ここでは、『「標準報酬月額」の「随時改定」』の内容を、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。
▶ なお、『「標準報酬月額」の基礎的事項 』につきましては、『 標準報酬月額 』というページを御覧下さい。
Ⅰ:「標準報酬月額」の随時改定の必要性
◆ 「社会保険料の計算」における「標準報酬月額の利用」 ◆
毎月の給与計算で従業員等に対して支給される「給与支給額」等につきましては、
・ 勤怠時間により変動する「法定手当(時間外労働手当、深夜労働手当、法定休日労働手当)」が支給されたり、 ・「精皆勤手当」「能率手当」「宿直・日直手当」等の臨時的な「任意手当」が支給されたりすることから、 毎月変動することが予想されますが、 |
このように毎月変動する「給与支給額」等に基づいて「社会保険料の計算」を行うことは、
従業員・役員から社会保険料の徴収計算を行う会社にとっても、 会社から社会保険料の徴収計算を行う保険者にとっても、 その計算・徴収に係る事務処理が煩雑になります。 |
このため、「社会保険料の計算」におきましては、
毎月変動することが予想される「実際の給与支給額」等を算定基礎として計算するのではなく、 事前に決定された、固定的な「標準報酬月額」を算定基礎として計算することとしています。 |
◆ 「標準報酬月額の随時改定」の必要性 ◆
「標準報酬月額制度」につきましては、
上記でご紹介させて頂きましたように、 被保険者や会社から社会保険料を徴収する会社や保険者の事務処理の簡便化を図ったものであることから、 「標準報酬月額」が頻繁に改定されてしまっては「標準報酬月額制度」を設けた目的を損なうものとなります。 |
このため、「標準報酬月額制度」におきましては、
原則、 1年に1度だけ「定時決定」という手続により、 その後は、『「定時決定」により決定された「標準報酬月額」』を1年間使用し続けることとしています。 ( 「標準報酬月額」の定時決定制度 ) |
ただし他方におきまして、
『 会社から従業員・役員に支払われる「給与・役員報酬支給額」』は、 「昇給・降給」等を伴い「実際の給与・役員報酬支給額」が大きく増減する場合が想定され、
このような場合であっても「標準報酬月額」が変更されなければ、 「会社や従業員・役員が負担しなければならない社会保険料」が「給与・役員報酬の支給実態に合わない標準報酬月額」に基づいて計算され続けることになり、社会保険料の負担に不公平が生じてしまいます。 |
このため、「標準報酬月額制度」におきましては、
・「昇給・降給」等を伴い「給与・役員報酬支給額」が大きく増減し、
『「定時決定」等で決定された「標準報酬月額」』を『「実際の給与・役員報酬支給額」の変更 』に合わせるよう個別的に変更する(改定する)こととしており、 |
この『「標準報酬月額」の個別的・臨時的な改定 』のことを「標準報酬月額の随時改定」といいます。 |
Ⅱ:「随時改定」がなされるための要件
1、「随時改定」がなされるための3要件
「随時改定」につきましては、
上記Ⅰでご紹介させて頂きましたように、 ・昇給・降給等により「給与・役員報酬の支給額」が大きく増減し、 ・かつ、その増減がその後も継続すると見込まれるような場合に限って行うこととするため、 |
「制度上」におきましては、
・「随時改定」を行うための「3つの要件」を定め、 ・「随時改定」を行うためには、以下「3つの要件」を全て満たすことが必要であると規定しております。 |
◆ 第1要件 ◆
「随時改定」が行われるためには、
『「固定的賃金(固定的要素)」に変動がある 』ことが要件となります。 |
◆ 第2要件 ◆
「随時改定」が行われるためには、
「固定的賃金(固定的要素)」が増加しているようなケースでは 『「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」の3か月間に支払われた「報酬月額」に基づいて平均計算された「(平均)報酬月額」』により決定される「標準報酬月額」が、 「これまでの標準報酬月額(従前の標準報酬月額)」よりも2等級以上上昇することが必要であるとし、
「固定的賃金(固定的要素)」が減少しているようなケースでは 『「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」の3か月間に支払われた「報酬月額」に基づいて平均計算された「(平均)報酬月額」』により決定される「標準報酬月額」が、 「これまでの標準報酬月額(従前の標準報酬月額)」よりも2等級以上下落することが必要であるとしています。 |
◆ 第3要件 ◆
「随時改定」が行われるためには、
「被保険者」が「役員」「正社員(フルタイム従業員)」「パート社員等の短時間就労者」である場合には 「変動月、変動月の翌月、変動月の翌々月に支払われた報酬月額の計算対象期間」における
「「被保険者」が「(特定適用事業所等に勤務する)短時間労働者」である場合には 「変動月、変動月の翌月、変動月の翌々月に支払われた報酬月額の計算対象期間」における |
第1要件 :『「固定的賃金(固定的要素)」の変動 』につきまして
1)「第1要件」が設けられている理由
「随時改定」は、
上記Ⅰでご紹介させて頂きましたように、 「給与・役員報酬支給額」が継続的に増加又は減少すると見込まれるような場合に限って行われることが前提となりますが、 |
この点、
「給与・役員報酬支給額」のうちの「変動的賃金(変動的要素)」部分につきましては、 月によって増加したり、減少したりすることが想定されるため、
仮に「給与等支給額」が大幅に増減しているようなケースであっても、 その増減が単に『「変動的賃金(変動的要素)」の変動 』のみを要因としているような場合には、 その増減は『 継続的な「給与・役員報酬支給額」の増減 』とはならないことが想定されます。 |
このため、制度上では、
「随時改定」を行うためには、 『「給与・役員報酬支給額の大幅な変動」の要因 』に、 |
「随時改定」が継続的に給与・役員報酬支給額が増加又は減少すると見込まれる場合に限って行われることを担保しています。 |
以上のことから、制度上「随時改定」が行われるためには、
「第1要件」として、 『「固定的賃金(固定的要素)」に変動がある 』ことを要求しております。 |
2)「第1要件」の留意点
◆ ①『「固定的賃金(固定的要素)」の変動 』とは ◆
「固定的賃金(固定的要素)」とは、
「給与・役員報酬の支給額」のうち『「支給額」が予め決まっているもの 』や 「給与・役員報酬の支給額」のうち『 予め決まっている「支給単価」や「支給率」等から計算される部分 』のことをいい |
具体的には、
「役員報酬」「基本給」「固定手当(支給額が固定されている手当)」や 「変動手当(支給額が変動する手当)」のうちの などのことをいいます。 |
また『「固定的賃金(固定的要素)」の変動 』とは、
