ここでは、「標準報酬月額の定時決定」の際に、会社から保険者に届け出る「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方を、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
なお、ここでご紹介させて頂きます書き方は、『正社員に係る「被保険者報酬月額算定基礎届」』の書き方となります。
Ⅰ:「支払基礎日数」が「いずれの月も17日以上ある」場合
1、「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方
「4月支払報酬」「5月支払報酬」「6月支払報酬」に対する「報酬支払基礎日数」がいずれも「17日以上」ある場合には、以下のStepに従って「被保険者報酬月額算定基礎届」に必要事項を記入します。
’ Step1 :「報酬支払基礎日数」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払基礎日数」欄には、以下のように正社員の「雇用形態」に応じた「報酬支払基礎日数」を記入します。
「完全月給制」の場合や「月給日給制で欠勤等による給与支給額の減額がなされなかった」場合は、 「月給日給制で、その月に欠勤等により給与支給額の減額がなされた」場合は、 「日給制、時給制等」の場合は、「出勤日数」が「支払基礎日数」となります。 |
Point !:「月給制」の場合における「報酬支払基礎日数」のカウント 『「月給制」が採用されている正社員』に対して「報酬支払基礎日数」が減少する場合としては、 すなわち、 |
留 意 事 項
「4月、5月、6月の報酬支払額」欄には、「それぞれの月に支払われた報酬」を記入しますが、
「それぞれの月の支払基礎日数」欄には、その支払報酬の計算対象期間における「支払基礎日数」を記入します。
「有給休暇」が取得された場合には、「有給休暇日」も「報酬支払基礎日数」に含めてカウントすることが必要となります。
当該「支払基礎日数の記入」は、「支払基礎日数」が「17日以上あるか否か」を会社が保険者に報告するために記載されるものとなります。
’ Step2 :「報酬支払額」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払額」欄には、「4月、5月、6月に支払われた報酬額」を記入します。
「通貨」欄及び「現物」欄には、
「金銭による報酬額」「現物による報酬額」を、それぞれ区分して記入します。 |
「合計」欄には、
「金銭による報酬」と「現物による報酬」の「合計額」を記入します。 |
留 意 事 項
「報酬支払額」の記入にあたっては、「4月、5月、6月に支払われた報酬額」を記入します。
(給与計算対象期間が4月、5月、6月のものではない点にご留意下さい。)
「報酬の支払額」の記入にあたっては、『社会保険において「報酬」となる「給与の範囲」』を十分ご確認下さい。
なお、この点につきましては、『定時決定における「報酬月額」の算定方法のⅡ:「4・5・6月の支払額」に含める「報酬の範囲」』でご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、当該ページを御覧下さい。
現物支給のうち、
・「食事等の提供」「社宅等の貸与」がある場合には、厚生労働省が公表する「全国現物給与価額一覧表」に基づいて金銭評価することが必要となります。
・また、「1ヶ月を超える期間の定期券等の現物支給」がある場合には、「1 ヵ月あたりの額」を算出して各月の「報酬」に含めることが必要となります。
’ Step3 :「総計金額」及び「報酬月額」の記入 ’
「総計」欄に、
「4月、5月、6月の報酬支払額」の「合計金額」を記入します。 |
また、「平均額」欄に
上記の「合計金額」を「3ヶ月」で「除した金額」を記入します。 なお、この「平均額」が「報酬月額」となります。 |
2、例示による解説
例 示 1 ( 金銭給付のみの場合 & 日給月給制の場合 )
設 例 ’
【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「21日 ~ 翌月20日」 ・給与支払日は、「翌月の末日」の場合 【報酬の支払状況 ( 日給月給制 )】 ・4月30日支払額: 基本給:250,000円、資格手当:10,000円、住宅手当:5,000円、通勤費:15,000円、残業代:18,000円 ⇒ 合計支払額:298,000円 【勤怠状況】 ・4月30日支払分⇒3月21日~4月20日(暦日数:31日、欠勤:0日、有給:0日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月30日支払分 ⇒ 暦日数:31日 【報酬の支払額 】 ・4月30日支払額:298,000円 ・5月31日支払額:287,000円 ・6月30日支払額:292,000円 |
