ここでは、「標準報酬月額の定時決定」の際に、会社から保険者に届け出る「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方を、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
なお、ここでご紹介させて頂きます書き方は、『途中入社の従業員、途中退職者・途中退任役員に係る「被保険者報酬月額算定基礎届」』の書き方となります。
Ⅰ:途中入社者の「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方
新入社員が『4月、5月、6月の報酬支払額に係る「給与計算対象期間」の途中に入社した』ことにより、
「その入社月の給与」が、「日割計算」される等「本来の1ヶ月分の給与」を反映していない場合には、
「入社月の報酬支払額」を含めて「報酬月額」を算定してしまうと、
その「報酬月額」は、「本来の1ヶ月分の(平均)給与金額」よりも低くなってしまいます。
このため、上記のような場合には、
「本来の1ヶ月分の給与」を反映していない「入社月の給与」は、 『「報酬月額」の平均計算』から除外して、「報酬月額」を計算することが必要となります。 |
以下では、このような「給与計算期間の途中に入社した従業員」に係る『「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載方法』を
- 『入社月の「報酬支払基礎日数」』が『「報酬支払基礎日数の要件」を充たしていない』場合
- 『入社月の「報酬支払基礎日数」』が『「報酬支払基礎日数の要件」を充たしている』場合
に分けて、ご紹介させて頂きます。
1、入社月が「報酬支払基礎日数の要件」を充たしていない場合
・新入社員が給与計算対象期間の途中に入社したことにより、その「入社月の給与」等が「本来の1ヶ月分の給与」を反映していない場合であり、
・「入社月の報酬支払基礎日数」が、『「被保険者区分(正社員・パート社員・短時間労働者)」ごとに定められている「報酬支払基礎日数の要件」』を充たしていない場合には、
『「報酬月額算定基礎届」への記載方法』は、以下のようなものとなります。
’ 1)「報酬支払基礎日数」の記入 ’
・『入社月の「給与計算の基礎日数」』欄には、「日割計算に用いた日数」を、 ・『その他の月の「給与計算の基礎日数」』欄には、「報酬支払基礎日数」を記入します。 |
なお、この場合における『入社月の「報酬支払基礎日数」』は、
- 正社員の場合で17日未満
- パート社員(短時間就労者)の場合で15日未満
- 短時間労働者の場合で11日未満となります。
’ 2)「報酬支払額」の記入 ’
「通貨」欄及び「現物」欄には、
「金銭による報酬額」「現物による報酬額」を、それぞれ区分して記入します。 |
「合計」欄は、
・『入社月の「合計」』欄には、「 - 」を記入し、 ・『その他の月の「合計」』欄には、『「金銭による報酬額」と「現物による報酬額」の「合計額」』を記入します。 |
’ 3)「総計」及び「平均額(報酬月額)」の記入 ’
「総計」欄には、
入社月を除いた「総計」を記入します。 |
「平均額」欄には、
入社月を除いた「平均額」を記入します。 |
なお、この「平均額」が「報酬月額」となります。
例 示 に よ る 記 入 例
設 例 ’
【入社時期】 【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「16日 ~ 翌月15日」 ・給与支払日は、「翌月の25日」の場合 【報酬の支払状況 (正社員・日給月給制)】 ・4月25日支払額: 基本給:125,000円(日割計算)、通勤費:5,000円(日割計算)、残業代:2,000円 ⇒ 合計支払額:132,000円 【勤怠状況】 ・4月25日支払分⇒3月16日~4月15日(暦日数:31日、日割計算日数:15日、欠勤:0日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月25日支払分 ⇒ 日割日数:15日 【報酬の支払額 】 ・4月25日支払額:132,000円 ・5月25日支払額:272,000円 ・6月25日支払額:278,000円 |
2、入社月が「報酬支払基礎日数の要件」を充たしている場合
・新入社員が給与計算対象期間の途中に入社したことにより、その「入社月の給与」等が「本来の1ヶ月分の給与」を反映していない場合であり、
・「入社月の報酬支払基礎日数」が、『「被保険者区分(正社員・パート社員・短時間労働者)」ごとに定められている「報酬支払基礎日数の要件」』を充たしている場合には、
『「報酬月額算定基礎届」への記載方法』は、以下のようなものとなります。
’ 1)「報酬支払基礎日数」の記入 ’
・『入社月の「給与計算の基礎日数」』欄には、「日割計算に用いた日数」を、 ・『その他の月の「給与計算の基礎日数」』欄には、「報酬支払基礎日数」を記入します。 |
なお、この場合における『入社月の「報酬支払基礎日数」』は、
- 正社員の場合で17日以上
- パート社員(短時間就労者)の場合で15日以上
- 短時間労働者の場合で11日以上となります。