上記の『「役員報酬」「基本給」「固定手当」の支給額 』が変動することや 上記の「変動手当」のうちの「固定的な計算基礎額や計算基礎率(固定的な支給単価や支給率)」が変動すること などをいい、 |
具体的には、以下のものが『「固定的賃金(固定的要素)」部分の変動 』に該当します。
《 「基本給」等の変更 》※1 ・役員報酬の場合:「役員報酬」の変更 ・月給、週給制等が採用されている給与の場合:「昇給(ベースアップ)」「降給(ベースダウン)」 ・日給制、時給制等が採用されている給与の場合:「日給や時給等の計算基礎単価」である「日当」や「時間単価」の変更 ・歩合給制等が採用されている給与の場合:「請負給や歩合給等の計算基礎単価」である「単価」や「歩合率」の変更
《 「手当」の変更 》 ・「家族手当」「通勤手当」「住宅手当」「役付手当」「勤務地手当」などの ・「変動手当(支給額が変動する手当)」の新設、廃止※3 ・「変動手当(支給額が変動する手当)」の「計算基礎となる賃率・賃金単価」の変更※4
《 その他 》 ・ 給与支給形態の変更(日給から月給への変更等) ・「一時帰休などの会社都合」による「休業手当」の支給※5 ・「厚生労働省告示による現物給与価額」の改定※6
( 参考書類 ) |
◆ ※1:「基本給」等の変更につきまして ◆
① 「月給制」「週給制」等が採用されている場合
② 「日給制」「時給制」等が採用されている場合
◆ ※2:「固定手当(支給額が固定されている手当)」の追加、支給額の変更 ◆
◆ ※3-1:「変動手当(支給額が変動する手当)」の新設 ◆
◆ ※3-2:「変動手当(支給額が変動する手当)」の廃止 ◆
◆ ※4:「変動手当(支給額が変動する手当)」の「計算要素となる賃率・賃金単価」の変更 ◆
◆ ※5:「会社都合の一時帰休」による「休業手当」の支給につきまして ◆
◆ 参考:従業員等の「(自己都合による)休職」の場合の取扱い ◆
◆ ※6:「厚生労働省告示による現物給与価額」の改定 ◆
◆ ②「変動的賃金(非固定的賃金)」とは ◆
「変動的賃金(非固定的賃金)」とは、
「残業手当」「能率手当」「日直手当」「休日勤務手当」「精勤手当」などの「変動手当」のうち、 『「変動的な計算基礎項目(労働時間、労働日数、成果・達成度など)」に基づいて計算される部分 』のことをいい、 |
この『「変動的賃金(非固定的賃金)」の変動 』につきましては、
『「固定的賃金」の変動 』として取扱うことは不要となります。 |
なお、上記の脚注3-1、3-2、4でもご紹介させて頂きましたように、
・「変動手当」が新設・廃止されたような場合や ・「変動手当」のうちの『 予め定められた「支給額や支給率」』が変更されたような場合には、 「その事象」は『「固定的賃金」の変動 』として取扱うことが必要となりますので、この点につきましてはご注意下さい。 |
◆ 「変動手当」と「固定的賃金・変動的賃金」との関係 ◆
「変動手当」は、
予め決定されている「計算基礎項目(支給単価、支給率など)」と 給与計算の都度変動する「計算基礎項目(労働時間、労働日数、成果・達成度など)」から計算される手当となりますが、 |
この「変動手当」のうち、
・『「前者」部分から計算される支給額 』が『「随時改定」における「固定的賃金」』に該当し、 ・『「後者」部分から計算される支給額 』が『「随時改定」における「変動的賃金(非固定的賃金)」』に該当します。 |
◆ ③『「固定的賃金」の変動幅 』につきまして ◆
「随時改定」が行われるためには、『「固定的賃金」の変動 』を伴うことが要件となりますが、
この『「固定的賃金」の変動幅 』につきましては、 ・「特別の要件」は設定されていないため、 ・「(極端なことをいえば)1円でも固定的賃金に変動がある場合」には、『「固定的賃金」の変動 』に該当することになります。 |
第2要件 :「標準報酬月額」の2等級以上の上昇・下落につきまして
1)「第2要件」が設けられている理由
「随時改定」は、
上記Ⅰでご紹介させて頂きましたように、 「その標準報酬月額」が変更されなければ「社会保険料の負担」に不公平が生じてしまうような「給与・役員報酬支給額の大きな増減」がある場合に限って行われることが前提となります。 |
このため、制度上では、
まず、「社会保険料負担」に不公平が生じるような『「給与・役員報酬支給額(報酬月額)」の大きな増減 』を、 『「随時改定」により変更される「標準報酬月額」』と『 従前の「標準報酬月額」』との間に2等級以上の差異が生じるような場合と定義した上で、
「随時改定」は、 『「随時改定」により変更される「標準報酬月額」』と『 従前の「標準報酬月額」』との間に2等級以上の差異が生じるような場合に限ってのみ行うこととするという「第2要件」を設け、 |
「随時改定」が『「給与・役員報酬支給額の大きな増減」がある場合に限ってのみ行われることを担保しています。 |
以上のことから、制度上「随時改定」が行われるためには、
「第2要件」として、
「固定的賃金(固定的要素)」が増加しているようなケースでは 『「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」の3か月間に支払われた「報酬月額」に基づいて平均計算された「(平均)報酬月額」』により決定される「標準報酬月額」が、 「これまでの標準報酬月額(従前の標準報酬月額)」よりも2等級以上上昇することを要求し、
「固定的賃金(固定的要素)」が減少しているようなケースでは 『「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」の3か月間に支払われた「報酬月額」に基づいて平均計算された「(平均)報酬月額」』により決定される「標準報酬月額」が、 「これまでの標準報酬月額(従前の標準報酬月額)」よりも2等級以上下落することを要求しています。 |
2)「第2要件」の留意点
◆ ①「最高等級」及び「最低等級」の場合の『「2等級以上の差異」の例外規定 』 ◆
「第2要件」におきましては、
上記1)でご紹介させて頂きましたように、 原則、『「随時改定」により変更される「標準報酬月額」』と『 従前の「標準報酬月額」』との間に「2等級以上の差異」が生じていることが要件とされますが、 |
「健康保険」や「厚生年金保険」の「最高等級」「最低等級」につきましては、
・「最高等級」には「上の等級」がない、「最低等級」には「下の等級」がないという理由から、 ・ また「最高等級」及び「最低等級」は『 その等級に属する「(平均)報酬月額」の範囲が広い 』という理由から、 |
『「標準報酬月額」の上昇・下落 』に「最高等級」や「最低等級」を含むようなケースでは、
形式的には「1等級の差異」しか生じていないような『「標準報酬月額」の上昇・下落 』であっても、 実質的には「2等級以上の差異」が生じていると言えるようなケースも存在します。 |
