ここでは、「標準報酬月額の定時決定」の際に、会社から保険者に届け出る「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方を、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
なお、ここでご紹介させて頂きます書き方は、『短時間労働者に係る「被保険者報酬月額算定基礎届」』の書き方となります。
短時間労働者の定義
ここでご紹介させて頂く「短時間労働者」とは、以下の従業員をいいます。
社会保険の被保険者数が常時501人以上いる事業所(特定適用事業所)に勤務しており、 「1週間の所定労働時間」および「1か月の所定労働日数」が同じ事業所で同様の業務に従事している「正社員の4分の3未満」であるが、 「1週間の所定労働時間が20時間以上あること」等の要件をみたしているために、社会保険に加入している 「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」などの従業員のことを指します。 |
Point ! 短時間労働者につきまして 「短時間労働者が存在する会社」は、被保険者数がその事業所に常時501人以上いる「大規模な会社のみ」となります。 |
Point ! 『正社員に係る「被保険者報酬月額算定基礎届」の記入方法』との異同 『短時間労働者に係る「被保険者報酬月額算定基礎届」の記入方法』は、『正社員に係る「被保険者報酬月額算定基礎届」の記入方法』とほぼ同様の記入方法となります。 ただし、
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Ⅰ:「支払基礎日数」が「いずれの月も11日以上ある」場合
1、「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方
「4月支払報酬」「5月支払報酬」「6月支払報酬」に対する「報酬支払基礎日数」がいずれも「11日以上」ある場合には、以下のStepに従って「被保険者報酬月額算定基礎届」に必要事項を記入します。
’ Step1 :「報酬支払基礎日数」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払基礎日数」欄には、以下のように短時間労働者の「雇用形態」に応じた「報酬支払基礎日数」を記入します。
「日給制、時給制等」の場合は、「出勤日数」が「支払基礎日数」となります。 「完全月給制」の場合や「月給日給制で欠勤等による給与支給額の減額がなされなかった」場合は、 「月給日給制で、その月に欠勤等により給与支給額の減額がなされた」場合は、 |
Point !: 正社員に係る『「報酬支払基礎日数」のカウント方法』との異同 『「短時間労働者」に係る「報酬支払基礎日数」のカウント方法』は、『「正社員」に係る「報酬支払基礎日数」のカウント方法』と同様のカウント方法となります。 ただし、「短時間労働者」につきましては、「日給制」「時給制」での労働契約となっていることが多いと思いますので、 『「正社員」に係る「報酬支払基礎日数」』につきましては、「17日以上であるか否か」が重要となりますが、 |
留 意 事 項
「4月、5月、6月の報酬支払額」欄には、「それぞれの月に支払われた報酬」を記入しますが、
「それぞれの月の支払基礎日数」欄には、その支払報酬の計算対象期間における「支払基礎日数」を記入します。
「有給休暇」が取得された場合には、「有給休暇日」も「報酬支払基礎日数」に含めてカウントすることが必要となります。
当該「支払基礎日数の記入」は、「支払基礎日数」が「11日以上あるか否か」を会社が保険者に報告するために記載されるものとなります。
’ Step2 :「報酬支払額」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払額」欄には、「4月、5月、6月に支払われた報酬額」を記入します。
「通貨」欄及び「現物」欄には、
「金銭による報酬額」「現物による報酬額」を、それぞれ区分して記入します。 |
「合計」欄には、
「金銭による報酬」と「現物による報酬」の「合計額」を記入します。 |
留 意 事 項
「報酬支払額」の記入にあたっては、「4月、5月、6月に支払われた報酬額」を記入します。
(給与計算対象期間が4月、5月、6月のものではない点にご留意下さい。)
「報酬の支払額」の記入にあたっては、『社会保険において「報酬」となる「給与の範囲」』を十分ご確認下さい。
なお、この点につきましては、『定時決定における「報酬月額」の算定方法のⅡ:「4・5・6月の支払額」に含める「報酬の範囲」』でご紹介させて頂いておりますので、必要がある場合には、当該ページを御覧下さい。
