ここでは、『「法定手当(「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」)」の計算方法 』につき、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
▶ なお、ここでご紹介させて頂きます内容は、『「法定手当(割増賃金)」の概要 』でご紹介させて頂きました内容のうち、
特に『「法定手当」の計算方法 』に絞ったものとなっております。
▶ 「当該ページ」でご紹介させて頂きます内容につきまして
◆ 「給与の計算・支給形態」からの『「法定手当計算」の区分 』につきまして ◆
『「法定手当」の計算方法 』は、
『 会社が採用する「給与の計算・支給形態」』が「時間給制(時給制、日給制、週給制、月給制、年俸制)」であるか 『 会社が採用する「給与の計算・支給形態」』が「歩合給制(出来高給制、請負制、成果給制等)」であるか によってその「計算方法」が若干異なります。 |
このため当該ページにおきましては、
Ⅰ:「時間給制」を採用している場合の『「法定手当」の計算方法 』
Ⅱ:「歩合給制」を採用している場合の『「法定手当」の計算方法 』
Ⅲ:「時間給制」及び「歩合給制」を併用している場合の『「法定手当」の計算方法 』
の3区分に分けて『「法定手当」の計算方法 』をご紹介させて頂きます。
◆ 『「法定手当」の計算方法 』と『「法定手当」の種類 』につきまして ◆
「労働基準法」によって規定されている「法定手当」には、
「法定時間外労働手当(残業手当)」 「法定休日労働手当」 「深夜労働手当」 の「3種類の法定手当」があります。 |
このため、以下Ⅰ・Ⅱでご紹介させて頂きます『「法定手当(割増賃金)」の計算式 』につきましては、
この「3種類の法定手当ごとの計算方法」をご紹介させて頂きます。
◆ 『「法定手当」の計算要素 』につきまして ◆
「各種の法定手当」を計算するためには、その前提として、
「1時間あたりの賃金額」 「法定時間外労働に係る割増賃金率」「法定休日労働に係る割増賃金率」「深夜労働に係る割増賃金率」 「法定時間外の労働時間」「法定休日の労働時間」「深夜時間帯の労働時間」 という「3つの計算要素」を把握・計算しておくことが必要となります。 |
このため、以下Ⅰ・Ⅱでのご紹介におきましては、
この『「3つの計算要素」の「概要」』につきましても併せてご紹介させて頂きます。
◆ 「法定手当(割増賃金)の計算」における端数処理 ◆
「法定手当(割増賃金)」を計算する場合には、様々な計算段階において「除算」が行われることから、様々な計算段階において「円未満の端数」が生じることや 『「各種の労働時間」の集計結果 』において、「1時間未満の端数」が生じることが多くありますが、 当該『「円未満の端数」や「1時間未満の端数」の処理 』につきましても、労働者保護の観点から、『「その処理方法」に対する「取扱規定」』が定められています。 |
このため、以下Ⅰ・Ⅱでのご紹介におきましては、
- 『 これらが規定されている「厚生労働省の通達」の内容 』をご紹介させて頂くとともに、
- 『「円未満の端数」や「1時間未満の端数」に係る処理方法 』につきましても併せてご紹介させて頂きます。
◆ 『「法定手当(割増賃金)」の具体的な計算事例 』のご紹介 ◆
『「法定手当」の計算方法 』につきましては、文言によるご紹介のみでは、具体的な計算イメージがつきにくい面がございますので、
以下Ⅰ~Ⅲでのご紹介に当たりましては、それぞれのご紹介の最後に『「簡単な設例」を用いた「法定手当の具体的な計算例示」』をご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「時間給制」を採用している場合の『「法定手当」の計算方法 』
ここでは、「時間給制」を採用している場合における『「法定手当」の計算方法 』として、
をご紹介させて頂きます。
1、「各種 法定手当」の計算式
「法定時間外労働手当(残業手当)」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」を支給する場合には、
『「労働基準法 37条 1項、4項」に規定されている「計算式」』に基づいて「それぞれの法定手当の金額」を計算することが必要となりますが、
この場合における『「それぞれの法定手当」の計算方法 』は、以下のものとなります。
◆ 「法定時間外労働手当」の計算方法 ◆
「1時間あたりの賃金額」 × ( 1 + 「 法定時間外労働の割増賃金率(0.25以上)」) ※ × 「法定時間外の労働時間」 |
◆ 「法定休日労働手当」の計算方法 ◆
「1時間あたりの賃金額」 × ( 1 + 「 法定休日労働の割増賃金率(0.35以上)」) ※ × 「法定休日の労働時間」 |