このため、「制度上」におきましては、
『「固定的賃金」が増加 』しているようなケースでは、 ・「標準報酬月額」が「1等級」から「2等級」に上がる場合(1等級の上昇)や、 ・「標準報酬月額」が「最高等級の1つ前の等級」から「最高等級」に上がる場合(1等級の上昇)には、
「2等級以上の上昇要件」について以下のような「例外要件」を設け、
また『「固定的賃金」が減少 』しているようなケースでは、 ・「標準報酬月額」が「2等級」から「1等級」に下がる場合(1等級の下落)や、 ・「標準報酬月額」が「最高等等級」から「最高等級の1つ前の等級」に下がる場合(1等級の下落)には、
「2等級以上の下落要件」について以下のような「例外要件」を設けています。 |
なお、「最低等級」及び「最高等級」の場合の『「2等級以上の差異」の例外規定 』は、
「健康保険」及び「厚生年金保険」の「最低等級」「最高等級」ごとに別々に規定されているため、
『「健康保険」の例外規定 』には該当しない場合であっても、 『「厚生年金保険」の例外規定 』に該当する場合には「第2要件」を満たすこととなり、
『「厚生年金保険」の例外規定 』には該当しない場合であっても、 『「健康保険」の例外規定 』に該当する場合には「第2要件」を満たすこととなになりますのでこの点ご注意下さい。 |
ⅰ)『「固定的賃金」の増加 』を伴う場合 ( 日本年金機構HP 「 随時改定(月額変更)」)
A:「健康保険」
① 『 従前の「(健康保険)等級」』が『「報酬月額:53,000円未満」の「1等級」』である場合
② 『 従前の「(健康保険)等級」』が「49等級」である場合
B:「厚生年金保険」
① 『 従前の「(厚生年金保険)等級」』が『「報酬月額:83,000円未満」の「1等級」』である場合
② 『 従前の「(厚生年金保険)等級」』が「31等級」である場合
ⅱ)『「固定的賃金」の減少 』を伴う場合
A:「健康保険」
① 『 従前の「(健康保険)等級」』が「2等級」である場合
② 『 従前の「(健康保険)等級」』が『「報酬月額:1,415,000円以上」の「50等級」』である場合
B:「厚生年金保険」
① 『 従前の「(厚生年金保険)等級」』が「2等級」である場合
② 『 従前の「(厚生年金保険)等級」』が『「報酬月額:665,000円以上」の「32等級」』である場合
◆ ②「変動月」とは ◆
第2要件にある「変動月」とは、
『「固定的賃金の変動」を反映した「給与・役員報酬支給額(報酬月額)」』が実際に支払われた「最初の月」をいい、 |
「変動月を含む3ヶ月間」とは、
「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」の「継続した3ヶ月間」のことをいいます。 |
このため、『「随時改定」における「変動月」』を考える場合には、
『「固定的賃金の変動」を反映した「給与・役員報酬支給額(報酬月額)」の計算対象期間 』を考慮する必要はなく、 |
あくまで、『「固定的賃金の変動」を反映した「給与・役員報酬支給額(報酬月額)」が何月に実際に支払われているのか? 』を把握し、 「その支払月」を「変動月」として把握することが必要となります。 (「変動月」は「支払ベース」で考えることが必要となります。) |
◆ 例示によるご紹介 ◆
◆ 『「変動手当」が新設された場合 』の取扱い ◆
◆ ③『「第2要件」の検討に必要となる要素 』につきまして ◆
「第2要件」につきましては、上記でご紹介させて頂きましたように、
『「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」の3か月間に支払われた「報酬月額」に基づいて平均計算された「(平均)報酬月額」』により決定される「標準報酬月額」が、 「これまでの標準報酬月額(従前の標準報酬月額)」よりも2等級以上上昇する又は下落することが要件とされます。 |
このため、「第2要件」を検討するためには、
①「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」の3か月間に支払われた「報酬月額」※1を適切に把握し、
② 上記①で把握された『 3か月間に支払われた「報酬月額」』から「(平均)報酬月額」を計算し※2、
③「社会保険料額表」等を使用して、「(平均)報酬月額」に対応する「(健康保険)標準報酬月額、(厚生年金保険)標準報酬月額」を把握し※3、
④「上記③で把握した(健康保険)標準報酬月額、(厚生年金保険)標準報酬月額」が「従前の(健康保険)標準報酬月額、(厚生年金保険)標準報酬月額」よりも2等級以上上昇又は下落しているか?を判断することが必要となります※4。 |
なお、上記①②につきましては、
『「報酬月額」に含めるべき「給与・役員報酬支給額の範囲」』などもう少し詳細なご紹介が必要となりますので、 別途『 随時改定における「(平均)報酬月額」の算定方法 』というページにおいて、 |
◆ ※1:「変動月」「その翌月」「その翌々月」に支払われた「報酬月額」 ◆
◆ ※2:『「報酬月額」の平均計算 』につきまして ◆
◆ ※3:「(平均)報酬月額」から「標準報酬月額」を算定する方法 ◆
◆ ※4:「2等級以上の差異」要件 ◆
◆ ④『「固定的賃金」の変動方向 』と『「標準報酬月額」の差異方向 』の一致必要性 ◆
「随時改定」が行われるためには、
第1要件である『「固定的賃金」の変動方向 』と 第2要件である『 随時改定後の「標準報酬月額」』と『 従前の「標準報酬月額」』との「差異の方向」が 一致していることが必要となります。
(「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集 〈 随時改定について 問4〉」) |
すなわち、
「第1要件」において「固定的賃金」が増加しているようなケースにおきましては、 「第2要件」では、
「第1要件」において「固定的賃金」が減少しているようなケースにおきましては、 「第2要件」では、 |
このため、
「第1要件」において「固定的賃金」が増加しているようなケースであっても、 (『「固定的賃金」の増加 』以上に『「変動的賃金」が減少している 』などの理由で、)
また、「第1要件」において「固定的賃金」が減少しているようなケースであっても、 (『「固定的賃金」の減少 』以上に『「変動的賃金」が増加している 』などの理由で、) |
◆ 「変動月から3ヶ月以内」に再度「固定的賃金」の変動がある場合の取扱い ◆
◆ 同一月に複数の『「固定的賃金」の変動要因 』が存在する場合の取扱い ◆
◆ 同一月に複数の『「変動手当」の新設・廃止 』があるような場合の取扱い ◆
第3要件 :『 3ヶ月間の「支払基礎日数」の要件 』につきまして
1)「第3要件」が設けられている理由
『「(平均)報酬月額」の計算 』にあたっては、
『「固定的賃金」の変動 』を適切に反映した「報酬月額(給与・役員報酬支給額)」に基づいて計算することが必要となりますが、 |
