定がない場合~
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「土曜日、日曜日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」等において「法定休日」の規定はなされていない。
・「日曜日」において午前9:00から午後19:00まで(途中12:00~13:00まで休憩時間)労働した。
・「土曜日」において午前9:00から午後18:00まで(途中12:00~13:00まで休憩時間)労働した。
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
例示4 :(変形休日制)4週4日が確保されるケース
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「土曜日、日曜日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」で、「法定休日は、毎年1月の第1土曜を起算日とする4週間ごとに4日付与する」とだけ規定されている。
・「法定休日」を特定する4週間の「休日」「休日労働」は以下のものである。
特定週 | 1週目 | 2週目 | 3週目 | 4週目 | ||||
休日 | 土曜日 | 日曜日 | 土曜日 | 日曜日 | 土曜日 | 日曜日 | 土曜日 | 日曜日 |
労働時間 | 2時間 | - | - | 2時間 | 2時間 | 2時間 | - | - |
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
例示5 :(変形休日制)4週4日が確保されないケース
◆ 設 例 ◆
・「就業規則」で、「土曜日、日曜日を休日とする」規定がなされている。
・「就業規則」で、「法定休日は、毎年1月の第1土曜を起算日とする4週間ごとに4日付与する」とだけ規定されている。
・「法定休日」を特定する4週間の「休日」「休日労働」は以下のものである。
特定週 | 1週目 | 2週目 | 3週目 | 4週目 | ||||
休日 | 土曜日 | 日曜日 | 土曜日 | 日曜日 | 土曜日 | 日曜日 | 土曜日 | 日曜日 |
労働時間 | 2時間 | - | - | 2時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 | - |
◆ 「法定休日労働時間」の特定&計算 ◆
『「法定休日」の特定 』につきましての私見
・「法定休日」を事前に特定していない場合には、『「法定休日」に係る労働時間の把握・計算 』を煩雑・不安定にし、
・かつ、労使間での『「法定休日」に係る労働時間の認識 』についての齟齬を招く恐れもあると考えます。
このため、私見となりますが、「法定休日」につきましては、就業規則等で「事前に特定しておく」ことが良いのではないかと考えます。
なお、『「法定休日」を事前に特定する 』ことは、会社にとって「割増賃金の支払」等の面でデメリットがあるとの見解もありますが、
(すなわち、「上記1の例示1」と「上記2の例示1」を比較した場合にデメリットが生じるという見解がありますが、)
この点につきましては、下記Ⅴ-1(2)でご紹介させて頂く『「振替休日」制度 』を適切に利用することにより回避できる場合が多いのではないかと考えます。
Ⅴ:「法定休日労働」と「代替休日(代休)制度」「振替休日制度」
「法定休日」に労働を行った場合には、よく「代替休暇(代休)」がとられたり、「振替休日」がとられたりしますが、
『「代替休暇(代休)」がとられた場合 』と『「振替休日」がとられた場合 』では、「法定休日労働」の取り扱いが異なることとなります。
このため、以下におきましては、
- 「代替休暇(代休)」「振替休日」の意味・要件等をご紹介させて頂くとともに、
- 「代替休暇(代休)」「振替休日」がとられた場合における「法定休日労働」の取り扱いにつきご紹介させて頂きます。
1、「代替休暇(代休)」「振替休日」の意味と要件
1)「代替休暇(代休)」の意味と要件
◆ 「代替休暇(代休)」とは ◆
従業員が「休日労働」を行ったり、「時間外労働」を行った場合に、 その代償として、事後的に「勤務日とされている日の労働」や「勤務時間とされている時間の労働」を免除して、「休暇」を与えることをいいます。 |
◆ 「代替休暇(代休)」の要件 ◆
「代替休暇(代休)」につきましては、「休日労働」「時間外労働」が行われた後、事後的に「勤務日である日の労働」や「勤務時間内の労働」を免除するものであるため、
「代替休暇(代休)」をとること・付与することについて特段の要件は存在しません。
ただし、「代替休暇」制度を設ける場合には、
「就業規則」等により、 「振替休暇制度」を採用している旨 「振替休暇」を付与する条件 等 につきましては、規定しておくことが必要となります。 |
2)「振替休日」の意味と要件
◆ 「振替休日」とは ◆
従業員が「休日」に労働する必要がある場合等に 事前に「勤務日とされていた日」と「休日とされていた日」を振り替えることをいいます。 |
◆ 「振替休日」の要件 ◆
「振替休日」につきましては、事前に「勤務日」と「休日」を振り替えることを指示することが必要となるため、