例 示 2 ( 現物給付がある場合 & 完全月給制の場合 )
設 例 ’
【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「1日 ~ 月末日」 ・給与支払日は、「翌月の10日」の場合 【報酬の支払状況 ( 完全月給制 ) 勤務先:東京】 ・4月10日支払額: ・5月10日支払額: ・6月10日支払額: 【勤怠状況】 ・4月10日支払分⇒3月1日~3月31日(暦日数:31日、欠勤:0日、有給:0日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月10日支払分 ⇒ 暦日数:31日 【現物支給の金額 】 ①1ヶ月あたりの定期券の評価額: 90,000円 ÷ 6ヶ月 = 15,000円 ②昼食代金 ③社宅の貸与 【報酬の支払額 】 ・4月10日支払額:金銭)278,000円 現物)15,000円 ⇒ 合計)293,000円 |
Ⅱ:「支払基礎日数」が「17日未満の月がある」場合
1、「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方
欠勤等により「給与支給額」が減額された結果、
「4月支払報酬」「5月支払報酬」「6月支払報酬」に対する「報酬支払基礎日数」が「17日未満の月」がある場合には、以下のStepに従って「被保険者報酬月額算定基礎届」に必要事項を記入します。
’ Step1 :「報酬支払基礎日数」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払基礎日数」欄への記入につきましては、
「 上 記 Ⅰ と 同 様 」の記入となります。 |
留 意 事 項
「報酬支払基礎日数」が「17日未満」である月は、「その月の報酬支払額」は「報酬月額」の計算から除外されます。
このため、「17日未満の月」の「報酬支払基礎日数」の記入を行う場合には、特に慎重に「報酬支払基礎日数」のカウントを行うことが必要となります。
’ Step2 :「報酬支払額」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払額」欄には、「4月、5月、6月に支払われた報酬額」を記入します。
「通貨」欄及び「現物」欄には、
「金銭による報酬額」「現物による報酬額」を、それぞれ区分して記入します。 |
「合計」欄には、
「報酬支払基礎日数が17日以上の月」は、 「報酬支払基礎日数が17日未満となる月」は、 |
留 意 事 項
「通貨」欄及び「現物」欄への記入につきましては、
「報酬支払基礎日数」が「17日以上の月」及び「17日未満の月」のいずれの場合であっても、
報酬の支払がある場合には、保険者に「支払った報酬額」を報告するために「通貨」欄と「現物」欄に記入します。
他方「合計」欄への記入につきましては、「17日未満の月」につきましては、
『「正社員の支払基礎日数の要件」を充たさない月』であることから、合計額には「 - 」を記入します。
’ Step3 :「総計金額」及び「報酬月額」の記入 ’
「報酬支払基礎日数が 17日未満 の月」 が 「1ヶ月」 ある場合
「総計」欄に、
「4月、5月、6月の報酬支払額」のうち、『「報酬支払基礎日数」が「17日以上ある月」』の「報酬支払額の合計額」を記入します。 |
また、「平均額」欄に
上記の「合計金額」を「2ヶ月」で「除した金額」を記入します。 なお、この「平均額」が「報酬月額」となります。 |
「報酬支払基礎日数が 17日未満 の月」 が 「2ヶ月」 ある場合
「総計」欄に、
「4月、5月、6月の報酬支払額」のうち、『「報酬支払基礎日数」が「17日以上ある月」』の「報酬支払額」を記入します。 |
また、「平均額」欄に
「4月、5月、6月の報酬支払額」のうち、『「報酬支払基礎日数」が「17日以上ある月」』の「報酬支払額」を記入します。 なお、この「報酬支払額」が「報酬月額」となります。 |
留 意 事 項