この『「固定的賃金の変動」を適切に反映した「報酬月額(給与・役員報酬支給額)」』を把握するためには、
通常の状況下で支給されている「給与・役員報酬」のみを把握することが前提となります。 |
このため、制度上におきましては、
「支払基礎日数」という概念を定義した上で、 『 変動月・変動月の翌月・変動月の翌々月の「支払基礎日数」』に「最低日数要件」を課した「第3要件」を設け、 |
・『「出勤日数」が著しく低い場合 』や『「欠勤」が著しく多い場合 』など通常ではない状況の下で ・ 通常の状況下でのみ「随時改定」が行われることを担保しています。 |
なお、「1ヶ月の間に出勤・労働することが予定されている日数」につきましては、
・その従業員等が「一般的な要件の下で「社会保険の被保険者」となっている者」であるのか? ・その従業員が「特殊な要件の下で「社会保険の被保険者」となっている者」であるのか? により違いがあることから、 |
この「最低支払基礎日数の要件」につきましては、
・その被保険者が「役員、正社員、短時間就労者」である場合と ・その被保険者が「特定適用事務所に勤務する短時間労働者」である場合とに分けて別々に設定しています。 |
以上のことから、制度上「随時改定」が行われるためには、
「第3要件」として、
「被保険者」が「役員」「正社員(フルタイム従業員)」「パート社員等の短時間就労者」である場合には 「変動月、変動月の翌月、変動月の翌々月に支払われた報酬月額の計算対象期間」における
「「被保険者」が「(特定適用事業所等に勤務する)短時間労働者」である場合には 「変動月、変動月の翌月、変動月の翌々月に支払われた報酬月額の計算対象期間」における |
2)「第3要件」の留意点
◆ ①「支払基礎日数」の意義 ◆
「支払基礎日数」とは、
「その月に支払われた報酬月額(給与・役員報酬支給額)」の「計算・支給対象となった日数」のことをいいますが、 |
当該「支払基礎日数」は、
「その月に支払われた報酬月額」が、 『「他の月に支払われた報酬月額」に比べて低い金額となっていないか? 』を判定するために利用されるものであり、 |
『 その月の「支払基礎日数」』が「他の月の「支払基礎日数」に比べて少なくなっているような場合には、
「その月に支払われた報酬月額」は、 『「他の月に支払われた報酬月額」に比べて低い金額になっている 』と推定判定されることになります。 |
◆ ②「支払基礎日数」の「カウント対象となる期間」 ◆
要件2(2)③『「第2要件」の検討に必要となる要素 』の脚注※1でご紹介させて頂きましたように、 ・「変動月の報酬月額」は「変動月に支払われた報酬月額(給与・役員報酬支給額)」をいい、 |
『「変動月の報酬月額」に係る「支払基礎日数」』は、 『「変動月に支払われた報酬月額」の計算対象期間 』を対象としてカウントすることになり、
『「変動月翌月の報酬月額」に係る「支払基礎日数」』は、 『「変動月翌月に支払われた報酬月額」の計算対象期間 』を対象としてカウントすることになり、
『「変動月翌々月の報酬月額」に係る「支払基礎日数」』は、 『「変動月翌々月に支払われた報酬月額」の計算対象期間 』を対象としてカウントすることになります。 |
◆ 『「支払基礎日数」のカウント期間 』の例示 ◆
◆ ③「支払基礎日数」のカウント方法 ◆
『「支払基礎日数」のカウント方法 』につきましては、
日本年金機構が公表している「算定基礎届の記入・提出ガイドブック」に、
時給制・日給制の場合は、実際の出勤日数(有給休暇も含みます。)が支払基礎日数となります。 月給制・週給制の場合は、出勤日数に関係なく暦日数になります。 ただし、月給制・週給制の場合で欠勤日数分だけ給料が差し引かれる場合は、 |
というように『「支払基礎日数」のカウント方法 』が記載されているため、
『「支払基礎日数」のカウント方法 』は、
「役員報酬」や『「完全月給制」「完全週給制」が採用されている給与 』※1に係る「支払基礎日数」は、 「暦日数」によりカウントすることが必要となり、
『「月給日給制」や「週給日給制」が採用されている給与 』※2に係る「支払基礎日数」は、 『「所定労働日数」から「欠勤日数」を「控除した日数」』でカウントすることが必要となり、
『「日給制」や「時給制」が採用されている給与 』※3に係る「支払基礎日数」は、 「実際の出勤日数(有給休暇も含みます。)」によりカウントすることが必要となります。 |
◆ ※1:「完全月給制」「完全週給制」とは ◆
◆ ※2:「月給日給制」「週給日給制」とは ◆
◆ ※3:「日給制」「時給制」とは ◆
◆ ④『「支払基礎日数」のカウント 』と『「最低支払基礎日数」の要件 』との関係 ◆
『「支払基礎日数」のカウント 』と『「最低支払基礎日数」の要件 』との関係は以下のようなものとなります。
◆ A:「被保険者」が「役員」「正社員」「短時間就労者」である場合 ◆
A-1)「被保険者」が「役員」「完全月給制の正社員」「完全月給制・完全週給制の短時間就労者」である場合には、
『 変動月、その翌月、その翌々月の「報酬月額」に係る「支払基礎日数」』は、 「変動月、その翌月、その翌々月」における「暦日数」でカウントすることになるため、
『「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」の「支払基礎日数」』は「いずれの月」も17日以上となり、 「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」ともに『「随時改定」の「第3要件」』を満たすこととなります。 |
A-2)「被保険者」が「月給日給制の正社員」「月給日給制・週給日給制の短時間就労者」である場合には、
『 変動月、その翌月、その翌々月の「報酬月額」に係る「支払基礎日数」』は、 「変動月、その翌月、その翌々月」における「所定労働日数」から「欠勤日数」を「控除した日数」でカウントすることになるため、
『「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」の「支払基礎日数」』につきましては「可変的な日数」となり、 『「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」の「支払基礎日数」』が17日以上ある場合のみ |
A-3)「被保険者」が「日給制・時給制の短時間就労者」である場合には、
『 変動月、その翌月、その翌々月の「報酬月額」に係る「支払基礎日数」』は、 「変動月、その翌月、その翌々月」における「出勤日数(有給休暇も含みます。)」でカウントすることになるため、
『「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」の「支払基礎日数」』につきましては「可変的な日数」となり、 『「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」の「支払基礎日数」』が17日以上ある場合のみ |