「就業規則」等において、 「代替休日制度」を採用している旨 「代替休日」を付与する事由・手続 等 を規定しておくとともに、 |
実際に「振替休日」を行う場合には、
・振り替えられる「休日」と「勤務日」を特定して、 ・少なくとも「振替日の前日」※までに対象となる従業員に予告することが必要となります。 |
※ 「休日」を繰り上げ振替する場合には、『「振替後に休日となる日」の前日 』までに予告することが必要となります。
「休日」を繰り下げ振替する場合には、『「振替後に勤務日となる日」の前日 』までに予告することが必要となります。
2、「代替休暇(代休)」「振替休日」と「法定休日労働時間」の取り扱い
1)「代替休暇(代休)」がとられた場合の「法定休日労働時間」の取り扱い
「法定休日」に労働が行われた後に「代替休暇(代休)」がとられた場合には、
『「法定休日」における労働 』はすでに行われていることから、 事後的に「代替休暇(代休)」がとられても、『「法定休日」に労働が行われた 』という事実がなくなるわけではありません。 |
このため、
既に行われた「法定休日労働時間」を、「法定休日労働時間」として把握・計算することが必要となり、 当該「法定休日労働時間」に対する「法定休日の割増賃金」を支払うことが必要となります。 |
2)「振替休日」がとられた場合の「法定休日労働時間」の取り扱い
「法定休日」に労働が行われる前に「その休日」が振替られた場合には、
「労働」が行われる前に「当初の法定休日」は既に「勤務日」に振替られていることから、 『「当初の法定休日」に行われる労働 』は、 「 法定休日労働 」ではなく、 「 通常の勤務日の労働 」となります。 |
このため、
「法定休日労働」が振替られ、かつ振替後においても「法定休日」が適切に確保されている場合には、 「当初の法定休日における労働」から「法定休日労働時間」が把握・計算されることはなく、 「当初の法定休日における労働時間」に対して「法定休日の割増賃金」を支払うことは不要となります。 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは『「法定休日」及び「法定休日労働時間」に係る各種内容 』や『「法定休日労働時間」の把握・計算方法 』をご紹介させて頂いております。
「法定休日」につきまして
・「法定休日」につきましては、まず最初に「原則的制度」と「変形休日制」という「2種類の制度」があることをご確認下さい。
・また「法定休日」につきましては、『 事前に 又は 事後的に「法定休日」を特定する 』という作業が必要となることをご確認下さい。
・さらに、「法定休日」につきましては、「法定休日の適用外とすることができる規定」があることをご確認下さい。
ただし、「法定休日の適用を除外する規定」につきましては、「労働者保護の重大な例外規定」となるため、その適用におきましては慎重に行うようにして下さい。
「法定休日労働時間」につきまして
「法定休日における労働」は、「労働基準法」上では「例外的に許容された労働である」ことから、
- 「法定休日に労働させる」ためには、その前提として「36協定」が締結されていることが必要となり、
- 「法定休日に労働がなされた」場合には、「労働基準法上の割増賃金の支払い」が必要となりますので、
これらの点につきましては、今一度十分ご確認頂ますようお願い致します。
『「法定休日労働時間」の把握・計算方法 』につきまして
『「法定休日」を特定する作業 』につきまして
「法定休日労働時間」を把握・計算するためには、
まず最初に、『「法定休日」を特定する作業 』を行うことが必要となり、
この『「法定休日」を特定する作業 』は、「法定休日労働時間の把握・計算」において非常に重要な作業となります。
⇒なお、「法定休日」が事前に特定されていない場合には、従業員数が多くなれば『「法定休日」の特定作業 』が煩雑化することが想定されますので、この点につきましてはご留意頂ますようお願いいたします。
⇒また、「変形休日制」を採用する場合にも、端週や端日の調整を行う規定を設けない限り、『「法定休日」の特定作業 』が煩雑化することが想定されますので、この点につきましてはご留意頂ますようお願いいたします。
「法定休日労働時間」の測定単位につきまして
「法定休日労働時間」を把握・計算する場合には、
常に『「法定休日」として特定された日 』の「暦日(0:00~24:00)」が測定単位となりますので、この点につきましては、今一度十分ご確認頂ますようお願い致します。
※ 『「法定休日労働時間」の把握・計算』 につきましては、
「法定休日労働手当」の計算に必須のものとなりますので、
上記Ⅲ・Ⅳでご紹介させて頂きました事項につきましては、今一度十分ご確認頂き、適切に「法定休日労働時間」を把握・計算して頂ますようお願い致します。
「代替休暇(代休)」と「振替休日」につきまして
『「代替休暇(代休)」がとられたのか 』と『「振替休日」がとられたのか 』により、『「法定休日労働」の取り扱い 』が異なることとなりますので、
「代替休暇(代休)」と「振替休日」との違いは、十分ご確認頂ますようお願いいたします。
なお「振替休日」は、当該制度を有効的に利用すれば、会社にとってもメリットが大きいものとなると考えますので、
「振替休日」制度につきましては、上記Ⅴでご紹介させて頂きました内容等を今一度ご確認頂ますようお願い致します。