◆ 「深夜労働手当」の計算方法 ◆
「1時間あたりの賃金額」 × 「 深夜労働の割増賃金率(0.25以上)」 ※ × 「深夜時間帯の労働時間」 |
▶ 「法定時間外労働手当・法定休日労働手当」と「深夜労働手当」の計算方法の違い(上記※部分の違い)
2、「法定手当」の計算要素
『「時間給制」が採用されている場合の「法定手当」の計算式 』につきましては、上記1でご紹介させて頂きましたようなものとなることから、
「法定手当(割増賃金)」を算定するためには、
「1時間あたりの賃金額」 「法定時間外労働に係る割増賃金率」「法定休日労働に係る割増賃金率」「深夜労働に係る割増賃金率」 「法定時間外の労働時間」「法定休日の労働時間」「深夜時間帯の労働時間」 という「3つの計算要素」を把握・計算しておくことが必要となります。 |
このため、ここでは、「 この3つの計算要素の概要 」を以下ご紹介させて頂きます。
1)「1時間あたりの賃金額」につきまして
「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」を算定するためには、その計算要素となる「1時間あたりの賃金額」を算定することが必要となりますが、
この「1時間あたりの賃金額」につきましては、
【「時給制」を採用している場合】には、 「時給金額」
【「日給制」を採用している場合】には、 『 法定手当の計算対象とすべき「日給額」』 ÷ 「1日の所定労働時間」
【「週給制」を採用している場合】には、 『 法定手当の計算対象とすべき「週給額」』 ÷ 「1週間の(平均)所定労働時間」
【「月給制」を採用している場合】には、 『 法定手当の計算対象とすべき「月給額」』 ÷ 「1ヶ月間の(平均)所定労働時間」
【「年俸制」を採用している場合】には、 『 法定手当の計算対象とすべき「年俸額」』 ÷ 「1年間の所定労働時間」 |
という計算式により算定することが必要となります。( 労働基準法施行規則19条1項1号~5号 )
▶ なお、『「1時間あたりの賃金額」の計算方法 』につきましては、別途『 法定手当(割増賃金)の計算基礎となる「1時間あたりの賃金額」』というページで、より詳しくご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、当該リンクページをご覧いただきますようお願い致します。
2)「各種法定手当に係る割増賃金率」につきまして
「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」を算定するためには、
その計算要素となる「法定時間外労働に係る割増賃金率」「法定休日労働に係る割増賃金率」「深夜労働に係る割増賃金率」を「就業規則、賃金計算規定」等により事前に規定しておくことが必要となりますが、
『「就業規則、賃金計算規定」等に規定する「法定手当に係る割増賃金率」』につきましては、以下の『「法定割増賃金率」以上の割増賃金率 』で決定しておくことが必要となります。
(「労働基準法37条1項」及び「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」)
法定割増率 | ||
法定時間外労働 | 月60時間以内部分 | 0.25 |
月60時間超部分 | 0.50 | |
法定休日労働 | 0.35 | |
深夜時間帯労働 | 0.25 |
▶ なお、「法定割増賃金率」 につきましては、別途『「法定手当(割増賃金)」に係る「割増賃金率」』というページで、より詳しくご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、当該リンクページをご覧いただきますようお願い致します。
3)『「各種の労働時間」の把握 』につきまして
「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」を算定するためには、
その計算要素となる「法定時間外の労働時間」「法定休日の労働時間」「深夜時間帯の労働時間」を「勤怠管理」を行うことにより把握・計算することが必要となりますが、
この「各種の労働時間」を把握するためには、
① まず、従業員ごとに「(日々の)始業時刻、終業時刻」「(日々の)休憩時間」等の「勤怠状況」を 「勤怠管理簿」等により記録・管理し、 |
② 上記①で記録・管理された「勤怠管理簿」に基づいて、
|
▶ なお、『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の把握・計算方法 』につきましては、別途『 「法定手当」の計算 のための『「各種労働時間」の把握 』』というページで、より詳しくご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、当該リンクページをご覧いただきますようお願い致します。
