ここでは、「標準報酬月額の定時決定」の際に、会社から保険者に届け出る「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方を、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
なお、ここでご紹介させて頂きます内容は、『「被保険者報酬月額算定基礎届」の「記載項目」の内容及びその記載方法』となります。
Ⅰ:「報酬月額算定基礎届」の記載項目
「被保険者報酬月額算定基礎届」は、「管轄の年金事務所」から6月上旬~6月中旬を目処に送付されてきます。
(ただし、直近の届出が電子申請の場合には、紙ベースの「被保険者報酬月額算定基礎届」は原則送付されてきません。)
この年金事務所から送付される「被保険者報酬月額算定基礎届」には、以下「18の記載項目」があります。
①被保険者整理番号 ②被保険者氏名 ③被保険者生年月日 ④適用年月 ⑤従前の標準報酬月額 ⑥従前改定月 ⑦昇(降)給 ⑧遡及支払額 ⑨給与支給月 ⑩報酬支払基礎日数 ⑪通貨による報酬支払額 ⑫現物による報酬支払額 ⑬各月の報酬支払合計額 ⑭総計額 ⑮平均額 ⑯修正平均額 ⑰被用者の個人番号 ⑱備考 |
ただし、上記の「18の記載項目」のうちには、
・年金機構から送付された「報酬月額算定基礎届」に『既に「記載項目」が印字されているもの』と ・「会社で記載が必要な項目」があります。 |
Ⅱ:既に印字がされている「記載項目」
上記「18の記載項目」のうち、
①被保険者整理番号 ②被保険者氏名 ③被保険者生年月日 ④適用年月 ⑤従前の標準報酬月額 ⑥従前改定月 ⑨給与支給月 |
の「7項目」につきましては「報酬月額算定基礎届」が送付された時点で、既に印字がなされています。
’ 被保険者情報 ’
「被保険者氏名」「被保険者生年月日」につきましては、「被保険者資格取得時」等に社会保険の保険者に届出たものが「報酬月額算定基礎届」に印字されています。
また、「被保険者整理番号」につきましては、「被保険者資格取得時」等で社会保険の保険者によって付与された「従業員・役員の被保険者整理番号」が「報酬月額算定基礎届」に印字されています。
’ 適用年月日 ’
『「定時決定」により決定された「標準報酬月額」』は、9月分の社会保険料計算から適用されることとなるため、「報酬月額算定基礎届」には、既に「9月」という適用年月日が印字されています。
「9月分の社会保険料」は、10月に会社から保険者に納付することとなるため、
『「定時決定」により決定された「標準報酬月額」』は、社会保険料の納付との関係におきましては、「10月に納付する社会保険料の計算」から適用されることとなります。
「従業員・役員が負担する9月分の社会保険料」は、原則「10月に支払われる給与・役員報酬」で控除されることとなるため、
『「定時決定」により決定された「標準報酬月額」』は、社会保険料の従業員・役員からの徴収との関係におきましては、「10月に支払われる給与・役員報酬から控除する社会保険料の計算」から適用されることとなります。
’ 従前の情報 ’
「報酬月額算定基礎届」の「従前の標準報酬月額」欄には、「定時決定が行われる前の標準報酬月額」が「健康保険に係る標準報酬月額」「厚生年金保険に係る標準報酬月額」ごとに印字されています。
また「報酬月額算定基礎届」の「従前改定月」欄には、「上記の標準報酬月額が決定・改定された月」が印字されています。
’ 給与支給月 ’
「報酬月額算定基礎届」は、「報酬月額」を保険者に届け出る書類であることから、当該「報酬月額」の算定基礎となる「4月、5月、6月の給与・役員報酬の支払額」の記載が必要となります。
このため「報酬月額算定基礎届」には、「給与支給月」として「4月、5月、6月」が印字されています。
5月31日以前の新入社員・新任役員の記載
5月31日以前の新入社員・新任役員につきましては、『「定時決定」の適用対象者』となることから、「報酬月額算定基礎届」に記載することが必要となります。
他方、社会保険の保険者から送付される「報酬月額算定基礎届」は、5月目処で準備され、6月に各会社に対して発送されることから、
社会保険の保険者が「報酬月額算定基礎届」を準備するタイミングにより、「5月31日以前に入社・新任した従業員・役員の情報」が印字されていないケースが起こります。
このような場合には、