「正社員」とは
「短時間就労者」とは
◆ B:「被保険者」が「(特定適用事業所に勤務する)短時間労働者」である場合 ◆
B-1)「被保険者」が「完全月給制・完全週給制の短時間労働者」である場合には、
『 変動月、その翌月、その翌々月の「報酬月額」に係る「支払基礎日数」』は、 「変動月、その翌月、その翌々月」における「暦日数」でカウントすることになるため、
『「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」の「支払基礎日数」』は「いずれの月」も11日以上となり、 「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」ともに『「随時改定」の「第3要件」』を満たすこととなります。 |
B-2)「被保険者」が「月給日給制・週給日給制の短時間労働者」である場合には、
『 変動月、その翌月、その翌々月の「報酬月額」に係る「支払基礎日数」』は、 「変動月、その翌月、その翌々月」における「所定労働日数」から「欠勤日数」を「控除した日数」でカウントすることになるため、
『「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」の「支払基礎日数」』につきましては「可変的な日数」となり、 『「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」の「支払基礎日数」』が11日以上ある場合のみ |
B-3)「被保険者」が「日給制・時給制の短時間労働者」である場合には、
『 変動月、その翌月、その翌々月の「報酬月額」に係る「支払基礎日数」』は、 「変動月、その翌月、その翌々月」における「出勤日数(有給休暇も含みます。)」でカウントすることになるため、
『「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」の「支払基礎日数」』につきましては「可変的な日数」となり、 『「変動月、その翌月、その翌々月の3ヶ月」の「支払基礎日数」』が11日以上ある場合のみ |
「短時間労働者」とは
《 補足:「被保険者の身分」ごとによるご紹介 》
「上記の内容」を「被保険者の身分」ごとに考えると以下のようなものとなります。
◆ ⅰ:「役員」の場合 ◆
◆ ⅱ:「正社員」の場合 ◆
◆ ⅲ:「(パート等の)短時間就労者」の場合 ◆
◆ ⅳ:「(特定適用事業所に勤務する)短時間労働者」の場合 ◆
◆ ⑤「(自己都合による)休職者」の「随時改定」における取扱い ◆
『 私傷病などの自己都合 』より会社等を休職している「休職者」につきましては、
(「完全月給制」や「完全週給制」などが採用されていない限り、) 「一定割合を減額した給与等」が支給されていたり、 「就業規則等で規定された休職手当(休職給)」が支給されていたりするような場合が考えられますが、
基本的には「両者」ともに「随時改定」が適用されることはありません。 |
ただし、『「随時改定」が適用されない理由 』につきましては、
「前者」と「後者」とでは「その適用対象外となる要件」が異なりますので、 |
ここでは、
「一定割合が減額された給与等」が支給されている場合と、 「就業規則等で規定された「休職手当(休職給)」が支給されている場合とに分けて、 『「随時改定」が適用されない理由 』をご紹介させて頂きます。 |
◆ ケース1:「一定割合が減額された給与等」が支給されている場合 ◆
私傷病などによる欠勤によって「一定割合が減額された給与等」が支給されているような場合には、
当該「給与等支給額の減少」は、 (上記「要件1」2)①の脚注※1でご紹介させて頂きましたように) ・『「固定的賃金」の減少 』を伴ったものではなく、 ・『 可変的な要因である「欠勤控除」』を反映した「給与等支給額の減少」であると考えられるため、
このような場合には『「随時改定」の「第1要件」』を満たさず「随時改定」は行われないことになります。 |
◆ ケース2:「休職手当(休職給)」が支給されている場合 ◆
「休職手当(休職給)」とは、
「私傷病などの従業員等の都合」により従業員が休職しているような場合に、 ・「一定期間の労働義務」を免除するかわりに、 ・「通常の給与等」に代えて支給される「低額の金銭」のことをいいますが、 |
この「休職手当(休職給)」が支給されている場合には、
「その期間の労働義務」が免除されていることが前提となることから、 『 その期間の「支払基礎日数」』は「ゼロ」となり、
このような場合には『「随時改定」の「第3要件」』を満たさず「随時改定」は行われないことになります。 |
◆ ⑥「随時改定」と「定時決定」における「最低支払基礎日数要件」の相違点 ◆
「最低支払基礎日数の要件」は、
・「随時改定」の「第3要件」で利用されるだけではなく、 ・「定時決定」におきましても、 |
この点、「被保険者」が「役員」「正社員」の場合 又は 「(特定適用事業所に勤務する)短時間労働者」の場合には、
・『「随時改定」と「定時決定」の「最低支払基礎日数要件」』は「同じ日数」が規定されており、
「随時改定の場合」も「定時決定の場合」も同じ規定となっております。 |
他方、「被保険者」が「パート等の短時間就労者」の場合には、
『「随時改定」における「最低支払基礎日数要件」』は、 「17日以上」という単一基準となり、
『「定時決定」における「最低支払基礎日数要件」』は、 「17日以上」と「15日以上」という複数基準が設けられており、
「随時改定の場合」と「定時決定の場合」とでは異なる規定となっておりますので、この点ご注意頂ますようお願い致します。 |
Ⅲ:随時改定により変更された「標準報酬月額」の使用開始時期
1、「社会保険料の計算」における使用開始時期
「随時改定」におきましては、
『「変動月」「その翌月」「その翌々月」に支払われた「3ヶ月間の報酬月額」』に基づき「(平均)報酬月額」が計算され、 |
『 当該「(平均)報酬月額」に基づいて決定された「新しい標準報酬月額」』は、 「変動月の4ヶ月目分(改定月分)の社会保険料」を計算する時から使用されます。 |
◆ 「例示」によるご紹介 ◆
例示1
- 「11月分の給与(計算対象期間:11月11日~12月10日、支払日:12月25日)」から給与金額が変動し、
- 「12月分の給与(計算対象期間:12月11日~1月10日、支払日:1月25日)」及び
- 「1月分の給与(計算対象期間:1月11日~2月10日、支払日:2月25日)」も継続して給与金額が変動しているような場合におきましては、
・「 12月25日に支払われた給与(11月分の給与)」を「変動月の報酬月額(12月の報酬月額)」として、 「12月支払から2月支払の報酬月額」を3ヶ月平均して「(平均)報酬月額」を算定します。 |