3、「法定手当の計算」における端数処理
1)「法定手当の計算過程・計算結果」における端数処理
「法定手当(割増賃金)」を計算する場合には、様々な計算段階において「円未満の端数」が生じることが多くありますが、
当該「円未満の端数」につきましては、厚生労働省から公表されている「基発150号(S63.3.14)」にその処理方法が示されています。
このため、ここでは、
- 当該『「基発150号(S63.3.14)」の規定内容 』をご紹介させて頂くとともに、
- 『「法定手当(割増賃金)」の計算過程・計算結果で生じる「円未満の端数の処理方法」』をご紹介させて頂きます。
◆ 「基発150号(S63.3.14)」の規定 ◆
「基発150号(S63.3.14)」には、
1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、 1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、 |
と規定されています。
◆ 『「法定手当」の計算過程・計算結果 』で生じる「円未満の端数の処理方法」 ◆
「基発150号(S63.3.14)」では上記のように規定されていることから、
「法定手当(割増賃金)」の計算過程において 「1時間あたりの賃金額」を計算した結果「円未満の端数」が生じた場合や 『「1時間あたりの賃金額」×「割増賃金率」』を計算した結果「円未満の端数」が生じた場合には、 「円未満の端数」を四捨五入して処理することができ、
1ヶ月単位で「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」を計算した結果、「円未満の端数」が生じた場合には、 各手当の金額ごとに生じた「円未満の端数」を四捨五入して処理することができます。 |
なお、『「法定手当(割増賃金)」の計算過程・計算結果で生じる「円未満の端数」』につき、
「1円未満の端数」をすべて切り上げるような処理を行うことは、 労働者にとって有利な処理となることから当然に認められますが、 |
他方、「1円未満の端数」をすべて切り捨てるような処理を行うことは、 労働者にとって常に不利な処理となることから認められませんので、 |
この点につきましてはご留意頂ますようお願い致します。
2)『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の集計時間 』に係る端数処理
上記1)におきましては、『「法定手当(割増賃金)」の計算過程・計算結果で生じる「円未満の端数処理」』につきご紹介させて頂きましたが、
「基発150号(S63.3.14)」には、『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の集計時間に係る端数処理 』についても記載されています。
このため、ここでは、
- 当該「基発150号(S63.3.14)」で定められている『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の集計時間に係る端数処理の規定 』をご紹介させて頂くとともに、
- 当該『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の集計時間に係る端数処理の内容 』をご紹介させて頂きます。
◆ 「基発150号(S63.3.14)」の規定 ◆
「基発150号(S63.3.14)」には、
1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、 「30分未満の端数」を切り捨て、「それ以上」を1時間に切り上げることができる。 |
と規定されています。
◆ 『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の集計時間 』に係る端数処理 ◆
「基発150号(S63.3.14)」では上記のように規定されていることから、
「1ヶ月単位で集計した法定時間外労働時間」「1ヶ月単位で集計した法定休日労働時間」「1ヶ月単位で集計した深夜労働時間」に「1時間未満の端数」がある場合には、 当該「1時間未満の端数」を四捨五入して処理することができます。 |
なお、
「1ヶ月単位の法定時間外労働時間、法定休日労働時間、深夜労働時間の集計金額」を端数処理せず、「集計時間」をそのまま使用して計算することや 「1ヶ月単位の法定時間外労働時間」「1ヶ月単位の法定休日労働時間」「1ヶ月単位の深夜労働時間」を集計した結果生じた「1時間未満の端数」をすべて切り上げて計算することは、 労働者にとって不利な処理とはならないことから当然に認められますが、 |
他方