「5月31日以前に入社・新任した従業員・役員の情報(「被保険者資格取得届」で届出た情報)」を会社自身で「報酬月額算定基礎届」に記載することが必要となります。 |
’ 6月1日以降の新入社員・新就任役員 ’
6月1日以降に入社・新任した社員・役員につきましては、
「定時決定」の適用対象外となることから、「報酬月額算定基礎届」への記載は不要となります。 |
なお、この点につきましての詳しい内容につきましては、『「定時決定の適用除外」となる新入社員・退職社員』で記載しておりますので、必要がある場合にはご一読頂ますようお願い致します。
6月30日以前の退職社員・退任役員の記載
「定時決定」につきましては、「7月1日時点で会社に在籍する被保険者(従業員・役員)」を対象として行われる標準報酬月額の見直決定であるため、
6月30日以前に退職・退任した従業員・役員につきましては、「定時決定の対象外」となります。
他方、上記でもご紹介させて頂きましたが、社会保険の保険者から送付される「報酬月額算定基礎届」は、5月目処で準備されるため、その準備のタイミングにより、「6月30日以前に退職・退任した従業員・役員の情報」が「報酬月額算定基礎届」に印字されていることがあります。
「報酬月額算定基礎届」に「6月30日以前に退職・退任した従業員・役員の情報」が印字されている場合には、
・「報酬支払額」「報酬月額」等の記載は不要となりますが、
・既に当該従業員・役員が退職・退任していることを保険者に報告するため、
「報酬月額算定基礎届」の「備考」欄の「9 その他」欄に「退職・退任年月」を記入します。 |
’ 7月1日以降の退職(予定)者・退任(予定)役員 ’
「定時決定」は、「7月1日時点で会社に在籍する被保険者」を対象として行われるため、
7月1日以降に退職・退任が予定されている従業員・役員につきましては、仮に退職・退任が確実であっても、
「報酬月額算定基礎届」に必要事項の記載が必要となります。 |
Ⅲ:会社での「記載が必要となる項目」
「会社で記載が必要となる項目」は、
冒頭でご紹介させて頂きました「18の記載項目」のうちの⑦~⑧及び⑩~⑱の「11の記載項目」となります。
以下におきましては、この11項目の内容・記載方法につきご紹介させて頂きます。
1、「昇給・降給月」の記入
「4月~6月の報酬支払額」に対して「昇給・降給がなされた月がある場合」には、 ⇒「⑦の箇所」に「昇給があった月・降給があった月」を記入し、「昇給又は降給」に「◯」を付けます。 |
Point!:「昇給・降給」の記入につきまして ・「⑦の箇所」への記入が必要となる「昇給・降給」は「4月~6月に支払われた報酬」に「昇給・降給」が含まれている場合のみとなります。 ・「上記以外の月」に「昇給・降給」があっても、当該箇所への記載は行いません。 |
『4月から6月の報酬支払で「昇給・降給」がある』場合には、
- 『4月から6月の「固定的賃金の増減」があったこと』に該当し、
- 『7月から9月に「随時改定」が行われる』可能性があります。
このため、「4月から6月の報酬支払」において「昇給・降給」がある場合には、その旨を、「報酬月額算定基礎届」に記載することが必要となります。
’ 『⑦「昇給・降給」の記載』と『⑱「月額変更予定」の記載』との関係 ’
上記でご紹介させて頂きましたように、『4月から6月の報酬支払で「昇給・降給」がある』場合には、『7月から9月に「随時改定」が行われる』可能性があります。
このため、このような場合には、『「7月~9月に随時改定」が予定されていないか』を確認することが必要となります。
なお「随時改定の要件」に該当する場合には、
・「報酬月額算定基礎届」の「⑱備考」欄の「3 月額変更予定」に「 ◯ 」を付けるとともに、 ・「⑱備考」欄の「9 その他」欄に「随時改定が予定されている月」を記入します。 |
・またこれとは逆に、『「7月~9月に随時改定」が予定されている』場合には、その「随時改定」の契機となった「4月~6月の固定的賃金の増減」理由が、「4月~6月に昇給・降給がなされた」結果のものである場合には、当該箇所への記入を行うことが必要となります。
2、「遡及支払額」の記入
「4月~6月」に「3月分以前の給与・役員報酬」が遡及して支払われている場合には、 ⇒「⑧の箇所」に「遡及支払額が含まれている月」及び「遡及して支払われた金額」を記入します。 |
Point!:「遡及支払額」の記入につきまして ・「⑧の箇所」への記入が必要となる「遡及支払額」は「4月~6月に支払われた報酬」に「3月分以前の給与・役員報酬」が含まれている場合のみとなります。 |
