ここでは「給与・役員報酬の計算」において控除する『「源泉所得税額」の具体的な算定手順 』と『 例示を用いた「源泉所得税額」の具体的な算定方法 』を、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。
▶ なお、「源泉所得税控除額の算定方法」につきましては、別途『 源泉所得税の算定方法 』というページにてご紹介させて頂いております。
Ⅰ:「甲欄」による『「源泉所得税額」の算定手順 』
「甲欄」により「源泉所得税額」を算定する場合の「算定手順」は以下のものとなります。
Step1
「給与支給明細書」から「社会保険料等控除後の給与等の金額」を計算します。
Step2
「扶養控除等申告書」から「扶養親族等の数」を把握します。
Step3
「源泉徴収税額表の甲欄」から、
-
- 上記Step1で把握・計算した「社会保険料等控除後の給与等の金額」と
- 上記Step1で把握・計算した「扶養親族等の数」に基づいて、
「源泉所得税控除額」を決定します。
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◆ Step1:「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算 ◆
給与計算において控除する「源泉所得税額」を算定するためには、
まず、「給与支給明細書」などから、
その算定基礎となる「社会保険料等控除後の給与等の金額」を計算することが必要となりますが、
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この「社会保険料等控除後の給与等の金額」を計算するためには、
① 「給与等支給額」から「非課税支給額(通勤手当、出張手当、宿日直手当)」を控除した「課税対象支給額」を計算し、
② 上記の「課税対象支給額」から「社会保険料控除額(健康・介護保険料控除額、厚生年金保険料控除額)」及び「雇用保険料控除額」などを控除して、
③ 「社会保険料等控除後の給与等の金額」を計算しておくことが必要となります。
|
▶ なお、『「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算方法 』につきましては、別途『 「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算 』というページで詳細に記載しておりますので、必要がある場合には当該リンクページをご覧頂きますようお願い致します。
◆ Step2:「扶養親族等の数」の把握 ◆
『「甲欄」により「源泉所得税額」を算定する 』ためには、
上記 Step1 で算定した「社会保険料等控除後の給与等の金額」の他
『 従業員・役員の「扶養親族等の数」』も「その算定基礎」となることから、
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従業員・役員から会社に提出された「扶養控除等申告書」に基づき、
『 従業員・役員の「扶養親族等の数」』をカウントしておくことが必要となります。
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なお、「扶養親族等の数」をカウントする場合には、
「扶養控除等申告書」に記載された内容から
- 「源泉控除対象配偶者」の有無
- 「控除対象扶養親族」の人数
- 「障害者」の人数
- 「本人が寡婦、ひとり親、勤労学生」に該当するか否か を把握し、
「それらの把握数」に下表で示す「税務上規定されているカウント数」を乗じることによりカウントすることが必要となります。
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【 税務上規定されているカウント方法 】
「扶養控除等申告書」の記載箇所 |
記載事項 |
「扶養親族等の数」のカウント |
A 「源泉控除対象配偶者」 |
・「源泉控除対象配偶者」 |
+1 |
B 「控除対象扶養親族」 |
・「同居老親」
・「その他(老人親族)」
・「その他(一般の控除対象扶養親族)」
・「特定扶養親族」 |
+1 × 人数 |
C 「障害者・ひとり親・勤労学生」
(本人含む)
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・「障害者」
・「特別障害者」 |
+1 × 人数 |
・「同居特別障害者」 |
+2 × 人数 |
・「寡婦」
・「ひとり親」
・「勤労学生」 |
+1 × 該当数 |
▶ なお、『「扶養親族等の数」のカウント方法 』につきましては、別途『 「扶養親族等の数」のカウント方法 』というページで詳細に記載しておりますので、必要がある場合には当該リンクページをご覧頂きますようお願い致します。
◆ Step3:「源泉所得税控除額」の決定 ◆
最終的に『「甲欄」により「源泉所得税額」を算定する 』ためには、
上記Step1で把握・計算した「社会保険料等控除後の給与等の金額」と
上記Step2で把握・計算した「扶養親族等の数」から
『「源泉徴収税額表」の「甲欄」』を用いて、「(給与計算で控除する)源泉徴収税額」を算定することが必要となります。
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すなわち、
上記Step1で把握・計算した『 従業員・役員の「社会保険料等控除後の給与等の金額」』と
上記Step2で把握・計算した『 従業員・役員の「扶養親族等の数」』とが
「交差する箇所の金額」を『「源泉徴収税額表」の「甲欄」』で把握し、
「当該金額」を「(給与計算で控除する)源泉徴収税額」として算定することが必要となります。
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▶ なお、『「源泉徴収税額表」の見方 』につきましては、別途『 「源泉徴収税額表」の見方 』というページで詳細に記載しておりますので、必要がある場合には当該リンクページをご覧頂きますようお願い致します。
Ⅱ:「甲欄」による『「源泉所得税額」の算定例示 』
ここでは、以下「例示1~4」におきまして、簡単な具体例を用いて『「甲欄」により「源泉徴収税額」を算定する方法 』をご紹介させて頂きます。