「1ヶ月単位の法定時間外労働時間」「1ヶ月単位の法定休日労働時間」「1ヶ月単位の深夜労働時間」を集計した結果生じた「1時間未満の端数」をすべて切り捨てて計算することや、 「1日単位の法定時間外労働時間、法定休日労働時間、深夜労働時間における1時間未満の端数」を切り捨てて集計することは、 労働者にとって常に不利な処理となることから認められませんので、 |
この点につきましてはご留意頂ますようお願い致します。
4、「各種 法定手当」の計算例示
ここでは、以下におきまして、
- 「時給制」を採用している場合の『「各種法定手当」の計算例示 』
- 「日給制」を採用している場合の『「各種法定手当」の計算例示 』
- 「週給制」を採用している場合の『「各種法定手当」の計算例示 』
- 「月給制」を採用している場合の『「各種法定手当」の計算例示 』
- 「年給制」を採用している場合の『「各種法定手当」の計算例示 』
につき、「簡単な設例」を用いてご紹介させて頂きます。
1)「時給制」を採用している場合の『「各種法定手当」の計算例示 』
◆ 設 例 ◆
「時給制」を採用している従業員で、当該従業員の「時給が1,100円」「交通費が月額8,180円」である場合で、 (なお、「賃金計算規定」で「交通費」については、「法定手当(割増賃金)に含めない」旨の規定がある。) |
「賃金計算規定」により、「法定時間外労働の割増賃金率は0.25 」「法定休日藤堂の割増賃金率は0.35」「深夜労働の割増賃金率は0.25」と規定されている場合であり、 |
当該従業員に係る「給与計算対象期間(毎月21日から翌月20日)の勤怠管理の結果」、 「法定時間外労働時間は10時間」「法定休日労働時間は0時間」「深夜労働時間は12時間」である場合。 |
◆ 「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」の金額 ◆
2)「日給制」を採用している場合の『「各種法定手当」の計算例示 』
◆ 設 例 ◆
「日給制」を採用している従業員で、 ・当該従業員の「日給が9,000円」で、「交通費が月額4,250円」で、 ・当該従業員の「1日の所定労働時間が8時間」である場合で、 (なお、「賃金計算規定」で「交通費」については、「法定手当(割増賃金)に含めない」旨の規定がある。) |
「賃金計算規定」により、「法定時間外労働の割増賃金率は0.25 」「法定休日労働の割増賃金率は0.35」「深夜労働の割増賃金率は0.25」と規定されている場合であり、 |
当該従業員に係る「給与計算対象期間(毎月21日から翌月20日)の勤怠管理の結果」、 「法定時間外労働時間は12時間」「法定休日労働時間は5時間」「深夜労働時間は2時間」である場合。 |
◆ 「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」の金額 ◆
3)「週給制」を採用している場合の『「各種法定手当」の計算例示 』
◆ 設 例 1 ◆
「週給制」を採用している従業員で、 ・当該従業員の「週給が30,000円」で、「交通費が月額6,250円」で、 ・当該従業員の「1週間の所定労働時間が毎週一律20時間」である場合で、 (なお、「賃金計算規定」で「交通費」については、「法定手当(割増賃金)に含めない」旨の規定がある。) |
「賃金計算規定」により、「法定時間外労働の割増賃金率は0.25 」「法定休日労働の割増賃金率は0.35」「深夜労働の割増賃金率は0.25」と規定されている場合であり、 |
当該従業員に係る「給与計算対象期間(毎月1日から当月30日)の勤怠管理の結果」、 「法定時間外労働時間は4時間」「法定休日労働時間は3時間」「深夜労働時間は1時間」である場合。 |
◆ 「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」の金額 ◆
◆ 設 例 2 ◆
「週給制」を採用している従業員で、 ・当該従業員の「週給が30,000円」で、「交通費が月額6,250円」で、 ・当該従業員の「1週間の所定労働時間は毎週一律ではなく、4週間の所定労働時間が84時間」である場合で、 (なお、「賃金計算規定」で「交通費」については、「法定手当(割増賃金)に含めない」旨の規定がある。) |
「賃金計算規定」により、「法定時間外労働の割増賃金率は0.25 」「法定休日労働の割増賃金率は0.35」「深夜労働の割増賃金率は0.25」と規定されている場合であり、 |
当該従業員に係る「給与計算対象期間(毎月1日から当月30日)の勤怠管理の結果」、 「法定時間外労働時間は4時間」「法定休日労働時間は3時間」「深夜労働時間は1時間」である場合。 |
◆ 「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」の金額 ◆