そして、当該「(平均)報酬月額」に基づいて『「3月」を「改定月」とする「新しい標準報酬月額」』が決定されるため、 「3月分の社会保険料」計算にあたっては、「この新しい標準報酬月額」を使用して計算することが必要となります。 |
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例示2
- 「12月分の給与(計算対象期間:12月1日~12月31日、支払日:12月31日)」から給与金額が変動し、
- 「1月分の給与(計算対象期間:1月1日~1月31日、支払日:1月31日)」及び
- 「2月分の給与(計算対象期間:2月1日~2月28日、支払日:2月28日)」も継続して給与金額が変動しているような場合におきましては、
・「 12月31日に支払われた給与(12月分の給与)」を「変動月の報酬月額(12月の報酬月額)」として、 「12月支払から2月支払の報酬月額」を3ヶ月平均して「(平均)報酬月額」を算定します。 |
そして、当該「(平均)報酬月額」に基づいて『「3月」を「改定月」とする「新しい標準報酬月額」』が決定されるため、 「3月分の社会保険料」を計算する場合には、「この新しい標準報酬月額」を使用して計算することが必要となります。 |
2、「社会保険料の納付月」との関係での使用開始時期
『「改定月分(変動月から4ヶ月目分)」の社会保険料 』は、
「改定月の翌月(変動月から5ヶ月目)」に会社から保険者に納付されることになるため、 |
「社会保険料の納付」との関係で考えると、
『「随時改定」で改定された「新しい標準報酬月額」』は、 『「改定月の翌月(変動月から5ヶ月目)」に納付される「社会保険料」』の計算から使用開始されることになります。 |
◆ 「例示」によるご紹介 ◆
例示1
- 「11月分の給与(計算対象期間:11月11日~12月10日、支払日:12月25日)」から給与金額が変動し、
- 「12月分の給与(計算対象期間:12月11日~1月10日、支払日:1月25日)」及び
- 「1月分の給与(計算対象期間:1月11日~2月10日、支払日:2月25日)」も継続して給与金額が変動しているような場合におきましては、
・「 12月25日に支払われた給与(11月分の給与)」を「変動月の報酬月額(12月の報酬月額)」として、 「12月支払から2月支払の報酬月額」を3ヶ月平均して「(平均)報酬月額」を算定します。 |
そして、当該「(平均)報酬月額」に基づいて『「3月」を「改定月」とする「新しい標準報酬月額」』が決定されるため、 「3月分の社会保険料」を計算する場合には、「この新しい標準報酬月額」を使用して計算することが必要となります。 |
ただし、
「3月分の社会保険料」につきましては、「4月」に保険者に納付することになるため、 『「随時改定」で改定された「新しい標準報酬月額」』は、『4月に納付される「社会保険料」』の計算から使用開始されることになります。 |
例示2
- 「12月分の給与(計算対象期間:12月1日~12月31日、支払日:12月31日)」から給与金額が変動し、
- 「1月分の給与(計算対象期間:1月1日~1月31日、支払日:1月31日)」及び
- 「2月分の給与(計算対象期間:2月1日~2月28日、支払日:2月28日)」も継続して給与金額が変動しているような場合におきましては、
・「 12月31日に支払われた給与(12月分の給与)」を「変動月の報酬月額(12月の報酬月額)」として、 「12月支払から2月支払の報酬月額」を3ヶ月平均して「(平均)報酬月額」を算定します。 |
そして、当該「(平均)報酬月額」に基づいて『「3月」を「改定月」とする「新しい標準報酬月額」』が決定されるため、 「3月分の社会保険料」を計算する場合には、「この新しい標準報酬月額」を使用して計算することが必要となります。 |
ただし、
「3月分の社会保険料」につきましては、「4月」に保険者に納付することになるため、 『「随時改定」で改定された「新しい標準報酬月額」』は、『4月に納付される「社会保険料」』の計算から使用開始されることになります。 |
3、「社会保険料の控除月」との関係での使用開始時期
従業員・役員個人が負担する『「改定月分(変動月から4ヶ月目分)」に係る社会保険料 』は、
『「改定月の翌月(変動月から5ヶ月目)」に支払われる給与計算 』で会社が控除することになるため、 |
「社会保険料の控除」との関係で考えると、
『「随時改定」で改定された「新しい標準報酬月額」』は、 『「改定月の翌月(変動月から5ヶ月目)」に支払われる給与計算で「控除する社会保険料」』の計算から使用開始されることになります。 |
◆ 「例示」によるご紹介 ◆
例示1
- 「11月分の給与(計算対象期間:11月11日~12月10日、支払日:12月25日)」から給与金額が変動し、
- 「12月分の給与(計算対象期間:12月11日~1月10日、支払日:1月25日)」及び
- 「1月分の給与(計算対象期間:1月11日~2月10日、支払日:2月25日)」も継続して給与金額が変動しているような場合におきましては、
・「 12月25日に支払われた給与(11月分の給与)」を「変動月の報酬月額(12月の報酬月額)」として、 「12月支払から2月支払の報酬月額」を3ヶ月平均して「(平均)報酬月額」を算定します。 |
そして、当該「(平均)報酬月額」に基づいて『「3月」を「改定月」とする「新しい標準報酬月額」』が決定されるため、 「3月分の社会保険料」を計算する場合には、「この新しい標準報酬月額」を使用して計算することが必要となります。 |
ただし、
「3月分の社会保険料」は、『「4月」に支払われる給与計算 』で控除されることになるため、 『「随時改定」で改定された「新しい標準報酬月額」』は、 |
例示2
- 「12月分の給与(計算対象期間:12月1日~12月31日、支払日:12月31日)」から給与金額が変動し、
- 「1月分の給与(計算対象期間:1月1日~1月31日、支払日:1月31日)」及び
- 「2月分の給与(計算対象期間:2月1日~2月28日、支払日:2月28日)」も継続して給与金額が変動しているような場合におきましては、
・「 12月31日に支払われた給与(12月分の給与)」を「変動月の報酬月額(12月の報酬月額)」として、 「12月支払から2月支払の報酬月額」を3ヶ月平均して「報酬月額」を算定します。 |
そして、当該「報酬月額」に基づいて『「3月」を「改定月」とする「新しい標準報酬月額」』が決定されるため、 「3月分の社会保険料」を計算する場合には、「この新しい標準報酬月額」を使用して計算することが必要となります。 |
ただし、
「3月分の社会保険料」は、『「4月」に支払われる給与計算 』で控除されることになるため、 『「随時改定」で改定された「新しい標準報酬月額」』は、 |
Ⅳ:『 随時改定に係る「届出事務」』と『 随時改定に係る「事務的な流れ」』