「17日以上ある月」が1ヶ月でもある場合には、『「総計」欄で「集計する金額」』及び『「平均額」欄で「平均する金額」』は、『「支払基礎日数」が「17日以上ある月」』を対象として計算します。
’ Step4 :「備考」欄への記入 ’
「正社員」の支払基礎日数が17日未満となるような場合には、
何らかの理由があるため、その理由を保険者に報告する意味で、
「備考」欄の『 9 その他 』欄に、「支払基礎日数が17日未満となった理由」等を簡潔に記載しておくと良いと考えます。 |
※ なお、この記載は必ずしも要求はされていません。
2、例示による解説
例 示 1 ( 「17日未満の月」が1ヶ月ある場合 )
設 例 ’
【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「16日 ~ 翌月15日」 ・給与支払日は、「翌月の25日」の場合 【報酬の支払状況 (日給月給制)】 ・4月25日支払額: 基本給:250,000円、資格手当:10,000円、住宅手当:5,000円、通勤費:15,000円、残業代:18,000円 ⇒ 合計支払額:298,000円 【勤怠状況】 ・4月25日支払分⇒3月16日~4月15日(暦日数:31日、欠勤:0日、有給:0日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月25日支払分 ⇒ 暦日数:31日 【報酬の支払額 】 ・4月25日支払額:298,000円 ・5月25日支払額:200,000円 ・6月25日支払額:292,000円 |
例 示 2 ( 「17日未満の月」が2ヶ月ある場合 )
設 例 ’
【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「16日 ~ 翌月15日」 ・給与支払日は、「翌月の25日」の場合 【報酬の支払状況 (日給月給制)】 ・4月25日支払額: 基本給:250,000円、資格手当:10,000円、住宅手当:5,000円、通勤費:15,000円、残業代:0円、支給控除額:▲96,000円 ⇒ 合計支払額:184,000円 【勤怠状況】 ・4月25日支払分⇒3月16日~4月15日(暦日数:31日、欠勤:12日、有給:0日、所定労働日数:23日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月25日支払分 ⇒ 所定労働日数:23日 - 欠勤日数:12日 = 11日 【報酬の支払額 】 ・4月25日支払額:184,000円 ・5月25日支払額:200,000円 ・6月25日支払額:292,000円 |
Ⅲ:「支払基礎日数」が「17日以上の月がない」場合
1、「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方
欠勤等により「給与支給額」が減額された結果、
「4月支払報酬」「5月支払報酬」「6月支払報酬」に対する「報酬支払基礎日数」が「17日以上となる月」がない場合には、以下のStepに従って「被保険者報酬月額算定基礎届」に必要事項を記入します。
’ Step1 :「報酬支払基礎日数」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払基礎日数」欄への記入につきましては、
「 上 記 Ⅰ と 同 様 」の記入となります。 |
留 意 事 項
『4月、5月、6月の「報酬支払基礎日数」がすべて「17日未満」であること』を保険者に報告するために、「各月の報酬支払基礎日数」の記入は必要となります。
’ Step2 :「報酬支払額」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払額」欄には、「4月、5月、6月に支払われた報酬額」を記入します。
「通貨」欄及び「現物」欄には、
「金銭による報酬額」「現物による報酬額」を、それぞれ区分して記入します。 |
なお、「金銭による報酬額」「現物による報酬額」が全くない場合には、「通貨」欄「現物」欄には「0」を記入します。 |
「合計」欄には、
「4月、5月、6月」ともに、「 - (バー)」を記入します。 |
留 意 事 項
「通貨」欄及び「現物」欄への記入につきましては、
「報酬支払基礎日数」がすべて「17日未満」である場合にも、保険者に「支払った報酬額」を報告するために「通貨」欄と「現物」欄に記入します。
他方「合計」欄への記入につきましては、「4月、5月、6月」がともに『「正社員の支払基礎日数の要件」を充たさない月』であるため、合計額には「 - 」を記入します。