4)「月給制」を採用している場合の『「各種法定手当」の計算例示 』
◆ 設 例 1 ◆
「月給制」を採用している従業員で、 ・当該従業員の月額の「基本給が300,000円」「資格手当が10,000円」「扶養手当が15,000円」「交通費が6,250円」で、 ・当該従業員の「1ヶ月間の所定労働時間は毎月一律ではなく、年間の所定労働時間が1,869時間」である場合で、 (なお、「賃金計算規定」で「扶養手当」「交通費」については、「法定手当(割増賃金)に含めない」旨の規定がある。) |
「賃金計算規定」により、「法定時間外労働の割増賃金率は0.25 」「法定休日労働の割増賃金率は0.35」「深夜労働の割増賃金率は0.25」と規定されている場合であり、 |
当該従業員に係る「給与計算対象期間(毎月21日から当月20日)の勤怠管理の結果」、 「法定時間外労働時間は21時間」「法定休日労働時間は5時間」「深夜労働時間は8時間」である場合。 |
◆ 「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」の金額 ◆
◆ 設 例 2 ◆
「月給制」を採用している従業員で、 ・当該従業員の月額の「基本給が290,000円」「主任手当が10,000円」「住宅手当が5,000円」「交通費が7,250円」で、 ・当該従業員の「1ヶ月間の所定労働時間が毎月一律152時間」である場合で、 (なお、「賃金計算規定」で「住宅手当」「交通費」については、「法定手当(割増賃金)に含めない」旨の規定がある。) |
「賃金計算規定」により、「法定時間外労働の割増賃金率は0.25 」「法定休日労働の割増賃金率は0.35」「深夜労働の割増賃金率は0.25」と規定されている場合であり、 |
当該従業員に係る「給与計算対象期間(毎月21日から当月20日)の勤怠管理の結果」、 「法定時間外労働時間は21時間」「法定休日労働時間は5時間」「深夜労働時間は8時間」である場合。 |
◆ 「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」の金額 ◆
5)「年俸制」を採用している場合の『「各種法定手当」の計算例示 』
◆ 設 例 ◆
「年俸制」を採用している従業員で、 ・当該従業員の「基本給が年額5,400,000円」「技術手当が年額120,000円」「交通費が月額8,900円」で、 ・当該従業員の「1年間の所定労働時間が1,869時間」である場合で、 (なお、「賃金計算規定」で「交通費」については、「法定手当(割増賃金)に含めない」旨の規定がある。) |
「賃金計算規定」により、「法定時間外労働の割増賃金率は0.25 」「法定休日労働の割増賃金率は0.35」「深夜労働の割増賃金率は0.25」と規定されている場合であり、 |
当該従業員に係る「給与計算対象期間(毎月21日から当月20日)の勤怠管理の結果」、 「法定時間外労働時間は21時間」「法定休日労働時間は5時間」「深夜労働時間は8時間」である場合。 |
◆ 「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」の金額 ◆
Ⅱ:「歩合給制」を採用している場合の『「法定手当」の計算方法 』
ここでは、「歩合給制」を採用している場合における『「法定手当」の計算方法 』として、
をご紹介させて頂きます。
1、「各種 法定手当」の計算式
「法定時間外労働手当(残業手当)」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」を支給する場合には、
『「労働基準法 37条 1項、4項」に規定されている「計算式」』に基づいて「それぞれの法定手当の金額」を計算することが必要となりますが、
この場合における『 「それぞれの法定手当」の計算方法 』は、以下のものとなります。
◆ 「法定時間外労働手当」の計算方法 ◆
「1時間あたりの賃金額」 × 「 法定時間外労働の割増賃金率(0.25以上)」 ※ × 「法定時間外の労働時間」 |
◆ 「法定休日労働手当」の計算方法 ◆
「1時間あたりの賃金額」 × 「 法定休日労働の割増賃金率(0.35以上)」 ※ × 「法定休日の労働時間」 |
◆ 「深夜労働手当」の計算方法 ◆
「1時間あたりの賃金額」 × 「 深夜労働の割増賃金率(0.25以上)」 × 「深夜時間帯の労働時間」 |
▶ 「時間給制」と「歩合給制」における計算方法の違い (上記※部分の違い)
2、「法定手当」の計算要素
『「歩合給制」が採用されている場合の「法定手当」の計算式 』につきましては、上記1でご紹介させて頂きましたようなものとなることから、
「法定手当(割増賃金)」を算定するためには、