1、「随時改定」に係る届出事務
『「随時改定」で変更される「標準報酬月額」』は、最終的には、社会保険の保険者が決定するものとなりますが、
社会保険の保険者側では、
会社から被保険者に対して「変動月~その翌々月の間にいくらの給与・役員報酬が支給されたのかということは」わかりません。
従いまして、『「標準報酬月額」の随時改定 』におきましては、
「会社」から「社会保険の保険者」に対して、 『 被保険者に「変動月~その翌々月に支払われた報酬月額」などの情報 』を届け出ることが必要となり、 |
「変動月の翌々月」における「給与・役員報酬」の支払が完了した時点で、
速やかに、 『 変動月~その翌々月に支払われた「報酬月額」』や『 その3ヶ月間の「(平均)報酬月額」』を記載した |
なお、上記届出がなされた後には、
当該「変更届」に基づいて、保険者が「標準報酬月額」を決定し、 「標準報酬月額」が記載された「被保険者標準報酬改定通知書」が会社に送付されることになります。 |
2、給与計算実務における『 随時改定に係る「事務的な流れ」』
『「随時改定」に係る届出事務 』につきましては、
上記1でご紹介させて頂きましたように、 「変動月の翌々月」における「給与・役員報酬」の支払が完了した時点で、 「速やかに」保険者に対して「被保険者報酬月額変更届」を届け出ることが必要となり、 |
『「(従業員・役員が負担する)社会保険料」の「給与計算での控除」』は、
上記Ⅲ-3でご紹介させて頂きましたように、 『「改定月の翌月(変動月から5ヶ月目)」に支払われる給与計算 』で会社が控除することになるため、 |
給与計算実務における『 随時改定に係る「事務的な流れ」』をまとめると、以下のようなものとなります。
◆ 「変動月」から「変動月の翌々月」までの3ヶ月間 (判定期間) ◆
「固定的賃金」が変動したような場合には、
( 給与・役員報酬の支払ベースで把握した)『「変動月」から「変動月の翌々月」まで 』の期間で、 『「随時改定」の要件を満たすか否か 』を判定することになります。 |
◆ 「変動月の4ヶ月目」の期間 (届出・決定事務処理期間) ◆
上記の「判定期間」において「標準報酬月額の随時改定」が必要となる場合には、
「変動月の4ヶ月目(改定月)」の期間で、 ・会社から保険者に対して「被保険者報酬月額変更届」の届け出を行い、 ・保険者から「被保険者標準報酬改定通知書」を受け取ることにになります。 |
◆ 「変動月の5ヶ月目」(控除開始時期) ◆
「変動月の4ヶ月目」の期間において保険者から「被保険者標準報酬改定通知書」を受け取った場合には、
『「変動月の5ヶ月目(改定月の翌月)」に支払うことになる「給与・役員報酬計算」』から、 『「随時改定」により改定された「新しい標準報酬月額」』を使用して「従業員・役員から控除する社会保険料」を計算することになります。 |
◆ 「例示」によるご紹介 ◆
Ⅴ:随時改定で改定された「標準報酬月額」の有効時期
1、随時改定で改定された「標準報酬月額」の有効時期
社会保険料の算定基礎となる「標準報酬月額」につきましては、
「定時決定」という手続により、保険年度に1度「全被保険者を対象とした一斉見直」がなされるため、 |
『 随時改定によって変更された「標準報酬月額」』は、
随時改定後において「再度の随時改定」がなされない限り、 「定時決定」が行われるまで使用し続けられます。 |
すなわち、「標準報酬月額の再度の随時改定」がなされない限り、
暦年の1月~6月を「改定月」とする『 随時改定の「標準報酬月額」』は、 ⇒「その暦年度の8月分の社会保険料計算」まで、当該「標準報酬月額」が使用し続けられ、
暦年の7月~12月を「改定月」とする『 随時改定の「標準報酬月額」』は、 ⇒「翌暦年度の8月分の社会保険料計算」まで、当該「標準報酬月額」が使用し続けられます。 |
【 1月~6月を改定月とする場合 】
【 7月~12月を改定月とする場合 】
2、「7月・8月・9月の随時改定」と「定時決定」との関係
「標準報酬月額」につきましては、
毎年、「定時決定」という手続により見直し決定がなされることから、 |
「9月分以降の社会保険料計算」にあたっては、 ・『 9月以前に使用していた「標準報酬月額」』ではなく、 ・『「定時決定」により見直し決定された「標準報酬月額」』を使用して計算することが原則となります。 |
ただし、『「7月・8月・9月を改定月」とする「随時改定」』が行われた場合には、
「9月分以降の社会保険料計算」にあたっても、 ・『「定時決定」により決定された「標準報酬月額」』を使用して計算するのではなく、 ・『「随時改定」で改定された「標準報酬月額」』を使用して計算することになるため、 |
『「7月・8月・9月の随時改定」により改定された「標準報酬月額」』は、
・『 9月以前から使用されていた「標準報酬月額」』であるにもかかわらず、 ・「9月分以降の社会保険料計算」にも引き続き利用される「標準報酬月額」となり、
この点で、当該「標準報酬月額」は、 「定時決定」の適用を受けない『 定時決定の適用対象外となる「標準報酬月額」』となります。 |
なお、以下1)から3)では『「7月随時改定」「8月随時改定」「9月随時改定」と「定時決定」との関係 』をそれぞれ個別にご紹介させて頂きます。
1)「7月随時改定」と「定時決定」との関係
「4月に支払われた報酬月額」から「固定的賃金が変動」し、 『 4月~6月に支払われた報酬月額の平均額である「(平均)報酬月額」』に基づいて決定される「標準報酬月額」が、 「随時改定の要件」をすべて充たしている場合には、
「7月を改定月」とした「随時改定」が行われますが、 |
当該『「随時改定」で改定された「標準報酬月額」』は、
「7月分の社会保険料計算」から使用が開始されるとともに、 「9月分以降の社会保険料計算」にも引き続き使用し続けられることになります。 |
このように、
『「7月を改定月」とした「随時改定」』がなされた場合には、 「7月に改定された標準報酬月額」が、
『「7月随時改定」により改定された「標準報酬月額」』は、 「定時決定」の適用対象外となる「標準報酬月額」となります。 |
◆ 「7月随時改定」が「定時決定」の適用対象外となる理由 ◆
2)「8月随時改定」と「定時決定」との関係
「5月に支払われた報酬月額」から「固定的賃金が変動」し、 『 5月~7月に支払われた報酬月額の平均額である「(平均)報酬月額」』に基づいて決定される「標準報酬月額」が、 「随時改定の要件」をすべて充たしている場合には、
「8月を改定月」とした「随時改定」が行われますが、 |
当該『「随時改定」で改定された「標準報酬月額」』は、
「8月分の社会保険料計算」から使用が開始されるとともに、 「9月分以降の社会保険料計算」にも引き続き使用し続けられることになります。 |
このように、
『「8月を改定月」とした「随時改定」』がなされた場合には、 「8月に改定された標準報酬月額」が、
