ここでは、『「法定手当(割増賃金)」に係る「割増賃金率」』について、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。

 

 

 

▶ 「割増賃金率」の理解の必要性

アクセント三角(小:背景透明) 会社におきましては、従業員が「法定時間外の労働を行った場合」「法定休日に労働を行った場合」「深夜時間帯に労働を行った場合」には、
労働基準法」に基づいて「法定手当(「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」)」を計算することが必要となり、

この「法定手当(割増賃金)」につきましては、

アクセント矢印(背景透明) 法定時間外労働手当

1時間あたりの賃金額 」  ×  「 法定時間外労働に係る割増賃金率 」  ×  「 法定時間外労働時間

アクセント矢印(背景透明) 法定休日労働手当

1時間あたりの賃金額 」  ×  「 法定休日労働に係る割増賃金率 」   ×  「 法定休日労働時間

アクセント矢印(背景透明) 深夜労働手当

1時間あたりの賃金額 」  ×  「 深夜労働に係る割増賃金率 」     ×  「 深夜労働時間

という計算式により算定することが必要となります(労働基準法37条)。

 

アクセント三角(小:背景透明) このため、適切に「法定手当(「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」「深夜労働手当」)の金額 」を計算するためには、

その計算要素となる「 法定時間外労働に係る割増賃金率 」「 法定休日労働に係る割増賃金率 」「 深夜労働に係る割増賃金率 」を適切に把握しておくことが必要となります。

 

アクセント三角(小:背景透明) 従いまして、ここでは、「労働基準法」等で規定されている

をご紹介させて頂きます。

 

 

Ⅰ:「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」

1、「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」

「法令」等において規定されている『「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」』は、以下のものとなります。

 

  法定割増賃金率
月60時間以内の法定時間外労働」の部分 0.25以上
月60時間を超える法定時間外労働」の部分 0.50以上

 

2、『「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」』の根拠規定

アクセント三角(小:背景透明)『「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」』が上記1のようなものとなるのは、

以下のような規定が定められていることが根拠となります。

 

アクセント矢印(背景透明)労働基準法37条1項」には、

労働時間を延長し労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

と規定されているとともに、

 

アクセント矢印(背景透明)上記を受けて、「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」において、

労働基準法第三十七条第一項政令で定める率は、同法第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長した労働時間の労働については二割五分とする。

と規定されています。

 

アクセント三角(小:背景透明)従いまして、『「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」』につきましては、原則

給与計算対象における「法定時間外労働」』が60時間以内の場合

給与計算対象における「法定時間外労働」』が60時間を超える場合とに

分けて

前者の場合には「0.25以上の割増賃金率」、

後者の場合には「0.50以上の割増賃金率」を規定することが必要となります。

 

 

Ⅱ:「法定休日労働」に係る「割増賃金率」

1、「法定休日労働」に係る「割増賃金率」

「法令」等において規定されている『「法定休日労働」にかかる「割増賃金率」』は、

0.35以上の割増賃金率 」を会社で規定することが必要となります。

 

2、『「法定休日労働」に係る「割増賃金率」』の根拠規定

アクセント三角(小:背景透明)『「法定休日労働」に係る「割増賃金率」』が上記1のようなものとなるのは、

以下のような規定が定められていることが根拠となります。

 

アクセント矢印(背景透明)労働基準法37条1項」には、

休日に労働させた場合においては、その日の労働については、通常の労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

と規定されているとともに、

 

アクセント矢印(背景透明)上記を受けて、「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」では、

労働基準法第三十七条第一項政令で定める率は、同法第三十三条又は第三十六条第一項の規定により労働させた休日の労働については三割五分とする。

と規定されています。

 

アクセント三角(小:背景透明)従いまして、『「法定休日労働」に係る「割増賃金率」』につきましては

事業主の規模」「月の法定休日労働時間」等に拘らず、「0.35以上の割増賃金率」とすることが必要となります。

 

 

Ⅲ:「深夜労働」に係る「割増賃金率」

1、「深夜労働」に係る「割増賃金率」

「法令」等において規定されている『「深夜労働」にかかる「割増賃金率」』は、

0.25以上の割増賃金率 」を会社で規定することが必要となります。

 

2、『「深夜労働」に係る「割増賃金率」』の根拠規定

アクセント三角(小:背景透明)『「深夜労働」に係る「割増賃金率」』が上記1のようなものとなるのは、

以下のような規定が定められていることが根拠となります。

 

労働基準法37条4項」には、

使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

と規定されています。

 

アクセント三角(小:背景透明)従いまして、『「深夜労働」に係る「割増賃金率」』につきましては

事業主の規模」「月の法定休日労働時間」等に拘らず、「0.25以上の割増賃金率」とすることが必要となります。

 

 