「1時間あたりの賃金額」 「法定時間外労働に係る割増賃金率」「法定休日労働に係る割増賃金率」「深夜労働に係る割増賃金率」 「法定時間外の労働時間」「法定休日の労働時間」「深夜時間帯の労働時間」 という「3つの計算要素」を把握・計算しておくことが必要となります。 |
このため、ここでは、「 この3つの計算要素の概要 」を以下ご紹介させて頂きます。
1)「1時間あたりの賃金額」につきまして
「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」を算定するためには、その計算要素となる「1時間あたりの賃金額」を算定することが必要となりますが、
この「1時間あたりの賃金額」につきましては、
※「総労働時間数」とは 「総労働時間数」とは、「当該歩合労働に従事した時間数の総合計」であり、歩合労働に係る「法定時間外労働」や「休日労働時間数」も含んだすべての歩合労働時間数を言います。(ただし、休憩時間等は除きます。) |
という計算式により算定することが必要となります。( 労働基準法施行規則19条1項6号 )
▶ なお、『「1時間あたりの賃金額」の計算方法 』につきましては、別途『 法定手当(割増賃金)の計算基礎となる「1時間あたりの賃金額」』というページで、より詳しくご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、当該リンクページをご覧いただきますようお願い致します。
2)「各種法定手当に係る割増賃金率」につきまして (「時間給制」と同じ)
「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」を算定するためには、
その計算要素となる「法定時間外労働に係る割増賃金率」「法定休日労働に係る割増賃金率」「深夜労働に係る割増賃金率」を「就業規則、賃金計算規定」等により事前に規定しておくことが必要となりますが、
『「就業規則、賃金計算規定」等に規定する「法定手当に係る割増賃金率」』につきましては、以下の『「法定割増賃金率」以上の割増賃金率 』で決定しておくことが必要となります。
(「労働基準法37条1項」及び「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」)
法定割増率 | ||
法定時間外労働 | 月60時間以内部分 | 0.25 |
月60時間超部分 | 0.50 | |
法定休日労働 | 0.35 | |
深夜時間帯労働 | 0.25 |
▶ なお、「法定割増賃金率」 につきましては、別途『「法定手当(割増賃金)」に係る「割増賃金率」』というページで、より詳しくご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、当該リンクページをご覧いただきますようお願い致します。
3)『「各種の労働時間」の把握 』につきまして (「時間給制」と同じ)
「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」を算定するためには、
その計算要素となる「法定時間外の労働時間」「法定休日の労働時間」「深夜時間帯の労働時間」を「勤怠管理」を行うことにより把握・計算することが必要となりますが、
この「各種の労働時間」を把握するためには、
① まず、従業員ごとに「(日々の)始業時刻、終業時刻」「(日々の)休憩時間」等の「勤怠状況」を 「勤怠管理簿」等により記録・管理し、 |
② 上記①で記録・管理された「勤怠管理簿」に基づいて、
|
▶ なお、『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の把握・計算方法 』につきましては、別途『 「法定手当」の計算 のための『「各種労働時間」の把握 』』というページで、より詳しくご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、当該リンクページをご覧いただきますようお願い致します。
3、「法定手当の計算」における端数処理 (「時間給制」と同じ)
1)「法定手当の計算過程・計算結果」における端数処理
「法定手当(割増賃金)」を計算する場合には、様々な計算段階において「円未満の端数」が生じることが多くありますが、
当該「円未満の端数」につきましては、厚生労働省から公表されている「基発150号(S63.3.14)」にその処理方法が示されています。
このため、ここでは、
- 当該『「基発150号(S63.3.14)」の規定内容 』をご紹介させて頂くとともに、
- 『「法定手当(割増賃金)」の計算過程・計算結果で生じる「円未満の端数の処理方法」』をご紹介させて頂きます。
◆ 「基発150号(S63.3.14)」の規定 ◆
「基発150号(S63.3.14)」には、
