「報酬・料金に対する所得税の源泉徴収」につきまして、「源泉徴収が必要となる報酬・料金」「それぞれの報酬・料金に対する源泉徴収金額」につきまして、以下の項目に従い、ご説明させて頂きます。
Ⅰ:第204条第1項第1号の報酬・料金(原稿料、講演料等)
1、源泉徴収の金額
報酬・料金の額 × 10.21% |
ただし、同一人に対し1回に支払われる金額が100万円を超える場合には、
100万円 × 10.21% + (報酬・料金の額 ‐ 100万円) × 20.42% |
2、源泉徴収の対象となる業務報酬
報酬の内容 |
具体的報酬内容 |
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講演の報酬・料金 | 講演を依頼した場合の講師に支払う謝金
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技芸、スポーツ、知識等の 教授・指導料 |
技芸、スポーツその他これらに類するもの(実技指導等)の教授若しくは指導又は知識の教授の報酬・料金
【次に掲げるものも含まれます。】
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原稿の報酬 |
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挿絵の報酬 | 書籍、新聞、雑誌等の挿絵の料金 | |
写真の報酬 | 雑誌、広告、その他の印刷物に掲載するための写真の報酬・料金 | |
作曲の報酬 | 作曲、編曲の報酬 | |
レコード、テープ又はワイヤー の吹き込みの報酬 |
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デザインの報酬 |
※ ネオンサイン、広告塔、ショーウィンドー、陳列棚、商品展示会場又は庭園等のデザインとその施工とを併せて請け負った者にその対価を一括して支払うような場合には、その対価の総額をデザインの報酬・料金と施工の対価とに区分し、デザインの報酬・料金について源泉徴収を行いますが、そのデザインの報酬・料金の部分が極めて少額であると認められるときは、源泉徴収をしなくて差し支えありません。
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脚本の報酬・料金 | 映画、演劇、演芸等の脚本料 | |
脚色の報酬・料金 |
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翻訳の報酬・料金 | 翻訳の料金 | |
通訳の報酬・料金 | 通訳の料金
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校正の報酬・料金 | 書籍・雑誌等の校正の料金 | |
書籍の装丁の報酬・料金 | 書籍の装丁(表紙,カバー,外箱,タイトル・ページのデザイン)料
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速記の報酬・料金 | 速記料 | |
版下の報酬・料金 |
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放送謝金 | ラジオ放送、テレビジョン放送等の謝金等
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著作権の使用料 |
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著作隣接権の使用料 |
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工業所有権等の使用料 | 工業所有権、技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるものの使用料 | |
投資助言業務に係る報酬・料金 | 金融商品取引法第28条第6項に規定する投資助言業務に係る報酬・料金 |
Ⅱ:第204条第1項第2号の報酬・料金(専門職業等)
1、弁護士、税理士、経営コンサルタント、建築士、不動産鑑定士、等
1)源泉徴収の金額
報酬・料金の額 × 10.21% |
ただし、同一人に対し1回に支払われる金額が100万円を超える場合には、
100万円 × 10.21% + (報酬・料金の額 ‐ 100万円) × 20.42% |
2)源泉徴収の対象となる業務報酬
報酬の内容 | 具体的報酬内容 | |
弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、税理士、計理士、会計士補、社会保険労務士又は弁理士の業務に関する報酬・料金 | 弁護料、監査料その他名義のいかんを問わず、その業務に関する一切の報酬・料金 | |
企業診断員の業務に関する報酬・料金 |
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測量士又は測量士補の業務に関する報酬・料金 | 測量に関する計画の作成、その計画の実施その他の業務に関する報酬・料金 | |
