ここでは「深夜労働時間」について、以下の事項に従い、ご紹介させて頂きます。
Ⅰ:「深夜労働時間」と「深夜労働手当」の支給
◆ 「深夜労働時間」 ◆
「深夜労働時間」とは、
「午後22:00から午前5:00まで」の「深夜時間帯」に行われた労働時間をいいますが、 |
この『「午後22:00から午前5:00までの深夜時間帯」の労働 』につきましては、
「労働基準法」上、 一部「18歳未満の年少者」「妊産婦から請求がある場合」等には、 「上記以外の労働者」に対しては、「深夜時間帯の労働」が禁止されているというような規定は存在しないため、 |
使用者は、 「18歳未満の年少者」「妊産婦から請求がある場合」などを除き、 労働者を「午後22:00から午前5:00までの深夜時間帯」に労働させることはできます。 |
◆ 「深夜時間帯の労働」に対する「割増賃金(深夜労働手当)の支給」の必要性 ◆
ただし、「深夜時間帯(22:00~5:00)における労働」につきましては、
「日昼労働し、夜間は休息するという一般的な生活」とは異なる生活を従業員等に強いる「特別な労働」となるため、 |
「労働基準法」におきましては、
使用者が労働者を「深夜時間帯(22:00~5:00)」に労働させた場合には、 『「通常の労働時間」に対して支給する賃金 』よりも『「割高な賃金率」で計算した「割増賃金(深夜労働手当)」』を (「労働基準法 37条4項」) |
◆ 『「深夜時間帯における労働時間」の把握・計算 』の必要性 ◆
このため、(会社などの)使用者は、
上記の「深夜労働手当」の計算を行うために、 「深夜時間帯における労働時間」を適切に把握・記録しておくことが必要となります。 |
Ⅱ:「深夜労働手当」の支給対象者
◆ 『「労働基準法 41条」該当者 』に対する「深夜労働手当」の支給必要性 ◆
「労働基準法 41条」におきましては、
① 労働基準法別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者 ② 事業の種類にかかわらず「監督若しくは管理の地位にある者」又は「機密の事務を取り扱う者」 ③ 「監視又は断続的労働に従事する者」で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの に対しては、『「法定労働時間」の規定 』『「法定休日」の規定 』『「法定休憩時間」の規定 』を適用しない。 |
と規定されているため、
上記「労働基準法 41条」に規定されている①~③の労働者につきましては、 「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」の「割増賃金」の計算・支払いは不要となります。 |
他方、
「労働基準法 41条」におきましては、 「深夜時間帯の労働」に対して適用除外とする記載はないことから、 |
『「労働基準法 41条」に規定されている①~③の労働者 』が「深夜時間帯(22:00~5:00)」に労働を行った場合には、
(一般的な労働者と同様に)「深夜労働に対する割増賃金(深夜労働手当)」を支給することが必要となります。 |
◆ 「夜間勤務者」等に対する「深夜労働手当の支給」の必要性 ◆
「深夜労働手当」につきましては、
上記Ⅰでご紹介させて頂きましたように、
『「日昼労働し、夜間は休息するという一般的な生活」とは異なる生活を強いることに対する対償 』として支給されるものであるため、
「労働」が深夜時間帯に行われている限り、 それが「所定内労働時間として行われているか?所定外労働時間として行われているか?」に関係なく、「深夜労働手当」の支給が必要となります。 |
従いまして、『 深夜時間帯の勤務を所定時間内勤務とする「夜間勤務者」など 』に対しても、
「深夜労働に対する割増賃金(深夜労働手当)」を支給することが必要となります。 |
◆ 「深夜労働手当」の支給対象者 ◆
上記でご紹介させて頂きましたように、
「深夜労働手当」につきましては、基本的にその支給対象外となるような「労働者」や「場面」は存在しないことから、 「深夜時間帯」に労働が行われた場合には、 ・すべての従業員を対象として、 ・その労働が「所定時間内に行われたものであるか・所定時間外に行われたものであるか」を問わず、 当該労働に対して「深夜時間帯の労働時間」を把握・計算し、「深夜労働手当」を計算・支給することが必要となります。 |
Ⅲ:「深夜労働時間」と「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」との関係
ここでは、
「法定時間外に行われた労働」に対しても、「深夜労働時間」の把握を行うことが必要となるのか? ⇒ すなわち、「法定時間外労働時間」と「深夜労働時間」は併立するものであるのか? |