1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、 1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、 |
と規定されています。
◆ 『「法定手当」の計算過程・計算結果 』で生じる「円未満の端数の処理方法」 ◆
「基発150号(S63.3.14)」では上記のように規定されていることから、
「法定手当(割増賃金)」の計算過程において 「1時間あたりの賃金額」を計算した結果「円未満の端数」が生じた場合や 『「1時間あたりの賃金額」×「割増賃金率」』を計算した結果「円未満の端数」が生じた場合には、 「円未満の端数」を四捨五入して処理することができ、
1ヶ月単位で「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」を計算した結果、「円未満の端数」が生じた場合には、 各手当の金額ごとに生じた「円未満の端数」を四捨五入して処理することができます。 |
なお、『「法定手当(割増賃金)」の計算過程・計算結果で生じる「円未満の端数」』につき、
「1円未満の端数」をすべて切り上げるような処理を行うことは、 労働者にとって有利な処理となることから当然に認められますが、 |
他方、「1円未満の端数」をすべて切り捨てるような処理を行うことは、 労働者にとって常に不利な処理となることから認められませんので、 |
この点につきましてはご留意頂ますようお願い致します。
2)『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の集計時間 』に係る端数処理
上記1)におきましては、『「法定手当(割増賃金)」の計算過程・計算結果で生じる「円未満の端数処理」』につきご紹介させて頂きましたが、
「基発150号(S63.3.14)」には、『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の集計時間に係る端数処理 』についても記載されています。
このため、ここでは、
- 当該「基発150号(S63.3.14)」で定められている『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の集計時間に係る端数処理の規定 』をご紹介させて頂くとともに、
- 当該『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の集計時間 に係る端数処理の内容 』をご紹介させて頂きます。
◆ 「基発150号(S63.3.14)」の規定 ◆
「基発150号(S63.3.14)」には、
1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、 「30分未満の端数」を切り捨て、「それ以上」を1時間に切り上げることができる。 |
と規定されています。
◆ 『「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」「深夜労働時間」の集計時間 』に係る端数処理 ◆
「基発150号(S63.3.14)」では上記のように規定されていることから、
「1ヶ月単位で集計した法定時間外労働時間」「1ヶ月単位で集計した法定休日労働時間」「1ヶ月単位で集計した深夜労働時間」に「1時間未満の端数」がある場合には、 当該「1時間未満の端数」を四捨五入して処理することができます。 |
なお、
「1ヶ月単位の法定時間外労働時間、法定休日労働時間、深夜労働時間の集計金額」を端数処理せず、「集計時間」をそのまま使用して計算することや 「1ヶ月単位の法定時間外労働時間」「1ヶ月単位の法定休日労働時間」「1ヶ月単位の深夜労働時間」を集計した結果生じた「1時間未満の端数」をすべて切り上げて計算することは、 労働者にとって不利な処理とはならないことから当然に認められますが、 |
他方
「1ヶ月単位の法定時間外労働時間」「1ヶ月単位の法定休日労働時間」「1ヶ月単位の深夜労働時間」を集計した結果生じた「1時間未満の端数」をすべて切り捨てて計算することや、 「1日単位の法定時間外労働時間、法定休日労働時間、深夜労働時間における1時間未満の端数」を切り捨てて集計することは、 労働者にとって常に不利な処理となることから認められませんので、 |
この点につきましてはご留意頂ますようお願い致します。
4、「歩合給制」における「各種 法定手当」の計算例示
◆ 設 例 ◆
「歩合制」を採用している従業員で、 当該従業員の「歩合給が360,000円」「交通費が月額7,250円」である場合で、 (なお、「賃金計算規定」で「交通費」については、「法定手当(割増賃金)に含めない」旨の規定がある。) |
「賃金計算規定」により、「法定時間外労働の割増賃金率は0.25 」「法定休日労働の割増賃金率は0.35」「深夜労働の割増賃金率は0.25」と規定されている場合であり、 |