建築士の業務に関する報酬・料金 |
※ 建築士には、建築士法第23条に規定する建築士事務所の登録を受けていない人も含まれます。 ※ 建築士の業務と建築の請負とを併せて行っている人に設計等とその施工とを併せて請け負わせ、対価を一括して支払うような場合には、その対価の総額を建築士の業務に関する報酬・料金と建築の対価とに区分し、建築士の業務に関する報酬・料金について源泉徴収を行うのが建前ですが、建築士の業務に関する報酬・料金の部分が極めて少額であると認められるときは、源泉徴収をしなくて差し支えありません。 |
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建築代理士の業務に関する報酬・料金 | 建築代理士(建築代理士以外の人で、建築に関する申請や届出の書類を作成し、又はこれらの手続の代理をすることを業とする人を含みます。)の業務に関する報酬・料金 | |
不動産鑑定士又は不動産鑑定士補の業務に関する報酬・料金 | 不動産の鑑定評価その他の業務に関する報酬・料金 | |
技術士又は技術士補の業務に関する報酬・料金 | 技術士又は技術士補のその業務に関する報酬・料金のほか、技術士又は技術士補の資格を有しないで科学技術(人文科学だけを対象とするものを除きます。)に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項について計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務※を除きます。)を行う人のその業務に関する報酬・料金
※ 上記の「他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務」には、次のようなものがあります。
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火災損害鑑定人又は自動車等損害鑑定人の業務に関する報酬・料金 | 社団法人日本損害保険協会に火災損害登録鑑定人若しくは火災損害登録鑑定人補又は自動車等損害鑑定人(自動車又は建設機械の保険事故に関して損害額の算定又は調査を行うことを業とするいわゆるアジャスターをいいます。)として登録された人に対する報酬・料金でその業務に関するもの
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2、司法書士、土地家屋調査士、海事代理士、等
1)源泉徴収の金額
(報酬・料金の額 - 1回の支払につき1万円) × 10.21% |
2)源泉徴収の対象となる業務報酬
報酬の内容 | 具体的報酬内容 |
司法書士の業務に関する報酬・料金 | 裁判所、検察庁、法務局又は地方法務局に提出する書類の作成その他の業務に関する報酬・料金 |
土地家屋調査士の業務に関する報酬・料金 | 不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査、測量又は官公庁に対する申請手続その他の業務に関する報酬・料金 |
海事代理士の業務に関する報酬・料金 | 船舶法、船舶安全法、船員法、海上運送法又は港湾運送事業法の規定に基づく申請、届出、登記その他の手続又はこれらの手続に関する書類の作成その他の業務に関する報酬・料金 |
Ⅲ:第204条第1項第4号の報酬・料金(モデル、プロ選手、外交員等)
1、モデル、プロ選手等
1)源泉徴収の金額
報酬・料金の額 × 10.21% |
ただし、同一人に対し1回に支払われる金額が100万円を超える場合には、
100万円 × 10.21% + (報酬・料金の額 ‐ 100万円) × 20.42% |
2)源泉徴収の対象となる業務報酬
報酬内容 | 具体的報酬内容 |
モデルの業務に関する報酬・料金 |
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職業野球の選手の業務に関する報酬・料金 | 選手、監督、コーチャー、トレーナー又はマネージャーに対し選手契約に定めるところにより支払われるすべての手当、賞金品等 |
プロサッカーの選手の業務に関する報酬・料金 | プロサッカーの選手に支払われる定期報酬、出場料、成功報酬その他その業務に関する報酬・料金 |
プロテニスの選手の業務に関する報酬・料金 | プロテニスの選手に支払われる専属契約料、入賞賞金、出場料その他その業務に関する報酬・料金 |
プロレスラーの業務に関する報酬・料金 | プロレスラーに支払われるファイトマネー、賞金品その他その業務に関する報酬・料金 |
プロゴルファーの業務に関する報酬・料金 | プロゴルファーに支払われるその業務に関する賞金品、手当その他の報酬・料金 |
プロボウラーの業務に関する報酬・料金 | プロボウラーに支払われるその業務に関する賞金品、手当その他の報酬・料金 |
自動車のレーサーの業務に関する報酬・料金 | サーキット場で行われるレース、ラリー、モトクロス、トライアル等の自動車(原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車をいいます。)の競走・競技に出場するドライバー、ライダー等に支払われる賞金品その他その業務に関する報酬・料金 |
