預金口座が複数ある場合、預金から預金へ資金を移動する(預金間取引)場合の入力方法(仕訳)をご紹介致します。

 

「預金口座が複数ある場合で、預金から預金に対して資金を移動させた(以下、「預金間取引」といいます。)」場合には、「それぞれの通帳」から「預金出納帳」を作成していると、当該「預金間取引」が「それぞれの預金出納帳」において、二重に記帳される恐れがあります。

ここでは、この「預金間取引の二重記帳」を防止するための入力(仕訳)テクニックをご紹介致します。

 

 

Ⅰ:預金間取引の二重記帳の原因

給与支払用、売上金入金用、経費支払用、借入金返済用等のそれぞれの用途に応じて、預金口座を使い分けるために、預金口座を複数利用されている方は多いと思います。

このような複数口座をお持ちの方が、「A銀行××口座」から「B銀行××口座」へ資金を移動させた場合に、「銀行口座の通帳残高」と「預金出納帳の残高」が一致していない現象が良く見受けられます。

この不一致の原因の1つとして、「預金間取引」が二重記帳されていることが、よく見受けられます。

では、なぜ「預金間取引」で二重記帳が起こるのか?を下記でご紹介致します。

 

1、二重記帳の原因

「弥生会計の預金出納帳」に預金間取引を入力した場合には、

  • その預金の「預金出納帳」に入金・出金が記帳される。(当然のことですが)
  • それと同時に相手勘定預金勘定(普通預金、当座預金等)である場合には、「その相手勘定預金出納帳」に、上記預金間取引が自動で転記(記録)されます。

上記の自動転記は、会計ソフトの以下の自動仕訳作成機能、自動転記機能から生じるものとなります。

①「預金出納帳」に「相手勘定科目」「金額」が入力されると、会計ソフトでは、この入力に対応する「仕訳」が自動的に作成されます。(会計ソフトの自動仕訳作成機能

②そして上記①の「相手勘定」が「預金(普通預金、当座預金)」である場合には、①で作成された「仕訳」から「相手勘定の預金出納帳」に自動的に転記がなされます。(会計ソフトの自動転記機能

 

例えば、『「A銀行××口座」から「B銀行○○口座」への資金移動があった場合』に

「A銀行の預金出納帳」で「B銀行○○口座への出金」を入力した場合には、
上記の入力から、 普通預金(B銀行) XXXX円 / 普通預金(A銀行) XXXX円 という「仕訳」が自動生成されます
そして上記仕訳の「左側(借方)記録」から、「B銀行の預金出納帳」にも、「A銀行からの入金」が自動で転記(記帳)されます。

このため、預金間取引については、「A銀行の預金出納帳」での入力を行うことで会計帳簿への入力は完了します

 

これにもかかわらず、「B銀行の預金出納帳」を「B銀行の通帳」を見ながら、記帳している時に、上記の「A銀行からの入金」を記帳してしまうと、

「B銀行の預金出納帳」には、

  • 「A銀行の預金出納帳」の入力から自動転記された「入金」
  • 「B銀行の預金出納帳」の入力から記録された「入金」が二重計上されます。

また、「A銀行の預金出納帳」には、

  • 「A銀行の預金出納帳」の入力から記録された「出金」
  • 「B銀行の預金出納帳」の記帳から自動転記された「出金」が二重計上されます。

この結果、「B銀行の預金出納帳の残高」は、「B銀行の預金通帳残高額」よりも過大になり、「A銀行の預金出納帳の残高」は、「A銀行の預金通帳残高額」よりも過少になります

 

2、二重記帳の例示

ここでは、二重記帳が生じてしまう状況を具体的な資金移動を例にとりご説明致します。

例示

「三菱東京UFJ銀行」から「みずほ銀行」へ100,000円の資金移動(振込)を行った場合

 

1)三菱東京UFJ銀行での「預金出納帳」の入力

以下で、三菱東京UFJ銀行での「預金出納帳」の入力を具体的にご紹介致します。

①通帳

上記資金移動取引に係る「三菱東京UFJ銀行」の通帳記帳は以下のものとなっています。

預金間取引の東京三菱UFJ銀行の通帳画像

 