現物支給のうち、
・「食事等の提供」「社宅等の貸与」がある場合には、厚生労働省が公表する「全国現物給与価額一覧表」に基づいて金銭評価することが必要となります。
・また、「1ヶ月を超える期間の定期券等の現物支給」がある場合には、「1 ヵ月あたりの額」を算出して各月の「報酬」に含めることが必要となります。
’ Step3 :「総計金額」及び「報酬月額」の記入 ’
「総計」欄に、
「4月、5月、6月の報酬支払額」の「合計金額」を記入します。 |
また、「平均額」欄に
上記の「合計金額」を「3ヶ月」で「除した金額」を記入します。 なお、この「平均額」が「報酬月額」となります。 |
’ Step4 :「備考」欄への記入 ’
従業員が「短時間労働者」である場合には、
「備考」欄の『 6 短時間労働者 』欄に、「 ◯ 」を記入します。 |
2、例示による解説
例 示 1 ( 金銭給付のみの場合 & 時給制の場合 )
設 例 ’
【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「16日 ~ 翌月15日」 ・給与支払日は、「翌月の25日」の場合 【報酬の支払状況 ( 時給制 )】 ・4月25日支払額: 基本給:96,000円、通勤費:9,000円、残業代:2,400円 ⇒ 合計支払額:107,400円 【勤怠状況】 ・4月25日支払分⇒3月16日~4月15日(出勤日数:16日、有給:0日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月25日支払分 ⇒ 出勤日数:16日 【報酬の支払額 】 ・4月25日支払額:107,400円 ・5月25日支払額:106,200円 ・6月25日支払額:123,000円 |
例 示 2 ( 現物給付がある場合 & 日給制の場合 )
設 例 ’
【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「1日 ~ 月末日」 ・給与支払日は、「翌月の10日」の場合 【報酬の支払状況 ( 日給制 ) 勤務先:東京】 ・4月10日支払額: ・5月10日支払額: ・6月10日支払額: 【勤怠状況】 ・4月10日支払分⇒3月1日~3月31日(出勤日数:16日、有給:0日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月10日支払分 ⇒ 出勤日数:16日 【現物支給の金額 】 ①1ヶ月あたりの定期券の評価額: 27,000円 ÷ 3ヶ月 = 9,000円 ②昼食代金
【報酬の支払額 】 ・4月10日支払額:金銭)98,400円 現物)10,200円 ⇒ 合計)108,600円 |
Ⅱ:「支払基礎日数」が「11日未満の月がある」場合
1、「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方
「4月支払報酬」「5月支払報酬」「6月支払報酬」に対する「報酬支払基礎日数」が「11日未満の月」がある場合には、以下のStepに従って「被保険者報酬月額算定基礎届」に必要事項を記入します。
’ Step1 :「報酬支払基礎日数」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払基礎日数」欄への記入につきましては、
「 上 記 Ⅰ と 同 様 」の記入となります。 |
留 意 事 項
「報酬支払基礎日数」が「11日未満」である月は、「その月の報酬支払額」は「報酬月額」の計算から除外されます。
このため、「11日未満の月」の「報酬支払基礎日数」の記入を行う場合には、特に慎重に「報酬支払基礎日数」のカウントを行うことが必要となります。
’ Step2 :「報酬支払額」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払額」欄には、「4月、5月、6月に支払われた報酬額」を記入します。
「通貨」欄及び「現物」欄には、
「金銭による報酬額」「現物による報酬額」を、それぞれ区分して記入します。 |
「合計」欄には、
「報酬支払基礎日数が11日以上の月」は、 「報酬支払基礎日数が11日未満となる月」は、 |
留 意 事 項
「通貨」欄及び「現物」欄への記入につきましては、
「報酬支払基礎日数」が「11日以上の月」及び「11日未満の月」のいずれの場合であっても、
報酬の支払がある場合には、保険者に「支払った報酬額」を報告するために「通貨」欄と「現物」欄に記入します。
他方「合計」欄への記入につきましては、「11日未満の月」につきましては、