自転車競技の選手、小型自動車競走※の選手又はモーターボート競走の選手の業務に関する報酬・料金 | 普通賞金、特別賞金、寄贈賞、特別賞(先頭賞、記録賞、敢闘賞、副賞)、参加賞その他競技に出場することによって支払われるすべてのもの
※ 小型自動車競走の選手とは、小型自動車競走法第11条第1項《小型自動車競走の審判員等の登録》に規定する選手をいいます。 |
競馬の騎手の業務に関する報酬・料金 | 競馬の騎手に支払われるその業務に関する報酬・料金 |
2、外交員、集金人又は電力量計の検針人
1)源泉徴収の金額
(報酬・料金の額 - 控除金額※) × 10.21%
※ 控除金額:同一人に対してその月中に支払われる金額について、12万円。 |
2)源泉徴収の対象となる業務報酬
報酬内容 |
具体的報酬内容 |
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外交員、集金人又は電力量計の検針人の業務に関する報酬・料金 |
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3、プロボクサー
1)源泉徴収の金額
(報酬・料金の額 - 1回の支払につき5万円) × 10.21% |
2)源泉徴収の対象となる業務報酬
報酬内容 | 具体的報酬内容 |
職業拳闘家の業務に関する報酬・料金 | プロボクサーに支払われるファイトマネー、賞金品その他その業務に関する報酬・料金 |
Ⅳ:第204条第1項第5号の報酬・料金(芸能人、芸能プロダクション等)
1、源泉徴収の金額
報酬・料金の額 × 10.21% |
ただし、同一人に対し1回に支払われる金額が100万円を超える場合には、
100万円 × 10.21% + (報酬・料金の額 ‐ 100万円) × 20.42% |
2、源泉徴収の対象となる業務報酬
報酬内容 |
具体的報酬内容 |
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映画、演劇、その他芸能又はラジオ放送やテレビジョン放送の出演や演出又は企画の報酬・料金 | 映画、演劇、音楽、音曲、舞踊、講談、落語、浪曲、漫談、漫才、腹話術、歌唱、奇術、曲芸や物まね又はラジオ放送やテレビジョン放送の出演や演出又は企画の報酬・料金
【以下のものも含まれます】
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芸能人の役務の提供を内容とする事業を行う者のその役務提供に関する報酬・料金 | 映画や演劇の俳優、映画監督や舞台監督(プロジューサーを含みます。)、演出家、放送演技者、音楽指揮者、楽士、舞踊家、講談師、落語家、浪曲師、漫談家、漫才家、腹話術師、歌手、奇術師、曲芸師又は物まね師の役務の提供を内容とする事業を行う者のその役務提供に関する報酬・料金
【以下のものも含まれます】 「役務提供に関する報酬・料金」とは、不特定多数の人から支払われるものを除き、芸能人の役務の提供の対価たる性質を有する一切のものをいいますから、その報酬・料金には、演劇を製作して提供する対価や芸能人を他の劇団、楽団等に供給したり、芸能人の出演をあっせんしたりすることにより支払われる対価はもちろん、次のようなものも含まれます(なお、脚本、楽曲等を提供することにより支払われる対価のように著作権の対価に該当するものは、上記の報酬・料金には含まれません。)。
※ なお、事業を営む個人が特定の要件に該当するものとして所轄税務署長から源泉徴収を要しないことの証明書の交付を受け、その証明書を提示して支払を受けるものについては、源泉徴収をする必要はありません。
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Ⅴ:第204条第1項第6号の報酬・料金(ホステス、コンパニオン等)
1、源泉徴収の金額
(報酬・料金の額 - 控除金額※) × 10.21%
※ 控除金額:同一人に対し1回に支払われる金額について、5,000円×「支払金額の計算期間の日数」 |
2、源泉徴収の対象となる業務報酬
報酬内容 |
具体的報酬内容 |
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ホステス、バンケットホステス・コンパニオン等の業務に関する報酬・料金 |
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Ⅵ:第204条第1項第7号の契約金(契約金等)
1、源泉徴収の金額
報酬・料金の額 × 10.21% |
ただし、同一人に対し1回に支払われる金額が100万円を超える場合には、
100万円 × 10.21% + (報酬・料金の額 - 100万円) × 20.42% |
2、源泉徴収の対象となる業務報酬
報酬内容 |
具体的報酬内容 |
役務の提供を約すること等により一時に支払われる契約金 | 職業野球の選手、その他一定の者に専属して役務を提供する人が、その一定の者のために役務を提供し、又はそれ以外の者のために役務を提供しないことを約することにより一時に支払われる契約金