②弥生会計における「三菱東京UFJ銀行の預金出納帳」の入力

上記の通帳を見ながら「三菱東京UFJ銀行の預金出納帳」への入力を行います。

預金間取引の弥生会計への入力

 

③弥生会計での自動仕訳作成

弥生会計における自動仕訳作成機能により、「上記②の入力」により、以下の仕訳が自動的作成されます

預金間取引の仕訳

 

④弥生会計での「みずほ銀行の預金出納帳」への自動転記

「上記③の仕訳の借方記録」によって、弥生会計では、「みずほ銀行の現金出納帳にも資金移動取引自動的に転記されます。

このため、例示の預金間取引の会計帳簿への入力は完了します

預金間取引について弥生会計で行われる自動入力

 

2)みずほ銀行での「預金出納帳」の入力

①通帳

みずほ銀行の通帳に記帳されている資金移動取引は以下のものとなります。

資金移動のみずほBK通帳画像

 

②正しい「みずほ銀行の預金出納帳」の入力

上記の預金間取引については、「三菱東京UFJ銀行の預金出納帳」の入力ですでに記録済み転記済み)であるために、

「みずほ銀行の預金出納帳」の入力にあたっては、「預金間取引に係る入金」は記帳してはいけないものとなります

 

③「みずほ銀行の預金出納帳」に資金移動取引を入力してしまった場合

上記①の通帳を見ながら「みずほ銀行の現金出納帳」を入力している際に、

  • 本来は入力してはいけないものであるにも関わらず、
  • 「入金取引」を入力してしまった場合には、

下記ⅰ)ⅱ)のような状況が発生してしまいます。

 

ⅰ)みずほ銀行の現金出納帳

「みずほ銀行の現金出納帳」におきまして、

  • 「三菱東京UFJ銀行の預金出納帳」の入力から自動転記された記録
  • 「みずほ銀行の通帳」を見ながら「みずほ銀行の預金出納帳」に入力された記録

が二重に記録されてしまいます。

預金間取引の誤記帳画像

本来入力すべきでないものを入力した結果、

1つの取引二重計上されてしまい、
通帳残高」が100,000円であるにも関わらず、
預金出納帳(みずほ銀行)の残高」は200,000円となってしまい、
100,000円本来残高よりも過大になってしまいます。

 

ⅱ)三菱東京UFJ銀行の現金出納帳

「三菱東京UFJ銀行の現金出納帳」におきまして、

  • 「三菱東京UFJ銀行の通帳」を見ながら「三菱東京UFJ銀行の預金出納帳」に入力された記録
  • 「みずほ銀行の現金出納帳」入力から自動転記された記録

が二重に記録されてしまいます。

預金間取引の誤記帳(UFJ)

「みずほ銀行の通帳」を見て「みずほ銀行の預金出納帳」に誤った入力をした結果、「三菱東京UFJの預金出納帳」にも誤った入力自動転記されてしまいます。

この結果、「通帳残高」が900,000円であるにも関わらず、
預金出納帳(三菱東京UFJ銀行)の残高」が800,000円となってしまい、
100,000円本来残高よりも過少になってしまいます。

 

 

 

Ⅱ:預金間取引の記帳方法

上記Ⅰで例示したものは、例示のために取引が1つだけであるため、すぐに二重に計上してしまったことが分かります。

ただ、預金間取引を行った日に、預金間取引以外の多くの取引が通帳に記帳されている場合等には「預金間取引」への注意が散漫になり、二重計上してしまうことがよくあります。

また、二重計上を事前に防止するためには、預金出納帳を記帳する際に、預金間取引を抽出し、入力しない取引を事前に確認・把握しておく等の対策が必要になります。

ただ、この事前の確認・把握は、多くの取引を記帳する場合には、少々面倒くさいものとなります。

このため、ここでは、預金間取引を事前に確認・把握等をしなくてすむ方法(「それぞれの預金通帳」を見ながら「通帳どうりに預金出納帳に記入できる方法」)をご紹介したいと思います。

 

1、記帳方法

Point !