『「短時間労働者の支払基礎日数の要件」を充たさない月』であることから、合計額には「 - 」を記入します。
’ Step3 :「総計金額」及び「報酬月額」の記入 ’
「報酬支払基礎日数が 11日未満 の月」 が 「1ヶ月」 ある場合
「総計」欄に、
「4月、5月、6月の報酬支払額」のうち、『「報酬支払基礎日数」が「11日以上ある月」』の「報酬支払額の合計額」を記入します。 |
また、「平均額」欄に
上記の「合計金額」を「2ヶ月」で「除した金額」を記入します。 なお、この「平均額」が「報酬月額」となります。 |
「報酬支払基礎日数が 11日未満 の月」 が 「2ヶ月」 ある場合
「総計」欄に、
「4月、5月、6月の報酬支払額」のうち、『「報酬支払基礎日数」が「11日以上ある月」』の「報酬支払額」を記入します。 |
また、「平均額」欄に
「4月、5月、6月の報酬支払額」のうち、『「報酬支払基礎日数」が「11日以上ある月」』の「報酬支払額」を記入します。 なお、この「報酬支払額」が「報酬月額」となります。 |
留 意 事 項
「11日以上ある月」が1ヶ月でもある場合には、『「総計」欄で「集計する金額」』及び『「平均額」欄で「平均する金額」』は、『「支払基礎日数」が「11日以上ある月」』を対象として計算します。
’ Step4 :「備考」欄への記入 ’
従業員が「短時間労働者」である場合には、
「備考」欄の『 6 短時間労働者 』欄に、「 ◯ 」を記入します。 |
2、例示による解説
例 示 1 ( 「11日未満の月」が1ヶ月ある場合 )
設 例 ’
【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「21日 ~ 翌月20日」 ・給与支払日は、「翌月の末日」の場合 【報酬の支払状況 (日給月給制)】 ・4月30日支払額: 基本給:120,000円、通勤費:9,000円、残業代:2,400円 ⇒ 合計支払額:131,400円 【勤怠状況】 ・4月30日支払分⇒3月21日~4月20日(暦日数:31日、欠勤:0日、有給:0日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月30日支払分 ⇒ 暦日数:31日 【報酬の支払額 】 ・4月30日支払額:131,400円 ・5月30日支払額:67,200円 ・6月30日支払額:138,600円 |
例 示 2 ( 「11日未満の月」が2ヶ月ある場合 )
設 例 ’
【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「21日 ~ 翌月20日」 ・給与支払日は、「翌月の末日」の場合 【報酬の支払状況 (日給月給制)】 ・4月30日支払額: 基本給:120,000円、通勤費:9,000円、残業代:0円、欠勤控除:▲56,000円 ⇒ 合計支払額:73,000円 【勤怠状況】 ・4月30日支払分⇒3月21日~4月20日(暦日数:31日、欠勤:8日、有給:0日、所定労働日数:16日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月30日支払分 ⇒ 所定労働日数:16日 - 欠勤日数:8日 = 8日 【報酬の支払額 】 ・4月30日支払額:73,000円 ・5月30日支払額:67,200円 ・6月30日支払額:138,600円 |
Ⅲ:「支払基礎日数」が「11日以上の月がない」場合
1、「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方
「4月支払報酬」「5月支払報酬」「6月支払報酬」に対する「報酬支払基礎日数」が「11日以上となる月」がない場合には、以下のStepに従って「被保険者報酬月額算定基礎届」に必要事項を記入します。
’ Step1 :「報酬支払基礎日数」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払基礎日数」欄への記入につきましては、
「 上 記 Ⅰ と 同 様 」の記入となります。 |
留 意 事 項
『4月、5月、6月の「報酬支払基礎日数」がすべて「11日未満」であること』を保険者に報告するために、「各月の報酬支払基礎日数」の記入は必要となります。
’ Step2 :「報酬支払額」の記入 ’
「それぞれの月の報酬支払額」欄には、「4月、5月、6月に支払われた報酬額」を記入します。
「通貨」欄及び「現物」欄には、
「金銭による報酬額」「現物による報酬額」を、それぞれ区分して記入します。 |