※ 契約金には、雇用契約等を締結することにより支払われる支度金、移転料等も含まれます。ただし、就職に伴う転居のための旅費に該当するものは、これに当たりません。 |
Ⅶ:第204条第1項第8号の賞金(広告宣伝の賞金、競馬の賞金等)
1、広告宣伝のための賞金
1)源泉徴収の金額
(賞金品の額 - 控除金額※) × 10.21%
※ 控除金額:同一人に対し1回に支払われる賞金品の額について、50万円 |
2)源泉徴収の対象となる業務報酬
報酬内容 |
具体的報酬内容 |
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事業の広告宣伝のための賞金 | 事業の広告宣伝のために賞として支払う金品その他の経済上の利益
(例)いわゆる素人のど自慢放送、クイズ放送の出演者に対し、番組のスポンサー等から支払われる賞金品等 【以下のものが含まれます】 「事業の広告宣伝のために賞として支払う金品その他の経済上の利益」とは、事業を営む者が商品又は事業の内容等を広く一般に知らせ顧客を誘引するために支払う賞金品等をいい、事業を営む者が自己の事業の広告宣伝のために直接支払うもののほか、次に掲げるものもこれに含まれます。
※賞金品が物品で支払われる場合の評価は、次によります(所基通205-9)
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2、馬主に対しての競馬の賞金
1)源泉徴収の金額
(賞金の額 - 控除金額※ ) × 10.21%
※ 控除金額:同一人に対し1回に支払われる賞金の金額について、 |
2)源泉徴収の対象となる業務報酬
報酬内容 |
具体的報酬内容 |
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馬主に支払われる競馬の賞金 | 馬主に対し競馬の賞として支払われる金品のうち、金銭で支払われるもの
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Ⅷ:報酬・料金に対する源泉徴収の留意点
1、源泉徴収の対象となる報酬・料金
「源泉徴収の対象となる報酬・料金」は、上記のⅠ~Ⅶに記載した業務に対する報酬・料金のうち、
「個人事業者」や「個人」に対して支払ったもののみになります。 |
このため、「会社」や「その他法人」に対して支払った報酬・料金につきましては、源泉徴収の対象とはなりません。
2、源泉徴収義務者
※1 「給与の支払がない個人事業者」や「常時2人以下の家事使用人(家政婦)のみに対して給与を支払う個人事業者」は、「源泉徴収義務者」とはなりません。 ※ 上記Ⅴの「ホステス、コンパニオン等の報酬・料金(第204条第1項第6号)」を支払った場合には、「給与を支払っていない個人事業者等」も「源泉徴収義務者」となります。 |
上記のような場合には、「会社」「その他の法人」「個人事業主」「個人」は、「源泉徴収義務者」となります。
これらの「報酬・料金に対する源泉税」は、「報酬・料金の支払先である個人事業者等の所得税」ですので、本来的には、「報酬・料金の支払先である個人事業者」が税務署等に支払うものでありますが、税務署に代わって「源泉徴収義務者」が徴収しなければならない制度になっています。
このため、税務調査等において、「本来源泉徴収をしなければならない報酬・料金」に対して、源泉徴収がなされていないこと(源泉徴収漏れ)が指摘された場合には、「源泉徴収義務者」に対して「源泉税の納付」が求められます。
請求書で源泉徴収金額が控除されていない場合
本来は、報酬・料金に対して源泉徴収が必要な場合には、個人事業者から送付される「請求書」で、「源泉徴収金額」が控除されていることが必要となります。
ただし、個人事業者の中には、「源泉徴収金額」を控除せず「請求書」が発行される場合があります。
このような場合であっても、源泉徴収を行う責任は、「源泉徴収義務者」となってしまいます。
このため、「個人事業者に支払った報酬・料金」が「上記Ⅰ~Ⅶに該当する報酬・料金」に該当する場合には、報酬・料金の支払にあたって、個人事業者にご確認して頂きますようお願い致します。
3、源泉徴収の納付時期
1)毎月納付(原則納付)の場合
「従業員給与」や「役員報酬」に対する源泉徴収税を、「毎月納付(原則納付)」により、税務署に納付している場合には、
「上記Ⅰ~Ⅶに該当する報酬・料金に対して徴収した源泉税」も、
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2)納期特例の場合
「従業員給与」や「役員報酬」に対する源泉徴収税を、「納期特例(年間2回)」により、税務署に納付している場合には、
上記Ⅱに記載した「専門職業者への報酬・料金に係る源泉徴収税(第204条第1項第2号)」は、
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「上記以外の報酬・料金に係る源泉徴収税」は、
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