「4月~6月の報酬支払額」に「3月分以前の遡及支払額」が含まれている場合には、
「4月・5月・6月の報酬支払合計額を平均した金額」は、「本来の4月・5月・6月の報酬支払合計額を平均した金額」よりも「高い金額」となってしまいます。
このため『本来の4月・5月・6月の報酬支払額を反映した「報酬月額」』を算定するためには、
『「算定基礎届」に記載された「4月・5月・6月の報酬支払合計額」』から「遡及支払額」を「差し引いた金額」に対して平均計算することが必要となります。
すなわち、「4月~6月の報酬支払額」に「3月分以前の遡及支払額」が含まれている場合には、
- 当該「⑧の箇所」に「遡及支払額」を記載するとともに、
- 「⑯の修正平均額」に「遡及支払額を差し引いて計算した平均額」を記載することが必要となります。
なお、この場合には『⑯に記載された「修正平均額」』が、保険者に報告する最終的な「報酬月額」となります。
’ 『⑧「遡及支払額」の記載』と『⑯「修正平均額」の記載』との関係 ’
「⑧ 遡及支払額」欄に「遡及支払額」が記入される場合には、原則として「⑯ 修正平均額」欄に「修正平均額」の記載が必要となります。
またこれとは逆に、「⑯ 修正平均額」欄に「修正平均額」が記入されている場合であり、その記載が「遡及支払額があること」に起因する場合には、
「⑧ 遡及支払額」欄に「遡及支払額」が記入されていることを確認することが必要となります。
3、 4月~6月の「報酬支払基礎日数」の記入
「4月、5月、6月の報酬支払額」に対する「報酬支払基礎日数」を ⇒「⑩の箇所」に記入します。 |
「報酬月額算定基礎届」では、「4~6月の報酬支払額」を平均計算することにより「報酬月額」を算定することが必要となりますが、
この『「報酬月額」の計算対象』とするためには、各月の「報酬支払基礎日数」が
- 「役員」「正社員」で「17日以上」であること、
- 「パート社員」で「17日以上(又は15日以上)」であること、
- 「(特定適用事業所等勤務の)短時間労働者」で「11日以上」であることが要件となります。
この点、『「4月~6月に支払われた報酬」が上記の要件を満たしているか否か』すなわち『「4月~6月の報酬支払額」を「報酬月額」の計算対象に含めたか否か』を保険者に報告するため、「報酬月額算定基礎届」には「4月~6月の報酬支払基礎日数」の記載が必要となります。
’ 「支払基礎日数」のカウント対象期間 ’
「報酬月額」の算定対象となる「4月、5月、6月の報酬支払額」は、あくまで「4月、5月、6月に支払われた報酬」となりますが、
『「4月報酬支払額」「5月報酬支払額」「6月報酬支払額」に対する「支払基礎日数」』は、
「4月に支払われた報酬の計算対象期間における支払対象日数」
「5月に支払われた報酬の計算対象期間における支払対象日数」
「6月に支払われた報酬の計算対象期間における支払対象日数」となります。
’ 「支払基礎日数」のカウント方法 ’
・「役員」の場合、「完全月給制の従業員」の場合、「月給日給制で欠勤等による給与支給控除がなされなかった従業員」の場合は、
⇒その月に支払われた報酬の計算対象となった「暦日」が「支払基礎日数」となります。
・「月給日給制で、その月に欠勤等により給与支給額の減額がなされた従業員の場合」は、
⇒「給与計算対象期間における所定労働日数」から「欠勤日数」を「差し引いた日数」が「支払基礎日数」となります。
・「日給制・時給制等の従業員」の場合には、「出勤日数」が「支払基礎日数」となります。
4、「4月~6月の報酬支払額」の記入
4月、5月、6月における「金銭による報酬額」「現物による報酬額」を、 ⇒「⑪⑫の箇所」にそれぞれ区分して記入します。 4月、5月、6月における「金銭による報酬」と「現物による報酬」の「合計額」を、 ⇒「⑬の箇所」に記入します。 |
『社会保険の「報酬」』には、「通貨で支給された給与・役員報酬」及び「現物で支給された給与・役員報酬」を含めることが必要となります。
このため、「報酬月額算定基礎届」では、「通貨で支給された給与・役員報酬」「現物で支給された給与・役員報酬」をそれぞれ区分して記載するとともに、
それらの「合計金額」を記載することが必要となります。