例 示 1
◆ 設 例 ◆
従業員に対する『「給与支給明細書」における記載 』、『「扶養控除等申告書」における記載 』が以下のものである場合
「給与支給明細書」の状況
「給与支給明細書」の状況
◆ 「源泉所得税額」の算定 ◆
Step1:「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算
① 292,500円 - ② 8,000円 - ③ 42,555円 = 241,945円 となります。
Step2:「扶養親族等の数」の把握
「源泉控除対象配偶者」:1 ⇒「 1 」 となります。
Step3:「源泉所得税控除額」の決定
「源泉徴収税額表」の「甲欄」に基づき、4,590円 となります。
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例 示 2
◆ 設 例 ◆
従業員に対する『「給与支給明細書」における記載 』、『「扶養控除等申告書」における記載 』が以下のものである場合
「給与支給明細書」の状況
「給与支給明細書」の状況
「扶養控除等申告書」には、
- 「源泉控除対象配偶者」の記載と
- 「特定扶養親族」の記載がある。
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◆ 「源泉所得税額」の算定 ◆
Step1:「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算
① 415,000円 - ② 15,000円 - ③ 62,273円 = 337,727円 となります。
Step2:「扶養親族等の数」の把握
「源泉控除対象配偶者」:1 + 「特定扶養親族」:1 ⇒「 2 」 となります。
Step3:「源泉所得税控除額」の決定
「源泉徴収税額表」の「甲欄」に基づき、6,600円 となります。
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例 示 3
◆ 設 例 ◆
役員に対する『「給与支給明細書」における記載 』、『「扶養控除等申告書」における記載 』が以下のものである場合
「給与支給明細書」の状況
「給与支給明細書」の状況
「扶養控除等申告書」には、
- 「源泉控除対象配偶者」の記載、
- 「同居老親」の記載があり、
- 上記の「同居老親」が「同居特別障害者」である旨の記載がある。
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◆ 「源泉所得税額」の算定 ◆
Step1:「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算
① 600,000円 - ② 0円 - ③ 87,821円 = 512,179円 となります。
Step2:「扶養親族等の数」の把握
「源泉控除対象配偶者」:1 + 「同居老親」:1 + 「同居特別障害者」:2 ⇒「 4 」 となります。
Step3:「源泉所得税控除額」の決定
「源泉徴収税額表」の「甲欄」に基づき、12,890円 となります。
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例 示 4
◆ 設 例 ◆
パート従業員に対する『「給与支給明細書」における記載 』、『「扶養控除等申告書」における記載 』が以下のものである場合
「給与支給明細書」の状況
「給与支給明細書」の状況
◆ 「源泉所得税額」の算定 ◆
Step1:「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算
① 86,000円 - ② 8,000円 - ③ 258円 = 77,742円 となります。
Step2:「扶養親族等の数」の把握
記載なし ⇒「 0 」 となります。
Step3:「源泉所得税控除額」の決定
「源泉徴収税額表」の「甲欄」に基づき、0円 となります。
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Ⅲ:「乙欄」による『「源泉所得税額」の算定手順 』
「乙欄」により「源泉所得税額」を算定する場合の「算定手順」は以下のものとなります。
Step1
「給与支給明細書」から「社会保険料等控除後の給与等の金額」を計算します。
Step2
「源泉徴収税額表の乙欄」から、
上記Step1で把握・計算した「社会保険料等控除後の給与等の金額」に基づき「源泉所得税控除額」を決定します。
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◆ Step1:「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算 ◆
「当該Step1の計算」は、『「甲欄」による「源泉所得税」の算定方法 』と同じ計算となります。 |
給与計算において控除する「源泉所得税額」を算定するためには、
まず、「給与支給明細書」などから、
その算定基礎となる「社会保険料等控除後の給与等の金額」を計算することが必要となりますが、
|
この「社会保険料等控除後の給与等の金額」を計算するためには、
① 「給与等支給額」から「非課税支給額(通勤手当、出張手当、宿日直手当)」を控除した「課税対象支給額」を計算し、
② 上記の「課税対象支給額」から「社会保険料控除額(健康・介護保険料控除額、厚生年金保険料控除額)」及び「雇用保険料控除額」などを控除して、
③ 「社会保険料等控除後の給与等の金額」を計算しておくことが必要となります。
|
▶ なお、『「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算方法 』につきましては、別途『 「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算 』というページで詳細に記載しておりますので、必要がある場合には当該リンクページをご覧頂きますようお願い致します。
◆ Step2:「源泉所得税控除額」の決定 ◆
『「乙欄」により「源泉所得税額」を算定する 』ためには、
上記Step1で把握・計算した「社会保険料等控除後の給与等の金額」から