当該従業員に係る「給与計算対象期間(毎月21日から当月20日)の勤怠管理の結果」、 ・当該歩合給の計算対象となる「総労働時間数は173時間」であり、 ・上記総労働時間に含まれる「法定時間外労働時間は8時間」「法定休日労働時間は5時間」「深夜労働時間は2時間」である場合。 |
◆ 「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」の金額 ◆
◆ 「完全歩合給制」に係る制限 ◆
上記の設例におきましては、ご紹介の便宜上「完全歩合給制」を採用している例示となりますが、
「歩合給制」を採用する場合には、「 労働基準法 27条 」において
出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。 |
と規定されていることから、
実務上におきましては、
「完全歩合給制」を採用することはできず、 「時間給制」に基づく「最低保障金額」が設定された「歩合給制」を採用することが必要となりますので、 |
この点につきましては、ご留意頂ますようお願い致します。
Ⅲ:「時間給制」と「歩合給制」を併用している場合の『「法定手当」の計算方法 』
ここでは、「時間給制」と「歩合給制」を併用している場合における『「法定手当」の計算方法 』として、
をご紹介させて頂きます。
1、「時間給制」と「歩合給制」を併用している場合の考え方
「時間給制」と「歩合給制」を併用している場合には、
基本的に 「時間給制」の部分につきましては、「上記Ⅰでご紹介させて頂きました計算方法」に基づいて計算し、 「歩合給制」の部分につきましては、「上記Ⅱでご紹介させて頂きました計算方法」に基づいて計算する というように『「時間給制」の「法定手当」』と『「歩合給制」の「法定手当」』を別々に計算し、
それらを合計して『 最終的な「法定手当」』を計算することが必要となります。 |
2、「時間給制」と「歩合給制」を併用する場合の「各種法定手当」の計算例示
◆ 設 例 ◆
「月給制」と「歩合給制」を採用している従業員で、
【 月給部分につきましては 】
【歩合給部分につきましては】 |
「賃金計算規定」により、「法定時間外労働の割増賃金率は0.25 」「法定休日労働の割増賃金率は0.35」「深夜労働の割増賃金率は0.25」と規定されている場合であり、 |
当該従業員に係る「給与計算対象期間(毎月21日から当月20日)の勤怠管理の結果」、 ・ 当該期間における「総労働時間が168時間」であり、 ・「法定時間外労働時間は8時間」「法定休日労働時間は5時間」「深夜労働時間は2時間」である場合。 |
◆ 「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」の金額 ◆
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『「法定手当(「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」)」の計算方法 』を
「時間給制を採用している場合」「歩合給制を採用している場合」「時間給制・歩合給制を併用している場合」に分けてご紹介させて頂いております。
『「法定手当(割増賃金)」の計算方法 』につきまして
「本文Ⅰ-1、Ⅱ-1」でご紹介させて頂きましたように、
『「時間給制」を採用している場合 』と『「歩合給制」を採用している場合 』では、
『「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」の計算式 』が若干異なってきますので、
『「法定手当(割増賃金)の計算 』を行う場合には、
従業員に対して採用している「給与の計算・支給形態」をご確認頂いた上で、「法定手当の金額」を計算して頂ますようお願い致します。
また、「時間給制」と「歩合給制」を併用しているような場合には、
「本文Ⅲ-1」でご紹介させて頂きましたように、
『「時間給」に係る「法定手当」』と『「歩合給」に係る「法定手当」』を別々に計算することが必要となりますので、このような場合には『「法定手当」の計算作業 』が少々煩雑となりますので、この点につきましてはご留意頂ますようお願い致します。
『「法定手当」の計算要素 』の把握・計算につきまして
本文Ⅰ-2(1)、Ⅱ-2(1)でご紹介させて頂いております『「 法定手当の計算要素 」のご紹介 』は、あくまで『「概要」のご紹介 』となります。
この点、実務上『「法定手当」の計算要素 』を把握・計算するためには、「もう少し詳しい内容の理解」が必要となりますので、
これにつきましては、必要に応じて、本文でご紹介させて頂いております「各リンクページ」を併せてご確認頂ますようお願い致します。