※ なお、『社会保険の「報酬」に含めることが必要となる給与・役員報酬の範囲』につきましては、別途『定時決定における「報酬月額」の算定方法』の『Ⅱ:「4・5・6月の支払額」に含める「報酬の範囲」』で詳しくご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、上記リンクページを一読頂ますようお願い致します。
’ 「合計」欄の記載方法 ’
「報酬月額算定基礎届」の『4月・5月・6月の「各月合計」』欄には、原則、
- 「各月の支払基礎日数」が「被保険者区分ごとに定められている支払基礎日数の要件」を充たしている場合には、
「通貨による報酬額」と「現物による報酬額」の「合計金額」を記載し、 - 「各月の支払基礎日数」が「被保険者区分ごとに定められている支払基礎日数の要件」を充たしていない場合には、「 - 」を記載します。
すなわち、
「役員」「正社員」につきましては、
「報酬支払基礎日数」が「17日以上ある月」は、「合計」欄に「合計金額」を記載し、 「報酬支払基礎日数」が「17日未満の月」は、「合計」欄に「 - 」を記載します。 |
「パート社員」につきましては、
「報酬支払基礎日数」が「15日以上ある月」は、「合計」欄に「合計金額」を記載し、 「報酬支払基礎日数」が「15日未満の月」は、「合計」欄に「 - 」を記載します。 |
「(特定適用事業所で勤務する)短時間労働者」につきましては、
「報酬支払基礎日数」が「11日以上ある月」は、「合計」欄に「合計金額」を記載し、 「報酬支払基礎日数」が「11日未満の月」は、「合計」欄に「 - 」を記載します。 |
5、「4月~6月の報酬支払額の総計」及び「4月~6月の平均額」の記入
「4月、5月、6月の報酬支払額」の「合計(総計)金額」を、 ⇒「⑭の箇所」に記入します。 「上記の総計額」を「計算対象月数」で「除した金額(平均額)」を、 ⇒「⑮の箇所」に記入します。 |
「報酬月額算定基礎届」では、『被保険者区分ごとに定められた「報酬支払基礎日数の要件」を満たしている「4~6月の報酬支払額」』を平均計算することにより「報酬月額」を算定することが必要となります。
このため、「報酬月額算定基礎届」におきましては、
- 平均計算の基礎となる『「報酬支払基礎日数の要件」を充たしている「4月~6月の報酬支払額」の「総計」』を記載するとともに、
- 上記の「総計」を「月数」で除した「平均金額(報酬月額)」を記載することが必要となります。
’ 原則的な「総計」欄の記載 ’
『被保険者区分ごとに定められている「報酬支払基礎日数の要件」』を充たしている場合には、
上記4でご紹介させて頂きましたように『4月~6月の報酬支払額の「合計」欄』には「各月の報酬支払額の合計」が記入されます。
このため、「総計」欄に記載する金額は、原則、
『「4月~6月の各合計」欄に記入されている金額』の「合計額」を記入することとなります。 |
’ パート社員における「総計」欄の記載 ’
パート社員につきましては、『「報酬月額」の平均計算対象』となるか否かは、
「報酬支払基礎日数」が「15日以上」あるか否かがその要件となります。
このため、「報酬支払基礎日数」が15日以上ある場合には、
『4月~6月の各月の「合計」欄』に「合計金額」が記入されることとなります。
他方、パート社員の『「報酬月額」の平均計算』では、
『「報酬支払基礎日数」が17日以上ある月』が、1ヶ月以上ある場合には、
『「報酬支払基礎日数」が17日以上ある月』のみを計算対象として「報酬月額」が算定されます。
このため、「パート社員の場合」で『「報酬支払基礎日数が17日以上ある月」が1ヶ月以上ある場合』には、
『「4月~6月の各合計」欄に記入されている金額』の「合計額」を「総計」欄に記入するのではなく、
例外的に、「報酬支払基礎日数が17日以上ある月」の『「4月~6月の各合計」欄に記入されている金額』の「合計額」を「総計」欄に記入することとなります。 |
例 示 ’
4月~6月の「報酬支払基礎日数」及び「報酬支払額」が以下のような場合には、
「5月の報酬支払基礎日数」は「16日(15日以上)」であることから、「⑬合計」欄には、「5月の報酬支払合計金額」が記載されますが、
「4月、6月の報酬支払基礎日数」が「17日以上」であることから、
『「報酬月額」の算定対象となるもの』は、「4月・6月」のみとなります。
このため、
・「⑭総計」欄には、「4月と6月の報酬支払額の合計金額」が記載され、
・「⑮平均額」欄には、「4月と6月の報酬支払額の平均額」が記載されます。
6、「修正平均額」欄の記入