『「8月随時改定」により改定された「標準報酬月額」』は、 「定時決定」の適用対象外となる「標準報酬月額」となります。 |
◆ 「8月随時改定」が「定時決定」の適用対象外となる理由 ◆
3)「9月随時改定」と「定時決定」との関係
「6月に支払われた報酬」から「固定的賃金が変動」し、 『 6月~8月に支払われた報酬月額の平均額である「(平均)報酬月額」』に基づいて決定される「標準報酬月額」が、 「随時改定の要件」をすべて充たしている場合には、
「9月を改定月」とした「随時改定」が行われますが、 |
当該『「随時改定」で改定された「標準報酬月額」』は、
「9月分の社会保険料計算」から使用が開始されるとともに、 「9月分以降の社会保険料計算」にも引き続き使用し続けられることになります。 |
このように、
『「9月を改定月」とした「随時改定」』がなされた場合には、 「9月に改定された標準報酬月額」が、
『「9月随時改定」により改定された「標準報酬月額」』は、 「定時決定」の適用対象外となる「標準報酬月額」となります。 |
◆ 「9月随時改定」が「定時決定」の適用対象外となる理由 ◆
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、『「標準報酬月額」の「随時改定の内容」』をご紹介させて頂いております。
◆ 「随時改定」につきまして ◆
「標準報酬月額制度」におきましては、
・昇給や降給等の『「固定的賃金」の変動 』を伴う『「給与・役員報酬支給額」の大きな増減 』があるような場合には、
「随時改定」という『「標準報酬月額」の個別的・臨時的な改定 』を行うことが必要となりますので、この点ご留意頂ますようお願い致します。
・他方、「随時改定」につきましては、頻繁に「随時改定」がなされることがないように、
『「随時改定」が行われるための要件 』も定められておりますので、この点につきましてもご留意頂ますようお願い致します。
◆ 「随時改定の要件」につきまして ◆
上記でご紹介させて頂きましたように、「随時改定」には『「随時改定」が行われるための要件 』が定められていますので、
実務上「随時改定」を行うためには、この「随時改定の要件」を十分に理解しておくことが必要となりますので、
「本文Ⅱでご紹介させて頂いております内容」につきましては事前にご理解頂ますようお願い致します。
第1要件につきまして
「随時改定」が行われるためには、
『「固定的賃金」の変動 』を伴った『「給与・役員報酬支給額」の増減があること 』が必要となりますが、
ここでいう『「固定的賃金」の変動 』というものは、なかなかイメージしにくいものとなっておりますので、
この点につきましては「本文Ⅱの第1要件(2)①②でご紹介させて頂いております内容」をご確認頂きますようお願い致します。
なお、『「固定的賃金」の変動 』につきましては、
「具体的な支給額(役員報酬、基本給、固定手当、変動手当)」のうち、どのようなものが『「固定的賃金」の変動 』に該当するのか?という観点から理解して頂くと、『「固定的賃金」の変動とはどのようなものであるか? 』を理解しやすいのではないかと考えます。
第2要件につきまして
「随時改定」が行われるためには、
『 随時改定後の「標準報酬月額」』が『 従前の「標準報酬月額」』に比較して「2等級以上の差異」が生じていることが必要となりますが、
この「第2要件」を検討するためには、
・「変動月」を適切に把握すること
・「変動月の報酬月額」「変動月の翌月の報酬月額」「変動月の翌々月の報酬月額」を適切に把握すること
・「変動月」「変動月の翌月」「変動月の翌々月」の3か月間における「(平均)報酬月額」の計算対象となる
『「給与・役員報酬支給額」の範囲 』を適切に把握すること
・「(平均計算された)報酬月額」に対応する「(随時改定後の)標準報酬月額」を適切に把握すること
・『 随時改定後の「標準報酬月額」』と『従前の「標準報酬月額」』を比較することなどが必要となりますので、
この点につきましては「本文Ⅱの第2要件(2)でご紹介させて頂いております内容」をご確認頂きますようお願い致します。
また、この点につきましては別途『 随時改定における「(平均)報酬月額」の算定方法 』で詳しくご紹介させて頂いておりますので、当該リンクページも是非一読して頂ますようお願い致します。
なお、『「標準報酬月額」の上昇・下落 』に「最高等級」や「最低等級」を含むようなケースでは、
当該「第2要件の例外規定」が定められておりますので、この点につきましてもご注意頂ますようお願い致します。
第3要件につきまして
「随時改定」が行われるためには、
『 変動月、変動月の翌月、変動月の翌々月における「支払基礎日数」』がすべて「最低日数以上」であることが必要となりますが、
この「第3要件」を検討するためには、
・『「支払基礎日数」とはどのような概念 』であるかを把握すること
・『「支払基礎日数」のカウント対象期間 』を適切に把握すること
・『「支払基礎日数」のカウント方法 』を適切に把握することなどが必要となりますので、
この点につきましては、「本文Ⅱの第2要件(2)でご紹介させて頂いております内容」をご確認頂きますようお願い致します。
◆ 「随時改定」による標準報酬月額の使用開始時期につきまして ◆
『「随時改定」で改定された「標準報酬月額」』の使用につきましては、
・『「変動月の4ヶ月目分」の社会保険料計算 』から使用開始されますが、
・「社会保険料の納付」及び「給与計算で控除する社会保険料」の観点からは、
・『「変動月の5ヶ月目」に納付する社会保険料 』
・『「変動月の5ヶ月目」に支払われる給与・役員報酬から控除する社会保険料 』から使用開始することとなります。
実務上では、後者の『「社会保険料の納付」及び「給与計算で控除する社会保険料」』の観点からの使用開始時期が重要となると考えますので、
「社会保険料の納付額の確認」や「社会保険料の控除計算」を行う場合には、
「本文Ⅲの2、3でご紹介させて頂いております内容」や「本文Ⅳの2でご紹介させて頂いております内容」をご確認頂きますようお願い致します。
◆ 「随時改定」による標準報酬月額の使用開始時期につきまして ◆
「随時改定」で改定された『「標準報酬月額」』の有効期間 』につきましては、
・原則、「随時改定」が行われた後の「定時決定」までとなりますが、
・『7月~9月に行われた「随時改定」』は、例外的に「翌年度の定時決定」までが有効期間となります。
従いまして、『 7月~9月を「改定月」とする「随時改定」』が行われるような場合には、
「本文Ⅴの2でご紹介させて頂いております内容」をご確認頂ますようお願い致します。
なお、この点につきましては、別途『 「標準報酬月額」の「定時決定」 』というページでも詳細に記載しておりますので、必要がある場合には当該リンクページをご一読頂ますようお願い致します。