なお、「金銭による報酬額」「現物による報酬額」が全くない場合には、「通貨」欄「現物」欄には「0」を記入します。 |
「合計」欄には、
「4月、5月、6月」ともに、「 - (バー)」を記入します。 |
留 意 事 項
「通貨」欄及び「現物」欄への記入につきましては、
「報酬支払基礎日数」がすべて「11日未満」である場合にも、保険者に「支払った報酬額」を報告するために「通貨」欄と「現物」欄に記入します。
他方「合計」欄への記入につきましては、「4月、5月、6月」がともに『「短時間労働者の支払基礎日数の要件」を充たさない月』であるため、合計額には「 - 」を記入します。
’ Step3 :「総計金額」及び「報酬月額」の記入 ’
この場合には、
「総計」欄及び「平均額」欄には、何も記入する必要はなく、「空欄」とします。 |
なお、この場合には、
社会保険の保険者が「報酬月額」を算定することとなり、
結果的に、引き続き「従前の報酬月額」が「(定時決定後の)報酬月額」となります。 |
’ Step4 :「備考」欄への記入 ’
「短時間労働者」欄への記入
従業員が「短時間労働者」である場合には、
「備考」欄の『 6 短時間労働者 』欄に、「 ◯ 」を記入します。 |
11日未満の理由の記入
「4月、5月、6月」のすべての支払基礎日数が11日未満となったことに、特別の事由があるような場合には、その理由を保険者に報告することが必要となります。
この点、
「支払基礎日数が11日未満となった理由」が、「産休・育休・休職等」である場合には、
「備考」欄の『 5 産休・育休・休職等』欄に、「 ◯ 」を付け、 「備考」欄の『 9 その他』欄に、「その事由の開始日等」を記載します。 |
「支払基礎日数が11日未満となった」ことに上記の他「その他の事由」がある場合には、
「備考」欄の『 9 その他』欄に、「その事由・その開始日等」を簡潔に記載します。 |
2、例示による解説
設 例 ’
【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「16日 ~ 翌月15日」 ・給与支払日は、「翌月の25日」の場合 【報酬の支払状況 (日給月給制)】 ・4月25日支払額: 基本給:120,000円、通勤費:9,000円、残業代:0円、欠勤控除:▲56,000円 ⇒ 合計支払額:73,000円 【勤怠状況】 ・4月25日支払分⇒3月16日~4月15日(暦日数:31日、欠勤:8日、有給:0日、所定労働日数:16日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月25日支払分 ⇒ 所定労働日数:16日 - 欠勤日数:8日 = 8日 【報酬の支払額 】 ・4月25日支払額:73,000円 ・5月25日支払額:0円 ・6月25日支払額:0円 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『「短時間労働者」に係る「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方』をご紹介させて頂いております。
当該「被保険者報酬月額算定基礎届」は、『「9月分の社会保険料」以降の「1年間の社会保険料」の計算に使用される「標準報酬」』を決定するために重要な届出となることから、この届出の記載につきましては、適切に行って頂ますようお願い致します。
短時間労働者の『「報酬月額算定届」の記入方法』と『「報酬月額」の計算方法』につきまして
短時間労働者の「報酬月額算定基礎届」の記載方法は、『正社員の「報酬月額算定基礎届」』とほぼ同様の記載方法となります。
すなわち、
- 4月、5月、6月に支払われた「報酬」の集計方法
- 「報酬支払基礎日数」のカウント方法
- また、それらの「報酬月額算定基礎届」への記入方法
につきましては、正社員の場合と同様のものとなります。
ただし、「報酬月額」につき、「報酬支払基礎日数が11日以上ある月」が算定対象となる点が短時間労働者に特有のものとなります。
報酬額の集計につきまして
・4月、5月、6月に支払われた「報酬」の集計につきましては、
社会保険制度において「報酬」となる『「給与」の範囲』を十分に理解して、適切に「報酬額」を集計することが必要となります。
・また、「現物給付」がある場合には、その現物給付を適切に金銭評価して、「報酬」に含めることが必要となります。
「報酬支払基礎日数」のカウントにつきまして
『短時間労働者の「報酬月額」を計算する』場合には、
「報酬支払算定基礎日数」が「11日以上あるかないか」が大変重要となります。
このため、「報酬支払算定基礎日数」につきましては、慎重にカウントして頂きますようお願い致します。