・「報酬月額」を算定する場合に、特別の事情等があるため「⑮で計算した平均額」を使用せず、 ⇒「⑯の箇所」に「(修正した)報酬月額」を記入します。 |
’ 「修正平均」欄が使用される理由 ’
「報酬月額算定基礎届」におきましては、「各被保険者区分(正社員・パート社員・短時間労働者)」に対して定められている『「報酬支払基礎日数の要件」を充たしている月』につきましては、
『「報酬月額」を計算するための平均計算に含める』ことが原則となります。
このため、「4月、5月、6月のいずれかの報酬支払額」に「特殊な事情・要素」が含まれており、その「報酬支払額」が「通常時の報酬支払額」とは言えない場合であっても、
「報酬支払基礎日数の要件」を充たしている場合には、一旦それらを含めて『「報酬月額」の平均計算』を行うことが必要となります。
ただし、「4月、5月、6月のいずれかの報酬支払額」に「特殊な事情・要素」が含まれており、その「報酬支払額」が「通常時の報酬支払額」とは言えない場合には、
それらの『「特殊な事情・要素」を控除して修正計算する』『「特殊な事情・要素を含む月」を計算対象から除外して修正計算する』ことが必要となります。
「⑯の修正平均額」は、
・上記のように「4月、5月、6月のいずれかの報酬支払額」に「特殊な事情・要素」が含まれている場合であっても、「支払基礎日数の要件」を充たしているために、
・「特殊な事情・要素を含んで一旦計算される平均額」を
『「特殊な事情・要素」を控除して修正計算する』『「特殊な事情・要素を含む月」を計算対象から除外して修正計算する』ことにより、正常な「報酬月額」を計算するために使用されるものとなります。
なお、「⑯の修正平均額」に記入がある場合には、当該「修正平均額」が保険者に報告する最終的な「報酬月額」となります。
’ 「修正平均」欄が計算される場面 ’
「修正平均」欄が使用される場面は、
・「4月・5月・6月のいずれかの報酬支払額」に「特殊事情・要素」が含まれており、
・かつ『特殊事情がある月の「報酬支払基礎日数」』が「被保険者区分ごとに定められている報酬支払基礎日数の要件」を充たしている場合となります。
このような場面として考えられるものには、以下のようなものがあります。
・「4月・5月・6月の報酬支払額」に「遡及支払額」が含まれている場合(上記2の場面) ・「本来4月・5月・6月に支払われるべき報酬額」が7月以降に遅延支払される場合 ・「4月・5月・6月に支払われた報酬に対する給与計算対象期間の途中で入社した」ことにより、「入社月の給与」が「1ヶ月分の給与」を反映していない場合(下記8(4)の場面) ・休職期間中において、「(通常よりも低額な)休職給」が会社から支払われている場合 ・ストライキ等に伴い「賃金カットされた月」がある場合 |
7、「70歳以上の被用者」に係る「マイナンバー」の記入
従業員・役員の年齢が「70歳以上の被用者※」である場合には、 ⇒「⑰の箇所」に「マイナンバー(個人番号)」又は「基礎年金番号」を記入します。 |
’ 70歳以上の被用者とは ’
社会保険のうち「厚生年金保険」につきましては、従業員・役員が70歳以上である場合には「被保険者」ではなくなります。(「厚生年金保険料」の支払は不要となります。)
このため、適用事業所(会社)に雇用等されている70歳以上の従業員・役員で、社会保険の加入要件を充たしている者は、
厚生年金保険の「被保険者」ではないが、会社に雇用等されている「被用者」という身分になります。
なお、社会保険のうち「健康保険」につきましては、社会保険の加入要件を充たしている限り、75歳まで「被保険者」となります。
’ 「70歳以上の被用者」につき「マイナンバー」の記載が必要となる理由 ’
従業員・役員が「70歳以上の被用者」である場合には、
「在職老齢年金」制度によって、「老齢厚生年金の金額」と「会社から受けている給与・賞与・役員報酬等の金額」によっては、「老齢厚生年金の一部」が支給停止になることがあります。
社会保険の保険者側では、「70歳以上の被用者」に対して、上記の支給停止が必要か否かを判断するため、
『「70歳以上の被用者」が会社から受けている給与・賞与・役員報酬等の金額』を「マイナンバー(個人番号)」又は「基礎年金番号」に基づいて、横断的に把握・集計します。
このため、会社では「在職老齢年金」制度に係る保険者への情報提供の1つとして、『「70歳以上の被用者」の「マイナンバー(個人番号)」又は「基礎年金番号」』を「報酬月額算定基礎届」に記入することが必要となります。