預金間取引を「預金出納帳」に記帳する場合には、

相手勘定を「現金」として記帳します。

預金間取引を「預金」⇒「預金」とするのではなく、「預金」⇒「現金」⇒「預金」と考え、一旦「現金勘定」を経由して資金移動がなされたと考えます。

上記Pointのような記帳を行うことにより、「送金側の銀行口座の預金支払」を「送金側の預金出納帳に記帳」しても、「受取側の預金出納帳」に自動記帳が行われることはありません

このため「受取側の現金出納帳」の記帳を行うにあたり、「受取側の銀行口座の預金受け入れ」を入力しても、二重記帳のされることはありません。
(むしろ、「受取側の銀行口座の預金受け入れ」を記帳する必要があります。)

他方、「預金間取引」で「経由させた現金」は、

  • 「送金側の預金出納帳の記帳」により、「現金出納帳」に入金が自動仕訳され
  • 「受取側の現金出納帳の記帳」により、「現金出納帳」に出金が自動仕訳され
  • 結果的に、現金の増減は発生しません

 

2、現金勘定に「預金間取引のための補助科目」を設定する

Point !

預金口座を複数持っている場合には、預金間取引を処理するためにあらかじめ「現金」勘定に「A銀行⇔B銀行」という「補助科目」を設定しておくことが良いと思います。

預金間取引で使用した現金勘定は、実際の現金の入出金ではないために、実際の現金の入出金と区別して把握することが良いと思います。

この点、上記の補助科目を使用することにより、実際の現金入出金と区分把握が可能となります。

また、「A銀行⇔B銀行」という現金勘定の補助科目の残高がゼロとなることを確認することにより「預金間取引」が適切に入力されていることを確認できます。

 

3、弥生会計への記帳の例示

「預金間取引の記帳方法」を具体的例示を使用し、ご紹介致します。

例示

「三菱東京UFJ銀行」から「みずほ銀行」へ100,000円の資金移動(振込)を行った場合

 

1)三菱東京UFJ銀行での「預金出納帳」の入力

「三菱東京UFJ銀行の通帳」を見ながら、「預金出納帳(三菱東京UFJ銀行)」への入力を行います。

この場合の相手勘定は「現金」、相手補助科目は、「UFJ⇔みずほ」とします。

預金間取引の記帳方法(UFJ)

 

2)みずほ銀行での「預金出納帳」の入力

「みずほ銀行の通帳」を見ながら、「預金出納帳(みずほ銀行)」への入力を行います。

この場合の相手勘定は「現金」、相手補助科目は、「UFJ⇔みずほ」とします。

預金間取引の仕訳方法(みずほ銀行)

 

3)現金出納帳の自動記帳

「預金出納帳(三菱東京UFJ銀行)」及び「預金出納帳(みずほ銀行)」の記帳から、「現金出納帳」に入金、出金記帳が自動的に行われます

また、「残高試算表」の「現金」の補助科目である「UFJ⇔みずほ」の残高がゼロとなっていることにより「預金間取引」について適切に記帳されていることが確認できます

【現金出納帳】

預金間取引における現金出納帳

【現金勘定の「UFJ⇔みずほ」の残高】

預金間取引の現金勘定の補助科目

 

 

税理士事務所・会計事務所からのPOINT

預金間取引について二重計上が行われたとしても、「預金勘定の合計残高」は、「すべての通帳残高の合計金額」と一致しています。

預金間取引の二重計上の問題は、実は「それぞれの預金出納帳」の中の問題にすぎません。

ただし、「それぞれの預金出納帳残高」は、必ず「それぞれの通帳残高」と一致させておくことが大切であると考えます。

従いまして、手間を掛けずに「預金間取引」について二重計上を防止するために、是非ここで記載されている記帳方法をマスターして頂ければと考えます。

【補足】

上記の説明では、現金勘定を使用しましたが、「仮受金」や「仮払金」等の勘定を使用しても良いと思います。

ただ、個人的には、「現金」を使う方法が一番わかりやすいのでは?と思います。