’ Step3 :「総計金額」及び「報酬月額」の記入 ’
この場合には、
「総計」欄及び「平均額」欄には、何も記入する必要はなく、「空欄」とします。 |
なお、この場合には、
社会保険の保険者が「報酬月額」を算定することとなり、
結果的に、引き続き「従前の報酬月額」が「(定時決定後の)報酬月額」となります。 |
’ Step4 :「備考」欄への記入 ’
「4月、5月、6月」のすべての支払基礎日数が17日未満となるような場合には、
何らかの理由があるため、その理由を保険者に報告することが必要となります。
この点、
「支払基礎日数が17日未満となった理由」が、「産休・育休・休職等」である場合には、
「備考」欄の『 5 産休・育休・休職等』欄に、「 ◯ 」を付け、 「備考」欄の『 9 その他』欄に、「その事由の開始日等」を記載します。 |
「支払基礎日数が17日未満となった理由」が、「その他の事由」である場合には、
「備考」欄の『 9 その他』欄に、「その事由・その開始日等」を簡潔に記載します。 |
2、例示による解説
設 例 ’
【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「16日 ~ 翌月15日」 ・給与支払日は、「翌月の25日」の場合 【報酬の支払状況 (日給月給制)】 ・4月25日支払額: 基本給:250,000円、資格手当:10,000円、住宅手当:5,000円、通勤費:15,000円、残業代:0円、支給控除額:▲80,000円 ⇒ 合計支払額:200,000円 【勤怠状況】 ・4月25日支払分⇒3月16日~4月15日(暦日数:31日、欠勤:10日、有給:0日、所定労働日数:23日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月25日支払分 ⇒ 所定労働日数:23日 - 欠勤日数:10日 = 13日 【報酬の支払額 】 ・4月25日支払額:200,000円 ・5月25日支払額:0円 ・6月25日支払額:0円 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『「正社員」に係る「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方』をご紹介させて頂いております。
当該「被保険者報酬月額算定基礎届」は、『「9月分の社会保険料」以降の「1年間の社会保険料」の計算に使用される「標準報酬」』を決定するために重要な届出となることから、この届出の記載につきましては、適切に行って頂ますようお願い致します。
4月、5月、6月の報酬額の集計につきまして
「報酬月額」につきましては「4月、5月、6月に支払われた報酬額」により原則計算されることから、
「4月、5月、6月に支払われた給与の金額」は、社会保険制度上、大変重要なものとなります。
このため、
- 社会保険制度において、「報酬」となる『「給与」の範囲』を十分に理解して、
- 4月、5月、6月に支払われた「報酬」を適切に集計計算して頂きますようお願い致します。
「現物給付」につきまして
社会保険制度におきましては、通貨以外で支払われたものであっても、「従業員に対する利益提供」となるものにつきましては、『「時価」により金銭評価』して「現物給付」として「報酬」に含めることが必要な場合があります。
なお「現物給付」のうち、「食事の提供」「社宅の貸与」につきましては、金銭評価するための基準が「日本年金機構のHP」上で公表されていますので、当該HPをご確認の上、適切に評価して頂きますようお願い致します。
また、「食事の提供」「社宅の貸与」につきましては、税務上「非課税給与」とするために、従業員・役員から一定の「自己負担額を徴収している」ことが多いのではないかと考えます。
このような場合には、『社会保険制度上「報酬」に含めなくてもよい場合』に該当することが多いと思いますので、
従業員・役員から「自己負担額」を徴収している場合には、是非この点につきましても、慎重にご判断頂ますようお願い致します。
「報酬支払基礎日数」のカウントにつきまして
『正社員の「報酬月額」を計算する』場合には、
「報酬支払算定基礎日数」が「17日以上あるかないか」が大変重要となります。
このため、欠勤により給与支給額が減額されている正社員につきましては、
『「報酬支払算定基礎日数」の算定』につき、慎重にカウントして頂きますようお願い致します。