8、「備考」欄の記入
従業員・役員が以下「1~8」に該当する場合には、該当する箇所に「 ◯ 」を付けます。
1) 従業員・役員が「70歳以上の被用者」の場合
従業員・役員が「70歳以上の被用者」である場合には、この欄に「 ◯ 」を付けます。 |
・また『「4月・5月・6月の支払報酬に対する「給与計算期間中」』に、従業員・役員が「70歳になった」場合で、 ・4月・5月・6月に「健康保険」と「厚生年金保険」の「算定基礎月が異なる月」がある場合には、 「70歳以降の月」を「( )内」に記載します。 |
’ 「70歳以上の被用者」である旨の報告理由 ’
従業員・役員が「70歳以上の被用者」に該当する場合には、
「健康保険」につきましては、75歳までは「健康保険の被保険者」であることから、「健康保険に係る標準報酬月額」の決定は必要となりますが、
(「健康保険料」の会社負担及び従業員・役員の個人負担は必要となります。)
「厚生年金保険」につきましては、70歳で「被保険者でなくなる」ことから「厚生年金保険に係る標準報酬月額」の決定は不要となります。
(「厚生年金保険料」の会社負担及び従業員・役員の個人負担は不要となります。)
「報酬月額算定基礎届」では、このことを保険者に報告する目的から、「備考」欄に「70歳以上の被用者」に該当する旨の記載が必要となります。
また、「70歳以上の被用者」につきましては、「在職老齢年金」制度が適用されることとなるため、この観点からも、「備考」欄に「70歳以上の被用者」に該当する旨の記載が必要となります。
’ 「70歳以上の被用者としての算定基礎月」の記載理由 ’
『「4月・5月・6月の支払報酬に対する「給与計算期間中」』に、従業員・役員が「70歳になった」場合には、
「4月・5月・6月」につき
・『70歳以前の「健康保険の被保険者・厚生年金保険の被保険者」としての「報酬月額」を算定するための月』と
・『70歳以降の「健康保険の被保険者・厚生年金保険の被用者」としての「報酬月額」を算定するための月』が混在する可能性があります。
このように「4月・5月・6月」に、「厚生年金保険の被保険者である月」と「厚生年金保険の被用者である月」が混在している場合には、
⇒『「厚生年金保険の被用者」に「該当する月」』を当該箇所に記載することが必要となります。
※ なお、「4月・5月・6月」につき、「厚生年金保険の被保険者である月」と「厚生年期保険の被用者」である月が混在していない場合(いずれも厚生年金保険の被用者である場合)には、当該箇所への記載は不要となります。
2) 「2以上勤務」の場合
・被保険者である従業員・役員が「2箇所以上の適用事業所(会社)」で勤務している場合であり、かつ ・「2箇所以上の適用事業所(会社)」で「社会保険の加入要件」を充たしている場合には、 この欄に「 ◯ 」を付けます。 |
Point !:「2以上勤務」の条件 「2以上勤務」につきましては、単に「2以上の適用事業所(会社)に勤務している」のではなく、 すなわち、「2以上の事業所」において、それぞれ「被保険者資格取得届」が保険者に提出されていることが前提となります。 ※ なお、「2以上勤務」の場合には、別途「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」の提出が必要となります。 |
Point ! :「2以上勤務」に該当する例示 「2以上勤務」に該当する場合の例示としては、 ・「2以上の会社で役員」をしている場合 ※なお、 |
’ 「2以上勤務者」である旨の報告理由 ’
「2以上勤務」の場合には、「2以上の会社で支払われた報酬」を合算して、その「合算された報酬支払額」に基づいて「標準報酬月額」を決定することが必要となりが、
このためには、社会保険の保険者側で『「2以上の事業所勤務者」が「2以上の事業所で受けている給与・賞与・役員報酬等の金額」を横断的に把握・集計する』ことが必要となります。
会社では、上記にかかる保険者への情報提供として、「報酬月額算定基礎届」に「2以上勤務者」である旨を記載することが必要となります。
3) 7月~9月に随時改定が予定されている場合
7月、8月、9月に随時改定が行われる予定である従業員・役員につきましては、 ⇒この欄に「 ◯ 」を付けるとともに、 ⇒「9 その他」欄に「随時改定が予定されている月」を記入します。 |