「法定休日に行われた労働」に対しても、「深夜労働時間」の把握を行うことが必要となるのか? ⇒ すなわち、「法定休日労働時間」と「深夜労働時間」は併立するものであるのか? |
につき、ご紹介させて頂きます。
1、「深夜労働時間」と「法定時間外労働時間」との関係
『「深夜労働時間」と「法定時間外労働時間」との関係 』につきましては、
「法定時間外に労働が行われた」場合で、かつ「その労働時間が深夜時間帯に及ぶ」場合には、
|
が問題となりますが、
この点、「労働基準法施行規則 20条」では、
「法定時間外労働」が「深夜時間帯」に及ぶ場合には、「5割以上の割増賃金率」で「法定手当」を計算することが必要となる。 (なお、「法定時間外労働時間」が月60時間を超える場合には「7割5分以上の割増賃金率」で「法定手当」を計算することが必要となる。) |
と規定されていることから、
「法定時間外労働時間」が「深夜時間帯」に及ぶ場合には、
|
このことから、
「法定時間外労働時間」と「深夜労働時間」とは、「ともに併立する労働時間」となり、 |
「法定時間外労働時間」に対しても、別途「深夜労働時間」を把握・計算することが必要となります。 |
▶ 「労働基準法施行規則 20条」の制度趣旨
2、「深夜労働手当」と「法定休日労働手当」との関係
『「深夜労働手当」と「法定休日労働手当」との関係 』につきましても、
「法定休日に労働が行われた」場合で、かつ「その労働時間が深夜時間帯に及ぶ」場合には、
|
が問題となりますが、
この点、「労働基準法施行規則 20条」では、
「法定休日労働」が「深夜時間帯」に及ぶ場合には、「6割以上の割増賃金率」で「法定手当」を計算することが必要となる。 |
と規定されていることから、
「法定休日労働時間」が「深夜時間帯」に及ぶ場合には、
|
このことから、
「法定休日労働時間」と「深夜労働時間」とは、「ともに併立する労働時間」となり、 |
「法定休日労働時間」に対しても、別途「深夜労働時間」を把握・計算することが必要となります。 |
▶ 「労働基準法施行規則 20条」の制度趣旨
3、「深夜労働時間」と「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」との関係
上記1、2でご紹介させて頂きましたように、
「法定時間外労働時間」中に「深夜時間帯の労働時間」がある場合には、
当該「深夜時間帯の法定時間外労働時間」は、「法定時間外労働時間」&「深夜労働時間」として把握することが必要となり、
「法定休日労働時間」中に「深夜時間帯の労働時間」がある場合には、
当該「深夜時間帯の法定休日労働時間」は、「法定休日労働時間」&「深夜労働時間」として把握することが必要となり、
「深夜時間帯に行われた労働時間」につきましては、 ・ それが『「法定時間外労働時間」であるか 』『「法定休日労働時間」であるか 』に関係なく、 ・『「深夜労働手当」の支給が必要となる「深夜労働時間」』として把握・計算することが必要となります。 |
Ⅳ:「暦日(24:00)」を跨ぐ「深夜労働時間」の取り扱い
ここでは、「深夜労働時間」が「暦日(24:00)」を跨ぐ場合の取り扱いをご紹介させて頂きます。
◆ 「厚生労働省労働基準局長通達(基発)」における規定 ◆
厚生労働省から公表されている「厚生労働省労働基準局長通達1号(昭和63年1月1日)」には、
継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の「1日」とする。 |
と規定されています。
◆ 「暦日(24:00)」を跨ぐ「深夜労働時間」の取り扱い ◆
このため、「深夜労働時間」が「暦日(24:00)」を跨ぐような場合には、
その「深夜労働時間」は、 「翌暦日」の「深夜労働時間」として取り扱うのではなく、 「始業時刻が属する日(当暦日)」の「深夜労働時間」として取り扱うことが必要となります。 |
Ⅴ:「深夜労働時間」の把握・計算
ここでは、『「深夜労働時間」の把握・計算方法 』及び「その把握・計算例示」をご紹介させて頂きます。
1、「深夜労働時間」の把握・計算方法
「深夜労働時間」につきましては、
「 深夜時間帯※における勤務時間 」 から 「 深夜時間帯※における休憩時間 」 を控除して 把握・計算することとなります。 |
※: 深夜時間帯
・「始業時刻」が「午前0:00から午前5:00」までの間にあるような場合には、「始業時刻から午前5:00までの時間帯における労働時間」が「深夜労働時間」となります。
・ 「終業時刻」が「午後22:00から翌午前5:00」までの間にあるような場合には、「22:00から終業時刻までの時間帯における労働時間」が「深夜労働時間」となります。