Ⅳ:『「法定手当」に係る「割増賃金率」』のまとめ

1、『「法定手当」に係る「割増賃金率」』のまとめ

上記Ⅰ~Ⅲでご紹介させて頂きました『「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」』『「法定休日労働」に係る「割増賃金率」』『「深夜労働」に係る「割増賃金率」』をまとめると、以下のようなものとなります。

 

    法定割増賃金率
法定時間外労働 月60時間以内部分 0.25
月60時間超部分 0.50
法定休日労働 0.35
深夜時間帯労働 0.25

 

2、「各割増賃金率」の併用関係

最後に、「参考事項」といたしまして『「各割増賃金率の併用関係 』につき補足させて頂きます。

 

1)「法定時間外労働」と「法定休日労働」に係る「割増賃金率」の併用関係

厚生労働省が公表する「平成6.5.31 基発331号」では、

法定時間外労働時間」は、『「法定休日労働」とされた時間 』を除いて計算する

と規定されていることから、

 

「ある労働時間」が

『「法定時間外労働時間」でもあり「「法定休日労働時間」でもある 』というような重複認識されるような場面はなく

このことから、

「ある労働時間」に対して、

法定休日労働に係る割増賃金率」と「法定時間外労働に係る割増賃金率」が併用して適用されるような場面は存在しません

 

結果、

法定休日に行われた労働」が8時間を超えた場合であっても、

「当該8時間を超えた部分の労働」につきましては、

  • 法定休日労働に係る割増賃金率」と「法定時間外労働に係る割増賃金率」を重複して適用するようなことはなく
  • 法定休日労働に係る割増賃金率0.35以上)」のみ適用して「法定手当」を計算することになります。

 

2)「法定時間外労働・法定休日労働」と「深夜労働」に係る「割増賃金率」の併用関係

労働基準法施行規則 20条」では、

法定時間外労働」が「深夜時間帯」に及ぶ場合には、「5割以上割増賃金率」で「法定手当」を計算し
(なお、「法定時間外労働時間」が月60時間を超える場合には「7割5分以上の割増賃金率」)、

法定休日労働」が「深夜時間帯」に及ぶ場合には、「6割以上割増賃金率」で「法定手当」を計算することが必要となる

と規定されていることから、

 

アクセント矢印(背景透明)法定時間外における労働」が「深夜時間帯22:00~5:00)」に及んだ場合には、

当該「深夜時間帯に行われた法定時間外労働」には、

法定時間外労働に係る割増賃金率0.25以上)」と「深夜労働に係る割増賃金率0.25以上)」を併用して「法定手当」を計算し、

 

アクセント矢印(背景透明)また、「法定休日における労働」が「深夜時間帯22:00~5:00 )」に行われた場合には、

当該「深夜時間帯に行われた法定休日労働」には、

法定休日労働に係る割増賃金率0.35以上)」と「深夜労働に係る割増賃金率0.25以上)」を併用して「法定手当」を計算することになります。

 

 

税理士事務所・会計事務所からのPOINT

ここでは、『「法定手当(割増賃金)」に係る「割増賃金率」』について、ご紹介させて頂いております。

 

『「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」』につきまして

『「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」』につきましては、

「法定時間外労働が月60時間以内の場合」と「法定時間外労働が月60時間を超えるの場合」で、「0.25以上」「0.5以上」の「2種類の割増賃金率」を規定することが必要となっております。

 

なお、『「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」』につきましては、

・『「法定休日労働」に係る「割増賃金率」』と併用される場面はありませんが、

・『「深夜労働」に係る「割増賃金率」』とは併用される場面がありますので、

この点につきましては、今一度ご確認頂ますようお願いいたします。

 

『「法定休日労働」に係る「割増賃金率」』につきまして

『「法定休日労働」に係る「割増賃金率」』につきましては、

「事業者の規模」や「月の法定休日労働時間」等に拘らず、「0.35以上」の「割増賃金率」を規定することとなります。

 

なお、『「法定休日労働」に係る「割増賃金率」』につきましては、

・『「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」』と併用される場面はありませんが、

・『「深夜労働」に係る「割増賃金率」』とは併用される場面がありますので、

この点につきましては、今一度ご確認頂ますようお願いいたします。

 

『「深夜労働」に係る「割増賃金率」』につきまして

『「深夜労働」に係る「割増賃金率」』につきましては、

「事業者の規模」や「月の法定休日労働時間」等に拘らず、「0.25以上」の「割増賃金率」を規定することとなります。

 

なお、『「深夜労働」に係る「割増賃金率」』につきましては、

・『「法定時間外労働」に係る「割増賃金率」』や『「法定休日労働」に係る「割増賃金率」』と併用される場面がありますので、

この点につきましては、今一度ご確認頂ますようお願いいたします。