Point !:「被保険者報酬月額変更届」の提出 ・「7月の随時改定」につきましては、6月の報酬支払い後(「算定基礎届」とほぼ同時期)に、 別途「被保険者報酬月額変更届」を保険者に提出することが必要となります。 |
’ 「7月~9月に月額変更予定」である旨の報告理由 ’
・「7月に随時改定」がなされる場合には、『「7月の随時改定」で改定された「標準報酬月額」』が、7月から使用され、9月以降も引き続き使用され続けます。
・「8月に随時改定」がなされる場合には、『「8月の随時改定」で改定された「標準報酬月額」』が、8月から使用され、9月以降も引き続き使用され続けます。
・「9月に随時改定」がなされる場合には、『「9月の随時改定」で改定された「標準報酬月額」』が、9月から使用されます。
以上のように
・「7月~9月に随時改定」がなされている場合には、「定時決定」に優先して、『「随時改定」により改定された「標準報酬月額」』が9月以降も使用され続けることから、
・「7月~9月に随時改定が予定されている従業員・役員」は、『「定時決定」の適用対象外』となります。
会社から保険者にこのことを報告するため、「報酬月額算定基礎届」で「7月~9月に月額変更予定者」である旨の記載が必要となります。
※ なお、『7月~9月に随時改定が予定されている者が「定時決定」の適用対象外となる理由』につきましては、別途『「7月・8月・9月の随時改定」と「定時決定」の関係』で詳しくご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、上記リンクページを一読頂ますようお願い致します。
4) 途中入社の場合
・「4月の支払報酬に対する給与計算対象期間」「5月の支払報酬に対する給与計算対象期間」「6月の支払報酬に対する給与計算対象期間」の途中で入社した場合には、 |
’ 給与計算対象期間における途中入社の場合の「報酬月額」の算定 ’
新入社員が給与計算対象期間の途中に入社したことにより、その入社月の給与等が「本来の1ヶ月分の給与」を反映していない場合であり、
「入社月の報酬支払基礎日数」が、『「各被保険者区分(正社員・パート社員・短時間労働者)」ごとに定められている「報酬支払基礎日数の要件」』を満たしていない場合には、
・入社月の「 ⑬ 合計」欄には「 - 」が記入され、 ・「 ⑭ 総計」欄及び「 ⑮ 平均額」欄には、「入社月に支払われた報酬額」を除外して「総計額」及び「平均額」が計算されます。 |
このため、このような場合には、「 ⑮ 平均額」欄に記載された金額が「報酬月額」となります。 |
他方、新入社員が給与計算対象期間の途中に入社したことにより、その入社月の給与等が「本来の1ヶ月分の給与」を反映していない場合であり、
「入社月の報酬支払基礎日数」が、『「各被保険者区分」に対して定められている「報酬支払基礎日数の要件」』を満たしている場合には、
・入社月の「 ⑬ 合計」欄には「合計金額」が記入され、 ・「 ⑭ 総計」欄及び「 ⑮ 平均額」欄には、一旦「入社月に支払われた報酬額」も含めて「総計額」及び「平均額」が計算されます。 |
ただし、上記「平均額」は、「本来の1ヶ月分の給与」を反映しない「入社月に支払われた報酬額」が含まれたものとなるため、
当該「入社月に支払われた報酬額」を除いた「修正平均額」を「 ⑯修正平均額」欄で修正計算し、これを最終的な「報酬月額」とします。 |
’ 「途中入社」である旨の報告理由 ’
新入社員が「4月~6月の途中で入社した場合」には、上記でご紹介させて頂きましたように、「報酬月額」は「特殊な計算」により算定されることとなります。
このことを会社から保険者に報告するために、「途中入社」に該当する旨を「報酬月額算定基礎届」に記載することが必要となります。
5) 病休・育休・休職等の場合
・被保険者である従業員・役員が「病休・育休・休職」等の場合には、 ⇒この欄に「 ◯ 」を付けるとともに、 ⇒「9 その他」欄に「その期間」等を記入します。 |
6)「パート社員」に該当する場合
被保険者である従業員が、「パート社員」である場合には、この欄に「 ◯ 」を付けます。 |
Point !: パート社員(短時間就労者)とは 「その会社でフルタイムの基幹的な働き方をしている労働者(正社員等)」よりも労働時間は少ないが、 「1週間の所定労働時間」および「1か月の所定労働日数」が同じ事業所で同様の業務に従事している「正社員の4分の3以上」であるために、社会保険に加入している 「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」などの従業員のことを指します。 |
