ここでは、「給与・役員報酬の計算」において控除する『「特別徴収住民税」の控除方法 』と『 例示を用いた「特別徴収住民税」の具体的な控除方法 』を、以下の項目に従い、ご紹介させて頂きます。
▶ なお、『「特別徴収住民税を控除する」ための前提知識 』につきましては、別途『「住民税の特別徴収」に必要な「基礎知識」』というページにてご紹介させて頂いております。
Ⅰ:「特別徴収住民税を控除するための前提」&「控除方法」
1、「特別徴収住民税」を控除するための前提
給与計算において「控除すべき特別徴収住民税額」は、「(その従業員・役員が居住する)市町村」で計算されることから、
『 給与計算において「特別徴収住民税」を控除する 』ためには、
市町村から「個人住民税の特別徴収決定(変更)通知書」が会社に送付されていることが前提となります。 |
2、「特別徴収住民税」の控除方法
『 給与計算において「特別徴収住民税」を控除する 』ためには、
市町村から送付される「特別徴収決定(変更)通知書」に記載されている「各月の(個人別)住民税の金額」を、 |
『「特別徴収決定(変更)通知書」に記載されている「月」』に「支払われる給与計算」で控除することになります。 |
留意 : 「6月分の特別徴収住民税額」につきまして
Ⅱ:「特別徴収住民税」の具体的な控除例示
「特別徴収住民税」の給与・役員報酬からの控除方法は、上記Ⅰ-2でご紹介させて頂きましたような内容となりますが、
ここでは、
- 『「6月分の特別徴収住民税」を給与計算から控除する方法 』
- 『「5月分の特別徴収住民税」を給与計算から控除する方法 』
を具体的な例示を用いてご紹介させて頂きます。
1、「6月分の特別徴収住民税」の控除例示
市町村から送付されてきた「個人住民税の特別徴収決定(変更)通知書」の記載が以下のものである場合
「6月分の特別徴収住民税額」を給与計算において控除する場合には、以下(1)又は(2)のものとなります。
◆ (1)「給与・役員報酬の支払」が翌月支払の場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「5月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「5月1日~5月31日まで」であり、
- 上記「5月分の給与・役員報酬」が「6月10日」に支払われているような場合
給与計算での控除例示
◆ (2)「給与・役員報酬の支払」が当月支払の場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「6月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「5月21日~6月20日まで」であり、
- 上記「6月分の給与・役員報酬」が「6月30日」に支払われるような場合
給与計算での控除例示
2、「5月分の特別徴収住民税」の控除例示
市町村から送付されてきた「個人住民税の特別徴収決定(変更)通知書」の記載が以下のものである場合
「5月分の特別徴収住民税額」を給与計算において控除する場合には、以下(1)又は(2)のものとなります。
◆ (1)「給与・役員報酬の支払」が翌月支払の場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「4月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「4月1日~4月30日まで」であり、
- 上記「4月分の給与・役員報酬」が「5月10日」に支払われるような場合
給与計算での控除例示
◆ (2)「給与・役員報酬の支払」が当月支払の場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「5月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「4月21日~5月20日まで」であり、
- 上記「5月分の給与・役員報酬」が「5月31日」に支払われるような場合
給与計算での控除例示
Ⅲ:「退職者」に対する「特別徴収住民税」の控除方法
従業員・役員が暦年度の途中に退職・退任した場合には、
『「退職・退任日以降の未徴収住民税」の徴収方法 』は、
以下1、2のような取扱いがなされます。 |
1、当暦年度の6月~12月末までに退職した場合
従業員・役員が「当暦年度の6月~12月末までに退職・退任した」場合には、
『 その方に係る「未徴収の住民税額」の取扱い方法 』は、以下のいずれかの方法を選択して徴収することができます。
選択 ① :「未徴収の住民税」を一括徴収せずに、普通徴収に切り替える。 選択 ② :「退職者の申出」がある場合には、「未徴収の住民税」を一括徴収する。 選択 ③ :「退職者の申出」がある場合には、「転職先」で継続して特別徴収を行う。 |
なお、上記の「 選択 ② 」と「 選択 ③ 」の方法につきましては、
「退職者の申出」がある場合に限って「選択される方法」となりますので、 |
上記におきましては、