2、『「深夜労働時間」の把握 』と『「勤怠管理簿」での管理 』につきまして
「深夜労働時間」を計算するためには、上記1でご紹介させて頂きましたように、
「深夜時間帯における勤務時間」と「深夜時間帯における休憩時間」を把握することが必要となりますが、 |
このためには、
『 深夜時間帯における「勤務時間」』 及び 『 深夜時間帯における「休憩時間」』が、 「勤怠管理簿」から適切に把握することができるということがその前提として必要となります。 |
なお、この点、
『 深夜時間帯における「勤務時間」の把握・計算 』につきましては、
「深夜時間帯」が労働基準法により「0:00~5:00」又は「22:00~翌日5:00」までというように固定されていることから、 「始業時刻」や「終業時刻」が「勤怠管理簿」において記録されていれば、「深夜時間帯の勤務時間」を把握・計算することができますが、 |
他方、『 深夜時間帯における「休憩時間」の把握・計算 』につきましては、
「深夜時間帯にとられた休憩時間」を「深夜時間帯以外にとられた休憩時間」と区別して把握しておかなければ、 「深夜時間帯にとられた休憩時間」を正確に把握することができなくなります。 |
このため、「深夜時間帯における休憩時間」を正確に把握するためには、
「勤怠管理簿」には、 ・「深夜時間帯以外の休憩時間」とは別に、 ・『「深夜時間帯の休憩時間」を記録することができる欄 』を予め設けておくことが必要となると考えます。 |
3、「深夜労働時間」の計算例示
以下におきましては「例示1」から「例示5」で、『 具体的な「深夜労働時間」の把握・計算例示 』をご紹介させて頂きます。
◆ 例示1 :「早朝における」深夜労働時間の把握・計算例 ◆
・午前3:30から午後12:00まで勤務し、
・当該勤務中「午前7:00から午前8:00」まで1時間の休憩時間がある場合
「深夜労働時間」は「 午前3:30から午前5:00 」までの「 1時間30分 」となります。 |
◆ 例示2 :「夜間における」深夜労働時間の把握・計算例 ◆
・午後15:00から午後24:00まで勤務し、
・当該勤務中「午後18:00から午後19:00」まで1時間の休憩時間がある場合
「深夜労働時間」は「 午後22:00から午後24:00 」までの「 2時間 」となります。 |
◆ 例示3 :「法定外労働における」深夜労働時間の把握・計算例 ◆
・午前9:00から午後24:00まで勤務し、
・当該勤務中「正午12:00から午後13:00」及び「午後18:00から午後19:00」まで2時間の休憩時間がある場合
「深夜労働時間」は「 午後22:00から午後24:00 」までの「 2時間 」となります。 ※ なお、当該「労働時間」は、「1日単位の法定時間外労働時間」ともなります。 |
◆ 例示4 :「2暦日を跨ぐ」深夜労働時間の把握・計算例 ◆
・午前9:00から午後30:00(翌日午前6:00)まで勤務し、
・当該勤務中「正午12:00から午後13:00」「午後18:00から午後19:00」及び「午後24:00から午後26:00」まで4時間の休憩時間がある場合
『「当該勤務日」における「深夜労働時間」』は
「5時間 」となります。 ※ なお、当該「労働時間」は、「1日単位の法定時間外労働時間」ともなります。 |
◆ 例示5 :「法定休日労働における」深夜労働時間の把握・計算例 ◆
・法定休日において、午後15:00から午後24:00まで勤務し、
・当該勤務中「午後18:00から午後19:00」まで1時間の休憩時間がある場合
「深夜労働時間」は「午後22:00から午後24:00」までの「 2時間 」となります。 ※ なお、当該「労働時間」は、「法定休日労働時間」ともなります。 |
Ⅵ:「深夜労働手当」の明示につきまして
「深夜労働手当」につきましては、
「その労働時間」が、「所定内・所定外の労働時間」であっても、また「法定時間外の労働時間」であっても「法定休日の労働時間」であっても、「深夜時間帯に行われた場合」には「深夜労働手当」の支給が必要となるため、
労働者に「深夜時間帯に労働させること」が予定されている場合には、
予め『「当該深夜時間帯の労働」に対する「(法定の)深夜労働手当」を含めた「給与額」』によって、雇用契約が締結されていることがあります。 |
(例えば22:00までの労働につきましては「時給:1,200円」、22:00以降の労働につきましては「時給:1,500円」で雇用契約が締結されている等)
ただ、このような雇用契約がなされている下では、
『「給与額」には、「法定の深夜労働手当の金額 」が含まれている 』ということを労働者に対して明示していないと、
労働者にとっては、「給与額」に含められている「割増金額」が、
- 「(法定の)深夜労働手当」に該当するものであるのか?