’ 「パート社員」である旨の報告理由 ’
「パート社員」の場合における『「報酬月額」の算定計算』は、
- 『「報酬月額」の算定計算の対象とする月』の『「報酬支払基礎日数」の下限要件』が15日となる
- 『「報酬月額」の算定計算の対象とする月』の判断が2段階で行われる等
『「正社員」の場合における「報酬月額」の算定方法』と異なるものとなります。
このため、従業員が「パート社員」に該当する場合には、
『「報酬月額」の算定計算』が「パート社員に係る算定計算」で行われていることを保険者に明示するため、「報酬月額算定基礎届」で「パート社員」に該当する旨を記載することが必要となります。
※なお、『パート社員である場合の「報酬月額」の算定方法』につきましては、別途『定時決定における「報酬月額」の算定方法』の「Ⅲ-2 パート社員に係る「報酬月額」の算定方法』で詳しくご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、上記リンクページを一読頂ますようお願い致します。
7)「(特定適用事業所等における)短時間労働者」に該当する場合
被保険者である従業員が、「(特定適用事業所等における)短時間労働者」である場合には、この欄に「 ◯ 」を付けます。 |
Point !: 「(特定適用事業所等における)短時間労働者」とは 社会保険の被保険者数が常時501人以上いる事業所(特定適用事業所)に勤務しており、 「1週間の所定労働時間」および「1か月の所定労働日数」が同じ事業所で同様の業務に従事している「正社員の4分の3未満」であるが、 「1週間の所定労働時間」が「20時間以上」であり、 「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」などの従業員のことを指します。 |
’ 「短時間労働者」である旨の報告理由 ’
「短時間労働者」の場合における『「報酬月額」の算定計算』は、
- 『「報酬月額」の算定計算の対象とする月』の『「報酬支払基礎日数」の下限要件』が11日となる等
『「正社員」の場合における「報酬月額」の算定方法』と異なるものとなります。
このため、従業員が「短時間労働者」に該当する場合には、
『「報酬月額」の算定計算』が「短時間労働者に係る算定計算」で行われていることを保険者に明示するため、「報酬月額算定基礎届」で「短時間労働者」に該当する旨を記載することが必要となります。
8)「年間平均額」を使用する場合
「標準報酬月額」を「年間平均額」で算定する場合には、この欄に「 ◯ 」を付けます。 |
Point !:「年間平均額」を使用する場合における提出書類 「標準報酬月額」を「年間平均額」で算定する場合には、「報酬月額算定基礎届」とは別に、
という書類を社会保険の保険者に提出することが必要となります。 |
’ 「標準報酬月額」の「年平均額」による算定 ’
・『4月~6月の3か月間の報酬支払額をもとに算出した「標準報酬月額」』が、
・『過去1年間(前年7月~当年6月)の月平均報酬額によって算出した「標準報酬月額」』と比べて2等級以上の差があり、
・この差が業務の性質上、例年発生することが見込まれる場合には、
保険者が「標準報酬月額」を算定することとなり、
『前年7月から当年6月までの間に受けた報酬の「月平均額」』が「標準報酬月額」となります。 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、「標準報酬月額の定時決定」の際に、会社から保険者に届け出る『「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載項目の内容・記載方法』をご紹介させて頂いております。
「定時決定」は、会社に在籍する被保険者の社会保険料の計算基礎となる「標準報酬月額」を決定する重要な手続きになるため、
「定時決定」で社会保険の保険者に提出する「被保険者報酬月額算定基礎届」に記載される項目につきましては、十分な理解が必要となると考えます。
このため、ここでは、なぜその記載が必要となるのか等の理由も含めて、その記載方法をご紹介させて頂いております。
「被保険者報酬月額算定基礎届」に記載する内容等で不明なものがある場合には、当該ページを一読して頂きますようお願い致します。