「 選択 ① 」が「原則的な方法」となり、 「 選択 ② 」や「 選択 ③ 」は、「退職者の申出」がある場合における「例外的な方法」となります。 |
更に、「 選択 ③ 」につきましては、
「当該方法」を採用するためには『「退職した会社」と「転職する会社」との間での「連絡事務」』が必要となりますので、 ・ 実務上では、殆ど選択されることはなく、 ・「親子会社・関連会社間などの連絡が取れる会社間での退職・転職」であるような場合にのみ選択される方法となります。 |
2、翌暦年度1月1日以降に退職した場合
従業員・役員が「翌暦年度1月1日~5月末までに退職・退任した」場合には、
『「未徴収の住民税」に係る徴収方法 』を「特別徴収」から「普通徴収」に切り替えることはできず、 「(退職月から5月までの)未徴収の住民税全額」を「最後に支給される給与・役員報酬」等から一括徴収しなければなりません。 |
★ 従業員・役員が「翌暦年度1月1日~5月末までに退職・退任した」場合には、
・ 基本的に「上記の取扱い」のみとなり、
・「当暦年度の6月~12月末までに退職・退任した場合」のような「選択」はできませんのでご注意下さい。
Ⅳ:「退職者」に対する「特別徴収住民税」の具体的な控除例示
『 退職・退任者に対する「特別徴収住民税」の徴収方法 』は、上記Ⅲでご紹介させて頂きましたような内容となりますが、
ここでは、具体的な例示を用いて、
- 従業員が「当暦年度の6月~12月末まで」に退職した場合と
- 従業員が「翌暦年度の1月~5月末まで」に退職した場合に分けて、
「特別徴収住民税の控除方法」をご紹介させて頂きます。
1、「退職日」が「当暦年度の6月~12月末まで」である場合
「個人住民税の特別徴収決定(変更)通知書」が以下のものである従業員が「10月31日」に退職した場合
『「特別徴収住民税額」の控除方法 』は、以下(1)又は(2)のものとなります。
1)「給与・役員報酬の支払」が翌月支払の場合
◆ ① 「 特別徴収 」から「 普通徴収 」に切替える場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「10月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「10月1日~10月31日まで」であり、
- 上記「10月分の給与・役員報酬」が「11月10日」に支払われるような場合で、
徴収方法の選択
「住民税の徴収方法」につきましては、『「特別徴収」から「普通徴収」へ切り替える方法 』が選択された場合
給与計算での控除例示
◆ ② 「未徴収の住民税」を「一括徴収する」場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「10月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「10月1日~10月31日まで」であり、
- 上記「10月分の給与・役員報酬」が「11月10日」に支払われるような場合で、
徴収方法の選択
「住民税の徴収方法」につきましては、『「未徴収の特別徴収住民税」を「一括徴収」する方法 』が選択された場合
給与計算での控除例示
2)「給与・役員報酬の支払」が当月支払の場合
◆ ① 「 特別徴収 」から「 普通徴収 」に切替える場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「11月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「10月21日~11月20日まで」であり、
- 上記「11月分の給与・役員報酬」が「11月30日」に支払われるような場合で、
徴収方法の選択
「住民税の徴収方法」につきましては、『「特別徴収」から「普通徴収」へ切り替える方法 』が選択された場合
給与計算での控除例示
◆ ② 「未徴収の住民税」を「一括徴収する」場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「11月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「10月21日~11月20日まで」であり、
- 上記「11月分の給与・役員報酬」が「11月30日」に支払われるような場合で、
徴収方法の選択
「住民税の徴収方法」につきましては、『「未徴収の特別徴収住民税」を「一括徴収」する方法 』が選択された場合
給与計算での控除例示
2、「退職日」が「翌暦年度の1月~5月末まで」である場合
「個人住民税の特別徴収決定(変更)通知書」が以下のものである従業員が「3月31日」に退職した場合
『「特別徴収住民税額」の控除方法 』は、以下(1)又は(2)のものとなります。
◆ (1)「給与・役員報酬の支払」が翌月支払の場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「3月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「3月1日~3月31日まで」であり、
- 上記「3月分の給与・役員報酬」が「4月10日」に支払われるような場合