’ 2)「報酬支払額」の記入 ’
「通貨」欄及び「現物」欄には、
「金銭による報酬額」「現物による報酬額」を、それぞれ区分して記入します。 |
「合計」欄には、
入社月及びそれ以外の月ともに、『「金銭による報酬額」と「現物による報酬額」の「合計額」』を記入します。 |
’ 3)「総計」及び「平均額」の記入 ’
「総計」欄には、
入社月を含んだ「総計」を記入します。 |
「平均額」欄には、
入社月を含んだ「平均額」を記入します。 |
※ 「入社月」も『被保険者区分ごとに定められている「支払基礎日数の要件」』を充たしているために、
「報酬月額算定基礎届」では、一旦『入社月も含んだ「平均額」』を計算することが必要となります。
’ 4)「修正平均額(報酬月額)」の記入 ’
上記3)の「平均額」は、「入社月の報酬支払額」を含めて計算されたものであることから、「本来の1ヶ月分の(平均)給与金額」よりも「低い平均額」となっています。
このため、「報酬月額」に「本来の1ヶ月分の(平均)給与金額」を反映させるため、
『「入社月の報酬支払額」を除外した「修正平均額」』を計算し、 「修正平均額」欄に当該「修正平均額」を記入します。 |
例 示 に よ る 記 入 例
設 例 ’
【入社時期】 【給与計算対象期間 と 給与支払日】 ・給与計算対象期間は、「21日 ~ 翌月20日」 ・給与支払日は、「翌月の末日」の場合 【報酬の支払状況 (正社員・日給月給制)】 ・4月30日支払額: 基本給:170,000円(日割計算)、通勤費:7,000円(日割計算)、残業代:2,000円 ⇒ 合計支払額:179,000円 【勤怠状況】 ・4月30日支払分⇒3月21日~4月20日(暦日数:31日、日割計算日数:20日、欠勤:0日) |
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記載
【支払基礎日数】 ・4月30日支払分 ⇒ 日割日数:20日 【報酬の支払額 】 ・4月30日支払額:179,000円 ・5月31日支払額:272,000円 ・6月30日支払額:278,000円 |
Ⅱ:退職者の「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方
「定時決定」につきましては、「7月1日時点で会社に在籍する被保険者(従業員・役員)」を対象として行われる標準報酬月額の見直決定であるため、
6月30日以前に退職・退任した従業員・役員につきましては、「定時決定の対象外」となり、
このような退職者につきましては、
「被保険者報酬月額算定基礎届」に記載することは不要となります。 |
ただし、社会保険の保険者から送付される「報酬月額算定基礎届」は、
・5月目処で準備され、6月に各会社に対して発送されることから、
・社会保険の保険者が「報酬月額算定基礎届」を準備するタイミングにより、「6月30日以前に退職・退任した従業員・役員の情報」が「報酬月額算定基礎届」に印字されていることがあります。
従いまして、「報酬月額算定基礎届」に「6月30日以前に退職・退任した従業員・役員の情報」が印字されている場合には、
・既に当該従業員・役員が退職・退任していることを保険者に報告するため、
「報酬月額算定基礎届」の「備考」欄の「9 その他」欄に「退職・退任年月」を記入します。 |
※ なお、7月1日以降に退職・退任が予定されている従業員・役員につきましては、仮に退職・退任が確実であっても、
「報酬月額算定基礎届」に必要事項の記載が必要となります。 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、
- 『「4月・5月・6月に支払われた報酬」に係る「給与計算対象期間」の途中に入社した従業員』の「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方
- 「被保険者報酬月額算定基礎届」に記載がある「6月30日以前に退職・退任した従業員・役員」の「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方
をご紹介させて頂いております。
給与計算対象期間の途中入社の従業員につきまして
『「4月・5月・6月に支払われた報酬」に係る「給与計算対象期間」の途中に入社した従業員』の「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方には、
上記Ⅰでご紹介させて頂きましたように、
『入社月の「報酬支払基礎日数」』が『被保険者区分ごとに定められている「報酬支払基礎日数の要件」』を充たしているか否かにより、
『「被保険者報酬月額算定基礎届」の書き方』は、若干異なります。
ただし、重要なことは、いずれの場合であっても、
『「入社月」に対応する「報酬支払額」』は、『「報酬月額」の計算』にあたって控除しなければならない点であると考えます。
『「4月・5月・6月に支払われた報酬」に係る「給与計算対象期間」の途中に入社した従業員』がいらっしゃる場合には、この点に十分留意して「被保険者報酬月額算定基礎届」に記載して頂ますようお願い致します。