- 「(会社が任意で支給する)夜勤手当」に該当するものであるのか?
が分からず、使用者と労働者との間で「給与金額」に対する齟齬が生じるリクスがあります。
従いまして、「22:00以降の労働」に対して「(法定の)深夜労働手当」を含めて、労働者と雇用契約を締結する場合には、
労使間において「上記のような齟齬」が生じることがないように、 『「基本給」やその他「会社で任意に支給する手当」』と「(法定の)深夜労働手当」とを明確に区分して、 かつ、「給与支給額」には予め「(法定の)深夜労働手当」が含められていることを従業員等に明示・周知した上で、 雇用契約を締結することが必要となると考えます。 |
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは『「深夜労働時間」に係る各種内容 』や『「深夜労働時間」の把握・計算方法 』をご紹介させて頂いております。
「深夜労働時間」と「深夜労働手当」の支給につきまして
従業員を「深夜時間帯に労働」させること自体は、「労働基準法」等において禁止されているものではありませんので、
「深夜時間帯に労働」させる場合には、「法定労働時間を超えて労働させる場合」や「法定休日に労働させる場合」などとは異なり、「36協定等の労使協定」は必要ありません。
ただし、従業員を「深夜時間帯に労働」させた場合には、当該「深夜労働時間」に対して「割増賃金(深夜労働手当)」を支払うことが必要となります。
「深夜労働手当」の支給対象者につきまして
「労働基準法41条に規定されている労働者」に対しては、
・「法定時間外労働手当」「法定休日労働手当」の支給は不要となりますが、
・「深夜労働手当」につきましては支給することが必要となります。
特に『「法定時間外労働手当」や「法定休日労働手当」が支給されない「管理監督者」』等に該当する場合であっても、「深夜労働手当」の支給は必要となりますので、この点につきましては今一度ご確認頂ますようお願い致します。
「深夜労働時間」と「法定時間外労働時間」「法定休日労働時間」との関係につきまして
「深夜労働時間」につきましては、
・それが『「法定時間外労働時間」であるか 』『「法定休日労働時間」であるか 』に関係なく、
・「深夜時間帯になされた労働時間」につきましては、『「深夜労働手当」の支給が必要となる「深夜労働時間」』として把握・計算することが必要となりますので、この点につきましては今一度ご確認頂ますようお願い致します。
「暦日(24:00)」を跨ぐ「深夜労働時間」の取り扱いにつきまして
「暦日(24:00)」を跨ぐ「深夜労働時間」につきましては、
「始業時刻が属する日(当暦日)」の「深夜労働時間」として取り扱うことが必要となるという点がポイントとなります。
「深夜労働時間」の把握・計算につきまして
「深夜労働時間」の把握・計算につきましては、特に難しい点は存在しませんが、
「深夜労働時間」を適切に把握・計算するためには、その前提として「深夜時間帯における休憩時間」を「深夜時間帯以外における休憩時間」とは別に管理しておくことが必要となります。
「深夜労働手当」の明示につきまして
予め「基本給等の給与額」に「法定の深夜労働手当」を含めて雇用契約を締結するような場合には、
これに係る「労使間の齟齬が生じるリスク」を回避するため、
『「法定の深夜労働手当」は予め「給与額」に含まれている 』ということを労働者に明示して、雇用契約を締結することが必要であると考えます。