給与計算での控除例示
◆ (2)「給与・役員報酬の支払」が当月支払の場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「4月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「3月21日~4月20日まで」であり、
- 上記「4月分の給与・役員報酬」が「4月30日」に支払われるような場合
給与計算での控除例示
Ⅴ:「途中入社者」に対する「特別徴収住民税」の控除方法
従業員・役員が暦年度の途中に入社・就任した場合の『「入社・就任日以降の住民税」の徴収方法 』には、
以下1、2でご紹介させて頂ますような
|
1、「途中入社者」に対する「特別徴収住民税控除」の原則的取扱い
従業員・役員が暦年度の途中に入社・就任した場合には、
原則、「特別徴収住民税の控除」は不要となります。 |
2、「途中入社者」に対する「特別徴収住民税控除」の例外的取扱い
ただし、
中途入社者が住民税をその居住している市町村に自ら納付している場合(普通徴収されている場合)であり、 中途入社者から「普通徴収から特別徴収に切り替えてほしい」という申し出がある場合には、 例外的に会社で「住民税の特別徴収」を行うことが必要となります。 |
この場合には、
まず、会社から中途入社者の居住する市町村に対して「特別徴収への切替申請」を行い、 市町村から『 当該中途入社者に係る「特別徴収決定通知書」』が送付されてきた後、 毎月の給与計算において『「特別徴収決定通知書」に記載されている「特別徴収住民税額」』を控除することとなります。 |
Ⅵ:「途中入社者」に対する「特別徴収住民税」の具体的な控除例示
『 途中入社者に対する「特別徴収住民税」の徴収方法 』は、上記Ⅴでご紹介させて頂きましたような内容となりますが、
ここでは、「 従業員が1月に入社した」場合を例に、具体的な「特別徴収住民税の控除方法」をご紹介させて頂きます。
1、原則的な取扱い例示
1月に従業員が入社したが、当該従業員から「特別徴収への切替え」の申し出がない場合には、
5月支払の給与計算までは、「住民税の特別徴収」は行われません。 |
2、例外的取扱いの控除例示
1月に入社した従業員から「普通徴収から特別徴収」への切替えの申し出があり、
・会社から市町村に対して「特別徴収への切替申請」が行なわれ、
・市町村から以下の「個人住民税の特別徴収決定(変更)通知書」が送付されてきた場合には、
『「3月分の特別徴収住民税額」の控除方法 』は、以下(1)又は(2)のものとなります。
◆ (1)「給与・役員報酬の支払」が翌月支払の場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「2月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「2月1日~2月28日まで」であり、
- 上記「2月分の給与・役員報酬」が「3月10日」に支払われるような場合
給与計算での控除例示
◆ (2)「給与・役員報酬の支払」が当月支払の場合 ◆
給与計算&支払状況の例示
- 「3月分の給与・役員報酬の計算対象期間」が「2月21日~3月20日まで」であり、
- 上記「3月分の給与・役員報酬」が「3月31日」に支払われるような場合
給与計算での控除例示
税理士事務所・会計事務所からのPOINT
ここでは、「給与・役員報酬の計算」において控除する『「特別徴収住民税」の控除方法 』と『 例示を用いた「特別徴収住民税」の具体的な控除方法 』をご紹介させて頂いております。
「特別徴収住民税」の控除方法につきまして
『給与計算で控除する「特別徴収住民税」』は、
常に、市町村で計算され、会社でその金額を計算することはありません。
このため、「特別徴収住民税額」を給与計算で控除するためには、
・『「特別徴収住民税決定通知書」に記載されている金額』を「何月分の給与支給明細書」で控除すればよいのか?
ということを把握できさえすれば、とても簡単に行うことができます。
中途退職者に係る「特別徴収住民税」の控除方法につきまして
『中途退職者に係る「特別徴収住民税」の控除』につきましては、「住民税の特別徴収制度」特有のルールが存在します。
このため、会社におきまして退職等があった場合には、
- 当該退職者等の「退職日」を把握した上で、
- 本文Ⅲ・Ⅳでご紹介させて頂きました内容をご確認頂き、
適切に「特別徴収住民税」を控除して頂ますようお願い致します。
中途入社者に係る「特別徴収住民税」の控除方法につきまして
『中途入社者に係る「特別徴収住民税」の控除』につきましては、
本文Ⅴでご紹介させて頂きましたように、
- 原則的には、「特別徴収住民税の控除」は不要であり、
- 例外的に、中途入社者の申し出がある場合に限り「特別徴収住民税の控除」が必要となります。
なお、「例外的な取扱い」が必要となる場合であっても、
・その取扱いは、『通常の「住民税の特別徴収」と同様のもの』となりますので、
・本文Ⅴ・Ⅵでご紹介させて頂きました内容をご確認頂き、適切にご対応頂ますようお願い致します。