『「源泉徴収税額表」の「乙欄」』を用いて、「(給与計算で控除する)源泉徴収税額」を算定することが必要となります。
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すなわち、
上記Step1で把握・計算した『 従業員・役員の「社会保険料等控除後の給与等の金額」』に「対応する箇所の金額」を『「源泉徴収税額表」の「乙欄」』で把握し、
「当該金額」を「(給与計算で控除する)源泉徴収税額」として算定することが必要となります。
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▶ なお、『「源泉徴収税額表」の見方 』につきましては、別途『 「源泉徴収税額表」の見方 』というページで詳細に記載しておりますので、必要がある場合には当該リンクページをご覧頂きますようお願い致します。
Ⅳ:「乙欄」による『「源泉所得税額」の算定例示 』
ここでは、以下「例示1~4」におきまして、簡単な具体例を用いて『「乙欄」により「源泉徴収税額」を算定する方法 』をご紹介させて頂きます。
例 示 1
◆ 設 例 ◆
パート従業員に対する『「給与支給明細書」における記載 』が以下のものである場合
◆ 「源泉所得税額」の算定 ◆
Step1:「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算
① 86,000円 - ② 8,000円 - ③ 258円 = 77,742円 となります。
Step2:「源泉所得税控除額」の決定
「源泉徴収税額表」の「乙欄」に基づき、 77,742 × 3.063% = 2,381円(1円未満の端数は、切捨)となります。
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Point ! 「社会保険料等控除後の給与等の金額」が88,000円未満の場合の注意点
『「甲欄」により「源泉所得税」を算定する 』場合には、「社会保険料等控除後の給与等の金額」が88,000円未満である場合には、
「その月の源泉所得税額」は0円となりますが、
他方、『「乙欄」により「源泉所得税」を算定する 』場合には、「社会保険料等控除後の給与等の金額」が88,000円未満であっても、
「その月の源泉所得税額」が0円とはなりませんので、
『「乙欄」により「源泉所得税」を算定する 』場合には、この点にご注意頂ますようお願い致します。
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例 示 2
◆ 設 例 ◆
従業員に対する『「給与支給明細書」における記載 』が以下のものである場合
◆ 「源泉所得税額」の算定 ◆
Step1:「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算
① 292,500円 - ② 8,000円 - ③ 42,555円 = 241,945円 となります。
Step2:「源泉所得税控除額」の決定
「源泉徴収税額表」の「乙欄」に基づき、33,400円 となります。
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例 示 3
◆ 設 例 ◆
従業員に対する『「給与支給明細書」における記載 』が以下のものである場合
◆ 「源泉所得税額」の算定 ◆
Step1:「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算
① 415,000円 - ② 15,000円 - ③ 62,273円 = 337,727円 となります。
Step2:「源泉所得税控除額」の決定
「源泉徴収税額表」の「乙欄」に基づき、64,900円 となります。
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例 示 4
◆ 設 例 ◆
役員に対する『「給与支給明細書」における記載 』が以下のものである場合
◆ 「源泉所得税額」の算定 ◆
Step1:「社会保険料等控除後の給与等の金額」の計算
① 600,000円 - ② 0円 - ③ 87,821円 = 512,179円 となります。
Step2:「源泉所得税控除額」の決定
「源泉徴収税額表」の「乙欄」に基づき、153,300円 となります。
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税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは『「源泉所得税額」の具体的な算定手順 』と『「源泉所得税額」の具体的な算定方法 』をご紹介させて頂いておりますが、
給与計算において「源泉所得税の控除金額」を算定する方法としましては、
- 『「甲欄」により「源泉徴収税額」』を算定する方法と
- 『「乙欄」により「源泉徴収税額」』により算定する方法とがあることから、
ここでは、
- 「甲欄」により「源泉徴収」を行う場合の「具体的な算定手順」と「具体的な算定例示」
- 「乙欄」により「源泉徴収」を行う場合の「具体的な算定手順」と「具体的な算定例示」
をそれぞれご紹介させて頂いております。
給与計算において「源泉所得税額」を算定する場合には、
上記Ⅰ~Ⅳでご紹介させて頂いております、「算定手順」や「算定例示」をご参考にして頂き、適切に「源泉徴収税額」を算定して頂ますようお願い致します。
『「甲欄」による「源泉徴収金額」 』と『「乙欄」による「源泉徴収金額」 』の違いにつきまして
『 上記Ⅱの例示で算定される「源泉徴収税額」』と『 上記Ⅳの例示で算定される「源泉徴収税額」』を比較して頂くとよく分かると思いますが、
『「甲欄」によって算定した場合の「源泉徴収税額」』と『「乙欄」によって算定した場合の「源泉徴収税額」』とは、全く異なる金額となります。
(「乙欄」により「源泉徴収」を行う場合には、「かなり高額の源泉徴収」が必要となります。)
従いまして、給与計算において「源泉徴収税額」を計算される場合には、
- 「甲欄」により「源泉徴収税額」を算定すべきであるか?
- 「乙欄」により「源泉徴収税額」を算定すべきであるか?
の『「源泉徴収税」の算定方法 』の決定につきましては、事前に十分ご確認頂ますようお願い致します。